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荒畑委員 せんだつてここで、たしか辻井君の
質問に對する
勞働大臣の御
答辯の中に、
勞働者はこの際空腹に耐えてでも
生産闘爭に努力してもらいたい、こういうお
言葉がありました。その點も私は非常に同感であります。いわゆる
耐乏生活というもので、むしろ今日のような
状態のもとにおきましては、
勞働者階級が率先して、自
發的に、積極的に、そういう
意圖を振い起して
増産に當るのでなければ、この
インフレの悪
盾環を斷ち切ることができないと私も思
つております。しかしそれにはやはり一定の
條件があるのでありまして、
流通秩序の
確立とか、
やみの
撲滅とか、そういう方策によ
つて勞働者の
實質賃金を確保するということができなければ、それは單なるお説教に終
つてしまう。それではどんなに
耐乏生活を忍んで
増産に努めよう、また
政府の
方針に協力しようと思いましても、なかなかこれは生身の凡人でありますから、できることではないと思います。
私の望みたいことは
大口の
やみ屋というような者に對して、徹底的にこれをしぼりあげるような
政策がとられて、
勞働者が、なるほど
自分たちも苦しい
耐乏の
生活を忍ばなければならないが、しかし一方で
政府が、
萬人を苦しめておる
インフレに乘じて、
やみによ
つてかえ
つて反對に
利益を得ておる少數の
人間に對しては、こういうような手を打
つておるのだということを現實に見なければ、私はなかなかそういう
氣持は起らぬと思うのです。
ただ
自分だけが
耐乏生活を強いられておるのでは、
政府の
意圖がどうであろうとも、結果においては
勞働者の犧牲において
政府が手をつけない、
やみ屋の
利益をはかるというような
氣持を起させるとしても、私はそれは無理ないことではないかと思うのです。大きな
やみ屋、
やみ利得者に對して高額の税を取立てろというような要求に對しましても、
政府はいつも捕捉することができないというような、のらりくらりとした
答辯でお茶を濁しておるのでは、私はこれはどうも
勞働者に
耐乏生活をしてもらいたい
といつても、なかなか
實際の效力はなかろうと思う。大きなところはもちろんでありますが、
勞働大臣も
勞働組合に向
つて、
やみの
撲滅に對して協力をしてもらいたいという要請をしばしばなされておられますが、こういう
やみ屋の
撲滅なんということに對する、大は
政府から小は
警察の
當局に至るまで
三日坊主であります。
ちよつと一時はやりますが、それがすぎるともう勝手に、禁止されておる
主食物が公然と路傍で賣り擴められておる。白い
コツペが公然と賣られております。
眞白なうどんが公然と賣られておる。
砂糖は私
ども何年にも口に入れたことはありませんが、阿佐ケ谷の譯に
行つてごらんなさい、百匁三百八十圓で公然と賣
つておる。特に第三
國人、あるいは第三
國人に名を借りた
主食物の
販賣は公然であります。
淺草あたりに行けば公然と賣
つておる。一
體第三國人であろうが、もうすでにそういう主食品の
販賣は、してはならぬことにな
つておるのだと私は考えておるのでありますが、
言つた當座はや
つたでありましよう。しかし
三日坊主で、もう今日では公然とや
つておる。高級の
料理店は禁止されておるのでありますが、しかしいろいろな
方法で
法律の裏を
濳つて、
高級料理店が營業をしておるのであります。現に私はそういうところに人に引張られて行
つたことがある。仕出しであるとか何とかいう逃道をつく
つてや
つております。そういうことを徹底的に一方でやるのでなければ、私はいわゆる
流通秩序の
確立ということはできないと思う。そういうことを一方でや
つてお
つて、百匁三百八十圓も出せば
砂糖も十分に手にはいる。何でも金さえ出せば、
高級料理店にでもどこにでも行けるというのでは、
勞働者に
耐乏生活は御免こうむると言わざる得まいと思う。
私は先月の末
新潟縣に參りましたが、朝九時に
長岡發上野行の
列車に乘りますと、ほとんど
やみ列車であります。皆大きな米の袋を抱え込んでおる。その中に
乘つてお
つた一人の
朝鮮人のごときは、公然と俺は一斗も
つておると言うのです。こういうことも、ときどきはなるほど
警察が驛頭でそういうのを引上げますが、しかしすぐまた忘れてしま
つたようにやられておる。なかなかそういう
列車々々を、一人檢査するというようなこともむずかしいかもしれません。
人數も足りないでしようし、むずかしいことかもしれませんが、一體に
取締というものはむしろ
三日坊主であります。そういう點を嚴重に
行つて、そういうちつぽけな
やみ屋ばかりではない、一斗くらいを背負
つてくる
やみ屋ばかりではない、
インフレの原動力となるような
大口の
やみ屋に對して、徹底的な
取締を
政府はやる意思があるのか、ないのか。そうしてそれによ
つて、そういう
實績、
實状を見せて、こういうふうにや
つておるから、
勞働者諸君も
耐乏生活をや
つてもらいたい、こういうのでなければ、私は
實效はないと思うのでありますが、その
點米窪勞働大臣の御
覺悟のほどを私は伺いたいと思います。