○中村俊夫君 ただいま
議題と相なりました
最高法務廳設置法案について、
司法委員会における
審議の
経過並びに結果の概要を御
報告申し上げます。
まず、
政府原案の概要を御紹介申し上げます。新憲法の
施行に伴い、司法省の任務、あり方がいかにあるべきかについて根本的に再
檢討されねばならぬ時期となり、これがため
政府においては、
警察制度とともに、司法省の改廃問題につき
委員会を設けて愼重に
審議せられたのであります。この
審議において問題と
なつた考え方は、三権分立の原則が徹底し、司法権が完全に裁判所において行使された後は、司法省は解体してもよいのではないかという考えが一つ。次に、裁判所に移つた
事務の残りをも
つて、小さく司法行政
官廳を残置する方がよいのではないかとの考えが一つ。さらに、檢察廳、民事局、行刑局、矯正局等のごとく、それぞれ司法行政
官廳を
独立させてその連繋をはかるのがよいではないかとの考えなどがあつたのであります。しかし、かかる消極的な考え方によ
つて司法省の改廃問題を解決することは、國家行政
機構の上に大きな欠陷を起させるということがわかりましたので、どうしても民主主義國家行政
機構としては、國民のために行政部全体における
法律事務を総合的に指揮監督していくのが合理的であり、かつまた行政経済の原則にも合致すると考えられるに至つたのであります。この考えが、
最高法務廳設置法案立案の基礎とな
つておるのであります。このように、法務廳は行政部全体に跨がる任務をも
つているから、これを省とせず、廳としておるのであります。以上が、
最高法務廳設置の根本
趣旨でございます。
このような
趣旨で設けられる
最高法務廳の組織は、すなわち一人の総裁と五人の長官と十六人の局長とで組織されております。すなわち
最高法務総裁は、
法律問題について
政府の
最高顧問として
内閣並びに
内閣総理大臣や各省大臣に
意見を述べ、または勧告するのであります。この総裁の補助として、檢察長官、法制長官、法務調査
意見長官、訟務長官及び法務行政長官の五長官があり、この長官の下に十六の局が所属されておるのであります。以上が、
政府原案の概要でございます。
委員会は、十一月二十三日
政府の説明を聽き、二十四日から
質疑應答に入りましたが、この間
委員は、この
法案が
從來の
内閣の各省設置
法案と異つた新しい
官廳組織
法案であることに鑑みまして、外國の先例を調査し、また既設
官廳との所管
事務の調査にも苦心し、愼重
審議を続けてまいりました。今ここに
委員会における
質疑應答のおもなるものを申し上げます。
第一に、わが國の
内閣は、各省のほかにすでに経済安定本部総裁があるのに、新たに
最高法務総裁が設けられることになると、憲法上の
内閣制度に屋上屋を架するというような結果とならぬかという
質疑がありました。これに対して
政府から、
最高法務総裁は総理大臣と各省大臣との中間にあるわけでなく、又日本國憲法の予想しない官職でもない、憲法の認める一つの國務大臣にすぎないのであ
つて、異なるところは、行政部における
法律問題について、これを指導統一する役目をもつだけであるとの
答弁がありました。
第二に、
最高法務総裁は、その地位に最もふさわしい者の中から任命することにな
つているが、ふさわしい人物の資格はどんな
條件であるか、またなぜ國務大臣でなければならぬかという
質疑がありました。これに対して
政府から、
法律に熟達し、しかも不偏不党、嚴正公平の人物の中から総裁を任命するという
内閣総理大臣の心の
準備を定めたものである、但し、
政党離脱とか一定の学識経驗者とかを要求しているわけではない、なお、國務大臣でなければならぬ理由としては、総裁が單に
法律顧問ならば、
法律の熟達者で公平なる人物で足りるが、総裁は國民に対して、その職務上の責任を負わねばならぬ、これがためには、
國会において責任を明らかにするため、國務大臣でなければならない、從
つて総裁は、対内的には閣議において法務総裁として責任を負うが、対外的には
内閣の一員として、各國務大臣とともに連帶して責任を負うべきものであるとの
答弁がありました。
第三に、総裁は執行
機関なりや諮問
機関なりや、またその担当する
法律問題の意義はどうかという
質疑がありました。これに対し
政府より、総裁は執行
機関と諮問
機関とを兼ねており、この点、
從來の官職にその例を見ない、また
法律問題とは、主として
法律の技術的、
事務的方面を指すので、
内閣の政治経済の政策そのものを決定することに参加しないという
答弁がありました。
第四に法務廳内の各局についての
質疑應答は次の
通りであります。まず檢察局については、なぜ司法
警察官の教育訓練に止め、人事任免権の掌握に及ばないのかとの
質問に対し、
警察力の集中排除のために、それまでには及ばなかつたとの應答がありました。次に人権擁護局については、擁護の対象は國民の身体のみであるか、あるいは精神的恐怖をも含むかとの
質疑に対し、身体の自由のみならず進んで名誉、信仰等にも及ぶものであるとの
答弁がありました。次に矯正総務局については、最近刑務所の不祥事件が絶えない、その理由の一半は、過剰拘禁のためである、行刑の確固たる方針と
予算の
独立をはかるためには、行刑局を法務廳の外局として
独立させる方が適当ではないかとの
質疑がありました。これに対して、現在の状態で、そのまま外局となることは、かえ
つて不完全な外局として出発することになるから、しばらく時期を待つ方がよいという
答弁がありました。次に少年矯正局と附則については、罪を犯すのおそれある少年に関する
事務の所管が必ずしも明確でないとの
質疑に対し、
政府より、罪を犯した少年の所管は法務廳に属する虞犯少年に関する事項は、明年四月より厚生省に移管される、但し、少年裁判所において保護処分を受けた少年を除くという
答弁がありました。
以上が、
委員会における
質疑應答の概略の
経過であります。
かく審議を進めてまいりましたところ、二十八日、二十九日の両日に、二つの
修正案が
提出せられました。
修正案の第一は、鍛冶良作
委員提出のもので、その
内容は、
最高法務廳の「
最高」の文字を削る、「法務調査
意見」とあるのを「法務調査」と改める、総裁は
意見を述べ、且つ諮問に答えると
規定して、執行
機関にして、かつ諮問
機関たることを明瞭にする、最後に、檢察局の活動を促す権能を人権擁護局にもたせるというのであります。
修正案の第二は、各派共同提案になるものでございまして、その
内容は、総裁の権限中に、内外法制の調査のみでなく、國際法制をも調査せしめんとするものであります。その理由は、國内及び外國の法制のほかに、國際連合のごとき國際
関係の法制の調査も必要であるというにあるのであります。
両
修正案に対しては、各党
委員より、それぞれ党を代表して賛否の
意見が開陳せられ、採決の結果、鍛冶
委員提出の
修正案は少数をも
つて否決せられ、各派共同提案になる
修正案は、全会一致をも
つて提案のごとく決し、結局
本案は
修正議決せられた次第でございます。
以上、御
報告申し上げます。(
拍手)