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松原(一)
委員 この次に文部大臣の御出席を
黒岩君から要求せられましたから、そのときに私からもお尋ね申し上げることがありますので、それを御伝え願いたいと思います。
今日は
宗教と
教育というのが主題でありますから、その點でございますが、に本の
將来は
憲法において
一つの世界に類例のない誓約をいたしておるのであります。全國民の意思をも
つてこれを誓約した、それは恒久の平和であります。今ユネスコの運動が世界的に起
つて、あらゆる
科學、
宗教、道義、藝術を總合して、人類永久の平和を地上に出現しようとしておる。これは實に人類の永遠を貫く
一つの理想的要求だと思います。それだけにまたその實現は至難の問題であります。その大至難の問題を、今後、
日本が身をも
つて實現しようとすることに對しては、
日本國民の
將来に、大きな信念をもつた
教育が要る。昨年来、私はそのことを数次にわた
つて提案をいたしておるのでありますけれども、これは単なる
科學一本で、こういう大きな人類の理想の實現を、政治を通して行うことは不可能であろうと思う。それには、どうしてもここに敬虔なる人世観、大きな真理に對する國民の篤い
信仰がなくては、とうてい遂げ得られないことを思うのであります。そういうふうな
教育を
日本に實施しなければならない。従来は、とにかくあの
教育勅語が
教育の真髄であつた、また國體に對するところの
日本國民の祖孫一體の一貫した
一つの信念というようなものが高調されてお
つたのでありますが、それが一朝にして砕けて、今や教壇の上には修身という教科目もなくな
つたのであります。正面切
つて宗教を説く自由も許されない。これではたして、史上か
つて類のない徹底的平和主義の
憲法を制定して、これを世界の人々の前に實現を誓つたということに對する裏づけの
教育が、私は今のままで行われるものであるかどうかを、深く懸念するものであります。特に最近における
教育の現状を見、社會の人心の動揺を見るにつけましても、非常な大きい不安をもちます。
學校の
教育の
内容をこまかに視察する時間がありませんけれども、實に粗放な、眼前の
生活にのみとらわれた意欲が、野獣のごとく動いておるのみであ
つて、少しも敬虔名信念の上に永遠なる生命を求めようというような希望、情念がわいておらぬと思うのです。私どもは、政治は
教育なりと思
つております。また同時に、政治こそ最高の道徳なりと信じておる。その政治がこの
憲法の誓約の上に行わるものとするならば、行わるるだけの最も力強き信念が、その裏づけでなければならないと思う。ただいま片山内閣が非常な不評を受けております。けれども、非常な不評の中に、なおかつ強い信頼をもつ者の多數にあることは、マツカーサー元帥が言われたように、片山首相とフイリツピンのロハス氏と中國の蒋介石氏が、ともに敬虔なるキリスト教信者である、人格者である、精神主義者であるというところに、
日本國民の信頼もまた私はかか
つておると思う。社会党の首領であるがゆえに、決して信頼はしておらぬと思う。片山首相は、決して無理なことはしない、また篤信のキリスト教信者であり、高い人格をもつた人だというところに、私は全國民の大多數の信頼がつながれておると思うのであります。こういう
意味におきましても、私は今後の
教育のあり方に、やはりこの人格的な信頼、単なる理屈でないものがおかれなければ、
日本を貫く眞の
教育道は實現せぬと思うのであります。とにかく、アメリカが開國以来のあの人道主義を一貫しておる主張、また、歴代の大統領がことごとく清教徒の血を引いておるという事實、こういうことから考えてみましても、敬虔な信念をもつた人人が、
教育の中心に立ち、政治の中心勢力とならねば、この
日本の大理想は實現せぬと私は思うのであります。そのわれわれの考えと現實のあまりに開きの多いことに、私は非常な杞憂の念をもち、憂えを深うするものであります。
師範教育のあり方といつたようなものにつきましても、単なる先生の養成所であ
つてはならないと思う。それは、
日本がこの
憲法に示した独特の主張を實現する深い信念と實力とをもつた者をここに養成しなければ、
意味をなさないと思うのであります。ただいまの
教育界は端的に申せばあまりにすさみ過ぎております。この現状をも
つてこの新しい國是は、とても實現ができないと私は思う。そういう
意味におきまして曖昧模糊たる
態度ではなく、ほんとうに
宗教的な
情操を
教育の上に盛り上げて、篤い敬虔な信念の上に
將来の
教育を打立てていく固い御決心が、片山首相におありになるかどうか。——片山首相には、あると私は信じますが、森戸文相におありになるかどうか。この點につきまして、今日の延長としてぜひここに御臨席の上に、
日本の
教育の現状に顧み、そうして
將来の
教員養成の方針に對する御所見を、森戸文相から伺いたいと思うものであります。このことは、ただいまの
説明員の方々に御要求申すのではございませんし、物足らないと申すのではないのであります。これは重大な文教の根本問題と信じまするがゆえに、あらためて御出席の上にお答えを願いたい。私は以上を希望申し上げる次第であります。