○
柴沼政府
委員 日本美術展覽會の
審査員の問題について
お話がございましたので、本年度の事情を率直に申し上げまして將來の
方向を
考えてみたいと思うのでございます。本年度の
審査員を選ぶのに、選擧いたしましたのは、實は昨年度
展覽會を開會いたすにつきまして、
美術界の世論を聽く
意味におきまして各團體の代表者等の方々にお集まり願
つて、いろいろ
意見を伺
つた結果、
審査員を選擧する方法がよかろうという結論に相成りまして、昨年も選擧いたしたのであります。その昨年の
審査員の選擧の方法を、さらに本年若干改善いたしまして、本年度の
審査員を選出いたしたのであります。
展覽會の各部のうち一部、三部、四部、につきましては、この選擧の結果について別段の異論も批評も出なか
つたのでありますが、第二部の洋畫についてだけ、問題が發生したのであります。その發生しました理由は、本年の選擧の方法に、
從來五
囘以上展覽會に入選した經歴を
もつた
人々をも選擧資格を
もつということにいたしましたために、俗にいわゆる舊官展系と稱せられる
人々の數が目立
つて多くなりまして、その結果いわゆる在野系統と俗に稱せられております諸團體の方からは、わずかに二科會から一名の
審査員が當選しただけで、昨年當選しましたほかの團體からは、一名も入選しないというような
事態に立至
つたのであります。これは率直に申し上げますと、洋畫畫壇にいろいろな系統があり、それぞれ對立しております以上は、選擧をいたします際に、
お話もありました
通り、いろいろな方法によ
つて自分の有利とする
審査員を選出するような方法を講ずることになりまして、この選擧方法を續けておりますれば、いわゆる舊官展系が數が多くなるにしても、いずれにしても、問題は解消しないものであります。
從つて私といたしましては、もう少しこの問題を掘り下げて研究してみたいと思うのであります。ただいまそのための
推薦委員會の御示唆があ
つたのでありますが、そのときお算になりました前年の
審査員それから無鑑査の者、それから五
囘以上入選の者を合わせますと、約二千名程度の數になります。これが實は本年の選擧資格者だ
つたのであります。それで結局選擧という方法を、あるいはもう一遍
考え直さなければいけないのじやないか。また選擧のことだけを
考えずに、もう少し
日本美術展覽會の運營の方法を
考え直さなければいけないのじやないかというようなことを、事務的の範圍ではございまするが目下研究をいたしております。それでわれわれとしては、この
日本美術展覽會の性格が、一面には新進作家の登龍門として、優秀な
美術家を世に送り出すという一つの作用をすると同時に、また
美術の最高の作品を展覧して一般の鑑賞に供するという、二つの目的を併せて一つの
展覽會において實施しようというところに、そういう困難があ
つたのではないかと
考えまして、大臣の御決裁を經ておりませんが、そういうことのために、もし許されるならば、この二つの目的をそれぞれ切り離して二つの
展覽會にして實施をする。また實施に當る者も、
從來のように
文部省の
事務當局が直接當るというようなことでなしに、むしろ先ほど大臣の
お話もございましたように、
藝術院が相當に活動をする
希望もあるのでありまするから、この
藝術院を
中心に一切の
展覽會の
經營、運營に當
つてもらう。たとえば
審査員の選擧等についても、
藝術院に責任をも
つて選んでもらうというような方法の方が、かえ
つて公平であり、また内容の充實したものができるのではないか、かように
考えて、目下せつかく研究をいたしておる次第でございます。