○船田享二君 私は
國民協同党を代表いたしまして、現
政府に対するわが党の態度を明らかにすることに努めつつ、できるだけ簡單に
質問を試みたいと思います。
いうまでもなく現
内閣に対するわが党の態度は、一般的には、この
内閣成立のためにわが党のとつた立場によ
つて示されているのでありまして、また現
内閣が
組閣の後に発表した
経済対策、精神的な
方面に対する
対策、さらに今回の
片山内閣総理大臣の
演説等は、いずれもいわゆる
政策協定を尊重しているものとして、大体においてわれわれはこれに賛意を表し得るものと考えるのであります。
ことに現在の
危機を切り抜けるためには、
國民の
食生活の安定を求めるための
政策に重点を置いて、それを中心として、他の各種の施策の確立と実行とに努めなければならない、こういうこと。しかもそれとともに、
政策が物質面にのみ偏るべきではなくて、物質面とともに精神面を重んじて、
國民の道義心の高揚を促すための
政策を確立して、物心両
方面の
政策を総合的に進めるのでなければ、この重大な危局を乘り切
つて祖國を再建することはできない。こうした点は、われわれがあらゆる機会に強く主張し、ことに
政策協定にあた
つて主張したところでありまして、こうした点が
片山内閣によ
つて確認され、また強く主張されたことは、われわれの特に喜びとするところであります。現
内閣がこうした
方向をと
つて進む限り、われわれはその
政策の実現に
協力するに止まらず、さらにみずから進んでその実現に努めることを、われわれの責任と考えるものであります。
しかしながら、この
政策協定にせよ、これまで現
内閣の発表いたしました
政策にせよ、また
片山内閣総理大臣の
演説によ
つて示されたところの
施政の
方針にせよ、これらすべては、なおきわめて抽象的、一般的なものでありまして、それだけに、かなりの彈力性をも
つており、これを実際にいかに具体化するかに関しましては、なお多くの問題を残しております。そうして問題は、むしろ抽象的、一般的な
政策の羅列や宣傳ではなくして、それをいかにして正しく実行に移すかにあるかということ、これはいうまでもないと思うのであります。
從つてわれわれが、これまで
政府によ
つて示された一般的な
政府の態度について、これに
協力する責任を感ずるということは、必ずしも
政府の実施する具体的な
政策のすべてについて、全面的にこれを支持し、これに追從せねばならないと考えているという
意味のものでは、決してないのであります。われわれは、どこまでもわが党と現
内閣との一般的な関係を十分に
考慮しつつ、わが党はわが党として、独自の立場をも
つていることを顧みまして、かかる独自の立場において、
政府の態度については嚴重な監視もし、批判も加えていかねばならないと考えておるのであります。そうしてかくすることが、むしろ現
内閣成立の異議を明らかにし、またこの目的達成のために
協力するゆえんであることを疑わないのであります。こういうような立場から、私はすでに同僚
諸君によ
つて触れられた問題との重複は、できる限りこれを避けることとして、次の諸点に関する
質問をいたしたいと思います。
第一に、
政府はいろいろな
食糧緊急
対策を立てて、その実行に移
つておりまして、私は
組閣早々かのような綿密な
対策の確立に努めた
内閣の労苦に対して、深い敬意を表すものでありますが、この発表された
対策が、ほとんどまつたく
供出・配給の面、消費面の統制に関しておりまして、それに比すれば、主
食糧の
増産に関する
対策が、あまりにも貧弱であるという感がいたすのであります。
もとより眼前の
食糧不足を克服するために、現存の
食糧の
供出・配給に主力を注がねばならないということは、当然のことと思われるのでありまするが、
食糧不足は、決して現在だけに限られておるものではありません。
相当長期にわた
つて、わが國が
食糧不足に悩まねばならないということは、予想せられるのでありまして、われわれは、
食糧の消費面を規制するとともに、その
生産の増強の
方面にも、同樣の
注意と努力を傾けねばならないものと信ずるのであります。殊に
増産に関する
対策が確立し、將來に対する安心した見透しがつくという程度にすることによ
つて、初めて農村の現存の
食糧が
供出され得るという状態になる。こういうふうに考えるのでありまして、
政府がこういうような
食糧増産の
方面についても、もつと詳しい
対策を確立し、発表して、
供出や配給の面に関する
政策とともに、総合的にこれを実行することを、要望せざるを得ないのであります。そういうような立場に関連いたしまして、一、二の点について、
政府の所信を伺いたいと思うのであります。
その
一つは、未墾地の開拓と、既耕地の改良の問題でありまして、すなわち前
内閣において、すでに未墾地開拓のために
相当大規模な
計画が立てられまして、これが実行に移
つておるのでありまするが、その実績は、必ずしも
計画通りにあが
つていないという状態にあるのであります。われわれは、かような開拓
計画が机上の
計画に終ることをおそれ、むしろ
食糧増産のためには、既墾地の改良というものに重点をおくべきものと考えるし、またそのために必要な費用というものは、失業人口吸收の問題と関連せしめて処理すべきものと考え、またこれを主張して來たのでありまするが、一体これまでに、いわゆる開拓
計画というものは、どの程度に進捗してきたのでありまするか。また先ほど平野
農林大臣は、同樣の開拓
計画を進めていかれるような
方針を明らかにされたのでありまするが、それとともに、耕地の改良という問題に関しては、どういう
方針をとろうとしておられるのであるか、その点を伺いたいと思うのであります。
次は、これと関連いたしまして
農業技術員の問題でありまして、われわれは、現在の
技術員制度が壞滅に瀕する状態にあることを憂えて、この制度を根本的に改革して、その俸給を全額國庫負担といたしまして、待遇を
改善することによ
つて、
技術員が單に
生産についてばかりでなく、農村の
生活一般について、いわば農民のよき伴侶となり得るようにいたしまして、農村の
生活と文化を高めるとともに、
生産を増強すべきものであるということを主張し來
つたのでありまして、そのための予算につきましては、去る第九十二
議会におきまして、前
内閣はわれわれの要請に対して、將來十分にこれを
考慮すべきことを約したのでありまするが、現在の
政府は、この問題についていかに考えるかを、お聽きしたいと思うのであります。
次に第二に、右の
食糧の
供出・
配給等の問題とともに、さらに他の重要な物資につきまして、
政府は徹底的統制を必要とする重要物資につきましては、公團公式によ
つて配給を確保するということを決定いたしておりまするが、こういうような公團方式は、ものによ
つては、必ずしも適当とは考えられないのでありまして、ことに
食糧あるいは
肥料につきましては、
相当に
考慮の余地があるものと考えるのであります。公團方式による配給統制が、少なくとも現在の状態におきましては、ともすれば
官僚統制の幣に流れることは、否定し得ないのでありあまして、われわれは、むしろできる限り
國民の自主的な立場を尊重して、
國民の良識を信頼し、無用な摩擦を避けるべきであると信ずるのでありまして、こういうように、でき得る限り
國民を信頼するという態度をとることが、
國民の間に盛り上る力によ
つて危機突破の運動の
発展が助長されるゆえんであると信ずるのであります。
政府はこういうような公團方式による配給統制を必要とする物資として、どの範囲のものを考えているのであるか。あるいはまたその配給につき、一々公團をつくるにあたりまして、きわめて嚴重な、
愼重な
檢討を加えねばならないと思うのであるまするが、現
政府は、この点についてもう少し具体的に、いかなるものを考えているのかというようなことを、お伺いいたしたいと思うのであります。
次に第三に、
食糧その他
生活必需物資の配給につきまして、それと関連して、町内会、部落会等を速やかに廃止して、協同組合的な組織を拡充すべきであるということは、われわれがつとに主張してきたところでありまして、そうして町内会、部落会等が解体せしめられたということは、まことに結構ではありまするが、これに代る配給の
機構及び方法が、まだ確立されたとは言い得ないために、現在各
方面に多くの支障を生じ、ことに不足した食料の配給及び消費には、かなりに不合理な、無駄のある状態が生じておるのであります。
政府は速やかにこの混乱状態を除いて、正常な配給によ
つて、消費
生活の
合理化をはかるために、必要な処置をとらねばならないことと思うのでありまするが、こういうような
方面に必要な
方策について、
政府はどういう
方針をと
つておられるのか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。
第四に、
食糧の不足とともに
國民生活の安定を脅かしつつあるものが、物價高騰にあるということは、申し上げるまでもないことでありまするが、今やなんとしてでもこの物価の高騰を抑えて、これを安定せしめるということは、たとい不可能に近いくらいに困難なことではあ
つても、ぜひとも行わねばならないところと考えるのであります。われわれは、現
内閣が新物價体系の樹立に努めていることに対して、その労を多とするのでありまするが、その新体系による物價は、
相当に高くなるものと、思われるばかりでなく、他方におきましては、鉄道運賃を急に大幅に引上げようとしているというようなことも、傳えられておるのでありまして、かくては、新物價体系の樹立は、單にいろいろな物價相互の間の不均衡を是正するという
意味を有するに止ま
つて、
國民は相変わらず、あるいはむしろ今までよりも、いよいよ強く高物價に悩まされて、その
生活の不安を増大するおそれが十分にあるように思われるのでありまして、
政府は、かような鉄道運賃の値上その他のことを、できるだけ阻止して、できるだけ低い物價体系の樹立に努めなければならないと思うのでありまするが、新物價体系の樹立にあた
つて、
政府の考えている目安はどの程度のものであるか。でき得る限り具体的にお示しを願いたいと思うのであります。
轉じて第五に、教育の問題、殊に新学制の実施に伴ういろいろな問題につきましては、既に昨日の本会議における同僚
諸君の
質問と、これに対する文部大臣の
答弁があつたことでありまするから、できるだけ簡單に申し上げたいと思うのでありまするが、私はこの新学制実施のために必要な経費を、どんなことをしても捻出するに努めるということが、教育優先主義を認め、文化
國家建設のために努力するという現
政府の態度を、最も簡明に表現する具体的な方法でありまして、こういうような方法によ
つて、実際に
政府の
方針を示すことが、間接に、しかも非常に有効に、精神運動のために重要な意義を有することを、指摘しておきたいのであります。
但し、この新学制の実施につきまして、殊に新制中学につきましては、
國民の間に一般にその性格が明らかにされていないと思われる節があるのでありまして、現在までの官公立の中学と同樣な施設を、一時につくり上げなければならないというような考えが、行はれておるのではないのか思うのであります。しかしこの新たな中学は、むしろ今までの高等小学校、中学校、女学校、あるいは実業学校等を打
つて、一丸としたような、
國民の最低限度の常識を養うための新たなものであ
つて、
從つて各地の状況に應じ、
生活に即した教育を施す
方向に進むべきものでありまして、施設等も、かような立場から考えるべきものであるかと思うのです。
一般的に言
つて、
政府は速やかにこの新制中学の新たな意義と性格とを、
國民の間に徹底的に周知せしめることに、努めなければならないと考えるのであるまするが、これについて
政府はいかに考えておられるか。さらに義務教育を終えた青年の教育をどうするか。なかんずく働きつつ学ぶ、希望をもつ、まじめな、純眞な勤労青年の教育をどうするかということが、特に重要な問題となるのでありまして、これまでの青年学校に代る組織をどうするか。また勤労青年は、いわゆる時間制による教育について、強い要望をも
つておりまするし、かつ、かかる方法をとらなければならないと思うのでありまするが、こうした点について、いかなる
方針をとるのか。こういうようなことは、何とかして一刻も速やかに
政府の態度を周知せしめて、これによ
つて、青年のために將來の
計画を確立せしめる必要があるのであります。いずれにいたしましても、これら新学制の実施につきましては、
政府は速やかに継続的な年次
計画を確立発表して、
國民の不安を一掃すべきものであると考えるのでありまするが、
政府にその準備があるのかどうか。これをお伺いいたしたいと存ずる次第であります。
続いて第六には、在外同胞引揚げの問題について申し上げたいと思うのであります。傳えられる引揚げ完了の見込みなどに関する報道は、ときに樂観に過ぎて、実際にはそう短期間に引揚が完了し得ない状態にあるとも言われるのでありますが、これについて、眞相はどうな
つているのか。言うまでもなく、相手のある問題でありまするから、必ずしもわれわれの希望通りにいかぬということは、やむを得ないことであると考えるのでありまするが、私はここに引揚げ完了の時期の見透し等について、
政府がもう少しはつきりところを明らかにしてくれるように、要請せざるを得ないのであります。
それとともに、残留者の家族の保護について、
從來の
政府のやり方は、必ずしもわれわれの納得のいくものではなかつたと考えるのでありまして、殊に軍人、軍属等の遺家族について、たとえば保護が、將校と下士官の遺家族に限られていて、兵の遺家族には及んでいなかつたというような点につきまして、
政府はこれから先いかに処置していこうとしているのか、この点をお伺いいたしたいのであります。
最後に第七に、新しい
憲法の実施とともに、地方自治法も実施されまして、地方自治制度が根本的に革新され、確立されるに至り、民選知事が活動を始めるに至りましたことは、民主國
日本建設のために大きな一歩を踏み出したものとして、まことに喜ばしいことでもありまして、この上は、つくられた制度の精神を活かして、実質的に地方自治制度を確立するための具体策を実施することを必要といたすのであります。
ところが、この地方自治制度の形式的な確立と並行して行われた
政府の各種の処置には、すでに昨日も同僚議員によ
つて指摘されましたように、かような精神に矛盾するものがあるのでありまして、
從來府縣知事の権限に属していた重要なものは、続々と知事の手を離れて中央の直轄とな
つて、各地に相次いで中央からの出先機関が新設されつつあるのであります。もとより地方分権制、殊に民選知事の制度は、ともすれば府縣割拠主義を促すおそれがありまして、殊に現在のような物資不足の際には、物資の偏在を來して、國全体の復興が妨げられる危險があるのであります。
從つてある程度において、國全体の立場からする統制と監督とは、必要ではありましようが、現在行われているような処置は、その必要の限度を逸脱しているおそれなしとしないのであります。そうして急激に知事の権限を縮小し、出先機関を増設するときは、かかる出先機関と地方機関、あるいはさらに地方民との間に摩擦を起しまして、物資の円滑なる需給関係を阻害して、かえ
つて統制本來の目的に反するおそれが十分にあるのでありまして、かつ現に各地において、かような摩擦が起りつつあるのであります。
われわれは、これまでのような中央集権
政治の幣を打破し、地方
政治の充実に力を注いで、府縣の民選知事に各種の権限を大幅に委讓して、地方自治制度を名実ともに確立するということが、民主國建設のために特に重大な意義を有するものと考え、しかもこれによ
つて生ずるおそれのある府縣割拠主義を是正するためには、公開の知事会議を法律的に確立すべきものと考えまして、これを主張しきた
つたのであります。われわれは、こういうような方法によりまして、各地方がそれぞれの特徴を発揮しつつ、相互に緊密な連絡をと
つて、自主的にしかも相協同して、協同体的な國全体をつくりあげるという体制を整えまして、初めて中央と地方との均齊のとれた民主國がつくられるものと信ずるのであります。
ところが、現に行われておるところは、逆に、あまりにも多くの権限を知事から剥奪して中央に集中し、せつかく確立せられた地方自治制の実質を奪うおそれのあるものであるばかりでなく、急を要する実際の問題といたしましても、その土地の事情に疎い出先の機関が、その土地の機関との間に摩擦を起しつつ、各種の権限を行使するにおきましては、重要物資の出まわり、殊に
食糧の
供出は、決して円滑には行われ得ないのでありまして、結局
政府の考えた
食糧危機突破の
対策も、その実施のために、大きなる障害に当面せざるを得ない結果となるのであります。
一体、ある階級ではなくて、全
國民が、闘爭でなくて納得ずくで、相互に協同し、
政府の施策に
協力して、
祖國再建に努めるべきであるということが、
社会党を中心とする現
内閣によ
つて、強く要望されておるということにつきましては、われわれは重大な意義を認めるものでありまするが、しかも
政府の要望するような
國民の
協力は、單に
政府から呼びかけるだけでなく、
國民が納得して
協力し得るような体制を整えることによ
つて、初めて可能なのでありまして、そのためには、あらゆる
方策を具体的に個別的に実行することを必要とするのであります。
私はそういう
意味から、一般的にい
つて、地方自治制度の確立、中央と地方、國全体と各府縣との関係の問題につきまして、
政府がどういう構想を有するのか、また緊急の問題としては、いかにして中央と地方とが一丸とな
つて、
危機突破のために努力すべきかの問題につき、
政府がいかに考えておるかというようなことについて、御
答弁を願うことを望んで、私の
質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔
國務大臣平野力三君登壇〕