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森戸國務大臣 ただいま
新日本建設國民運動に關連いたしまして、
五つの御
質問竝びに御
意見がありましたけれ
ども、私は全部その
通りと存じております。
新日本建設國民運動について、第一には、
政府は
もつと積極的にやるべきではないかという
お話、もちろんその
運動は
國民の間から自主的に起る
運動の形をしているのであります。けれ
ども、しかし
政府はそういうふうな機運をつくるために、十分骨を折
つて行かなければならぬのではないか。殊に
日本の
民主主義の
成長がまだまだ十分でないという
事態を
考えますと、そのことはまことにお説の
通りであります。
政府もこの點につきましては、各
府縣にこの
運動の要領を通達いたして、
適當な
處置を申し送
つておりますし、また許すならば、
一定の
豫算をも得て、經濟的にも、十分ではないけれ
ども、ある
程度の援助をしたいとも
考えておるのであります。
もつとも、この點は、實はいろいろな點で
追加豫算が非常に多額に上りますので、どの
程度まで、貫徹されるかということは、實ははつきりと申し上げられないのでありますが、そういうふうに
考えておるのであります。なお關係いたしております私といたしましては、二週間ほど前、
京阪地方に
協議會を開きまして、そこに臨みましたし、また大阪、神戸、呉、廣島、尾道、福山、
三原等の
都市において、
新日本建設國民運動の
公廳會あるいは
講演會も開いております。明日は
登呂の
遺跡の
關係者を激勵するとともに
靜岡市で
講演會を開こうと思
つておるのであります。大體重要な
都市には
參つて、この
運動の促進に
努力をいたしたいと
考えておるのであります。他面先ほ
ども申しましたように、新
生活運動も發展いたそうとしておりますし、
キリスト教の
團體その他では、
平和運動の聲があげられております。
青年團體、
婦人團體等においても、かような
運動の發足が協議されておるということでありますので、そういう形でだんだんと
成長していくものと、私は期待しておるのであります。
第二の問題は、殊に
農村において
文化的方面がもう少し強く積極的に主張されなければならぬのではないか。
青年團體、
婦人會等が、この問題に挺身するようなことにしたらどうかということでありまして、まことに私はご
もつともな御議論だと存ずるのであります。この
運動は
都會とともに
農村において十分に展開されなければならぬ。
農村におきましては、
青年團體、
婦人團體等が、この
運動の最もよい
推進力であり、私はまた現實に即した新生活改善の
目標もまた多くあるのではないかと存じておるのであります。
公民館、
博物館、
圖書館などについても、われわれはできるだけこれを充實いたしたいと存じております。
公民館の
運動も一時非常に進みましたけれ
ども、現在やや停頓の
状態にあるのであります。これはもう一度各
地方でこの
運動が展開されるように、また
圖書館については、殊に私はその必要を痛感いたしておりますので、各
地方の各村落の
青年たちによい讀み物が渡るようにすることが、非常に大切なことであると存ずるのであります。これに關連して、書物の統制についての御
質問ご
もつともであります。よい本がないのに、惡い雜誌や何かがたくさん出ておるのは、まことにおかしいではないか。何かこれに對して
適當な措置はないかという
お話で、まことにご
もつともでありますが、しかし、今日は、
出版の自由が認められております、また検閲制度はないのでありまして、これを取締まるということは、大體できない
事態にあるのであります。私
どもは
實際目に餘るようなものが
出版されておるということを存じておりますし、しかもそれが
出版の中でも一番大事な教科書が足らぬというところにそういうものが出ておるということは、まことにこの矛盾を目の前にはつきりと展開させておるのであります。しかし檢閲制度が嚴格に行われると言うことは、よい
方面もありますけれどまた戰爭時代のように惡ようされる傾きもありますので、これを大いに推進していくということは多くの今日の紙の供給の點で、これが必要なものにより多く割り當てられて、必要でないものには割り當てられないように、そして必要でないものがやみでこれを手に入れられないような仕組をつく
つていくということが、一番よい。そしてもう
一つは、
國民の購買力が、不當なよくないものにたくさん金を投じないで、いいものに金を投じるようになることが望ましいのでありますが、これはなかなか急速にはできませんので、今日の
事態では用紙の割當というものが合理化されて、しかもやみでこれが流れないような
方法にしていかなければならぬ。それが
政府の經濟緊急對策のと
つておる重要な面であると思うのでありまして、こういう側面から、この問題を解決していきたいと存じております。
次に第三には、
文化功勞者に對し、その功勞に報い、これを記念する
適當な榮典を設くべきでありという御
意見でありました。これもご
もつともであると存じます。軍國主義の時代には、武勲に對する多くの榮典があ
つたのでありますが、
文化國家を
日本がめざすとすれば、
文化的な功績に對して、それに對應するような榮典の制度が設けられることは、ただちに
考えらるべきところでありますし、私
どももそうあ
つてほしいとと思うのであります。今日
文化勲章があり、また一部分では
藝術院賞があり、また
藝術祭には
大臣賞というものがありますが、これはきわめて小規模なものであります。
もつと大きな、
國民的にすぐれた
文化をつく
つた人に報ゆる制度がなければならぬと存じております。榮典の制度については、
從來の榮典制度は、新しい民主的
日本の
建設とともに、幾多の點で改めらるべきものであると存じておりますが、その際には、ぜひともこの
文化に對する功勞というものに對して、正しい榮典の制度が設けられなければならぬと存じまして、私
ども及ばずながらこの
方向にあらゆる
努力をいたしたいと存じております。
第四の點は、
文化費の問題でありまして、
文化費五〇%ということは、私本
會議で申し上げましたが、どうもそういう數は言わなか
つたと思いますが、五〇%は、これからはそれでも足らぬので、私は
もつと欲しいと思
つておるのであります。ところが今日では五〇%どころではない、その十分の一の五%とい
つたふうでは、
文化國家になろうとする
日本としてもはずかしいわけでありまして、この
状態は、
皆様方の御鞭撻によ
つて何とか切り抜けてい
つて文化國家にふさわしい
豫算がつくられる時代が、一日も早く來るように願
つておるのであります。それに關しまして
文化は新しいものをつくるという
方面を、變革の時代には、人は絶えず
考えるのでありますが、他面においてすぐれた伝統的なうるわしいものを保存しておくということも、
文化の上では大切な任務であると思います。殊に變革の時代には、古い物に對する正しい認識が、ややともすれば忘れられがちでそれがために實は古いものが捨てられて、これは間違
つたと思
つても取返しがつかないようなこともある次第であります。私
どもは、新しい
文化をつくることには非常な重點をおいておりますけれ
ども、
文化の
建設というものは、飛躍的に行われるものではなく、古い傳統の上に立つものて、殊に
日本においては、よい
文化の傳統もあるのであります。その
意味におきましては、
史跡、
國賽または重要
美術品というものに對し、十分の
關心が拂われなければならぬと存じております。生活の窮乏のために、
國民的なことの大切遺産が荒廢されるようなことがあ
つては後代のために、まことに相濟まぬと存じているのであります。で、人間のつく
つた文化とともに、わが國にはうるわしい自然があるのであります。
國民のうるわしさは、この自然に負うところもきわめて多いのであります。私
どもはこの
意味で、うるわしい自然と
天然記念物等も十分に愛護していかねばなりませんので、こういう點におきましても、私
ども文化費を
考える場合に、常に
關心を
もつのみならず
國民一般が、これらのものについて十分な
關心を
もつようにすることが、變革の時代におきましては特に大事ではないかと存じております。
最後に、第五の
觀光事業に關連いたしまして、私は
觀光事業というものは、
藝術あるいは美的の側面の
教育が重視されなければならぬと
考えたいのであります。新しい
日本におきましては、
觀光事業というものは、いろいろの點で
重要性をも
つておりまして、これに對するいろいろの
研究が行わなければならぬことは申すまでもないことであります。
從つてこの問題に對するエキスパートも必要であると思うのであります。但し、
觀光大學というものまでつくるかどうかということには、大分疑問があるように存じます。しかし觀光の問題というものは、いろいろな點で
重要性があると思います。そしてそのことは、むしろそのうしろにある
藝術的なものに對する
國民の
關心、またはそれに對する
教育というものが、非常に重視されなければならぬという
お話と存じますが、これはまことにその
通りで、
音樂、美術に對する
教育というものは、まだ十分であるとは申されません。また
先生方もそれに對する資格が必ずしも十全であるとは申されませんので、殊に新しい
日本といたしましては、十分に重きをおいて
考えていかなければならぬと存じております。實は
音樂、美術等につきましては、今日の生活の窮乏の時代において、ややともすれば看過されがちでありまして、一方ではうるわしいものに對する認識が失われ、他面では卑俗な野卑な趣味が
國民の間に横溢するという
状態にありますので、私はこの際本当の
藝術的なるもの、美的なるものに對する正しい教養が、
國民の間に十分に滲透しなければならぬと思います。御
質問に
なつた點はま
つたく同感でございます。