○
石山委員 私は
將來の
石炭計畫と關連した
電力計畫について、
一つの希望を申し述べて
皆さんの御了解を得ておきたいのであります。私のこれからしやべりますことは、まだ調査中の
數字が多々ありますので、概略を申し上げるにすぎません。この申し上げた
數字は後日若干修正するかもしれません。またそれらの
數字が完成した場合においては、
一つの
決議案のようなものをつくりまして、
皆さんの御討議を得たいと存じておるものでありますから、あらかじめその點御
了承の上お聽取りを願いたいのであります。
今
囘商工大臣水谷氏から
石炭増産五箇年計畫というものが發表になりました。これによりますると、
石炭は來年度において三千三百
萬トン、五箇年目においては四千二百
萬トンに達せしめる計畫であります。ところが全
石炭需要の大勢を見ますると、とうてい五年後において
はさように多量の
石炭の
需要がありそうには思えないのであります。それというのは今日の鑛業生産力は減退いたしまして、
戰前の約三分の一
程度にすぎません。これを
戰前程度に囘復いたしまするには、なお相當年月がかかることと推測されるのであります。
そこで
戰前にはおよそどれだけの
石炭を
各種の事業が
需要してお
つたということを調べてみますと、
戰前におきましては、すなわち
昭和九年、十年、十一年、この三箇年を
平均いたしましたる
石炭の
需要數量は約四千
萬トンでありまして、この内譯、すなわち
用途別を申しますと、
重工業に使ひましたものが三箇年
平均で六百三十三
萬トン、
纖維及び染色工業に使ひましたのが三百五十六萬三千トン、
窯業、すなわちセメントのようなああした
かまどでつくる
窯業、これに使ひましたものが三百五十九萬九千トン、
化學工業に使ひましたのが四百三十七萬六千トン、
食品工業に使いましたのが二百八萬九千トン、
船舶の燃料は四百四十二萬三千トン、
鐵道が三百七十九萬八千トン、
電力が二百八十六萬一千トン、
ガス及び
コークスに用ひましたのが二百二十九萬二千トン、
官廳、
家庭その他に用いましたのが六百五十萬四千トン、その合計は三千九百九十八萬七千トン、すなわち四千
萬トンであります。この
各種需要が、來る五年後においてもこれだけの
需要があるかないか。これは
將來の豫測に屬しますが、
工業囘復力の遲々たるところの現状から見まして大體の推測をくだしますと、
重工業は
戰前三箇年と變らないものと推定されます。それは
戰前において約二百
萬トンの
銑鐵をつく
つてお
つたからでありまして、五箇年後の
銑鐵製造高もおよそこの
程度になるかと思うのであります。すなわち
銑鐵二百
萬トンを基礎とした
鐵工業の
石炭需要高というものは、およそやはり
戰前三箇年
程度のものと推測されるものであります。
纖維及び染色工業は
戰前三箇年の半分になるかと思います。それは
戰前三箇年間におきましては、
紡績の
設備錘數が一千
萬錘でありまして、綿の
使用量は一千三百二十
萬俵くらいでありました。現在は
紡績の
錘數は三百
萬錘くらいでありまして、近く
増加を許されましたものを見込みましても、五箇年後においては五百万錘を超えることは困難と思います。すなわち
戰前の半分に過ぎないのでありますから、この
纖維及び染色工業に使われまする
石炭は、
戰前の半分になると推測されるのであります。その次の
窯業は
戰前通り、
化學工業は主として
肥料製造、硫安を内容とするものでありますから、これも
戰前通り、
藥品工業も
戰前通り、
船舶にあたりましては非常にその數が減じておりますから、
戰前四百四十二
萬トンありましたこの
石炭消費量は、おそらくこの中から四百
萬トンくらい
需要が減ずるものと推測されるのであります。その次に
鐵道でありますが、
鐵道は三百八十
萬トンの
戰前の
需要でありました。しかしながら昨年の
鐵道の
石炭消費高は六百四十
萬トンでありまして、本年は七百十
萬トン、おそらくこれから先行きましても、八百
萬トンくらいのところで一段落となるのではないかと見られるのでありまして、これは四百二十一
萬トンの
需要増加になるものと考えられます。それから
電力に使いましたのは二百八十六
萬トンでありましたが、これは
戰前通りと見ます。その次は
ガス及び
コークスに使用されたる二百二十九百
萬トンの
石炭も
戰前通り、
家庭、
官廳その他に使われましたるものも
戰前通りといたしまして、ここで
需要の減るものと
需要の増すものとを合計してみますと、減る方が五百七十
萬トンで、増す方が四百二十
萬トンあるのであります。この差が百五十トンぐらい、これだけ
需要減になるのであります。この中に
鐵道に使用される分は
——鐵道が目下
電化を計畫しております。今日を
起點としての第一期工事、それの
キロ數が一千五百キロくらいでありまして、これに要する
石炭の量が二百六十
萬トンであります。この全部を
電化いたすと見まして、前の
鐵道の
需要増加高から引いて計算しますと、結局
昭和九年、十年、十一年、すなわち
戰前三箇年
平均の
石炭需要よりも四百
萬トン需要が少くて
濟むのでありまして、凡そこれから先五箇年間の
石炭の
需要は三千六百
萬トンくらいと見て差支えないのじやないか。但しそのうち二百六十
萬トンは
電化するものと見て、そういうことになるかと推測されるのであります。
この
石炭の
必要高と、
水谷商工大臣の發表された
石炭の
増産計畫の
數字とを對照してみますと、
水谷商工大臣の發表された
増産數字は、
昭和二十四年度において三千六百
萬トンに達するのでありますから、すなわち
戰前の四千
萬トンから四百
萬トンの
需要減を引いた
將來の豫想の
需要數字、その三千六百
萬トンと一致するのでありまして、
石炭は
鐵道電化をする限り、
昭和二十四年度以降は
増産の必要なしという
數字が出てくるのであります。この
數字は概算でありますから、前にお斷りいたしておきました通り、若干間違いを生ずるかもしれませんが、その點は御
了承を願いたいのであります。
一方
鐵道電化計畫を見ますと、これは先日
當委員會において
鐵道當局から示されたる
數字でありますが、二百六十
萬トンの
石炭の
節約、すなわち千五百キロの
鐵道線路の
電化を行いますには十三
萬キロの
電氣があればいいそうでありまして、そしてこの十三
萬キロの
電氣によ
つて、一年二百六十
萬トンの
石炭が
節約されるのであります。すなわち
電力一キロで一年に對しまして二十トンの
石炭節約が行われるのであります。この
經費を勘定いたしますと、
電力十三
萬キロを起しますものには、今日の
建設費に照らしますと二十六億圓ありますれば
電源は建設できるのであります。一方
石炭の
經費を勘定してみますると、運輸省が八月七日の日附をも
つて示されたる
石炭二百六十
萬トンに對する
經費の
節約額は、二十八億圓と書いてあるのでありまして、これとそれとを差引しますると、
石炭を消費する
經費をも
つて電力十三
萬キロを起して、なおかつ二億圓のつりがくるのであります。すなわち
電源を
ただ使つて、そうしてなおかつ
幾分金が殘るという計算でありまして、この
經濟は比較にならないほど
鐵道電化の方が有利であります。しかも
石炭は私が申し上げるまでもなく、
石炭の從業者が地下深きところに毎日行きまして、そうして苦心して採掘をするものでありますから、一日も、また一トンも少く
石炭を掘ることが、人類の福祉を増進する
方法かと考えるのであります。一方またこの
蒸氣を使います
鐵道を見ますると、
蒸氣をつく
つてその一番大切な
機關部を
空氣にさらしまして、最も冷えやすい状態におくのでありまして、
鐵道の
装置というものは、科學的に見て最も不
經濟につくられておるのであります。自動車は逆に
エンジンを冷やす必要がありますので、これは
空氣と水によ
つて冷やす必要から
エンジンを前につけておきますが、
鐵道は
うしろに
機關をつけますと
運轉に差支えますので、よんどころなく前につけておきますが、あれは最も非科學的の
方法でありまして、一日も早くああした非科學的な
装置は破るべきが
至當であります。その上に
鐵道の
運轉者は、非常に暑いときでも熱い
かまのわきにおきまして、特にあれがトンネルにでもはいりましたときには、ほとんど
焦熱地獄にもひとしい苦しみをするのでありますから、この從業員の
幸福増進、危害を除くというような點から見ましても、一日も早く
電化を促進し、
電化の量を殖やすべきものかと思うのであります。ひとりこれのみならず、すべてこの熱量に用いておる方の
石炭は、あるいは動力に用いるものでも、
石炭をまるごとたいて、そうして他の
化學成分を煙にしてしまうのでありますから、こういうことは一日も早くやむべきが
至當であるにもかかわらず、政府は
一路邁進、單に今日
石炭が不足であるからと
言つて、
需要のいかんを顧みずして
石炭のみ
増産をするということは、すなわち
石炭偏重の政策でありまして、
電力の性能、
電力の
經濟を顧みない、すなわち
國家總合
經濟計畫から言いまして、私は遺憾の點がはなはだ多いように考えるのであります。
これは是正するためには、すなわち
當委員會が最も重要なる役割を果すものでありますので、私もなおこの上研究いたしまして
電力を速やかに開發し、そうして
石炭の
需要をできるだけ少くする案をつくりまして、後日
皆さんの御審議にあずかりたいと思いますから、さよう御
了承を願
つておきたいと思うのであります。一言この
機會に
發言させていただきました次第であります。以上をも
つて私の申し上げまする趣旨は終りました。