○池谷信一君 ただいま議題と相なりました民法の
改正に伴う
関係法律の整理に関する
法律案について、司法
委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
まず、
政府原案の要旨について御説明いたします。御
承知の
通り民法において、戸主、家族その他家に関する規定及び家督相続に関する規定の削除、両性の本質的平等に反する規定の
改正、親族会の廃止、口語化書きおろしのための多くの整備等が行われたので、他の法律中從前の民法の規定を前提としている
幾多の規定をこれに適合するように整理する必要があり、さらに民法
改正と並行して、他の法律中の家族
制度に関する規定もまたこれを
憲法の基本原則に適合するように整理する必要があり、しかも、これらの法律の数は、すでに他の法律の
改正等に関連して整理したものを除いても、なお実に六十七の多きに上る状態であ
つて、これをそれぞれの法律で
改正することは非常に煩雜なので、一括整理することとなり、本案が
提出せられたものであります。本案の内容を簡單に御説明いたします。
第一に、たとえば銃砲火藥類取締法第二十一條の営業主に対する罰則においては、営業者の戸主、家族が同法に違反したときには、
自己の指揮に出でないという
理由で処罰を免れることができないことにな
つているのであるますが、民法から戸主、家族の規定を削除した結果、右の規定からも戸主、家族を削り、事実上同居している親族に犯則行爲があ
つたときは、同條中の同居者に包含されるものとして扱うこととなり、同樣に他の法律についても、戸主、家族その他家または家督相続の存在を前提とする規定に、それぞれの法律の内容に照らし、所要の
改正が加えられております。
第二に、たとえば信託法第五條第二項の、妻が信託の引受をするには夫の許可を受ける必要があるという規定のように、妻の能力を制限する規定、その他両性の本質的平等に反する規定は、それぞれの法律の内容に即應して所要の
改正を行い、両性の本質的平等に徹底するための措置が講ぜられております。
第三に、たとえば精神病者監護法第一條第二項においては、精神病者に対する最終順位の監護義務者は四親等内の親族の中から親族会が選任することにな
つておりますが、親族会廃止の結果、これを家事審判所が選任することに改めております。同樣に、從來親族会の決議または裁判所の裁判で扱
つていたもので、
改正民法の精神に照らし、家事審判所で扱うのが適当と思われるものを、家事審判所の審判事項としております。
第四に、
國民優生法第四條においては、父母等の同意を要しないで優生手術を受けることのできる年齢は三十歳とな
つておりましたが、これを原則として二十歳まで引下げております。これは單なる整理でなく、実質的な
改正を含んでいるのであります。從來民法においては、男が父母等の同意なくして婚姻のできる年齢が三十歳であ
つたため、單独で優生手術を受けることのできる年齢も三十歳であ
つたのでありますが、民法
改正により、同意なくして婚姻のできる年齢が原則として二十歳に引下げられたので、これと歩調を合わせるのが適当であるとの
理由から、單独で優生手術を受けることのできる年齢を、原則として二十歳に改めておるのであります。
第五に、
改正民法の條文の整理に伴い、他の法律で引用した民法の條文を整理し、その他所要の整理
改正を加えております。
最後に、信託法外二法律については、その法律の
改正に伴い、それぞれ所要の経過規定を設けております。以上が、
政府原案の要旨でございます。
本案については、
委員会は本月二十三日
政府の説明を聽き、次いで二十五日審査を進めたのでありますが、本案の内容は、新
憲法並びに
改正民法の施行に伴う当然の
改正、整理であ
つて、別に問題となる点もなく、從
つて質疑を省略し、直ちに討論に移り、各党
委員より、それぞれ党を代表して原案
賛成の
意見が述べられた後、
採決の結果、本案は全会一致をも
つて原案のとおり可決いたしました次第でございます。右、御報告いたします。
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