○小笠原
政府委員 第七十六條は、國營
事業であるところのこの郵便
事業の獨占を亂す罪を
規定いたしたのでございます。これは
現行法の四十
一條に照應するものでございますが、
現行法におきましては刑といたしまして「三年以下ノ懲役及千圓以下ノ罰金」ということにな
つております。新して
法案におきましては一般の刑罰
規定の例にならいまして「三年以下の懲役又は一
萬圓以下の罰金」ということにいたしたのでございます。それから特に新しい
法案におきましては、第三項にいわゆる法人に關する兩罰
規定を設けることにいたしました。一般の經濟
關係の法令でありますとか、あるいは最近の例で申しますれば勞働
基準法でありますとか、そういう
ような法令の例とも同じわけでございますが、特に
事業の獨占を亂すという重要な犯罪につきまして兩罰
規定を設けたのでございます。
第七十七條は郵便物を開く等の罪でございます。これは
現行法の五十二條と同様の趣旨でございます。
第七十八條は郵便用物件を損傷する等の罪でございます。これは
現行法の五十四條に照應するものでございます。
第七十九條は郵便物の
取扱いをしない等の罪でございます。これは
現行法の五十三條に對應するものでございます。
第八十條は信書の祕密を侵す罪を
規定いたしたのでございます。
現行法におきましては郵便法四十四條におきまして、その第三項で「本條ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ズ」すなわちいわゆる親告罪の
規定にな
つておるのでございますが、新しい
法案におきましては、この親告罪ではないことにいたしたのでございます。すなわち
一つは新しい
憲法におきまして信書の祕密を特に強調いたしております點を
考え、また
二つには郵便
事業の信用を保護いたします
見地から、郵便
事業の信用保護という公益を特に重んずることにいたしまして、親告をまたないで處罰できることにいたしたのでございます。また第三點といたしまして、この種の場合におきましては、被害者が往々にして知らない場合がありますから、親告罪にいたしますことはこの處罰の
機會を失するおそれもございますので、これを削除いたしたのでございます。
第八十
一條は郵便禁制品を差出す罪でございます。これは表現は變
つておりますが、現行郵便法第四十六條と同様の趣旨でございます。
第八十二條は、第三種郵便物の認可をいつわる罪、すなわち第三種郵便物の認可のない定期刊行物に、第三種郵便物の認可があることを表わす文字を掲げるものでございますが、これは
現行法におきましては、
逓信省令の郵便規則第五十
一條に「發行人ヲ百圓以下ノ罰金ニ處ス」ということに
規定されております。新して
法案におきましては、もちろんこの種の罰則は
法律事項でございますので、
法律にいたしますと同時に、その次の八十三條の
料金を免れる罪に關する
規定との實質的な權衡を考慮いたしまして、罰
金額を三千圓以下に改めたのでございます。
第八十三條は
料金を免れる罪、第八十四條は切手類を偽造する等の罪、第八十五條は未遂罪及び豫備罪に關することでございますが、これはいずれも現行郵便法の四十七條、四十八條及び第五十五條に照應するもので、大體その
内容は同様でございます。なお現行郵便法の罰則におきましては、第四十二條に、郵便の運送營業者が
郵便官署の要求がある場合におきまして、郵便物の運送を拒むという
ような場合における處罰
規定がございます。この
規定は新しい
郵便法案におきましては、これをとりあえず削除したのでございます。その理由は、新しい
郵便法案の第十條で營業者の運送の義務を
規定いたしておるのでございますが、この第十條の
規定は、
法案の八十六條の
規定によりまして、さしむき施行を延期されることを豫定いたしております。それは先日御
説明申し上げました
ように、第十條の
内容となるべき郵便物の運送に關する
法律を次の
國會に
提出いたす豫定でございます。第十條の
規定は、その
法律ができるまでは實際に運用することができませんので、
從つてそれに對應するところの罰則も、今囘のこの
郵便法案の中には、さしあたりこれを
規定いたさなか
つたのでございます。その
意味におきまして、この現行郵便法第四十二條のこの罰則に該當するものは、新しい
法案においてはこれを
規定いたさなか
つたのでございます。それから現行郵便法の第四十三條の罰則は、これはその
内容になるベき事柄が新しい
法案におきましては、すべて削除されましたので、自然この罰則は新
法案においては要らないことに
なつた次第でございます。