○
村上義一君 今一点お伺いいたしたいのでありますが、それは
國鉄企業、
自動車企業の
経営形態に関してであります。
國有鉄道の本年度の
財政状態は、誠に各般の
事情によ
つて巨大な
赤字をその
收益勘定においても持
つておるということなんであります。而も多額の
借入金があるに際して、僅かに十億だけを返還するという
計画が現われておりますが、
借入金について、その
償還計画というものも示されておりませんし、又この
赤字克服についての
計画も未だお示しにな
つておらないのであります。
國鉄の
実相報告は八月に配付せられまして拜見をしたのでありますが、爾
來約百日を経過しました今日、尚只今申上げるような次第であります。
國鉄は本年三月に二割五分の
運賃値上げを
実行し、更に七月の上旬に二十五割の
値上げをしたのであります。而も今日のような未曾有な不健全な
財政であるということについては、
國民はどうしても理解できない、到底納得できないという
意見を各方面で耳にいたす次第であります。尚そういう
意見を述べられる人が常に
地方鉄道等と比較して言われるのであります。
地方鉄道と主な点について比較して見ますると、大体において
國有鉄道は非常に優秀な
立場にあるのであります。
地方鉄道は
復興資金の
金融事情ということにつきましても、
國鉄の
資金の問題に比較しまして格段な困難を感じておるということも事実であります。又
資材の
配給につきましても、その
配給量は
國鉄に比較して甚だしく
少い、どういう標準によ
つて國鉄と
私鉄に配分せられるのか、これは安本において
実行せられるのでありまするが、この点についても多大の
疑義を持
つておるような次第であります。
疑義の問題は暫く別といたしましても、こういう
資金も
資材も非常に
國鉄に比して
惡いという
立場にありながら、設催の
復興はむしろ
私鉄の方が却
つて良好な
現状にある。更に本來の経済的な
立地條件、これは
國鉄が
私鉄に比較してすこぶる優秀な
立場にあるということは申上げるまでもないのであります。又
営業税だとか
地方税なども
私鉄は巨額の負担を持
つておりまするが、
國鉄は何らそういう義務を持
つておらん、又
職員の
待遇にしましても、昔日は
私鉄より断然
國鉄の方がよかつたと思うのであります。然るに現在は
私鉄に比して
却つて惡いということができるのじやないかと思うのであります。こういう
実情であるに拘わらず、
收支勘定は
反対であ
つて、最近の
決算期におきまして
私鉄全國百六十六社の内、その四分の三はとにかくにも黒字の
決算をしておる。四分の一が若干の
赤字を出しておるという
実情であるのでありまして、勿論
國鉄としましても八月御
発表の
実相報告書の
結論として御
発表にな
つておりまするごとく、人員の適正な配置を
実行する、又徹底した
能率給制を採用するというような御
意見も見えるのであります。更に
石炭事情についても、固より品質は粗惡になり、
炭價は暴騰する、いわゆる
実質價格が非常な騰貴を來たしておるということは、今日
國鉄運営の上において非常な困難を齎らした主なる
原因の
一つであると思うのであります。これについても
石炭の
節約という見地から徹底した
方法を講ずる、或いは粉炭の
煉炭化であるとか、助燃材の活用であるとか、或いは又
技術の練磨であるとか、いろいろの点を
結論として指示されておられるのであります。更に
電化の
促進であるとか、或いは
作業コストの
節約と
作業の迅速、的確、安全を目途として
作業の
機械化を図るとか、いろいろこういうような
作業の
合理化についても御
意見のあるところが見られるのであります。併しこれらについてまだ
纏つた御
意見を御
発表にはな
つておらないのであります。私はこういつたような
合理化の
方策を
実行しようとしても今できないという、或るものがこれを阻んでおると私は考えるのであります。それは要するに、六十二万の全
職員が
独立採算の
企業であるという
観念に徹底するということがあ
つて初めて
経済白書の
結論に羅列しておるような
合理化に著手することができるのであるということを思うのでありまして、こういう一日も早く
実行せんければならん問題を
実行に移すについての
根本的原因を充実せんければならんのじやないかということを思うのでありまして、この根本問題を解決しますれば
收益勘定のバランスも良好になり、又
國民に愛され、親しまれる
國鉄を復活せしめる、
職員の事実上の
待遇も向上せしめ得るという結果を齎すことは、正に決定的であると私は思うのであります。それは
國鉄の
経営と、そうして
國鉄及び
私鉄に対する
監督行政とを、
機構の上におきましても、
会計の上におきましても、截然区分するということが、根本的な要請であると思うのであります。私は
國鉄の
経営と、そうしてその
監督行政とを
機構の上にも区分し、又
会計の上においても区分して、
監督行政の
会計は
一般会計に編入するということが根本的な
要件であ
つて、この
要件を滿たすことによ
つて関係職員が、自分の持つ職場は
独立採算の
企業であるという
観念に初めて徹底し得る、又この
観念に徹底して初めて
合理化の諸種の事項をたやすく
実行に移すことができるのじやないかと思うのであります。
監督行政と
企業の
経営とを分離して
行政の
民主化を図る必要について只今申上げましたが、これは
國鉄の
独立採算制の確立、又
合理化の
実行ということからひとり要望せられるばかりでなしに、その他にも事由が尚あると思うのであります。三つの点が尚考えられると思うのであります。第一に、
公共團体や
鉄道会社が
経営しておりまする
地方鉄道軌道の
監督行政につきましては、その
監督方法につきましても亦物資の
配給につきましても、民間に少からざる不平又不満があるのであります。
運輸省は
日本最大の
企業である
國鉄を
経営しつつ片手で
鉄道事業の監督育成をしているのであります。その間知らず識らず不公平になり、或いは又非民主的なことになると思うのであります。一例を申しますれば、連帶
運輸というようなものについては、全く
國鉄と
私鉄と平等の
立場に立
つて処理すべき性質のものでありまするが、それがそういうことにな
つておらん。從
つて非常に不平があるということは、片手で
國鉄を
経営し、片手で
私鉄の監督をする、同一人がや
つておるということによ
つて生じて來るのであると思うのであります。更に第二には、
公共團体や
自動車会社が
経営している
自動車事業の
監督行政、省
営自動車経営との
関係につきましても、同樣なことがいえると思うのであります。特に省営の
自動車企業におきましては、
計画の時から
赤字の收支を平氣で
計画をして、而も不当な進出をして、民間の
自動車事業を抑圧するという声が業界に絶えないのであります。勿論
自動車事業の民間
経営者の中には、甚だ感心しない、いわば闇輸送その他闇行爲の行われているということも事実であります。これは只今申しましたような不平不満の声の中にも隨分当らざる自分勝手な批判もあることは認めざるを得ませんが、とにかく業者は
資材の
配給についても不満を持ち、省営の進出に対して深刻な不安を平素痛感しておる。又半面におきまして、
國民は省
営自動車のサービスに比較しまして、民間業者のサービスが非常に劣惡であるという非難をし、又この非難を理由として、省営の進出を要望するということも非常に全國的に多いのであります。隨分監督の衝に当
つておられる
運輸当局は、この板挾み的の
立場に立たれて苦心をなさ
つておることと拜察するのであります。要するに監督が嚴正でないとか、或いは指導育成が不徹底であるとかという声が絶えない、又監督なり指導に際して非常に辛い、一口に言えば辛い
立場に立
つておられるということも、根本の
原因は
自動車行政と省
営自動車の
経営とがごつちやにな
つておるということに起因していると思うのであります。
尚いま
一つは、第三の点としましては、先刻申しました、又大臣からその御所見を伺いました
道路行政に関聯してでありますが、
國鉄や省
営自動車の
経営と
鉄道行政、
自動車行政とを
会計上におきましても
機構の上においても截然区分する必要は、全くこの
道路行政を
運輸省に移管するという上から見ても必要なことであると私は思うのであります。
國鉄の
経営が非常な大事業であるということは申上げるまでもありませんが、從いまして
國鉄の
企業経営ということが
運輸省が実際において中心とな
つている。
運輸省の中核体をなしているということも事実であります。從いまして
私鉄の
監督行政も
自動車行政も更に海運
行政も港湾
行政も
國鉄企業に全く從属しておるやの感が免れないのであります。庇の隅に押し込められておるというような感を呈しているのであります。どうも
行政が先刻も申述べましたごとく
自動車事業の
監督行政と
道路行政とを一元化する必要を
一般に認めながら、今日までその実現を拒まれていた主な
原因は、
道路行政が
國鉄の
企業と雜居するということであるならば、今日港湾
行政と同じように
運輸省の庇の隅に蟄居して、
道路の
発達ということに効果を挙げることができないだろう。こういう
反対理由を常に耳にする次第であります。從
つて道路行政の受入れ態勢、
運輸省への受入れ態勢と申しますか、こういう見地から見ても、
行政と
鉄道企業、
自動車企業を截然区分するということが非常に必要であると思うのであります。勿論この
日本の
現状から見まして急激な変動を齎らすということは、これは愼まんければならんと思うのであります。英國がこの大戰後
実行しつつあるような國有民営のような形態をとるということは我が國においては適当でないと私は思います。國有
國営でいいと思うのでありますが、ただ
鉄道につきましても、
自動車につきましても、
監督行政と
企業経営とを
会計の上にも
機構の上にも截然区分する。そうして
國鉄企業と省営
自動車企業とはそれぞれ別個に
独立採算制の態勢をとることが根本に
要件であると思うのであります。この際大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。