○川野芳滿君 私は、本論に入るに先立ちまして、現在の
中小商工業者が
戰時中いかなる
立場におかれておつた方方であるかということを、簡單に申し述べてみたいと思います。
戰時中には、あらゆる惡政が行われましたが、私をして言わしむるならば、
企業整備をも
つてその惡政の優たるものであると存じます。いかんとならば、政治というものは、これを行えば、
國民の大多数が喜ぶか、あるいはまた一
部分の方々が喜ぶか、必ず喜ぶ人がいるわけであります。しかるに、この
企業整備に至
つては、やめた人も、また残つた人も、ともに
政府を恨んだというのが、すなわち
戰時中に行われたところの
企業整備であ
つたのであります。(
拍手)
いかんとならば、すなわち
政府が
企業整備にあた
つては、指令というものを発しました。その
企業整備に対する指令というものの内容を檢討してみますると、やめる人には、残る人が三箇年以上十箇年以下の
利益金をやれという指令でございます。從いまして、残つた方々は無理算段いたしまして、ただいま申しました三年以上十箇年以下の
利益金を、やめた方々にやるわけであります。ところが、
資材その他の面がはいらぬがため、あるいは商賣がおもしろくいかなかつたために、残つた方々は
戰時中まことにお氣の毒な
立場にあつたわけであります。またやめた方々はどういう
立場におかれたか。
政府の命のままに地下数千尺の炭坑の中にはい
つて、石炭増産にいそしんだところの方々もあつた。あるいはまた
工場にはい
つて、ハンマーと取組み、あるいは機械と取組んで、
生産事業に從事した方々もあつたわけであります。
これらの方々は、戰爭が済んだならば、
もとの自分の職業に還れるということを樂しみにいたしておつたと私は存じます。ところが、
企業整備によ
つてもらつた金は、銀行に預けておつたわけでございまするが、戰爭が済みますると、封鎖の網にかか
つて、貰つた金は身動きならないところの金と
なつたわけであります。それで、やめた方も、あるいは残つた方も、ともに
政府を恨んだというのが、すなわち
戰時中における
企業整備の姿であつたわけであります。こういう苦難をなめて残つたところの方が現在の
中小商工業者であるということを、八千万の
國民は知らねばならないと考えます。(
拍手)
しかるがゆえに、終戰と同時に
中小商工業者の振興という声が
國民の間に澎湃として起
つてまいりました。すなわち
政府におきましても、
中小商工業振興対策要綱というものを発表いたしたのでございますが、施策が伴わなかつたために、これは作文として終つたわけであります。ゆえに私は、眞に
政府が
中小商工業者の振興ということを考えるならば、言行一致の政治を要望するものであります。すなわち、言うたことは必ず実行するというところの強い政治を行わなければ、現在の
中小商工業の振興は至難であると考えるものであります。
過ぐる九十議会でございました。
復興金融金庫
法案がこの議会に提案されたわけでございまするが、ときの
政府は、
復興金融金庫
法案が通りまして、
復興金融金庫ができるならば、この金庫を通じて
中小商工業者には優先的に融資するということを、繰返し繰返し述べたわけであります。しかるに、現在はこの次第であります。
昨年度の融資額を調べてみると、総額三十数億円のうち、
中小商工業に融通した額は、わずかに二億数千万円であります。残りの三十億万円余というものが大
企業に融資されたというのが、
昭和二十一年度の実情であ
つたのであります。しかるに、本年度はどうであります。本年度の二月から八月までの統計を調べてみると、融資いたしました総額は、二百四十一億六千万円でございまして、そのうち二百三十五億四千万円が大
企業に融資されまして、残るところの六億二千万円というわずかな金が
中小企業にまわされておるという実情にな
つておるのであります。
すなわち、わずか三%の金をも
つて、
中小商工業の振興ができるでありましようか。これはできないということはわかりき
つております。しかるに、かくのごとき三%になんなんとする金が融資されておる。こういうことでは、
中小商工業の振興というものは思い半ばに過ぐるものがあると私は考えますゆえに、眞に
政府が
中小商工業の振興を考えるならば、思い切つたところの融資をなすべきであると考えるのであります。これまで
復興金融金庫を通じて
中小商工業者あるいは大
企業者に融資させておりますが、この金庫というものは、たくさんの貧乏人にわずかの金を貸すよりは、少い大資本家にまとまつた金を貸す方がめんどうでないので、大
企業者に貸すということになるのは当然であります。それで
復興金融金庫を通じて
中小商工業と大
企業に貸すという方法をあらためまして、すなわち
復興金融金庫から、
中小商工業者のために今まで銀行の役を務めてまいつたところの商工
組合中央金庫に、あるいは五十億、あるいは百億、二百億というまとまつた金を貸しまして、この商工
組合中央金庫を通じて
中小商工業者に貸す、こういうことにするならば、おそらく私は
中小商工業者のためにまとまつた融資ができるものと考えますので、ぜひそういう方法をと
つていただきたいと考えるのであります。
次には、電氣の問題でありますが、今日電氣
不足のために
中小企業者が困
つておるということは、ここで私が申し上げるまでもないことであります。石炭と並んで電氣の必要であることは、いまさら喋々を要しません。しかるに
政府におきましては、石炭についてはあらゆる施策を講じております。あらゆる
努力を拂
つておりますが、電氣の問題については、少しネジが甘過ぎておると考える。
政府の見るところにおきましては、すでに電氣は戰前の域に回復した、こういうような説をいたしておる人もございますが、しかし現在はいかがであります。ほとんど節電々々のために、全
國民は困
つておるではないか。殊に九州地方はいかがでありますか。私は宮崎縣でありますが、宮崎縣においては、現在では十時より電氣は全部消されております。また毎日の電氣が通うところの時間は、動力線が一日わずかニ時間だけ送電が許されておるという実情であります。ゆえに、九州方面の商工
会議所の代表の方々が先般
東京に参りまして、そして電氣
関係方面に運動をいたしたわけでありますが、かくのご
とく九州地方においては電氣飢饉に相な
つておる。こういう実情でありますので、少くとも
政府は電氣問題をまつ先に取上げ、そして電氣問題を解決するということが、
中小商工業の振興を促すゆえんであると私は信ずる次第であります。
なお
統制の問題であります。
統制の問題については、
自由党の辻君からいろいろお話があつたようでありますが、私も少しくこの問題に触れてみたいと考えます。現在
政府はあらゆる
統制をや
つておられます。この
統制にあきたらずして、公團をつく
つて統制を強化いたしておられるようであります。
統制の結果どういう政治が行われておるか。この点を二つ三つ申し上げてみたいと考えます。
現在お互いが
配給を受けておるところの甘藷であります。一等甘藷の値段は、今年は八十七円になりましたが、この一等甘藷八十七円から、十貫当り二十一円七十七銭の手数料を拂わなければならないということに相な
つております。から芋十貫について二十一円七十七銭というものを拂
つております。
統制は万やむを得ないと考えますが、から芋十貫に二十一円七十七銭を拂
つておるという現下の実情であります。
また木炭でありますが、これは白炭一俵が、
生産者が
政府に賣渡す額は六十九円五十銭であります。六十九円五十銭のこの炭を、
政府は百一円五十銭で販賣者に販賣いたします。そういたしますと、販賣者は六円の手数料をもら
つて百七円五十銭で
消費者に賣
つておるというのが現在の実情であります。ゆえに、
消費者が買うところの百七円五十銭から、
生産者が
政府に賣つたところの六十九円五十銭を差引きますと、差額が三十八円ということになります。この三十八円というものは、もちろん運賃も含みますが、
統制のために消えていく金であるということを御
承知願いたい。
また薪であります。長さ一尺二寸、胴
まわりニ尺五寸のこの薪が、
生産者が
政府に賣渡す価格が五円四十銭であります。
政府がこれを十一円六十五銭で販賣者に賣りまして、販賣者は二円二十五銭の手数料をもら
つて十三円九十銭で
消費者に賣
つておるわけであります。十三円九十銭から五円四十銭の
生産者の價格を差引きますと、八円五十銭というものが、薪一把に対するところの運賃・手数料の額であります。すなわち、途中に消えるところの金が、
生産者がとるところの薪代よりも多いという現下の実情であります。
統制も万やむを得ないと考えますが、
統制の仕方が惡いと、かくのごときところの惡政治にな
つていくわけであります。
私は、少くとも
統制というものはできるだけ早く解いてもらいたい、こういう考えをも
つておるものでありますが、しかし現在たちどころにはいかないという考えであるならば、
統制のやり方を改めて、そうして途中に消えるところのこの費用をなくするということを考えなければならないと考えます。現に木炭の産地であるところの宮崎縣の山の中と、
東京のまん中と、炭の値段が同じである。そういうわけでありますので、宮崎縣地方においては、公定價格よりも、
やみ價格がうんと安い、こういう実情でございます。公定價格よりも
やみ價格が安いというような惡政治が行われている現下の実情でございますので、
政府はこういう点については特に御注意が願いたいと考えます。
なお、現在公團法というものが提案されておりますが、この内容の一つを私は檢討してみたいと考えます。すなわち、醤油も公團法によ
つて配給することにな
つておりますが、現在醤油は醤油
統制株式会社というものが
配給計画を立てまして、そして現品を
配給いたしておるわけであります。しかるに、今度の公團法によりますと、公團の
もとに
配給機関というものをも一つつくることに相な
つておりまして、この
配給機関が公團の計画したところの実物を
配給する。すなわち、この荷受機関が
配給をするということに相な
つているわけであります。公團をつくり、その下にもう一つ荷受機関をつくらして費用を使わせる。こういうような政治のとりかたが行われているということは、私はまことに遺憾千万であると考えます。少くとも途中で消えるところの費用をなくするような政治をと
つてもらいたいと私は考える次第であります。(
拍手)
最後に、
生活協同組合法について少しく申し述べてみたいと考えます。先ほど
自由党の方々から、
生活協同組合の無用論があつたようであります。しかし、今日のこの
生活苦を救うために、お互いが
生活品を中心としたところの
生活協同組合をつくるということは、私は当然であると考えます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
しかし、ものには順序があります。私は
社会党の方々に一言お願いを申し上げたい。
社会党が発表いたしておりますところの
生活協同組合法案の内容を見ますと、第五章の事業部面におきまして、物品の販賣業は
もとよりでございますが、
生産、加工、
金融業あるいは保險業、あらゆる
施設業までやろうという案にな
つているようであります。もし、
社会党の方々が御計画にな
つているところの
生活協同組合法案が法律化しまして、これが実行されるということになるならば、現在の
中小商工業者というものは、大
部分は不要に相なるかと私は考えます。ゆえに、眞に
社会党の方々が
中小商工業者の方々の振興を考えられるならば、わが党の考えているような中庸をとつたところの
生活協同組合に御共鳴を願い、そしてこの議会を通じてわが党の
生活協同組合法が通るように、ひとつ御援助を願いたいというをこと申し述べまして私の意見、発表を終ることにいたします。(
拍手)