○井上(良)
政府委員 ただいま提出されました
開拓者資金融通法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案
理由の概要を御説明申上げます。御
承知の
通り、
政府におきましては、去る第九十二帝國議會において成立いたしました
開拓者資金融通法に基き、開拓者の營農資金及び住宅資金といたしまして、
昭和二十一年度におきまして總計四億一千一百萬圓の貸付を完了し、
昭和二十二年度第一四半期におきましては總額約三億八千萬圓を貸付中でありまして、資力に乏しい開拓者に、あるいは農機具を、あるいは住宅を、あるいは家畜を入手する
機會を與へ得ましたことは、
政府といたしましても、開拓者の營農竝びに
生活安定の基盤を築く第一歩と信じ、今後ますますこの適切なる運營によりまして同法の目的達成に遺憾なきを期している次第であります。
しかしながらかように申しましても開拓地は一般に惠まれぬ環境でありまして、しかも地味瘠薄でありますのみならず、經濟的に見ましても非常に不利な條件にあるものが少なくないのであります。從いまして當面の營農収入は全く問題になりません。この困難な諸條件にありますところの開拓者を少しでもその
生活の困難を救うために開拓地の自然的經濟在的立地條件に即應して、適正な規模を有する共同施設を導入し、生計の資金の獲得のみならず營農資金の補填おもさせますと同時に、これらの開拓地の
農業經營の安定をはかることが目下重要であろうと
考えている次第であります。
しかしながらこれに要します資金は開拓者の自己資金の醵出、あるいは開拓者團體の信用による外部負債の導入等に依存することは事實上困難でもありますし、また普通の金利をも
つてしては負擔の重きに失する憂いなしとしないのであります。ここにおきましてどうしても
政府資金による低利長期金融を必要とするのであります。そこで
政府といたしましては本法案により
現行の
開拓者資金融通法の一部を改正いたしまして、
政府の資金をも
つて開拓者の組織する法人に對し、その必要とする共同施設資金を貸付けようとするのであります。本法案に申しますところの共同施設とは、さしあたり開拓者のための副業施設を
對象とする所存でありまして、最高限を二十萬圓以内とし、償還の
方法等については從来の營農資金、住宅資金と同じく、長期低利の均等年賦償還の
方法によることとしたのであります。ただすえおき期間につきましては、營農または住宅資金の場合は五箇年でありますが、共同施設資金については、その貸付は法人に對して行われるものであり、一應は入植者の經済とは別個のものでありますので、施設の操業開始までの期間を一箇年と想定し、この期間のみを無利子ですえおくことといたしたのであります。
以上がこの法案の趣旨と
内容の概略でありますが、どうか愼重御
審議の上御可決あらんことを切望する次第であります。
次に
農業資産相續特例法案につきまして、その提案
理由を御説明申上げたいと思います。
申すまでもなく、日本の
農業は、經營規模がきわめて零細であることをその特色といたしておるのでありますが、これがために高度な
農業技術の導入が妨げられ、
農業生産力の發展は停滞いたし、現に今日
農業近代化えの大きな障害とな
つていることは、萬人ひとしく認めるところであります。しかもなおかような零細經營の崩壊を支え、辛うじてその維持發展をもたらしたゆえんの一つは、その可否はともかくといたしまして、わが國の家督相續制度にあ
つたことは、これまた異論のないところであると存じます。しかるに前議會におきましては、日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置法案が上程可決せられ、わが國の相續制度は改正されることになりまして、家督相續が廢止され、遺産相續だけが行われることとな
つた次第であります。從いましてもしも
農業の相續に際し、遺産が均分により分割相續されるに至りますならば、さらでだに過少な
農家の農地その他の
農業資産はさらに細分化され、一層零細脆弱な經營形態となるか、または
農業經營者が相續の行われるごとに過大な債務を負擔して、小作農同様の地位に陥るかの、いずれかの途をたどるおそれがあると言わねばなりません。かくては現に實施中の農地改革によりせつかく創設された自作農も再び小作農と同様の地位に轉落し、日本
農業もまた弱體化し、われわれが農地改革の結果に期待すべき
農業の近代化と農村民主化の實現に重大な支障を及ぼすに至ることは明かであります。從いましてかように相續に起因して、
農業資産が細分化されることを防止するとともに、進んで
農業を營むべき相續人に對し相續上の保護を與え、
農業經營の安定とその健全な發展をはかるべき必要な措置を講ずることが絶對に必要であると確信するものであります。しかし新憲法の施行せられております今日、古き家督相續制度の觀念から脱却するとともに、新憲法の理念に立脚し、新たな觀點より
農業の社會的
生産力發展の基盤を確保するため
農業資産の相續について民法の特例法を制定せんとするのが、すなわち本法案提案の
理由であります。以下法案の主要な
内容について、概略を御説明申上げます。
先ず農地その他の
農業資産は、相續によ
つてこれを分割すること禁じ、一人が相續することにいたしたのであります。しかして
農業資産相續人については、家督相續の觀念から脱却いたし、
農業を營む見込みのある者が相續人になることを建前といたし、被相續人の指定した者または共同相續人の話合いによ
つて選出した者が原則として相續人になることにいたしたのであります。
次に
農業資産相續人は、相續上
農業収益による負擔力以上の債務を負わないように留意いたしまして、他の共同相續人と同様の相續分を受けるほかに、
一定の特別の相續分を受けることにいたすとともに、他の共同相續人は、
農業資産が一人の相續人に歸属することによ
つて不當に利益を侵害される場合には、
一定の範圍で
農業資産相續人に救償をすることにいたしまして、相續人間の利益を公平に調和することにいたした次第であります。しかして、
農業資産の相續上の問題が、裁判に附される場合には、裁判所は、
農地委員會の
委員の
意見を聴くことを要することといたしたのであります。
以上が法案の主要な
内容でありますが、何とぞ愼重御
審議の上速やかに御協贊あらんことを切望いたす次第であります。
次に
農産種苗法案について概要を御説明申上げます。
種種が
農業生産にと
つて、その
根本であり、優良種苗の使用がきわめて重要であることは言うまでもないことであり、殊に蔬菜種子を始め、果樹苗木その他の
農家が購入して使用するのを普通とするいわゆる販賣種苗は、その購入にあた
つて、しばしば不良種苗によ
つて栽培
農家が損害をこおむる場合が少なくない實情にあるのに鑑み、
政府は優良種苗の育成と
生産について種々施策に努めておりますが、今囘新たに農産種苗法を制定して、取引種苗の品質の保持向上を期することとしたもので、これによ
つて國内においての
農業生産に裨益し、栽培
農家の利益が擁護されるばかりでなく、園藝種苗等の海外輸出の振興に役立つことが期待されるものであります。
この法律は各種の作物の栽培に使用される種子や球根、苗、苗木あるいは採種のため使わはれる母本とか、苗木を仕立てるための穂木やだい木等に適用されるように規定されてありますが、實際には普通に取引される蔬菜種子、果樹苗木その他の販賣種苗が
對象となり、その種類は
農林大臣が指定することになるのであります。何人でも自由に種苗の販賣業者となることができるが、その營業所ごとに地元の市町村に届け出で、市町村長はこれを
農林大臣に
報告しなければならないことにいたしました。これは後の規定による種苗の取締上の必要に基くものでありますが、元來
農業生産の
根本である種苗を取扱う種苗業者としては、種苗の販賣にあた
つて十分
責任あるやり方をしなければならないことは當然でありますので、趣旨によるのであります。
種苗業者が種苗を販賣する場合には必ず種苗の品種名、
生産地、
生産年月、發芽率等、種苗の品質に關する表示、すなわち保證案の添付を行はせ、これに對して農林省に種苗檢査所を設けて、故意に不正な表示をして需要者に損害を及ぼすことのないよう、種苗檢査取締りを行い、需要者が安心して種苗を購入使用できるようにしたのであります。
次にこの法律として前項の不正種苗の取締りを行う半面、優秀な新品種、新系統の種苗の育成を推進するため、その育成者の名譽を推賞しその利益を擁護するように、これの育成者は
農林大臣に出願して、種苗の名稱の登録を受けられることとしました。この名稱登録を受けた種苗は、登録を受けたもの及びその者から許諾を受けた者でなければ種苗として販賣できないこととし、その販賣について保護を與えるものであります。
以上が種苗法案の概要であります。何とぞ御
審議の上速やかに御可決あらんことを望む次第であります。