○井出一太郎君 私は、
國民協同党を代表いたしまして、最近各地に頻発いたしまする水害に鑑みまして、治山治水の問題について関係各大臣に緊急質問をいたしたいと存ずるものでございます。総理に対しても質問の通告をいたしておきましたが、お差支えがございますそうで、主として内務大臣、大藏大臣並びに農林大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。
わが國の
國土が、いわゆる東亞のモンスーン地帶に位しており、多分の雨量を伴つた季節風に絶えずさらされております上に、地勢が高峻でありますから、水害が年々頻発いたしますことは、申すまでもないのでございます。しかしながら、最近の事例を見ますのに、降水量の割合に非常に出水の量が多い。しかも、その速度が速い。この現象は、
戰爭中におけるところの山林の濫伐、過伐に基くことが重大
原因であろうかと思うのでございますが、過般東北地方並びに近畿地方に起りました水害において、東北方面を視察せられました本院の代表派遣の方々の御
報告に徴しましても、同樣のことが指摘せられておるのでございます。颱風の時期は、これから後に本格的に相な
つてまいりますので、今にして抜本塞源的なる対策を講じませんと、その災害の結果は非常に憂慮すべきものがあろうかと思うのであります。先頃
発表せられました
経済白書の中にも、この点はすでに指摘をせられておるのでありますが、いわゆる
國土荒廃、國破れて山河ありという言葉が、かえ
つて山河破れて國危うし、こういうような段階になるやを私は非常に憂慮いたしております。
さような
意味合から、まず最初内務大臣にお尋ねをいたしたいことは、今回東北並びに近畿諸地方に起りました水害の被害の輪郭をお示しを願いたい。去る十二日に、これが救済対策の閣議決定があつたようでありますが、この対策を打ち立てます以上、すでに主管内務省におかれましては相当の資料がお揃いにな
つておろうかと思うのであります。
またその被害にあたりましては、今われわれに十分関心を持たせております
食糧の問題に対しまして、この水害によるマイナス面がおおよそどれくらいあつたか、これを平野農林大臣からお示しをいただきたいと思うのであります。
かくいたしまして、この損害の実相、そういつたものは、あるいは追
つて数字その他は書面をも
つてお示しをいただけるものと思いますが、ともかくこの輪郭をお示し願つた上に、これに対する対策を同時にお示しを願いたいのであります。これにつきましては、今罹災地におきましては、天を仰いで長大息しておる罹災民各位が、非常な熱願をも
つて政府に期待しておるのでありますから、本來ならば総理大臣のお口から力強い激励の言葉を今日いただきたいのでありまえすが、何とぞ主管大臣の木村内務大臣から願いたいと思うのであります。
また去る閣議決定において、緊急対策につきまして特別融資が二億三千六百万円でありますか計上されたようであります。この融資は、一体いかなる機関を経て、いかなる
條件のもとに貸出されるのか。ことは非常に緊急を要すると思うのでありますが、これに対しまして大藏大臣の御意見を伺いたい。またさらにこの問題を、かような融資というふうなものだけに止めずして、もつと竿頭一歩を進めて、國家の財政支出をこれに繰出す御意思をも
つておるかどうか。いたずらに
政府の財政を——これは健全財政というお立場は、その御苦心のほどはわかるのでありますけれども、
政府財政を引締めたからと申しまして、これはやがては地方の財政へ響いていく、かような
意味合いから、
國民経済の循環性を考えますときに、これはやはり
政府の支出というものを、この際相当にしていただきまして、中途半端な災害の復旧でなく、根本的にこれをいたしたい。何となれば、たとえば砂防工事にいたしましても、護岸工事にいたしましても、あるいは河床の引下げ工事にいたしましても、これを中途半端なものに放置しておきましたのでは、やがてこれは災害を再
生産することに相なります。それはちようど賽の河原に石を積む愚を冒すにひとしいことになるのでありまして、この際大藏省は思い切
つてこの方面へ支出をお願いしたいと思います。
さらにお伺いすることを一点落しましたが、それは内務省の廃止がもはや既定の事実にな
つておるのでありますが、この災害というふうな問題を、今後一体主務省としてどこが主管するのか。
國土局というふうなものになるのか。建設院というふうなものになるのか。こういうふうな点、大臣といたしましては後顧の憂いのないように、この際明確にしておいていただきたい。
さらに進んで農林大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、この出水の
原因が植伐のアンバランスにある、伐採する林木の量が、成長する林木の量より一層多い、こういうところに問題があろうと思うのであります。われわれは、
戰爭中に引続いて今後といえども、たとえば復興建設
資材、あるいは賠償梱包
資材、枕木、坑木、パルプ
資材、薪炭材等々、
幾多の木材需要がわれわれの上に被さ
つておることを知らねばならぬと思うのであります。從いまして、これに対して造林の方ははたしてどうであるか。殊に
戰爭中濫過伐のはなはだしかつた民有林においては、ほとんど造林意欲が減退しき
つておる。この現状では、前途が私は非常に憂慮にたえないのであります。
そこで、この民有林の造林意欲が減退しておるその一つの理由として、これはいろいろありましようけれども、巷間流布されておる、たとえば山林は國有になるのである、國家管理になるのである、あるいは農地改革のアイデアをさらに進めて、山林にも土地開放が傳えられるのである。こういうようなことにな
つておるのでありますが、そのために山林業者は、三十年、五十年先の收穫のための植林については、目前の不安に驅られて、いささかも関心を示さない。これに対する農林大臣の御所見を伺いたい。
また今回の現地調査の各位から
報告されている中に、
政府が開墾
計画をきわめて無
計画に実施いたした。こういう点が指摘されておる。なるほど百五十万町歩の開墾
計画は、目下の
食糧事情のもとにおいて、まことに喫緊な要務でありましよう。しかし、開墾適地の決定に対して、ただ
官僚諸君が机の上で、地図に向
つて面積をはかり、傾斜度をはかり、これで決定する。こういうことでは相成らぬのでありまして、御
承知のように、林地には、林野には、相対的林地と絶対的林地があるはずであります。そういう点を十分勘案いたしまして、開墾
計画に対してもつと是正する御意思はないかどうか。たとえば民間の專門家を加えることによ
つて、権威のある民主的な
委員会にかけるということはいかがでありましようか。こういう点を農林大臣から伺いたいと思います。
あるいはまた近頃、木材を強制伐採するということが巷間傳えられて、これが薪炭、坑木という喫緊の需要に向けることもありましようが、そういう面から、林野をも
つてお
つても強制伐採をされるのだ、そうして幼齢林もかまわず未だ成長期に達しない幼齢林を、むざむざ伐
つてしまうということが相当あるようでありますが、こういう点に対して、農林大臣の御見解を伺いたいのであります。
最後にもう一つ、農林省としては緊急造林対策をおもちのはずであります。すなわち、
昭和二十一年度から五箇年間に二百七十二万町歩を植林する
計画が立
つておられるはずであります。そうして、第一年度である
昭和二十一年度の成績はどうであるかと見るに、四十七万町歩の目標に対して、二十二万町歩しか植林ができておらない。このはなはだしい不成績は、一体どこにその
原因があるか。かようなことでは、とうてい山林の緑化はでき得ない。また農林省が多年の懸案でありましたところの林政の統一が、最近できたはずであります。すなわち、帝室のも
つておられた御料林並びに北海道の國有林などを一手に掌握いたしまして、農林省多年の懸案がここに実現いたしました。從いまして、
昭和二十一年に立てました五箇年
計画は、さらに大きな規模において、ここで修正されなければならぬものと考えますが、こういう点について新たなる植林
計画をおもちであるか、これも併せて伺いたいのであります。
序でにもう一つ、いまの民有林が、ただ民間のみに委せて、はたして緑化できるかどうか、私はこの点大いに疑問をも
つております。いわゆる官行造林とでも申しましようか、官の手によ
つて——もちろん、これには多大なる予算を伴わなければならぬのでありますが、そういう官、國の力においてさらに造林を進行させる御意志はないものであるか、この点も併せて伺いたいのであります。
聞くところによりますと、本院においては水害対策特別
委員会が設けられるということに相な
つておるそうでありまするが、これは私は非常に意を強うしている次第でありまして、この
委員会に絶大なる敬意を表し、これが適切に運営せられますことを願いまして、私の質問を打切る次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣木村小左衞門君
登壇〕