○森(幸)委員 今後のいろいろの問題について、今の御答辯によりまして希望いたしておきたいことは、先般國會に白書として、時局乘切りに對する
政府の所信をわれわれ議員にお示しになりました。これは私は正當な手續と
考えるのであります。
食糧の緊急確保對策に對しましても、
新聞に閣議の決定として御發表にな
つておりますけれども、それはあるいは印刷の上において、誤植の責任も
考えなければならぬと思うのでありますが、よろしくかくのごとき重大なることは、すべてわれわれに對して、國會に對して、これを御發表になるべきものであろうと思う。そうして
政府は閣議決定して國民に臨む責任を明らかにせられることが、その道であろうと私は
考えております。しかし
新聞の記事の全體においては、あるいは責任を背負えないという
お話がありましたが、やはり
座談會あるいは農
相談として
新聞に記載されますると、國民はこれを正直に受入れる今日まで
日本の國民性にな
つておりますから、もしもその記事が農相の意思に反するような場合がありましたならば、直ちにこれは訂正されることを今後希望するのであります。しかして私は時間が非常に制約されておりますので、質問の事項を逐次に申し上げます。相當數がありますから、お聽き逃しのないようにして、御答辯、御
意見を伺いたいと思います。あらかじめ申し上げておきますが、決して私はあなたのお困りなさるようなことを申し上げようと思わぬのであります。今日の
食糧事情は何としてでも國民一致協力して突破せなければならぬ重大な時期と
考えるのでありまして、われわれも現内閣の成立いたしましたときに、その政策の協定に加わ
つて、そうしてこの難局を乗り切りたいということは、わが黨としてもその本旨を明らかにしておるのでありますから、どうかひ
とつ誤解のなき氣持でお聽きとりをお願いいたしたいと思います。
農相が就任された當時
食糧問題について事務當局にその内容を聽いてみて、非常に窮迫しておることに驚いた。豫想外に
食糧が窮迫しておるということを
お話にな
つたのでありますが、先般
食糧問題はどうか政爭の具に供していただきたくないという御希望がありまして、まことにごもつともであります。しかし農林當局としての責任を背負いなす
つたときに過去においてどういうことにな
つてお
つたか。自分は
農林大臣にな
つてみたが、どうも前内閣が
食糧問題を十分にや
つておかなか
つた。それで親の財産を繼いでみたところが、おやじが借金をしてお
つて、非常に困るというような、責任を他に轉嫁されるような氣持を私は
考えるのであ
つて、むしろさようなことをお
考えなさる、またそういうことを言明されることそれ自體が、政治問題に供されるのではないかというようにも
考えるのでありますから、この點についてひ
とつ御
意見を承りたいのであります。
次に第二の問題といたしまして、農地法に對して第三次の改革をしたいと思うということを御就任當時發表されております。この農地法はすでに第二次改正が終りまして、目下本年一年の間にその目的を達成するように
政府として努力されておるのでありまするが、さらに第三次の農地法改正の意思ありということに言及されております。その理念とされるところはどういうところにあるかということを承りたい。か
つてあなたは七十六議會に農地改正法を議員
提出法律案としてお出しにならんとせられたことを
承知いたしております。その當時のあなたの理念は、小作地を國有として全農地の
國家管理を斷行する、家産制自作農の創定に移行せしむるという理念をおもちにな
つてお
つたのであります。今おもちにな
つておるところの、農地法の第三次改正をせられんと希望される場合において、やはりこの理念をお捨てにな
つておらないか、この點をひ
とつ承りたいのであります。
次には
農業形體の改善をしなければならない。こういうことも御發表にな
つておる。
農業形體をどういうように改善せられんとするのであるかどうもわれわれはそういう
お話を承るときに、今少しく具體的に理念を表現されなければ、國民は非常に迷うのであります。それでこの
機會に
農業形體の改善をなすという言明に對する、具體策とまでは申されないと思いますが、いま一歩つつこんで、どういうふうな形體で改善せられんとしておるのか、その點を承りたいのであります。
それから次には供出制度の根本的改正を立案中ということを言明されております。昨日も参議院の自由討議の模様を、
結論として
新聞等によ
つて承れば、このお説が出ております。これは昨年來あなたと一緒に
食糧對策委員會に列しておりまして、この問題についてはお互いに研究を進めてまい
つたのであります。私はその當時の理念といたしまして、今日の供出制度は天降り式である。昨年はようやく
生産者が
なつとくするように、
生産者の保有を認め、そうしてその餘
つたものだけを供出せしむるという、一應理論が合うような供出制度を
考えられたのであります。しかし
結論においては強制供出、強權の發動をしなければならないことにな
つたのであります。昨年
農林大臣はこの強權發動に對しては非常に反對の御意思を發表されてお
つたのでありますが、しかしこの強權を發動しなければ、
政府の豫期するところの供出が確保できなか
つた。私はそこに無理があると思う。過去しばらくの間でありましたが、私は責任の地位に立ちまして、この供出の根本としては、立地條件にいくか、立毛條件にいくか、これを
はつきりしなければ
日本の供出制度は完全にいかない。
生産者が
なつとくして供出するという態度を出せしむるには、どうしても立地條件にいかなければいかぬということを強く主張してお
つたのであります。今もこの主張を變えるものではないのであります。過去において農林事務當局に對しまして、君らもこの立地がいいか、立毛がいいかということをよく
考えて、そうしてこの供出制度の根本的改善をしなければならぬということを私は注意いたしまして、その基本を確立するように話してお
つたのでありますが、本年度のじやが芋の供出におきましても、現にお前の縣ではこれだけのじやがいもの種芋を配給いたしておる。一
段歩當り三十貫ないし三十五貫という種芋の量である。これだけの種芋を配給すれば、これだけの段別が栽培されておるとみなければならぬ。そうすればその段別に對して、段當りこれだけの收量を豫想される。それであるからこれだけのものを供出しろ。こういうふうな割當の基礎のように聞いておるのであります。こういうことがそもそも
生産者の
生産意欲を減退し、消耗せしめ、そうして
政府の豫期するところの供出量が確保できない、こういうふうに私は
考えるのであります。またこの議會に
生産調整法というものを出した。そうして
生産命令をして、その
生産命令によるところの段別によ
つて肥料を配給し、あるいは資材を配給し、その條件によ
つて食糧を供出せしめようとされるように
考えられるのでありまするが、これはか
つて戰爭中に、麥を何段つくれ、稻を何段つくれ、こういう
生産命令が出たのでありまするが、
生産者は決してこれを喜んでやらない。戰爭中でありましたけれどもその
通りこれは行われなくて、この施策は失敗に終
つたのであります。今日は聞くところによりますれば、ある
府縣のごときはりつぱ芋あるいは陸稻の栽培せらるる耕地に砂糖きびを栽培する。あるいは玉ねぎを栽培する。りつぱに水田として耕作し得る耕地にさつまいもを栽培する。さつまいもはまだ供出の對象にな
つておりますけれども、玉ねぎのごとき、あるいは砂糖きびのごとき、供出の對象にならないものをつくる、もとより經濟生活をしておるところの農
業者でありまするから、その利潤を追求することは當然であります、一
段歩の耕地より收益をいくらかでも多くあげようとするのはこれは當然でありますが、この
食糧危機を突破しなければならぬ時期において、そういう
政府の意思に反した行為に、途儀なくか、作為的にか、出るというようなことは、まことにこれは政治の貧困なところであ
つて、この供出制度は根本的に改正しなければならない、それには立地條件によ
つてこれをせねばならぬと私は
考えておるのでありまするが、
農林大臣も供出制度の根本的改正を立案中と言明されておるが、どういう
意見であるか。またわれわれが常に叫んでおりますところの、
一定の供出を出して、もしその餘剰の
食糧があれば、その當人の自由意思によ
つてこれを
政府に賣る。自由販賣をせしめるということが
生産意欲を高揚するというように
考えられるのであります。今日
アメリカより
食糧を
輸入しております
状態において、勝手氣儘にこれを賣らすということは、あるいは買占が行われ、かえ
つて金ある者がこれを買占めてしま
つて、結局金のない者は配給に苦しまなければならぬということになりまするから、私はまず今日の段階といたしまして、ある
程度の
價格差によ
つてこれを
政府が買上げるということが必然的に起
つてくる
方法ではないかと
考えるのでありますが、農相の所見をこの際承りたいのであります。
次には
食糧食糧對策に對して正確なる
數字を把握いたしたい。そうしてその方策をきめたい、かように
お話にな
つております。これはまことにごもつともです。私は昨年來この農政問題について、いろいろと現在の、あるいは
將來のことを
考えまして、施策を立てんと
考えたときに、ぶつか
つてくるのは
數字の不明確であります。か
つて私は
政府に對して正確なる統計をつくれ。あのソヴイエトが大戰後起ち上るときに、四箇年間の統計學校を建てて、統計技師を養成して、そうして五箇年計畫の基礎をつく
つたという實例を聞いております。
日本が敗戰後客觀的な
數字が
一つもない。殊に戰爭中秘密秘密という氣持ですべての統計が燒却されておるわけでありますから、それほど正確なものをつかむことができない。たとえば麥の耕作段別にいたしましても、稻の耕作段別にいたしましても、この不確實の
數字をつかまえて、どうして現實に合うような政策が立てられるか、われわれはここに惱みをも
つておるのであります、はなはだ不徹底であるが、この統計法が昨議會を通過いたしまして、統計調査がやや常軌に上らんとしておるのでありますが、今日のようなあの貧弱な
數字においてはどうてしも正確なものを急速につくることはできない。かようにわれわれは思うのでありますが、
農林大臣はどういう
方法手段によ
つて、正確なる基礎をつかまんとされているのであるか、この點を
一つ承りたいのであります。
次は今責任をもつと
お話になりました、
食糧緊急確保對策の十二項について、二、三お尋ねをいたしたいと思います。
輸入食糧の殺到と麥、芋の輸送確保の計畫的能率的の運營ということが第二項に揚げられておりますが、この御趣旨をいま少しく具體的に御
説明を願いたいと思います。
次に第三項として緑故小包米の供出を揚げられております。今日一一〇%の供出をさせられた場合において、
生産者のどれだけが緑故米を供出する餘裕ありとお
考えにな
つておられるか、現に卑近な例を申し上げて失禮でありますが、滋賀縣のごとき、私の家とい
つてもいいのでありますが、八月いつぱいの保有米はようやく確保いたしまして、九月以後はすつかり供出いたしております。それが滋賀縣におきましては大體の状勢であります。おそらく各
府縣におきましても、一一〇%の供出のために十一月の端境期までに、自分の取上げるさつまいもを
豫定しなければ、保有
食糧というものはとうてい確保できないと
考えております。このときに緑故米を出し得るところの余力ありと
政府側では認められているかという點であります。また緑故米の小包輸送は、その
價格の點において自由販賣と認められると
考えられるのでありますが、この點についてのお
考えを承りたいのであります。
それから魚類蔬菜等の即賣をする。第七項には代替配給の制度を設けるということを揚げてあります。
日本人はか
つて、
戰爭前には二四〇〇カロリーをも
つて、必要カロリーとされてあ
つたのでありますが、今日は敗戰國の悲しさに、最低限度の一二〇〇カロリーをようやく、補給されることにわれわれは甘んじなければならないのであります。ただ二合五勺の配給をいたしました場合、その二合五勺の主要
食糧、いわゆる米麥によらずして、あるいはさつまいも、あるいはじやがいもをも
つて補う、さらに今囘
政府は魚類をも
つて、あるいは蔬菜をも
つて二合五勺の配給を代替してゆこうと
考えられるのでありますが、そういう場合において、どういう
計算によ
つてこのカロリーを出されるのか、米一升に麥なんぼ、芋なんぼということが、今日まで代替供出で認められているのでありますが、米一升に對して玉ねぎがなんぼ、あるいはするめがなんぼというようにカロリーで
考えられるのであるか、そういうふうな
數字をどういうようにして積算されるつもりであるのか。あるいは六大都市に對しては主要
食糧の代替配給を行う。酒であるとか、あめであるとか、ズルチンであるとか、あるいは砂糖であるとか、タバコであるとかが揚げてありますが、主要
食糧がさようなものによ
つて代替し得られるのであるか、私は六大都市の方々は、飯を食わぬでズルチンなめてそれでいいであろうかということも、はなはだ奇異に
考えられるのでありますが、今日の
食糧事情はさようなことを許される
事情にない、かように
考えられるのであります。この點についてこの十二項目の中に加えられました所見を承りたい。またその中に幼兒
食糧の確保ということが揚げられてあります。私はこの乳兒に對する手當ができませんので、せつかく生れては死に、生まれては死ぬ、あの乳兒が死ぬことによ
つて親が苦しみ、悲しむということを
考えますと、榮養不足の結果と
考えられるのでありますが、もう一歩進んで妊婦に對して榮養の補給の途を
考えるということが、生れた弱い子供をりつぱに育てるというよりも、むしろりつぱな子供を生むようにして親をして榮養をとらしめる。こういうようにもう一段先のことを
考えるのがいいのではないか、かように
考えるのでありますが、これに對する所見はどうでありますか。
次に自給農園の擴充ということが十一に揚げられております。これは燒け跡等の自給農園が相當數に上
つております。これは東京都における
食糧對策について、いろいろと構想を專門的に研究されておる方もあるのでありますが、せつかくこの建築までの燒け跡を、もつともつと有利に利用するということがこの
方針と思うのでありますが、その制度がただここに作文せられてあるだけであ
つて實現し得ない。この燒け跡の耕作は、われわれ見ましたときに、實にりつぱに專門の農
業者を負かすような作柄もありますし、またほとんど人まねに作づけて何ら收穫のできないようなも
つたいない結果を見ておるものもあります。これは肥料がめちやくちやに使用される。いわゆる肥料をほどこすところの技術に缺けておる。肥料は相當自給し得る立場にある人が、つまらないやり方をして、せつかくのものをだめにしておる。また栽培の
方法を少しも辨えない。ただ人まねばかりの栽培をしておる。もう少し手をつければもつと
生産されると
考えることも、その手當ができていない。
結論において技術の指導がないのであります。せつかく自給農園を擴充するというよりも、むしろりつぽなものに、能率をあげるという上において技術指導が私は必要であろうと思う。こういうふうなお
考えがあるか。ただ十二項目を羅列されまして、そうして
食糧緊急對策として揚げてあるのでありますが、その内容をもう一段つつこんで御
説明を願いたいと思うのであります。
次にこの緊急對策の
一般農
業者に及ぼす
影響でありますが、今どうか米を早く出してくれ、救援米を出してくれという氣持から、いろいろの條件がつく、酒をやる、タバコをやる、あるいは
値段を上げる。こういうようにそれからそれへといろいろの手段が講じられてまいるのでありますが、こういうふうなことは今一時はそれによ
つて効果をあげるかと存じまするが、その結果非常に
將來惡い。たとえば米を供出する場合においてもまじめに早く出したものは、
價格の上においてはさかのぼ
つて清算されるので間違いはないようでありますが、
あとから出せばいろいろの條件がよくな
つてくる。こういうふうなことに
考えるから、なるべく供出を遲らせばいいのではないか、ずるくやればまた
政府がタバコをやる、酒をやるといろいろのことを言うてくるからというように、惡い
影響を
將來に殘すのではないかと
考えます。これはか
つて戰爭中にあ
つた金屬囘收の例を引いてみたいと私は思います。第一囘に金屬を囘收する場合において、鐵は、しんちゆうは、赤がねは、すずはというので、一應の
價格を表示されて愛國心によ
つて出した。ところが第二囘の金屬供出になると、第一囘よりもさらに
價格が上
つてきたのでばかをみた。やいやい言うて率先して金屬を囘收したのに、第二囘の囘收はまた高く
なつた。もちろん戰爭は長期戰爭だから、また言うてくるだろうから出さないでおこう。その次に出せばまた上るというので、この
價格の
改訂のために金屬囘收がだんだん遲れて、戰爭に間に合わなか
つたように聞いておる。私はこの緊急對策のやり方が、供出なり
生産の
將來に惡
影響を及ぼすと思う。また今日の農村に對して、酒をやるから、タバコをやるからというようなことによ
つて、
生産や供出をせしむるというこのやり方は私はよろしくないと思う。根本的に
生産者は
國家の重大な責任をも
つて、
食糧生産をしておるのだから喜んで供出するのだという氣持に、政治を差向けなければならぬように私は
考えるのでありますが、御所見はどうでありますか承りたい。
次にお尋ねいたしたいことは、供出に對して農民に
なつとくをいかしめるということであります。今囘米價の豫想をどうおもちにな
つておられるか。先般麥、じやがいもの
價格が定まりました。それはパリテイ式の
計算によるということでありますが、百姓はわかりません。ハイカラな、なまいきな事柄は知りません。何が何だかわからないが、これだけに麥がな
つたのだ、じやがいもがな
つたのだ、しかし肥料は二千六百圓の窒素肥料が六千圓にも八千圓にもなるそうだから、麥の
値段を上げても、米の
値段を上げても、結局金を余計勘定するだけで、
生産者には何ら利益がない。ことにパリテイ式などというわけのわからないものでごまかされた氣持がある。もとより魚にしても米にしても農産物にしても原始
生産でありますから、原價
計算ということはこれは不可能であります。一軒一軒、一人々々違うのでありますから、原價
計算によ
つてやるような第二次
生産物と違いますので、そこに無理があります。無理がありますけれども、農産物の
價格をきめられるには、もつとこれならこれくらいでいいだろうという
生産者の
なつとくするような
方法を
考えていただきたいと思う。よしパリテイ式によ
つてきめられるにいたしましても、その
價格が
生産者に滿足を與えるというふうな手段に出ていただくことが必要と思うのでありますが、御所見いかがであるか。
次にお尋ねいたしたいことは、本年度内の
輸入食糧をどの
程度にお
考えにな
つておるか。
あとでこれは申し上げますが、吉田内閣のときには二百萬トンの
輸入を
豫定された、こういうように
お話に
なつたようでありますが、私の
計算によりますと百三十萬トンばかりの
輸入で大體需給推算ができた、かように
考えておるのでありますが、本年度の食料に對してどういうふうにこの
輸入を今後お
考えにな
つておるか、この點を承りたい。また報奨
物資等に肥料をやる。あるいは蔬菜の確保に肥料をやる、肥料を非常に配給するように
お話にな
つておりますが、今は肥料の
生産は商工省に移
つておりまして、
農林大臣といたしましてはこの
需要量を定めることと配給だけの責任にな
つております。農林省は
考えておられるだけの肥料を責任をも
つて商工省が
生産しますか。これは
一つの
政府でありますから、
政府の責任でありますが、おそらく私は今日の石炭
事情から申しましても、あるいは鐵鋼材の
需要から、また電力の
需要から申しましても、豫想
通り農林省の
考えておられるような肥料の
生産は不可能ではないかと心配するのであります。これは心配してお尋ねするのですが、決して心配しなくてよい、農林省の約束した肥料は必ずやるということを
はつきりと言明でき得ますか。この點を私は伺
つておきたいのであります。
それから
食糧問題の現状につきまして非常に御心配にな
つておられることを私はお察しするのであります。しかし物は出れば餘る。爭えば足らずで、今日
食糧が足らぬ足らぬと言い出しますと、ますます足らぬようになるのではないか。先般の本
會議の自由討議において、從來の
政府は秘密主義であり、國民に眞實を知らすな、知らさぬがよいのであるというような
意見も出ておりましたが、私思い起すのに、二十年の十二月に、當時の内閣が農村に供出をどうかしてくれ、供出をしてもらわなければ一千萬人の餓死者が二月頃にはできる。どうか農民諸君、
食糧を供出してくれということを澁澤大藏
大臣が發表いたしました。それからやみが始まり、リユツクサツクを背負
つて汽車の窓をたたきこわした。これは
政府の言明からである。いよいよ二月になれば一千萬人の餓死者ができる。それでその一千萬人の中に入
つてはたいへんだというので、汽車の窓をこわし、やみが始ま
つた。これが元祖である。神經をあまり細かくして、端境期までは二十何日の缺配を餘儀なくされる、こうしなければならない、ああしなければならないと
政府から言明されますと、いよいよ國民はいら立
つてじつとしておられない。今のうちに確保しなければならないということにな
つて、ますます
食糧を窮屈にする。それがために東京では當時米のやみは七十圓と聞いておりましたが、今日は二百圓でも買えないということにな
つておる。こういうようにますますあるものを爭
つて缺乏に導くのではないかと
考えるのであります。この
機會に私は二十二年度の
食糧事情について私の
考えておりまする
數字を申し上げて、
農林大臣のお
考えと合うか合わないか、
一つ承りたいと思うのであります。これは
平野君も私と同じように、その當時
和田農相から示された米穀の需給推算の根據であります。昨年の五月一日の人口は、七千七百八十一萬四千人でありまして、そのうち
一般消費者が四千五百六十二萬八千人、それに二合五勺の配給をいたしますと三千八百五十一萬三千石が要る。勞働者として加配すべきものが七百五萬四千人、これに平均一合七勺の勞務加配をいたしますと三百九十四萬二千石が要る。また
生産農家の保有量の不足するものについて、これに二合五勺の配給をしなければならないのですが、その不足者は百六十六萬一千人ですから、これに二合五勺を配給するとして三百六十七萬三千石、そのほかに復員者あるいはさらに
政府手持ちとして九萬三百石、合計四千六百二十一萬八千三百石というものが二十二年度の
食糧として要るのであります。今日は申し上げるまでもなく、二十二年度の
食糧はすつきり確保する時期に入
つております。すなわち去年の米はとれておりますし、さつまいももとれております。今年の麥も馬鈴薯も割當はできました。それを見ますと、米、雜穀は二千八百六萬三千四百石の供出であります。これが一〇〇%の供出であります。次にさつまいもがとれておりますが、總合
食糧に廻わしますのは四億三千七百五十
萬貫、これを米に換算しますと四百十萬五千石、これは
新聞の發表を根據として申し上げるのであります。麥の供出割當は北海道、青森を除いて、四百九十六萬七千九百八十石、馬鈴薯は六億三千四百十九
萬貫、これを米に換算いたしますと、七十四萬五千五百石ということにな
つております。さらに前内閣が追加供出の要求をしたのではありません。これは
大臣のいつかのお言葉にもあ
つたようでありますが、五千七百五十萬石を
政府が豫想したところが、
關係方面の調査では七千百萬石からになる。そこでまだ一割の供出の餘裕があるということで、一割の供出をさらに
政府は
考えたのであります。それから雜穀があるために二百五十萬石に一割の供出を見ておるようでありますが、それがこの間の
新聞によりますと、百六十七萬石しかいまだに供出ができていない。それで一〇三%に頭を打
つておるということでありますが、これは是が非でも一一〇%の供出をせしめなければ、横着をしておればもう出すことはいらないということになりますから、これは必ずおとりになるものと見ますると、合計四千三十八萬一千八百八十石になる。そうすると先ほど申しました
需要量から差引きますと、不足量は五百八十三萬六千四百二十石になるのであります。これに一月以來の
輸入食糧の放出量を合せますと、一月が五萬五千トン、二月が八萬七千五百トン、三月七萬五千トン、四月十萬四千トン、五月十六萬七千五百トン、六月上期十一萬五千トン、下期が十三萬一千トン、七月上期が十萬八千トン、總計八十四萬三千トンの放出を得ておるのであります。そうしますとこの不足額五百八十三萬六千四百二十石、これをトンに直しますと八十九萬七千百四十トンになります。そうすると
農林大臣が非常に御心配になり、十一月の端境期までに二十日も缺配をしなければならないというような
數字は出て來ないと私は思うのであります。このくらいのことならば何とかして切抜けることができるのではないか。
大臣は配給量は切下げぬというが、缺配は約一箇月ある、切下げと同じではありませんか。こういうことを發表すればするほど國民は心配する。推算需給からいえば、いま少し
關係方面と
お話願
つて、八十九萬七千百四十トンの今年の足らぬものについては折衝を重ねていただくならば、さほど
食糧問題は心配することは要らぬと存ずるのであります。今日の經濟新報によりますと、井上政務次官が京都へ行
つて、十一月からは三合配給するというようなことを言うておられるのでありますが、これまた
新聞記事でありますから責任はとられぬかもしれませんが、そういうようなことを言うということが、
食糧問題を政爭の具に使うということになりはしないか、こういうことを
考えるのであります。それから今後の缺配はなお恐ろしくなる。今までは缺配が續きましても、やみ行為が自然に行われておる。これは
政府も認めておられだと思う。それだから何とかかとか
食糧不足を切り抜けましたが、嚴重にやみ取引を取締
つていけば、そうして缺配がくれば、死ぬか、どろぼうして生きるよりしかたがない、ますます世相は惡化することになると私は思う。これらの問題について、
一つ農林大臣のほんとうの心持を聽かしていただきたい。
そうして最後の
結論にはいるのでありますが、
日本の人口が二十五年度においては八千萬近くなるというような推定もされておるのであります。ただいままた
和田長官は、今後の
日本の
貿易はできるだけ工業原料を
輸入するようにして、そうして
食糧はできるだけ自給自足の
方向に進まなければならぬという
お話でありましたが、私も同感であります。なるほど領地を失
つて四つの島にな
つて、
日本は人口を多く擁して、
生産の立地が少いのでありますけれども、
日本の工業を興すその原料をまず第一に入れて、そうしてわれわれの食生活を根本的にかえて、胃擴張にな
つておるこの國民の食生活を次代の國民からでもかえて、米や麥を腹一ぱい食わなければ生きていかれぬという國民でないようにして、自給自足の途を立てて、そうして工業原料をどんどん外國からもら
つて、そうして
日本の商工業の發達をしていかなければならぬと思うのでありますが、この人口問題と農村對策について
大臣はどういうようにお
考えにな
つておられるか、この點を承りたいのであります。
それから最後に今
小林君の御質問に對して、
農林大臣が
蠶絲業について
お話になりましたが、これは非常に重大な問題であります。
日本の
養蠶を外國あてにするか、國内あてにするかということをきめなければならぬ。かつ優良な絹糸でなければ
アメリカは今欲しがりません。
ナイロンが相當進んでまいりましたから、
日本の絹糸の優良なものをわずか欲しいというのが
アメリカの偽らざる言葉でしよう。まだ
為替レートがきま
つておりませんから、
價格の點もありましようが、
日本には
將來において
養蠶をや
つていかなければならない條件がある地方があります。この
養蠶を外國
向きにいくのか、内地
向きにいくのか、これをきめることによ
つて養蠶の手段が非常に違
つてくるのであります。戰爭中短繊維等が起りまして、そして
日本内地の衣料の原料として行われた。これが
輸出になれば
靴下が第一の目的である。その
靴下が
ナイロンに抑えられて、
アメリカへは優良な糸しかいかない。
あとの糸は、綿糸のない
日本としては、
日本人個人の衣服に廻される。これは羊毛代用として
考えていかなければならぬ。そうすると
養蠶の品種から、飼育
方法、製糸の加工
方面等、すつかりこれが變
つてくる。それを左に行くか、右するかという非常に重大な岐路に立つのでありますから、
政府は
養蠶業の
將來に關して、
はつきりと目途をきめて政治を行
つて、
養蠶家を迷わしめないようにしていく必要があると思いますから、この點については十分愼重な立場で、
政府の所信を發表していただくことが必要である。かように
考える。はなはだ長くなりましたが、なおいろいろの問題については次の
機會にお尋ねすることにいたしまして、とりあえず
食糧問題を中心といたしまして、
農林大臣のただいまの御心境を承りたいのであります。