○國務
大臣(苫米地義三君) 先ず獨立採算制と現在の赤字についてどうするかという
お話であります。内閣で發表いたしました經濟緊急
對策の中にも、
國鐵のような特別會計のものは獨立採算制を採
つて行くというふうに發表いたしておりまして、この
國鐵の分も獨立採算の取れるような方式によ
つて經營をして行きたいということは、これは
政府の方針であります。ところがその意味で運賃の
値上げを考えたのでありまするけれども、今囘の
値上げは他の物價の根本的な異動がありまするために、これを運賃だけの計算を土臺として決めるわけには參らなか
つたのであります。そこで新物價體系を作る安本にこれを委讓しまして、そうして他の運賃との振合いを決定して貰
つたわけでありましたが、御承知のやうに運賃は三倍半に決めたが、外の物價はそれ以上になりまして、結局新物價を練り廻した練り方が足りないとでも申しますか、釣合の取れない運賃だけが彈き出された、こういう状態になりまして、最初考えました獨立採算という安本の
一つの計畫がこれに副わなか
つたという現實であります。そうしてその結果生れた赤字、百二十億のものはどうするかということでありますが、この始末をいかにするかということに對しましては、
國民及び
國民を代表せられる皆さんの御
審議を俟
つて實は決めたいと思うのでありまして、その前に我々は經營合理化によ
つて百十九億に豫想されるこの赤字を更に壓縮して、その上にこの結果をどうするかということを御
審議願いたいと思うのですが、目的は獨立採算制にありますけれども、さて一般物價を堅持して行くというこの社會的な安定を狙います際には、これを又動かすことによ
つて、他の物價に變動が來るということも
國家全般の上から考えられるのでありまして、その始末については、おのずから
國民の意思を體してやらなければならんと思うのであります。併しながら經理の取扱といたしましては、差向き借入金としてそれをするのであります。そこでただ借入金だけにして置きますというと、日銀の抱え込みに
なつて、これは金融面から、財政面から面白くないということもございまするから、或いは國債發行、いわゆる
鐵道公債を發行して、そこでこれを民間に資金の分散を圖る、こういうことも考えられるのでありますが、今確定したことに
なつておりません。まあ私共の
考え方としては、そういうことの方が一般の金融壓迫にならないでいいじやないか、こう考えております。
それからその他の點でありますが、實は私のこの
國鐵に對する根本的な
考え方をむしろ
結論的な考がございますから、それを申上げますというと、おのずからお答えになると思うのであります。私は
國鐵の状態については、先刻來繰返し申上げたのでありまするが、ともかくも現在としては資材確保だ、この資材確保は國内的の状態では殆んど不可能の状態ではないか、然らばこれをいつまでも辛抱してやれるかどうかというと、甚だ危險だ、これは幸いに開けて來た海外との
關係をこの際利用して、そうして何らかこの打開の途を講じたいというので、今そういう方策を實は考えているのでありまして、これを具體的にこの際申上げるということは、時期でもありませんし、又妥當でないと思いますから、ただ
考え方の方向を
一つ御了察願いたい、こう思うのであります。それからその次は何とい
つても經營合理化の方面は、この
白書にも書いてありまするように、仕事の合理的な強化というようなことも無論ありますし、消極的な節約、その他合理的な
運營の方針というようなことも無論ございますから、この經營合理化を徹底的に
一つや
つて見るということを今それぞれ考えております。これが
當面の問題でありますが、併し
國鐵を恆久的に安定するということも、この際として考えなければならんと私は思う。それでは何か重點であるかと申しますというと、これを動かす動力源の確保だと私は思います。動力源の確保とは即ち一方から言えば、數百種に餘る雜然たるこの石炭、これを適性炭を獲得する。而も安定的な確保をするという途を求めなければならんと思います。もう
一つは電力源を獲得して、これを強化する、そうして主要線の電化であると思うのであります。私共の今省内で打合せをしておりますることは、幸いに石炭については
九州に志免炭鑛をいうのがございます。これは
國營の最も非
能率的な石炭と世間からいわれておりますが、私も炭鑛を經營したことがございまして、よくあれを檢討いたしまするというと、今が一番惡い時であります。上層炭を殆んど皆掘り盡したものを今漁
つているような状態でありまして、これは他の炭鑛とそのまま比較することは、それは無理だと思う。そこで下層炭がございまするが、この下層炭というのは非常に優秀でございます。これに對して堅坑もすでに掘
つておりますし、斜坑もついておりますし、これから本當にあの山の眞髓であるところの下層の炭鑛へ掘り進んで行くという状態でありまするから、今の状態であれを
國營だから非
能率だと即斷することは問違
つておると思います。私ならば優秀な炭山として行くことが可なるものと思います。ただ勝田炭鑛と言
つて隣りの鑛區と交錯しております、それでありますから
國家的に考えて兩炭鑛はむしろ併合してやるべきだと企業的に考えますが、この石炭は七千カロリーでございます。それでありますから
鐵道の粉炭といたしては最も
適當であります。それからもう
一つ北海道でそれに似寄
つたような山で、しかもこれから開發しようというような山が若し得られるならば、多少見當もついておりますので、そういう山をも民間企業と提携して開發する。そうしてその石炭を
鐵道用炭に確保するというようなことも考えなければならんと思
つておりまして、これも具體的に今話を進めようとしております。それからそういうことについて
九州に
一つ、北海道に
一つ足をつけまして、相當の適性炭が確保されるならば、これは非常な強みになると思いまして、その點を考える。それから内地におきましては何と言
つても電力だと思います。電力はすでに十二萬キロは信濃川で開發しております。その下流に二ケ所、約五萬キロずつ發電の地點を求めまして、すでに第一期は著手中であります。それでありますからして、若しこの工事が完成いたしますれば十萬キロできますし、これによ
つて電化の範圍が廣くなり、そうして石炭の節約もできるというようなことを考えまして、この電力と石炭のいわゆる動力源を確保するということは
國鐵將來のためにどうしてもこれをやらなければならんことではないかと思うので、頻りに今研究いたしておる次第であります。
その次は、先刻御指摘になりました
國鐵そのものの經營形態なんであります。これは御指摘のように、現在では獨立特別會計によりまして大體分離計算をいたしておりまするが、併し本當に企業經理には
なつておらないのであります。それでありまするから、行政と企業というものを分離するという
考え方も一方にはあると思いますが、これは輕々に決めるわけには參らんと思うのでありまして、いかに獨立採算制を取る上において、最も
能率を上げて、
國家の社會的な大きな事業を
能率よくやるには、その經營形態にまで、多少の
意見もございましようが、研究をして見る必要があると思いまして、いろいろ調査研究をいたしております。
それからもう
一つは、何と言
つても
鐵道施設、その他の囘復、それから動力源の確保、それから經營も或る
程度まで
方法としては合理化された、こういいましても、
最後は人の力であります。それに先程
お話のありましたように、六十萬の從業者が本當にこの事業の社會的な重要性を考えて、自分らの大きな任務の自覺の上に仕事をして頂くことを希望せざるを得ないのでありまして、私も先般この
白書を發表すると同時に、省内の從事員の各位に向
つてもう一遍
鐵道の
内容を再認識して、部分々々には知
つておるかも知れないが、綜合的にもう一遍再認識して、そうして本當に祖國の再建は
國鐵の復興からという氣持を持
つて頂きたい。そうして今こそ勤勞者が本當にそれをや
つて頂けば、私は
國鐵ひとりの復興ばかりじやなし、實にこれが大きな導きと
なつて、
國家再建の上に貢献するであろうというような意味のことを
お話しして、その奮起をお願いしたような次第であります。そんなわけで
國鐵復興の基本的な私共の考は、そういうように今考えておる次第であります。尤も
運輸全體の面から申しますれば、先程御指摘のように、
海運事業及び陸運の自動車輸送というものに對しましては、將來道路の整備と共に自動車輸送というものに對しては、相當尚研究したいと思うのであります。私の考の一端を申上げまして、御了解を頂きたいと思います。