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小川委員 ただいま大臣は、あるいは道路の開發とか、あるいは電源の開發、その他土木
事業にも相當資力を注いでいると言われたのでありますが、およそ
日本の
現状から見て、御承知のごとく食糧
不足の現在の
日本では、土木
事業というような重
勞働に從事するところの
失業對策というものは、根本から間違
つていると思います。御承知のごとく土木
事業に從事する
勞働者、すなわちこの仕事は重
勞働でありまして、一日に六合ないし八合の主食をいただかなければ從事できないのであります。こういうことは明らかである。食糧事情の點からみましても、そうした方面に
失業者を振り向かすということが困難であることは明らかでありまして、そういう重
勞働、すなわち一日に主食の六合も八合も食べなければ働くことのできないような
勞働よりも、もつと輕
勞働ということを考えなければならぬ。輕
勞働を振興さすには、すなわち
産業を振興さすことであります。ところが現在のわが國では銀行の貸出金が制限されております。
産業資金融資規則というのですか、こういうものがありまして、
産業を助長しようと思いましても、
資金の
關係で止められております。ただいま大臣は非常に
資金の
關係がむずかしいとおつしやいましたが、この點私も同感であります。しかし
政府の
對策によ
つて、この
資金の融通をもつと緩和して、
産業を助長さすことによ
つて、この方面の
失業者を吸收することができると私は考えます。
失業保險は
保險詐欺または濫給が非常に多いのでありまして、
失業保險は他の
社會保險に比較いたしまして、
保險事故の證明方法が非常に困難であるのであります。
病氣には詐病ありといいますが、原則として、科學的客觀的に診察できるのでありますが、
失業給付の要件たる
勞働能力及び
勞働意思の存すること、竝びに
勞働の
機會なきことは、これを證明する方法は、結局
職業安定所あるにすぎないのであります。その
職業安定所にしましても、
失業者に
勞働意思の存するや否やの判定が、非常につきがたいのであります。私は
失業者とは、
勞働意思を有するも
適當な職務なき者を言うという見解をも
つているのでありますが、すなわち
勞働忌避者もしくは意思的に
勞働を欲せざる者、これは
失業者とみなすことができないのであります。また金持で
生活が困らぬが
ために
勞働に從事しない者も
失業者でないのでありまして、なお病人や老人、幼児、その他心身の缺陥があ
つて勞働に服したい者も
失業者でないことはもちろんであります。それでは
勞働能力者とはどの
程度のものをいうのか、ドイツ
失業保險法の八十八條は、普通の
勞働能力の三分の一以上の
勞働能力を有している者を
勞働能力ありとして、それが
職業がなければ
失業として取扱
つているのであります。しかしながら
勞働意思が十分にあ
つても、
勞働の
機會を得ない場合があるのであります。すなわち
適當な
職業を得ないことであります。本
法案第三條がそれでありまして、たとえば、ある熟練の熔接工が
職業安定所に毎日出頭しても、本人に適する熔接の職場がない。一方旋盤の仕事では人を求めている。この場合旋盤の仕事は、その熔接の熟練工に
當然適しない
勞働であることは明かでありますが、
職業安定所は、かかる場合
就職を強いるものであるとか、あるいはその熔接工は拒否できることは
當然でありますが、その
職業の限界點を明かにして、職場の限界點を明かにしておかなければならぬと思うのであります。わが國一部學者の中では
適當な職のないものを
失業者と解釋しているものもありますが、これは
絶對的
失業者を
意味するものではなく、相對的
失業と解釋すべきであると思うのであります。
適當の解釋や判斷がはなはだむずかしいのでありまして、
適當というのは本人の經歴、就業能力に對して
適當である。もしそれを
絶對的のものとして取扱えば、
失業數はますます
増加すると思うのであります。いかに手厚き
失業保險法の存する國といえども、
失業者はある
程度まで
條件を落して就業するのを常としております。またいかに
失業保險のない國といえども、各人の
職業にはおのずから
條件があ
つて、人はある
程度以上に身を落せるものではないのであります。この點、すなわち制限を寛大にすれば
失業者は簇出して、
財政上の負擔がはかりしれないのであります。さりとて
財政上の均衡を保つことに專念して制限を
嚴重にすれば、本
法律の
趣旨に副わない結果となる傾向があると思うのであります。
そこで私は、本
法案第二十一條に關連するのでありますが、
給付期間が百八十日とすれば、これを三段階にわけけて、
失業六十日を經過した場合
職業安定所の認定する
——この場合別にわくを設けるわけでありますが、認定する
職業に、さらに百二十日を經過した場合には
職業安定所の命ずる職につかなければならないこととし、もしこれを拒んだ場合は、一月とかあるいは二月
——この場合も後ほどきめることにいたしますが、
失業給付を受けられないこととすることが、
國家的見地から見ましても最も妥當な方法ではないかと思うのであります。もちろん
職業安定所の命ずる
職業と申したところで、限度のあることは
當然であ
つて、大學を出て事務のみをや
つていた者に旋盤工や金属工になれということは常識上あり得ないことでありますが、要するに三段階のわくを設ける必要があると思うのでありますが、この點についての
政府の
立場を明らかにしていただきたいと思います。