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参事(
寺光忠君)
参議院の緊急集會については豫測はできませんけれども、とにかく早くお作り願
つて置いた方がよかろうと思いまして、一應の試案というものが
参事會議でできたのであります。
参議院緊急集會につきましては、御承知のように
憲法五十四條二項と三項の
規定がございまして、それからその他には
國會法の四條三十四條、百十四條と三ヶ條でございます。この
憲法の一ヶ條と
國會法の三ヶ條とによ
つて緊急集會を運營して行くことは殆んど不可能なんであります。それで
参議院規則を
制定せられる際に、
参議院規則の中に、
参議院緊急集會に關する規則を併せて
規定せられることも
一つの
方法であ
つたろうと思うのでございますが、半面には、又
参議院規則は、この
國會法、それから
憲法を受けておる院内規則として成り立つのでございますが、
参議院緊急集會につきましては、
法律の
規定が非常に少いものでございますから、
参議院規則として
一般に掲げられるものとは若干性格の違
つた法律的な
規定というものを加える必要があるのでございます。それでお手許にお配りしてございます。緊急集會規則の試案におきましては、
原則といたしまして
参議院規則を準用いたしますけれども、準用
規定である第五條の外の一條、二條、三條、四條につきましては、これは
國會法が
規定しておるような
規定がございます。それで
國會法に若しこの四ヶ條のような
規定がございましたら、これは全然緊急集會規則というものを特に作る必要がなか
つたのではないかと思われるのでございます。
國會法にこの四ヶ條に關する
規定がございませんために、なまじつか三ヶ條の
規定が
國會法にあるということから、
法律を
規定することも又辻褄が合わないことになりますので、止むを得ずこの緊急集會規則という形で、この四ヶ條の形を非常にゆるめて、立法のし方において表現して見たのでございます。第一條は集會に關する
規定でございますが、緊急集會については召集の觀念がないのでございまして、むしろ集會というべき觀念だろうと思います。それでこれは
國會法の四條におきまして、「
参議院の緊急集會を求めるには、内
閣總理大臣から、集會の期日を定めて、
参議院議長にこれを請求しなければならない。」こういうふうにな
つております。それを受けた
規定でございまして、「内
閣總理大臣より期日を定めて緊急集會を求められたときは、
議長はこれを
議員に通知する。
議員は、前項の指定された期日の午前十時に
参議院に集會しなければならない。」こういうふうにいたしまして、集會の時刻等を
参議院規則の
規定と合わしたのでございます。召集でございましたら官報に召集の詔書が公布せられるのでございますが、そういう形は、召集という形においては取りにくいので、そうかと申しまして、總理大臣が集會の政令のようなものを出すということも穩當でございませんので、とにかく
議長に通知する、それから
議長から各
議員に通知するという形にする方がよかろうと、こう考えられるのであります。第二條は
憲法の五十四條第二項を受けた
規定でございます。
憲法の五十四條二項によりますと、「
衆議院が解散されたときは、
参議院は、同時に閉會となる。但し、
内閣は、國に緊急の必要があるときは、
参議院の緊急集會を求めることができる。前項但書の緊急集會において採られた措置は、臨時のものであ
つて、次の
國會開會の後十日以内に、
衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。」過去の緊急勅令、緊急處分に當る措置であるのでございまして、
憲法にも明らかなように、「
内閣は、國に緊急の必要があるときは」というので、この發動權は
内閣にあるわけであります。
内閣がそういう緊急性を認めて要求するのでありまして、
一般の臨時
議會のように、
國會議員、
参議院議員の側で召集を要求することはできないような
建前にな
つております。而もその緊急集會にあいて採られました措置は全く臨時的なものでありまして、
衆議院で
否決されて不承諾に終りますと、その効力を失うことになるという
性質のものでございます。それで第二條におきまして、緊急集會で
議員は
法律案を發議することはできないという
建前を取
つたのでございます。これは先程來御
説明しました
憲法五十四條二項、三項から來る當然の
結論であろうかと思われるのでございます。
議員が
内閣側から出た
法律案に對して修正を加えるということは、これは當然できますけれども、兩院の
議決を要する
法律案を、緊急集會において
参議院だけで、
参議院議員の發議によ
つて可決するというようなことは、
憲法の豫定していないところである、こういうふうに考えられるのであります。第三條は「
内閣より提出された
議案が、すべて
議決されたとき、
議長は、緊急集會の終
つたことを宣告する。」これは緊急集會には會期とい觀念がない、緊急集會に提出せられた
議案が可決され、若しくは
否決されたときはその會期は終る、こういうふうに
規定いたしたのであります。
第四條は
國會法の六十五條に類する
規定でございます。
國會法の六十五條によりますと、兩院の議を經た
議案の奏上は、
衆議院議長からすべてこれを行うという
規定を置いております。この際は
衆議院が解散しておりますので、第四條に、「緊急集會において可決された
議案は、
議長がその公布を要するものは、これを
内閣にして奏上し、その他のものは、これを
内閣に送付する。」こういう
建前を取りました。
第五條は
参議院規則準用
規定でございまして、準用をいたしておらないものを申上げますと、第二章、第三章、第四章でございます。
第二章は内
閣總理大臣の
指名でございまして、これは當然かような事態は起きないのであります。
第三章は
開會式でありまして、
開會式は開かれないのでございます。
第四章は會期の決定、會期の延長及び
國會の休會でございまして、これも當然さような問題は起きないのでございます。
第五章は
参議院規則の表題といたしましては、
議案の發議及び撤囘とな
つておりますので、これは當然削除するべき
性質のものであるかも分りませんが、衆
議院規則の第五章の中には、
委員會の審査省略に關する
規定、それから
政府からの提出
議案に對する
規定も併せて
規定してございますので、全部削除することはできませんので、一應そのままにいたしまして、發議ができないということは、遡
つて第二條に
規定がございますので、それではつきりする、こういうふうに考えたわけであります。
次は第十二章でございます。第十二章は
衆議院との
關係を
規定したもので、これは當然無用なのでございます。
その次は第十五章でございます。第十五章は資格爭訟でございますが、資格爭訟の
規定に關する
事件か緊急集會において取上げられるというようなことは先ずない。のみならず緊急集會のように僅か数日か十数日か、いくら長く見てもたかだか五六十日しか豫定されない緊急集會において資格爭訟
事件というものが取上げられるというようなことはいかがなものであろうというような觀點から、資格爭訟はこの際は準用いたさなか
つたのでございます。
以上が試案の御
説明でございます。