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米窪國務
大臣 千八百圓と一應きめたのは、私がこういう集まりで度々
説明申し上げておる
通り、新物價體系を立てるときに、生産費の原價計算をする場合において、それの非常に大きなウエートと分野を占めておる人件費、おそらく今日
平均六割くらい占めておるでしよう、それをきめなければ新物價體系の算定が成り立たないのであるから、
賃金を大體きめてかう物價體系をきめなけれでならぬ、こういう順序にな
つたのであります。
しからば
賃金をどの程度にきめたかというと、本年五月頃の
官公廳及び私企業の勞働者の全國
平均をと
つてみると、業種によ
つて二千三百圓、あるいは千四百圓、あるいはそれ以下、こういうぐあいに各業種によ
つて平均賃金が相違しますが、その總
平均賃金をと
つてみると、大體千五百八十何圓ですか、そういうところに
統計が現われてくる。しかしそれできめて新らしい物價體系が立つたときに、物價が上
つたのによ
つて賃金のはね返り、物價のはね返りから
賃金に及ぼす影響を考えて、いわゆる二百圓というはね返りの分をプラスして、千八百圓ときめたのが、當時の
給與審議會における
政府の責任をも
つてきめたものでございます。この
給與審議會においては、勞働者側と
政府側及び第三者側との委員の間にしばしば會合を開いて、いかなる最低
賃金や標準
賃金をきめるかということを談合したのですが、勞働者側の方の
政府側の
意向との間に相當のギヤツプがあ
つて、ついに勞働者側は
政府の責任できめてくれということで、
政府の責任をも
つて今申し上げた考え方から千八百圓というものを一應きめたのでございます。但しこのとき
政府は、この千八百圓というものは今申し上げたような意味においての標準
賃金であるから、殊に私企業において、各業種別によ
つて、すでに
平均賃金に相當の開きがある。すなわち機器の方においては二千三百圓、あるいは紡績においては千六百圓、こういう開きがあるから、やみ
處理をするとか、あるいは價格差益金を
政府に納めるものを流用するとか、あるいは勞働者の
勤勞所得税を轉用して、これをも
つて人件費の方にまわすとか、そういうことでなくして、ほんとうに各經營者が、健全なる合法的な經營形態をも
つて黒字が出るような企業においては、必ずしも千八百圓で縛るものではない。
一つの例を言えば、二千三百圓でも二千四百圓でもよろしいこういうことを聲明したことは
事實であります。
但し、しからば私企業の各
平均賃金が齊しく全部二千三百圓なら、千八百圓のベースを上囘ることになるのでございますが、各種の業種及びその業種に屬しておる各企業形態を調べてみて、その總
平均をと
つて千八百圓にならないという企業のわくの内においては、必ずしも千八百圓で一應みな縛りつける意思はない。こういう意味において
政府はその當時、
川崎さんのお尋ねの
通りのことを聲明したのでございます。千八百圓という名目
賃金、これは名目と言
つておりますが、この名目
賃金を上げてもインフレーシヨンが止まらず、やみが横行しておれば、
當然勤勞者の實質
賃金は下
つてくることはあたりまえでございまして、
勤勞者の最低
生活費と勤勞
賃金とのギヤツプを埋める
方法としては、
政府は加配米あるいは勞務用物資の
配給の改善、あるいは
勤勞所得税の
基礎控除額を引上げる。あるいはやみ撲滅をや
つて、今日の勞働者の生計費の七割まではやみであるから、その割合をひ
とつ減らそう、こういうことにおいて、この名目
賃金と、最低
生活費とのギヤツプを埋めようと
努力してきたのであります。
そこでそういう
努力にかかわらず、八月、九月、十月は赤字あるということは
政府が發表しておる。もちろんそれの計算に當
つたのは經濟安定
本部でありまするが、これが閣議にかか
つて決定した以上は、それから後は
日本政府の責任でございます。今申し上げたそういう計算においても、なお十一月において若干の黒字が出る。この黒字の額については、經濟安定
本部で
最初に發表したときと、その後に發表されたときとの間に相當開きがあります。
最初よりも相當その金額は下
つております。しかしとも
かく、わずかながらも黒字が出ると經濟安定
本部でこれを計算したその場合においては、これは閣議にかけておりませんから、經濟安定
本部だけの發表でありますが、いずれにせよ
政府が黒字が出るということは、當時の事情において確認したのであります。
その後、計算した當時に
當然ある
部分まで正常なルートで
配給されると信じておつた野菜、あるいは生鮮魚類、そういつたものがいわゆる物價改訂の跋扈がはなはだしくて、新物價體系が上つたならばやみは下ると思
つたのが、あべこべにこれに便乘して、やみ物價がずるずる上つたために、野菜類及び生鮮食糾がほとんど
配給ができずして、やみで
勤勞者が買わなければならなかつたという事情が手傳
つてきて、あるいは十一月において黒字が出るかどうかということについては疑問をもつのでございます。しかし
政府はこの際、あくまでも千八百圓ベースを堅持しなければ、インフレは止まらぬ、否ますます増進するので、やみ撲滅ができないことは、
政府ばかりでなく勞働者自身がよく知
つておる。今日私の接觸しておる勞働者は、異口同音に、口をそろえて、われわれは名目
賃金を上げてくれということは、われわれのほんとうの
要求ではない、むしろそれよりも、われわれの
生活費を下げてもらうように、すなわち物による
配給流通秩序の確立がわれわれの
希望であ
つて、各目
賃金を一應われわれは
要求しておるけれども、それよりむしろ物の
配給を完全にして、われわれの
生活を樂にしてもらいたいということを異口同音に言
つております。
政府はこの乏しい物資の中において、十一月になればとも
かくも、米は例の三千五十餘萬石というあの供出が、大體において順當に行われるならば、米は乏しいながらも二合五勺を滿配して、遲缺配をなくしていくという大體の見込のもとに、米のやみ買いをせずにすめば、米のやみ買いがなくなれば、
從つて他の日常
生活品に必要なに諸物價が下
つてくるだろう、ここにいわゆる十一月黒字が出るという根據があるのでございます。
從つて十一月もし黒字の出ない場合においては、これはすでにやはり
政府の政治的道徳から言
つても、責任から言
つても、私はすぐ改訂するとは言いませんが。改訂すべきかどうかということについて、
政府は再檢討しなければならぬ、私はそう考えております。