○
川島委員 最後に
ちよつと
大臣にお願いを申し上げておきたいのであります。
先ほど私が
ちよつと
質問に觸れまして御
質問申し上げた
經濟安定本部におけるところの計數に基いての
計算によれば、十一月になれば
日本國内の勞働者の生計は四百圓餘の黒字になるということを、
言葉の上にも發表せられ、また
數字などを竝べまして昨日などは正式にこれを發表いたしておるのでありますが、これを受取りました國内の勞働階級の心理というものは、およそ逆效果であつたと私は思うのであります。なぜならば今日の勞働大衆の生活というものは、今度の新物價體系竝びに賃金ベースのはなはだしいギヤツプはもちろんでありますが、日々の身をも
つて體驗いたしておりまするところの生活の實態というものに觸れて、非常な窮境に窮境を續けておることは
大臣もお認めのことと思うのであります。しかしてその生活を續けるため、また再生産への勞働の參加のために、あらゆる方法を講じて、たとえばある家財を質入れし、あるいはそれを賣却し、あるいは他人から融通を受けてその赤字生活を依然として、もうすでに長い間續けておるのであります。そのさ中にありましての新物價體系の突然の發表であり、一方においてはそれをくぎづけにするのではないかという前提はありまするけれども、大體千八百圓のベースにおいてこれを安定せしめたい、このねらいは私は惡いとは
考えないのでありますが、あのような計數をも
つて、かりそめにも
國務大臣たるものが、十一月になれば勞働大衆は四百圓余の黒字になるだろうなどという、机上計畫に基いた聲明もしくは發表などということに對しましては、
相當私は愼重なる態度であるべき筋合のものであろうと思うのであります。もしああいうことを責任ある
政府において發表した以上は、その責任において實質賃金の徹底的な
充實をはからなければならないということは、當然に言えるのでありまするけれども、今日の
經濟の實相、
日本の産業の現段階から申しましても、そう
簡單にこの危機が乘り切れて、ほんとうに勞働大衆の生活を根柢から保障のできる價格、その上にさらに黒字が生ずるなどということは、私はむしろ極言でありましようけれども、痴人の夢にひとしい問題でないかとさえ
考えられるのであります。私のこの
考え方はあるいは獨斷と言われるかもしれませんが、私の經驗、自分たちの同志の人たちのいろいろ生活の實體に徴しますれば、そういうことがむしろ言われるのでありまして、あの發表を受取りました勞働者大衆の受取つた
感じというものは、むしろ唖然たるありさまではなかつたかと私は想像をいたしておるのであります。もし責任ある
政府があのような發表をいたしまして、なおかつ十一月に
なつて勞働者大衆の生活が、もし一時逆の結果に
なつたといたしますならば、それでなくてさえも、先月あたりから今月にかけて各種大きな勞働組合が、二千數百圓の賃金でなければわれわれの最低生活はできない、こういう觀點に立ちまして、いわゆる勞働攻勢の兆しが、きわめて顯著な
事實に
なつて現われておる樣子であるのであります。從
つて私はそういうことができ得れば望外の幸でありまするが、今日の現状、
日本の産業
經濟の現状から申し上げましても、
政府が先日發表されましたようなことは、輕々に私は言わるべき筋合のものでないと思うのであります。かりに實質賃金の
充實と言い、
流通秩序の確立と言い、あるいはやみの撲滅と言い、そういうようなことは、やはり國民全體の協力にまたなければ、その實現はとうてい不可能であるということも、言うまでもない事柄であるのであります。そういうときにあたりまして、ああいうことを輕々に發表せられることは、むしろ逆効果こそ生ずれ、おそらくその効果はむしろないことになるのではないかと私は心配をいたしております一人であります。どうぞ
大臣におかれましても閣議等に列席の際に、ああいう問題が今後ともいろいろの面において取上げられてくるのではないかと思うのでありますが、そういう問題に直面されましたときは、一切の内外の
實情というものにも斟酌をせられまして、
政府の方針あるいは
政府の
考え方などを發表するにあたりまして、
もつと私は愼重を期してほしいと
考えますので、最後に
大臣に御
希望を申し上げまして、私の
質問を終る次第であります。