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古池政府委員 ただいまのお尋ねの第二點の、建設省ができるとすればその際に
商工省の
電力局を移管するというようなことがあるかどうか、それに對する考えはどうかというお尋ねであります。この問題は實は公式に何ら私
ども相談に與か
つておらないのでありまして、その
意味から申しまして公式な
意見を述べるということはできないわけであります。たださようなうわさが新聞等にも出ておりましたので、私
ども事務
當局としまして事務的にはどういうふうなことになるであろうか、という
意味合いから、一應考えてみたことがございます。
從つてこれはあるいは私一個の
意見にすぎないということになるかもしれませんが、申し上げまして御參考に供したいと存じます。
電氣事業はその技術的な方面から見ましても、また
事業の經營の面から見ましても、
設備の建設とその
補修、それからその他の一般の業務の運營、これは
まつたく不可分のものであります。
從つて電氣事業全體に對する行政の監督權というものもこれをわけることは不合理なのでありまして、どうしても同一の行政官廳において監督するということが
絶對に必要であると考えるのであります。それによ
つて初めて
能率的な、また合理的な監督も期待し得ると思います。さような
意味合いからしまして、
電力行政のうちの建設の面に對する行政のみを引離して、
將來できるかもしれない建設省に移管するということについては私は否定的な
意見をも
つております。ただいま申し上げた技術面からどういう不合理ができるかということをやや
具體的に申し上げますと、まず建設計畫を樹てます
ためには、
日本の各地方におきまする
電力需給の
實情を調査いたしまして、さらに現在ありまする
電力、
設備の現況がどうな
つておるか、送電の系統はどうな
つておるか、あるいは一河川の總合利用の方法はどういうふうにな
つておるか、また現在の
電力設備につきましても、その
補修状況であるとか、あるいは増設の餘力があるかないかということ、またこれを改善してより
能率的な
設備に直し得るかどうかというようないろいろな點がありまするので、それらを十分に考慮したる上、これを基礎にいたしまして、初めて計畫というものができ上るのであります。
從つて日常の
事業を運營しておる面におきまして、初めてかような調査研究ができるのでありまするから、これを切り離して別のところで建設を擔當するということは
事實上不可能なことではないかと考えるのであります。さらにまた建設の實施計畫を立てるにつきましては、現實に
使用すべき水利はどういうふうにな
つておるか。あるいは建設用の
資材の
使用方はどうであるか、あるいは建設に要する機器はどういうものを使うか。そういうような
關係にしましても、これは既存の
設備との間に合理的な調査が必要である。また場合によ
つては、その間に流用の起ることもままあるのであります。さような點から、どうしても既設の行政面とともにあらねば、合理的な運營はできないのではないかと存じます。また建設
工事の推進監督にあたりましても、既設
設備との
資材、
資金の臨機の流用ということがございますし、
補修運營部面における要員の流用であるとか、
電力の需給
事情が變化いたしますから、これにつきまして即應した
工事期限の伸縮という
措置も隨時とらなくてはならぬのであります。これらを技術的に見ましても、建設と運營が切り離し得ないということはおわかりであろうと思います。さらに
事業の經營面から見ましても、要するに建設の
資金計畫は會社の收支、社内保留、運轉
資金、
補修工事資金、これらとは
まつたく不可分のものでありまして、運營面と遊離した
資金の操作というものは考えられないのであります。さらに建設
工事費のいかんということは、その會社の經理あるいは供給料金等に直接影響を及ぼすのでありまして、これらの見透しあるいは
對策というものと無
關係に建設計畫を立てるということは、これも考えられないことであります。さらに建設要員の待遇給與等につきましても運營、
補修要員と離して處理とするということは、これもなかなかできないことであると存ずるのであります。これらの技術、經營兩面から見まして、經營方面に對する行政と建設方面に對する行政を分離するということは、それは非常な改惡であろうと考える次第であります。そこで官廰といたしまして建設面に對しまする監督と、運營面に對しまする監督を強いて分割するといたしますならば、今申しましたように非常に密接な關連があ
つて、その建設連營の分界自體がはなはだ不分明であるということからいたしまして、非常な弊害が生ずるであろうということをおそれるのであります。すなわち行政官廰としましては自然お互いに重複した事務をもつということになりますし、事務の處理あるいは人員配置上幾多の不經濟、不合理を生ずるばかりではなく、行政
措置の結果といたしましても、そこに不合理な結果を生ずることとなるのであります。また他面
事業監督につきまして、その責任の所在が不分明となり、責任のある行動がとりにくくなるという弊害が生じてくるのであります。また反對に監督を受けます
事業者の立場から申しますと、建設と運營は一體に行
つておるにもかかわらず、その監督が別々の官廰においてなされるということであ
つては、萬般にわた
つて非常に複雜なる結果を見るのでありまして、
電氣事業の有機的合理的な運營という點からいいまして、はなはだ好ましくないということになろうと存じます。そこで
電力に關しまする建設行政を建設省の移管しようという御説の出ますのも、そのねらうところは、おそらく他種建設
事業との調整でありますとか、建設
事業の總合的な推進をせよというところにあると考えるのでありますが、
利水治水その他の
事業との總合的な調整は、
經濟安定
本部によりまして、十分に目的を達成し得るのであります。
電氣事業の建設機構の實體に觸れないで、ただ建設に關する行政監督權のみを建設省に移管しようというのは、一方においては
經濟安定
本部のなしまする職務と二重のようなことにもなりまするし、他方においては他種建設
事業との總合調整において、ほとんど實益はないと考えられるのであります。現在電源擴充強化の隘路と申しますか、支障と申しますか、それは他の公共建設
事業との總合調整ができないとか、あるいはまた主管官廰が不
適當であるというようなことにあるのではないのでありまして、もつぱら
資材、
資金、勞務等が現在のわが國情に照らしまして不如意であるというところに大きな
原因があると考えるのであります。從いまして、行政面のみを建設省に移しましても、それによ
つて建設が促進されるものではないと思うのであります。これは一應建設と運營とを切り離した場合のことでありますが、それでは
電氣事業に關する行政監督權全部を建設省に移したらどうかという議論も考えられるのでありますが、
電氣は申すまでもなく諸
産業の重要なる
生産資材といたしまして、
石炭、石油その他の燃料資源とも非常に密接なる
關係をも
つております。その需給の調整は、諸
産業の
生産計畫、
産業計畫に即應せしむるを要するものでありまして、
電氣事業はこれら諸
産業に對する行政と一體的に把握されるのが
適當であると思われるのであります。この
電力の運營面が、現在の
日本經濟の
事情から申しましてきわめて重要なことでありまして、この
趣旨から見ましても、
電力行政の所管は一般
産業の所管官廰でありまする
商工省に属するのが
適當ではないか、かように考える次第であります。これは私
ども事務
當局の一個の
意見でありますが、やや詳しく申し上げまして御參考に供した次第であります。