○辻寛一君 最近、閣議決定で
発表されました官界刷新の方策要綱を見ますると、
行政運営の改善を期する一項目として、人員の配置轉換を促進して、
行政の合理化と能率化をはかるということが出ておりまするが、一体役所の仕組というものは、單に人員の配置轉換をしただけで、その能率を高め、合理化を期待することができるのでありましようか。非能率——能率のあがらぬところの代名詞を、お役所式ということは、これはかねて御案内の
通りでございまするが、これは必ずしも人員の適正配置そのよろしきを得ておらないばかりではない。それもありますが、しかし、それより以上に、大体に人員がだぶついておるのである。つまり船頭が多くして、船がとかく山に上りたがる傾向が抜け切らぬところに、この根本の
原因があると考えるのでございます。(
拍手)
今日わが國では、役人の数は、地方廳を合わせますると、かれこれ二百五十万あると聞いております。ざつと六世帶に一人という勘定にな
つておる。これでは、
官吏亡國論がときどき起るのも、もつともであると思いまするが、しかもこれでも足らぬというので、各官廳が相競
つて、盛んに増員の計画を立てておるようであります。役人に言わせますると、仕事がたいへん忙しくて、手が足りないと申します。しかし、その忙しいという仕事の内容、その能率というものが、中心の問題であると思います。いわゆるお役所式にや
つておりましたならば、いくら手があ
つても、これは足るということはございません。手が殖えれば殖えるほど、仕事は繁雜化していく。能率はあがらない。その相手にされる
國民が、やり切れたものではございません。
片山
内閣は、危機突破のため、過剩な人員をも
つておるところの企業は、できるだけ
整理して、企業の健全化をはかると言いまして、先ごろ
発表いたしました緊急対策におきましても、まず
政府の事業が、率先してこの先鞭をつけるということを申しておられまするが、この率先垂範すべき官業の合理化が、單に人員の配置轉換をすることによ
つて、その
目的を達し得るとお考えにな
つておるか、この点をお伺いいたしたい。
元來、配置轉換と人員
整理というものは、これは紙一重の、きわめて微妙な関係にありまするが、少くとも
國民におきましては、今日お役所は人が多過ぎる過剩人員があるといつた常識をも
つておりまするが、この世間の常識に対しまして、
政府は一体どういう
所見をおもちにな
つておるか。官廳と言うても廣うございますから、私はこの場合、それこそ國有國営でや
つておりまするところの、
日本の最大の企業である、
政府の事業であるところの國鉄の問題について、お尋ねをいたしてみたい。
國鉄の從業員は、
昭和十一年度二十二万八千人に対して、二十一年度五十七万三千人で、二倍半にな
つております。これは経済実相報告書に明示してあります。この現象は、一体何を示すか。設備操業率の低下、原料資材、動力の入手難、原材料の品質低下、設備の老朽化、その他食糧事情の窮屈、通勤難、住宅難、いろいろ
原因があげられまするが、それと同時に、労働規律の非常に乱れていること、技術的訓練が下
つていること、ここに重大なる
原因があるということは、眞実を眞実なりとして傳えると稱しておりまするところの、これまた経済実相報告書が、明らかに指摘をいたしているところであります。
人数が多いから、問題が起るのも無理はないとい
つてしまえば、実もふたもありませんけれども、ときどき鉄道職員を中心として、おもしろからぬ事件が盛んに起
つてまいります。また大きな鉄道事故が盛んに起ります。か
つては、軍隊につぐ規律の正しいことをも
つて誇りといたしておつた國鉄であります。また、技術の優秀をも
つて、世界に指を算えられておつた國鉄であります。今日、國鉄だけもとのままでお
つてくれと、胴慾なことは申しませんけれども、あまりにも、昔と比べまして貧弱であるということを、嘆ぜざるを得ないのであります。
経営の状態も、赤字に次ぐに赤字であります。二十一年度四十七億円の赤字は、國庫から融通をしてもらいましたが、このごろ大幅な運賃値上げをいたしましたけれども、今年度も最低九十五億の赤字が出るそうである。平年度に引直してみましても、やはり六十億からの赤字が出るということにな
つております。これは私は新聞で見たのでありまするから、もし数字が違
つておりましたら、訂正をしてお教えがいただきたい。が、とにかく、かくのことしといたしまするならば、今日盛んに叫ばれておりますところの、特別会計の独立採算制というものは、いかにして確立されることができましようか。この赤字を一体どうするか。経費の節減によ
つて赤字が埋め得られるか。もし経費の節減によ
つて赤字を埋め得る見透しがつくとするならば、その経費の節減の中には、ただ物件費だけであるのか、それとも人員
整理によるところの人件費の節減というものも、多少これに含めようとしているのであるかどうか。また、どうやりくりをしてみても、とても経費の節減でも
つては赤字を埋めることができないというならば、一体どうしてその採算をお立てになるお考えでありまするか。
何しろ去年は余
つてお
つて、首を切らなければならぬとい
つて騒いだ國鉄が、今年は余るどころか、足らぬからとい
つて、また五、六万増員をするということを聞きましては、
國民はきつねにつままれたようで、國鉄の正体が、何が何だかわからなくな
つてしまう。(
拍手)もちろん、足らぬものを余るとも言いますまいし、余
つておるものを足らぬとも言いますまいが、この一年間におきまして、過不足の生じ
たる原因には、あるいは労働時間の短縮とか、また特別の御用とか、あるいはまた鉄道警察官の設置とか、いろいろ人員の殖える事情もあるにはあつたことと御推察はいたしまするけれども、しかし今日、公平に見まして、地域別、職種別に考えてみますると、ずいぶんだぶついておるところがあるように考えるのであります。住宅難、食糧難、いろいろ支障がありましようけれども、万難を排して、強力なる配置轉換を行
つていただきたい。
人員の
整理によ
つて、國鉄合理化の一端を行うかどうかという問題が、昨年國鉄爭議の導火線となりまして、完全雇傭が承認されまして、ただ一部の惡質の労務者を
整理する強力な配置轉換を行うという條件によ
つて、解決をいたしたのでありまするが、その後、一体これはどの程度行われて今日に至
つておるか、これをお知らせいただきたいと思うのであります。とにかく、最近におきまするところの國鉄の人員の実情というものを、よく
國民にわかるようにお知らせがいただきたいと思います。
しかも、この強力なる配置轉換ということになりますれば、どうしても労働組合の協力を得なければならぬ。さいわいにして、労働組合の支持を得られておりまするところの
社会党内閣のもとにおきまして、これがみごとにやり遂げられることを祈
つてやまぬ次第でありますが、國有國営の最も代表的でありまするところの國鉄の事情が、合理化がうまくいかないということでありましたならば、その他の國有國営、も
つてかなえの軽重を問われるおそれがあると思います。(
拍手)まず、よろしくこれの合理化、能率化について、どういうお考えをおもちにな
つておるかを、お承りいたしたいと存じます。