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委員長(
佐藤尚武君)
只今岡田
委員から御
紹介がありましたが、この
陳情の中で、マツカーサー元帥にも直接
陳情書を提出した。そうして幸いにこれが受領されたということがあります。ついては
参考のために、マツカーサー元帥に宛てた
陳情書も御披露申上げた方がいいかと思うのであります。
沖繩ノ
日本復帰ニツキ
請願
ダグラス・マツカーサー陸軍大將閣下
閣下、
日本本土ニ居住スル
沖繩縣人ノ指導者ニ依リ連署サレタル
陳情書ヲ、閣下ノ御同情アル御考慮ヲ煩ハスヘク呈出致シ候
沖繩ハ昨年夏アメリカ軍ノ占領ト共ニ直チニ軍政下ニ統治サレ、アメリカ軍
政府ハ
各地ニ病院並ニ治療所ヲ設置、傷病者ニ施薬、全住民ニ対シテハ食糧衣類ヲ給與、更ニ家屋建築材料ヲモ
配給シ、各住民ハ一部ヲ除キ殆ンド全部居村ニ復帰シ、復興住宅ノ建築ト農耕ニ從事シ、今ヤ
戰爭ノ恐怖ヲ忘レ、平和ノ民トシテ各種ノ平和産業ヲ復興セシムヘク相協力シツツ有之、全住民ハアメリカ軍
政府ニ対シ感謝致居候。然レドモ、アメリカヘノ感謝ハ感謝トシ、全住民ハ依然
日本ノ統治ヲ慕ヒ、
日本ヘノ復帰ヲ熱望致居候。ソノ血ハ水ヨリモ濃ク、
沖繩人モ
日本人ナルガ故ニ候。敗戰
日本ガ如何ニ成リ行クトモ、
沖繩人ハ同胞タル全
日本人ト運命ヲ共ニシ、全
日本國民ト共ニアラユル困苦ヲ甘受シタシトノ意氣込ニ候。殴米ノ一部ニテハ、
日本人ハ
沖繩ヲ貧乏ナ從弟ト見下シ、
沖繩人ヲ厚遇シ居ラズト観察スル向モ有之
模様ニ候得共、コレハ全ク誤解ニシテ、教育モ行政モ
日本各府縣同様何等差別待遇ナク、明治
政府治下ニ入リテ軈テ七十年、
沖繩ハ
日本ノ一地方トシテ存続発達シ來レルモノニテ、今後モ戰前同様
日本ノ一地方トシテ存立シ度シト言フガ全
沖繩人ノ
希望ニ候。更ニ欧米ノ一部ニ於テハ
沖繩モ満洲台湾同様支那ニ還付スヘシト論議スル者モ有之
模様ニ候得共、以テノ外ノ論議ニ候。成ニ程
沖繩ガ流球王國タリシ時、支那トノ
関係ハ、明治初年ニ至ル迄実二五百有余年ニ及ビ、
沖繩人ノ主要食糧タル甘藷唯一ノ産業タル糖業ノ如キモ支那ヨリ傳來セルモノニテ、
沖繩ノ支那ニ負フ処絶大ニシテ、
沖繩人ハ支那ヲ恩トシ永ク交誼ヲ持続セントセル時代アリシハ事実ニ候。然レ共支那
政府ガ直接
沖繩ノ政治ニ干與セル事ナク、四五十年二一度支那皇帝ノ使者が琉球國王ノ王冠ヲ授與スヘク渡來セルノミニシテ、土地狭少ノ資源薄キ
沖繩ガ、支那ヲ頼リトセルハ支那ノ文物ノミニテ、貿易ニ依リ
沖繩ノ経済ヲ豊富ニセントノ意向ニテ支那ト親シミタル迄ニテ、支那
沖繩関係ハ全ク経済貿易上ノミニ候。今ヨリ三百年前、
日本薩摩藩ノ直接統治ニ帰シテヨリ日支両属ノ姿トナリシモ、薩摩ノ統治以前数百年、早クモ
沖繩ニハ
日本人渡來シ、
沖繩歴史ニ現レタル最初ノ
沖繩國王主舜天ハ、
沖繩ニ渡來セル
日本人源爲朝ノ子ニシテ、
沖繩ヘノ佛教渡來モ
日本僧ニ依ル等、
日本沖繩ハ古昔ヨリ島傳ヒニ往來頻繁ナリシモ、朝鮮支那海ニ跳梁セル海賊同然ノ倭寇ノ現ハレニ依リ、
沖繩船モ難ヲ避ケテ
日本航行ヲ中止、方向ヲ換ヘテ支那及南洋ニ航シ、ニ暫ク
日本沖繩ノ往來中絶ノ姿ト相成シモ、元來
日本沖繩ハ同人種ニシテ、言語風俗習慣モ同一ナレバ、薩摩入リニ依リ再ヒ旧交ヲ温メ得タル次第ニシテ、豐臣秀吉ガ朝鮮討伐ノ際、
沖繩ヲモ
日本列藩同様ニ取扱ヒ、薩摩ヲ介シ
沖繩ニ出兵ヲ促セル点ヨリ見ルモ、当時ノ人ガ
沖繩ヲ同胞視セルヲ窺知シ得ヘク、三百年ノ
沖繩ノ歴史家ニシテ政治家タル羽地朝秀氏ハ、言語系統ノ同一ナル点ヨリ
日本沖繩ノ祖先ハ同一ナリト喝破シ、爾來
沖繩人ハ是ヲ信奉シテ動搖セス、今日尚ホ是レヲ確信致居候。
サレバ、新
日本ヲ建設セル明治
政府ノ慫慂ニ依リ、琉球最後ノ藩主尚泰カ欣然全
沖繩ヲ挙ケテ明治
政府ノ傘下ニ参加、旧琉球王國ヲ解体セルハ宛ラ父母ノ家ニ帰宅セルト同然、極メテ自然ノ道程ヲ辿リタルモノト言ヒ得ク、何等
日本ノ強要或ハ武力ニ屈シタルモノニ非ラズ、
日本ノ台湾占領有朝鮮併合トハ大イニ趣ヲ異ニスルヲ御諒承相成度、
沖繩ハ明治
政府治下ニ入リテ、教育
普及、産業勃興、
日本本土同ノ航路モ定期船ニ依リ至便トナリ、更ニ
政府行政上ノ権限モ
日本内地各府縣ト全ク平等同一ニシテ、些カノ差異モ無之、嚴然タル
日本内地ノ一地方ニ候。
右ノ事情ニ候へハ、現在全
沖繩人ガ
日本ヘノ復帰ヲ希求スルハ人間至情ノ発露ニシテ、敢ヘテ他意ナキ点、幸ヒニ御諒解相成度、地理上ノ位置ヨリスルモ、
沖繩ハ
日本トノ交易ニ依リ経済生活ヲ保持シ得ヘク、
沖繩人ハ永久ニ
日本人トシテ生活シテコソ幸福タリ得ル点ヲ充分御諒解相成、
沖繩人ノ願望ヲ是非々々許容サレ度、
世界平和樹立ニ指導役ノ貴國ハ、
人類全体ノ安寧ト幸福増進ヲメザシテ活躍サル、今日ナリ、太平洋ニ位置スル最爾タル一島嶼ノ
沖繩民ナリトテ軽視サレズ、我等ノ意志ヲ十分御汲取リ下サレ度、
日本トノ媾和
会議開催期近ツキツツアル
機会ニ臨ミ、右
請願致ス次第ニ候