○國務大臣(三木武夫君) ただいまの赤松君の御
質問に対しまして、この
機会に
逓信從業員の今日までの集團欠勤に関する
経過並びに現在の状態を御
報告申上げたいと思います。
全逓本部は、松江市における臨時全國大会の決議をもちまして、七月十六日に、次に申し上げるような
要求書を逓信大臣に
提出いたしてまいりました。
一、二千四百カロリーを基礎とする配給と地域的な最低
賃金を確保せよ。
一、電気通信事業を民主的に一元化せよ。
一、全從業員に住宅を與えよ。
一、全從業員に制服を支給せよ。
一、結婚資金を全從業員平均
月收六箇月分支給せよ。
一、大蔵省預金部中逓信省
関係資金運用権を逓信省に移管せよ。
一、特定局制度撤廃を促進せよ。
この
要求に加えて、一月より六月に至る
赤字補給のため、
生活補給金として本人二千円、家族千円を支給せよ。それに八月における長野縣諏訪市の中央
委員会の決議をも
つて、通勤費を全額支給せよ。この問題を中心として、全逓本部と逓信当局との間に折衝を続けておつたのでありますが、逓信省の回答を不満なりとして、九月二十六日に中央労働
委員会に提訴いたしたわけであります。これが現在
逓信從業員の基本的な問題について、この提訴に基いて調停の
手続中にあるわけであります。
ところが、一方諏訪市における中央
委員会の決議に基いて地域闘爭を展開するというその線に沿うて、各地方別に大体この線に沿うた
要求を出してまいりまして、その
要求を貫徹するために、ただいま提訴をいたしておる地方の支部が相当に上
つております。たとえば大阪地協、東京中央地協、兵庫地協、京都地協、神奈川地協、靜岡郵便局支部、こういう地方の支部は、おのおの大同小異の
要求を掲げて提訴いたしておるわけであります。
その中において、今回問題にな
つておりまする東京中央地協は、東京の丸の内と
日本橋と京橋、この地域を含んでおる郵便
関係の組合でありまして、組合員も一万一千を擁しております。ただこの地域は、地域は小範囲ではありますけれ
ども、丸の内には中央郵便局あり、中央電信局あり、中央電話局あり、
日本の通信
機関の中枢的官署、この三つの大きな
機関がありまするがゆえに、
日本の通信機能の上においては最も重大なる影響をも
つておるわけであります。この東京中央地協がやはり
要求を
提出いたしまして、東京逓信局との間に折衝をいたしておりましたが、その回答を不満なりとして、東京都の都労委に対して提訴いたしてまいつたわけであります。大体全逓本部の
要求と同じような性質のものでありますが、ただ
生活補給金を、全逓の本部は本人二千円、家族千円と言
つておるのを、東京中央地協は二箇月分の俸給という形に出しておるのと、労務加配米の問題に触れておる点が多少違
つておりますが、大体同性質のものであります。この東京中央地協が都労委にかかる提訴をしても、都労委がこういう問題を地域的な問題として解決することができないわけでありますから、中労委に移されて、目下これも調停の
手続中にあるわけであります。
しかしながら、全逓よりもこれは早く提訴いたして、九月六日に提訴を受理されておりますから、すでに十月五日に爭議権を獲得いたしておるわけであります。そして、その間調停
委員は、なるべく平和的に解決しようと、ただいまも努力をされております。その調停の途中をおいて、十月十六日だつたと思いますが、調停
委員長の末弘氏ほか調停
委員の方々が、私を総理官邸にお訪ねにな
つて、この際名目はともかく、非常に困
つておることは事実であるから、千五百円の金を出すことはできないであろうかというお話があつたわけであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
これは
一つの勧告案とか、調停案とかいう形式でなくして、きわめて非公式な話として受け取つたわけでありますけれ
ども、非公式であれ、とにかく調停
委員がみえられての話でありますから、
愼重に考慮いたしました。またこれに対して私は、千五百円の金を今出すということはそれは困難であるが、しかし、ここに約千円近くの金がもうすぐ直前に出せるような手配にな
つておる。それは議会の御承認を得ました千八百円の差額が、近くもうこれは出せる寸前にあるから、
金額も多少は違うけれ
ども、とにかくこれは金であることには違いない、当然の権利であり、当然從業員がもらうべき金で、話が違うと言うかもしれないが、とにかく金であることには違いありませんので、これは当分の生計費になるから、この点ならば、極力一日も早く出すような努力をいたしましようということを申したのでありますが、よく考えてくれということで、その後二日をおきまして十八日に末弘会長に会いまして、どうも千五百円を東京中央地協だけに出すということは、東京地協だけに出して、そうしてほかの面に波及しないというわけにはいかないわけでありまして、
政府としてそういう金を出す場合には、全官公從業員全体として考えなければならない、さような金もございませんし、また一方においては全逓本部の基本的な問題が調停
委員会にかか
つておるのだから、こういう
部分的にものを解決するよりは、全体としてこの基本的な問題を解決したい、こういう希望を申し述べて、千五百円に対してお断りをしたわけであります。なお、十月二十日に中労委の調停
委員会に私は出席いたしまして、同樣な
趣旨を述べたわけであります。
ところがこれに対して、調停
委員が交渉された千五百円をけつたというようなふうに、從業員の
諸君はそのことを非常に不満にされまして、職場の離脱が行われてきたわけであります。その結果、二十一日における東京中央郵便局の出勤状態、私が中央労働
委員会に出た翌日の状態をここに申し述べますと、十月二十一日の夜勤、午後四時で調べました出勤率は、普通郵便課が三六・四%の出勤、小包課が一〇・九%、特殊課が七五・二%、電信課が五〇%、こういう大量な職場の離脱が行われたわけであります。現在は中央郵便局のみでありまして、中央電信局あるいは中央電話局の方は大体平常
通りにや
つておるわけで、問題が起りましたのは、この中で中央郵便局と
日本橋郵便局との二つであります。
現在どうな
つておるかという状態は、本日の模樣を述べますと、東京中央郵便局の本日午前十一時現在の出勤率は、これは相当詳しく申し述べたいと思いますが、貯金課が六八・三%、外國郵便課が七〇・六%、小包課が二一・八%、特殊課が三八・八%、行嚢課が九〇・五%、電信課が五七・四%、庶務課が八九・八%、厚生課が八六・五%、集配課が七九・一%、普通課が七二・六%—最初に申し上げました二十一日の状態よりは、よほど改善をいたしておりますが、こういう状態であります。
日本橋の今日の状態は、郵便においては五四%、電信においては二四%、貯金においては五三%、こういう状態であります。しかしながら、各職場において職場大会を開いて、大体職場に復帰する決議をただいまいたしておるようであります。
この二十日以來の大量職場離脱によ
つてこうむりました通信上の影響は、現在東京中央郵便局における郵便物の停滯状態は、普通郵便で一種、二種、三種入れまして約二百三十五万、それからほかに開いてない郵袋が七百三十一箇、それから小包が一万五千七十四箇、それから速達、書留等の特殊な郵便物で開いてない郵袋が七百四十八箇、それから赤行嚢が二十七箇、それから白行嚢が千百五十二箇、外國郵便に対しては異常がない次第であります。
これに対して
政府がとりました処置は、こういう処置をと
つてわけであります。本省といたしましては、十月の二十一日に電報をも
つて各逓信局に対し、東京中央郵便局宛及び中央郵便局を経由する小包郵便物の差立を、当分の間停止方を指示いたしました。十月の二十二日に各逓信局に対し、小包郵便物の迂回逓送方を指示いたしました。また
政府の
労働組合側に対する今回の爭議に対しての警告を、逓信局をして各組合に傳達をいたすような処置をとりました。また連合軍
関係郵便物の取扱いに関し、絶対に支障を來さないような通達をいたしました。また各駅に到着いたしまする郵袋等の滯留物の引受けについては、臨時の人夫を手配し、また普通の郵便の処理のためには、臨時の
事務員を採用いたしまして、でき得る限りこのたま
つておる郵便物を処理したいという方法をと
つております。また欠勤をしておる從業員に対しては、電報をも
つて出勤方を
命令をいたします等の
手段をと
つて、できる限りの処置をいたしておりますが、何分にも、このたま
つておる郵便物が多いわけでありますので、國民各位に対して非常な御迷惑をかけておることは、まことに申訳ないと思
つております。
この事態に対しまして、私といたしましては、全逓本部の執行部の者たちを呼びまして、組合が
一つの—全逓の本部が、根本的な問題を掲げて現在提訴しておるのだ、その
手続が進行中である、こういうときに、
部分的にこういう事態が発生することは非常に遺憾であるから、組合の統制ある
一つの活動をするようにという警告を、数回にわた
つて與えたのであります。しかしながら、この事態が改善をいたさなかつたがために、
政府といたしましては、御承知のごとく二十日に官公從業員に対しての警告書を発して、この警告書を各組合員にも傳達して、
政府の警告するゆえんのものは、これをも
つて從業員を威喝する目的でなくして、一日も早く職場に帰
つて規律のある行動をとるようにという
趣旨であることを傳えて、職場復帰を要望しておるわけであります。
從つて政府は、逓信省その他に起
つておりまするような集團的な職場離脱は、これは正当でない労働爭議であるという解釈を、二十日の警告書の中においても
政府は
政府の責任においてかように決定をいたしたわけであります。(
拍手)
それは
労働組合法あるいは労働
関係調整法等におきましても爭議権というものが認められてはおりまするけれ
ども、どういう形においても爭議というものを
保護してはいないのでありまして、あるいは
労働組合法の一條、労調法の四十條あるいは四十一條の中には、正当なる労働爭議ということで爭議権の作用というものを制限いたしておることは事実であります。
ところが、何が正当であるかということは、結局健全なそのときの社会通念によ
つてこれを解釈せなければならぬわけであります。
今日
労働組合運動が健全に將來発達いたしますためには、やはり規律のある統制と責任ある行動というものが絶対に必要なわけでありまして、今日のごとく、だれが責任者かわからない。組合は指令をしない。だれが責任者かわからない。自発的であるというようなことを言
つておりますが、かくのごとき集團的な大量欠勤が行われて、
日本の通信機能というものが麻痺状態になるということは、断じて看過することのできない事実であります。(
拍手)
殊に官紀の維持と公僕
精神の発揮とが、新しい時代における公務員に強く國民から期待されておりまする今日、今日のごとき大量の集團欠勤というものが、健全なる社会通念上正当なりとは
政府は考えない次第であります。(
拍手)かかる行動に対しましては、断固として今回の爭議というものが正当でないという見解のもとに、
政府といたしましては、これに対しての処分を、正当ならざる爭議という見解のもとに、
政府の警告が出て以來職場に復帰した者に対しては寛大な処置をとりますけれ
ども、
政府の意向を傳達して、職場に帰るようにという
政府の警告を知
つて、なおかつ職場離脱を行う者に対しては、断固処分をいたす決意をいたした次第であります。(
拍手)かくのごとき決意をいたさなければ、
日本の
労働組合の明日を健全に発達させることもできなければ、あるいはまた
日本の
労働組合運動の健全なる発達を通じて民主的な
日本を建設しようとする今日の
日本の理想にも合致いたしませんがために、こういう処置をとつた次第であります。
しかしながら……
〔発言するものあり〕