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北村徳太郎君 ただいま
議題となりました所得税法の一部を
改正する等の
法律案、非戰災者特別税
法案について、
委員会における
審議の
経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、所得税法の一部を
改正する等の
法律案についてでありますが、
政府は、最近における
財政需要の増大に対應し、收益の均衡をはかり、
財政の強化に資するとともに、また一面経済諸情勢等の推移に應じ、國民租税
負担の公正を期する等のため、所得税法等の一部を
改正することといたしたのであります。いわゆるインフレ利得
者等の重課の問題等をも考慮し、課税所得金額が七万円を超える所得者については、
現行の税率百分の五十五を百分の五十七に引上げ、順次税率の引上げを行い、百万円を超える所得については、
現行の税率百分の七十五を百分の八十五といたしたのであります。但し所得金額は、これを課税所得金題の百分の八十に止めることといたしてあるのであります。
次に、勤労所得者及び扶養
親族を有する者の
負担の軽減をはかるための措置としては、第一に、給與所得の計算については、その收入金額から控除する金額の割合を、
現行の十分の二から十分の二・五に引上げるとともに、控除額最高六千円を一万二千五百円に引上げたのであります。第二に、扶養
親族の控除額を、
現行扶養
親族一人につき年二百四十円すなわち月二十円から、年四百八十円すなわち月四十円に引上げたのであります。しこうして、給與所得に対する源泉徴收につきましては、七月分の給與から遡
つて十分の二・五の勤労控除及び月四十円の扶養控除を行うことといたしております。これに対應して、
昭和二十二年分の課税にあたりましては、前に述べました給與所得の控除割合は十分の二・二五、その最高額は一万千二百五十円、扶養
親族控除額は年三百六十円といたしておるのであります。今回の
改正により、
昭和二十二年分の課税について申しますと、扶養
親族三人の場合においては、勤労所得者については給與年額十六万四千円程度以下の者、また
事業所得者については所得年額九万二千円程度以下の者の
負担は、すべて相当程度軽減されることとなるのであります。
その他、所得税につきましては、今回課税所得の範囲を拡張して、一時所得といえども原則として課税することといたしましたほか、簡易税額表の適用を受ける者の範囲を、所得金額五万円以下の者から八万円以下の者に拡張し、大多数の所得者の税額計算の便宜をはかるとともに、予定申告書及び確定申告書の
提出を要しない者の範囲を若干拡張する等の
改正を行つたのであります。
次に法人税につきましては、所得税の税率の引上げに対應せしめるため、同族会社の加算税の税率のうち十万円を超える金額に対する税率を、それぞれ百分の五程度引上げることといたしたのであります。
次に酒税でありますが、清酒については、一升壜詰の小賣價格一級酒現在百三十二円を二百五十円程度に、二級酒現在百二円を二百円程度に、またビールについては、壜詰一本の小賣價格現在二十三円を四十円程度にそれぞれ引上げる程度の増徴を行うとともに、その他の酒類についても、品質に應じ税
負担に差等を設けて、これに準ずる増徴を行うこととし、これにより税額において十三割程度の増收をはかることといたしたのであります。また特定の酒類につき加算税を徴收し、清酒第一級酒の一升瓶詰一本当り五百五十円程度、ビール瓶詰一本当り百円程度の特別價格で販賣せしめることといたしました。清涼飲料税につきましては、第二種サイダーの税率を、一石について
現行二千三百円を六千九百円に引上げ、その他の清涼飲料についても同程度の税率の引上げを行うことといたしました。
次に物品税につきましては、最近における
物價の状況等に即應して、從量課税の税率を引上げることとし、マツチについては十割程度、あめ類及び蜂蜜については二十割程度、サツカリン及びズルチンについては四十割程度の税率の引上げを行うことといたしました。
次に入場税につきましては、現在におけるこの種消費の性質に鑑み、
現行税率百分の百を百分の五十に、また特別入場税についても、
現行税率百分の四十を百分の六十にそれぞれ税率を五割程度引上げることとし、これに伴い、課税最低限
現行一円を三円程度に引上げることといたしたのであります。
以上のほか、登録税のうち定額税のもの、印紙税、骨牌税及び狩猟免許税についても、それぞれ相当の税率の引上げを行うことといたしたのであります。
以上のほか、所得税、法人税、酒税等各税にわたり、それぞれ罰則の強化を行い、特に所得税、通行税等の源泉徴收
義務者が徴收すべき税金を徴收しなかつた場合または徴收した税金を納付しなかつた場合における罰則を新たに設けたのであります。
その他、租税の賦課徴收につき適正な運営をはかるため、所得税法の團体諮問に関する
規定及び物品税法等の徴收補助團体に関する
規定につき
所要の
改正を加えるとともに、この際納税施設法を
廃止することといたしたのであります。
次に非戰災者特別税について、その大要を申し上げます。戰災者と非戰災者との間の経済的な懸隔は、最近における経済事情によりますます助長されている実情でありまして、これが犠牲の均衡化をはかるべしという論議も相当強く、臨時緊急な
財政需要が著しく増大しつつある現状に顧み、この際戰災を免れた者に対し、一回限りの特別課税を行わんとするものであります。本税は、非戰災家屋税と非戰災者税の二本建にな
つております。まず非戰災家屋税でありますが、その納税
義務者は、
昭和二十年八月十六日現在において、いわゆる非戰災家屋を所有していた個人及び法人であります。家屋には、住家、店舗、工場、倉庫等すべての家屋が含まれるのでありますが、國、都道府縣、市町村等が所有していた家屋、公用または公共の用に供していた家屋、國宝または史跡名勝として指定されていた家屋、私立の幼稚園、中等学校、大学等において直接に教育の用に供していた家屋、賃貸價格が三十円未満の家屋等には課税しないことといたしております。非戰災者家屋税の課税標準は、家屋の賃貸價格でありまして、百分の三百の税率で課税することにいたしてあるのであります。
次に非戰災者税でありますが、その納税
義務者は、
昭和二十二年七月一日、すなわち課税時期に法
施行地で家屋を使用していた非戰災者たる世帶主及び非戰災者たる法人であります。ここで非戰災者とは、戰時災害により家屋または動産につき受けた損害額が三割程度を超えない世帶の世帶主または法人といたすことにな
つております。しかして、非戰災であるかどうかは、個人については世帶ごとに、法人については本支店、工場等を通じて、これを制定することといたしております。非戰災者税につきましても、國、都道府縣、市町村等の公共團体、海外からの引揚者が世帶の生計を主として維持している場合における当該世帶の世帶主、賃貸價格が三十円未満の家屋を使用していた世帶主等には課税しないこととしたほか、國宝または史跡名勝として指定された家屋、私立の幼稚園、中学校、大学等において直接に教育の用に供していた家屋等の賃貸價格は、本税の課税標準に算入しないことにな
つております。非戰災者税の課税標準は、課税技術を考慮いたしまして、課税時期における家屋の賃貸價格といたしております。しかして税率は、非戰災家屋税と同樣百分の三百とな
つております。
非戰災家屋税及び非戰災者税は、いずれも申告納税で、期限は來年一月三十一日であります。但し、一時に納付することが困難な場合には、六箇月以内を限り延納を認めることといたしました。なお、調査時期後、災害により家屋が滅失または損壞した場合等には、非戰災家屋税を軽減または免除し、また調査時期以後、災害により家屋または動産が滅失または損壞した場合等には非戰災者税を軽減または免除することといたしておるのであります。
以上二案は、去る十一月十四
日本委員会に
付託されましたが、各界に及ぼす影響も大きいので、公聽会を開くこととし、十九、二十日の両日にわたり、学識
経驗者並びに一般公述人より忌憚なき
意見を聽取いたし、二十一日より四回にわたり、
政府委員に対し
質疑を行いました。詳しくは会議録に讓ることといたしまして、そのおもなるものについて二、三御紹介申し上げます。
まず委員より、課税は直接税中心であるべきだが、間接税中心にな
つているのはよくないではないか、また單なる税率引上げよりも、完全なる納税をめざすべきではないか、さらにそれには最低生活費を必要経費として控除する
考えはないか等の諸点について
質疑を行いましたが、
政府よりは、國民所得に対する税額は、わが國では二割、米國では三割、英國では四割にな
つており、直接税と間接税の比重は、わが國では現在半々であるから、
本案の税率引上げで完納が必ずしも不可能とは
考えられない、なお現下の労働情勢等を
考え、また一般納税思想の低下等もあり、直接税に重点をおきかねる点があるので、その点から間接税を勘案したのであり、また基礎控除は必ずしも最低生活費を対象とすべきものではないと
考え、その金額は問題となるが、諸般の事情から見て本法のごとくにしたとの
答弁がありました。
また物品税については、從價課税をやめて從量課税とすべきではないかとの
質疑があり、これに対しては、從價課税にしたのは今日のやむを得ない事情による旨の
答弁がありました。
次に非戰災者特別税に関しては、一概に戰災地とい
つても、地域によ
つてはその破壞程度が惨事を極めており、残つた家屋といえども、ほとんど使用に耐えない状態である、そうした所においても、形だけ残つたとい
うために非戰災者税を課せられるということは、少しくうなずけないところがあるように思うが、対策はないかとの
質疑がありました。これに対して
政府は、それらに関する特別な措置は本
法案の第
八條第二項及び第十
一條の第二項にそれぞれ
規定してあり、また実際の運用にあ
つては、十分善処したいとの
答弁がありました。
かくて、本二十七日
討論に入り、社会党を代表して
中崎委員、民主党を代表して大上委員、自由党を代表して塚田委員、國民協同党を代表して井出委員より、それぞれ
賛成の
意見並びに希望の
意見を述べられ、
採決の結果、
全会一致をも
つて可決いたしました。以上、御
報告を申し上げます。