○
國務大臣(
木村小
左衞門君) 順序を追いまして、中嶋代議士に御
答弁を申し上げます。今回の
水害が十六日に
発生をしているのに、十九日、二十日まで何らの処置をとらなかつたではないかという御質問でありまするが、今回の
水害に対しましては、当局といたしましては、全然責任を回避いたしてはおりません。責任のありますることは、十分に率直に私は承知をいたしておりますことを申し上げておきます。
十六日の出水に対しまして、私は十七日早朝、内務次官を伴いまして
埼玉縣廳え参りました。この
利根川の
決壊の
状況その他を聽取いたしましてから、すぐ案内をしてもらいまして、その
決壊箇所が古
利根の旧
河川を流れてまいりまして、
東京都地区内が場合によると危險になりはしないか、これは先例もありまするので、それを非常に考慮いたしまして、一旦
決壊した箇所はもういたし方がないが、今後の処置を十分に講ずるだけの必要があると感じまして、案内を願いまして、現場の越ケ谷
方面から草加
方面、あの辺一体を長ぐつをはいて歩きました。
その結果をみますると、あの辺へ参りましたのは、まだ盡過ぎでありましたが、越ケ谷
方面では一向平然たるものでありました。この前の四十三年の
水害には、
相当浸水したというにもかかわらず、中にはたたみを上げているところもあり、また二階え物を運んでいるところもありまするけれども、その日は天気もよいので、大部分がまことに平和な、平然としたる態度でありました。十分警告を発しましたのでありますけれども、どういうものでありまするか、今度の
水害は、
東京都地区内の近くに寄りますまで、水流が非常に遲々たるものでありまして、あの下流に住居しておりまする大衆は、あそこまでは來ないというような感覚があつた。それは私は十分に察知いたしました。というのは、水流が徐々として進まぬということは、つまり下流に行くに從
つて拡がる。拡がるから遅く推進してくる。しかし拡がるということは、面積において水の高さが低くなるから、たとえ來ても、避難をする
程度までは至らぬではなかろうかというような観念があつたように見受けられます。でありますけれども、私ども当局としましては、十分に警告をいたしました。けれども、どうもそれも引続いて——最近もその通りでありまするけれども、家財とからだと離れることを非常に大衆はいといました。昨日、一昨日ごろも
東京都内の
浸水地域に対して、救助方を督励し、また避難を勧獎しておりますけれども、どうも家と離れ、家財と離れることを非常にいといまする傾向がありまして、そのために非常に遅々といたしております。
ついでに、また松戸の前方にあたります
江戸川の
堤防の
破壊、あの切開をもつと早くしたならばよかつたではないか。これは石田代議士の御質問でありましたが、私は総合して申し上げまするが、それはその通りであります。あれが遅れましたことは、まことに遺憾でありました。しかしながら、あの命令を私が発しましたのは、十八日の午後七時であります。そのときから始まりますれば、確かに
相当な
効果があつたものでありまするけれども、非常に
工事が手間どりまして、私が翌十九日すぐ松戸へ参りましたのは、午前十時でありましたが、寄
つて見ますると、松戸の向うえ行くことは
進駐軍の命令で行かれない。
進駐軍に爆破
作業は任してあるから、向うの土手えは一切行かれませんので、松戸の方の土手え参りまして、私はこちらから直面して、済むまで見ておりました。見ておりますと、十六発目の爆破
作業でも、まだ水が通らなかつた。それで午後三時何分かの、水が通るまで見て帰ろうと思いましたけれども、そのときまでは見込みが立たぬ。そのうち
東京の近所え水がはい
つてまいりまして帰れなくなりますと、今議会も開会中であるし、また天皇陛下に二十日に奏上する責任もありまするので、とうとう水が通るのを見ないで帰りましたが、十六発目までは私は見ました。
これが非常に遅れましたということは、
東京都の当事者と
内務省の指揮との間に食い違いがあ
つて、非常に齟齬した結果であるというふうに見られますけれども、率直に申し上げますると、実は
内務省は爆藥をもちません。非常に大きな
堤防でありますから、あの切開
作業は、何百人集めましても、人力では容易にできません。どうしても爆破の力を借りなければできぬということに、技術上の衆議が一決いたしまして、この爆藥を現場え運びますことが
相当手間どりましたことが、切開
作業に手間どりましたところの一つの
原因をなしているものと私は考えております。これは、はなはだ遺憾でございましたけれども、どうもいたし方がなかつたように存ぜられるのであります。
それから
埼玉縣の
栗橋の上流の、あの
決壊の現場の水深が四十三メートルというのは、あまり大きいではないか、どつちがほんとうかというようにお尋ねに
なつたようでありますが、私の調べておりますところでは、四十三メートルではありません。四十三フイートであります。あの多量のものが、あの勢で流れますと、これだけは掘れまして、これくらいの水深はあると思います。
これくらいの大きいものを止められ得るかという御質問があつたようでありますが、中嶋君はわれわれよりもずつと玄人で、よく御承知と思いまするが、これくらいのものは十分に止められます。か
つて私が存じておりますことは、鴨緑江水力発電では、あの鴨緑江でさえ、人力でせき止め得たことを私は聞いております。その点を思いますれば、これくらいのことはせき止められないことはない、復旧することは十分の成算があるということを申し上げておきたいと思うのであります。
それから、このせき止めに関しての
資材はどういうことにしたか。要するに、せき止めて
工事が四日間もそのままにしたような形にして手間どりましたということは、これは
資材の
関係であります。昔のように軍隊がおりますと、一番ありがたいことは、軍隊には
資材があります。何時でも多量の
資材と労力とを動員することができ、また器具・機械も動員することができまするけれども、現在そういう軍隊はおりません。おりませんとすると、この
資材・器材というものは、すべて集めなければなぬ。先ほども
報告で申し上げました通り、
空俵がいくら少くても四万俵要ります。それから中嶋君は玄人ですから御承知ですが、六メートル以上もあるくいが六千本、十メートル以上のくいも千本くらいは、どうしても集めなければならぬ。それから石材、鉄線その他を集めまするということは、ただいまの
経済状態の戰後のこの状態に、何でもないようでありますけれど、なかなか二日や三日では集まりません。のみならず、集めても、これをいかにして現場え運ぶかということは、
相当努力を要します。
資材がなくても早くやればよいということは、素人の考えでありまして、
資材がないのに着手することもできず、またいい加減な
資材をも
つてい
つてやりましても、すぐ流されまして、これは何の見込みも立ち得ないのでありますから、
資材を蒐集いたしまする期間を要したのでありまして、この点も、これは責任を回避いたしまするわけでは決してありませんけれども、その辺の御了解も御願いいたしたいと私は考えておるのでございます。
それから、この
工事は直轄でや
つておるのか、どうしてや
つておるのかというお尋ねでありますが、これは
直轄工事にして、そうして二つにわけてこれを請負わせております。間組と鹿島組、両方にわけてこれを請負わせまして、
民間の一番
資材をも
つておる、大きな、現場に最も有利なものを選びまして、これに請負わせまして、しかも懸賞づきでやらせておりまするから、天候のぐあいさえよかつたならば、二十日という期間内には多分できはしないか、こういうようにの考えております。大体中嶋君の御質問は、これくらいであつたと思います。
次に、今村君の御質問にお答えいたします。四十三年と十六年の
降雨の
水量は、今度とあまり違わなか
つたのじやないか、今度の分は六百ミリで、大変大きいとか何とかいうけれども、これは大差なか
つたのじやないか、こういうお言葉でありましたけれども、
内務省の方では、今度が一番多量なる
降雨量であつたということを言
つております。これは、はつきり数字をここでお答え申し上げたいと思いまするけれども、実は今日はその資料をも
つてきておりませんので、ひ
とつ御勘弁願いたいと思いますが、確かに四十三年、十六年よりも、今年の
降雨量が多く、また水の高さも非常に高かつたたということを申し上げておきたいと思います。
なお、新憲法実施のために、
地方制度が変革せられまして、そのために非常に
地方と中央との
連絡その他に不便な点はなかつたか、こういうお尋ねでありまするが、これは、まことにどうもごもつともなお尋ねのように思います。
地方制度の改革に際会しまして、まだこれは実施してからわずかの期間でありますので、十分に
地方も自治ということに向
つて訓練を積んでおりませんために、今村議員のおつしやるように、強いて申しますれば、中央が昔ほどの指揮命令をもちませんから、昔ほど便利ではなかつた、こういうことを申し上げまるが、しかしながら、これがそのために非常に遅滯して困つたというようなことはないように考えまするから、その点も御了解を願いたいと思います。
なお今村君の、山林の砂防はどうや
つておるかというようなお尋ねもあつたようであります。砂防
工事は、山でも、渓流に属しまするものは
内務省の主管でございまするし、山林の砂防は
農林省でや
つており、両者緊密なる提携をいたしまして、砂防
工事も万全を期してや
つておるつもりでありまするけれども、近時は、率直に申し上げますると、これは完璧であつたとは、私は言いかねるのじやないか、こう申し上げておきたいと思います。
それから、石田君の御質問も、中嶋君の御質問に対するお答えに大部分包含されておるようでありますが、
千葉縣との折衝がどうであつたかということでありますが、
江戸川堤防を
破壊するということは、対岸の
千葉縣にと
つては非常な大問題であります。
東京を救うために、これは帝都であり、比較にならぬほど
損害の数量が多いから、それは決行してや
つてもよいのじやないかと見られますけれども、ものの
事情は
かくあるべきでありますけれども、何と申しましても、濁流を切
つてあの
江戸川え落しますことは、
千葉縣には非常な脅威を受けることでありまして、默
つてはできぬことでありますから、一應は
千葉縣に了解を求めましたが、
千葉縣では、これは無理ありませんが、承知がなかつた。承知がなかつたけれども、
東京都を救うためにやむを得ませんので、断固として命令を出して、切崩しの
作業に着手いたさせましたような成行きであります。
それから、網島君の御質問中、私の所管に関してだけお答えいたしますが、
河川の沿岸には、お説のごとく水防隊の組織がございます。今後はこの水防隊の出動その他につきまして、もつと総合的に
努力をいたして、御注意もありましたし、ひ
とつ十分な督励方をいたして、場合によ
つては組織も大いに考えるべきものがあるのじやないかと考えまして、御趣意承知いたしましてございます。
それから林君の御質問中、私の所管しますることは、
災害地に集團強盗や集團窃盗が盛んに行われるが、どうして取締
つておるかということでありますが、新聞やうわさでは非常にあるように言われておりますが、警視廳の調べで見ますると、そう大したことはないようであります。大したことはないという抽象的なことを申し上げては御承知にならぬと思いますけれども、ちよつと、その数字はもちませんけれども、うわさ等が非常に高いのでありまして、船で参りましてとりますのは、強盗とか窃盗も船で行かなければならぬ。船もそう潤沢にはありませんから、そううわさや新聞にありますほど多いことはありませんが、しかし、こういうことがあ
つてはなりませんので、警視廳ではあらゆる水上を動員いたしまして、横浜あたりからも快速な船なんかも十分に借りてまいりまして、一昨日の夜ころから、この警備に当
つておる次第であります。
それから受田議員の御質問は、
水害の
対策を今後どうするかということ、これは今後にかかる、土木建設としても非常に重大なる問題であろうと思います。とりあえず、ただいまのところでは、治水治山の五箇年計画を樹立いたしまして、明二十三年度からこれを実施して、五箇年の計画で完璧を期し得るだけ完璧を期したい、こういう計画を立てておる次第であります。以上、大体御
答弁といたします。
〔
國務大臣平野力三君
登壇〕