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小笠原政府委員 それでは第六章の損害賠償に關する
規定につきまして御
説明申し上げます。第六十八條の第二項につきまして、實は正式に訂正の
手續をただいま取運びつつあるのでございますが、まだ國會の方には正式に出ておりませんようですから、この席でちよつと御訂正をお願い申し上げたいと思います。第二項の「前項の場合における賠償
金額は、左の通りとする」。という第三號に「
保險扱とした
郵便物の全部若しくは一部をき損し、又はその一部を亡失したとき」という下に「損害要償額と残存價格との差額」とありますのを、これを「損害要償額を限度とする實損額」というように御訂正を願いたいと思います。
第六章の損害賠償に關する
規定は、これは
郵便物の
取扱いが何分にも莫大な數量のものを常時
取扱いますことと、
郵便事業がなるベく低廉な
料金で實施されなければならない要請との兩面から
考えまして、損害賠償の要件また範圍も一般の民法の
原則に必ずしもよりませんで、ここに
郵便事業に特別な損害賠償の要件竝びに範圍を
規定いたしたのでございます。これは國家賠償法の第
五條にございます特別な
法律ということに該當するわけでございます。すなわち第六十八條は損害賠償をする事由及び
金額に關する
規定でございまして、
逓信大臣は
成規によ
つて差出された
郵便物が次の二つの場合に該當する場合に限りまして、その損害を賠償することにいたしておるのでございます。すなわち
書留または
保險扱とした場合、その
郵便物の全部もしくは一部が亡失しまたは毀損した場合、または代金引換とした場合、その引換金を取立てないで代金引換の
郵便物を
受取人に
交付した場合、この二つの場合に限定しまして、すなわち一般の
書留または
保險扱としていない通常の
郵便物については、一切損害を賠償しないということにしたのであります。またその賠償するにつきましても、賠償する
金額に限度を設けまして、第一には「
書留とした
郵便物の全部若しくは一部を亡失し、またはき損したときは百圓に限定したのであります。もちろん實損額が百圓未満であります場合には、その實損額を賠償することにいたしました。
原則として百圓を賠償する、それ以上は免責するという
規定でございます。それから第二號は「
保險扱とした
郵便物の全部を亡失したとき」これは先ほど御
説明申し上げましたように、損害要償額は最高額五千圓までがいいわけでございますから、その
差出人が
郵便差出しの際申し出られました損害賠償額を全部賠償するのでございます。第三號は、
保險扱とした
郵便物の全部もしくは一部を毀損し、またはその一部を亡失した場合の
規定でございますが、この場合は損害要償額を限度とする實損額、すなわち一部の毀損、または一部の亡失でございますから、その毀損または亡失した實損額を賠償するわけでございますが、その限度は損害要償額をも
つて限度とするという
趣旨でございます。第四號は、引換金を取立てないで代金引換とした
郵便物を
交付した場合は、これはもちろん引換
金額を賠償するわけでございます。
今のは損害賠償の
原則でございますが、ただなおこの損害賠償の問題につきまして、免責の
規定を第六十九條に設けたのであります。すなわち損害が
差出人もしくは
受取人の過失、
當該郵便物の性質もしくは缺陷または不可抗力によ
つて發生したものであるとき、すなわち不可抗力と申しますれば、
逓信官署の故意もしくは過失に基かないで生じたものであるときには、その損害を賠償しない。かような
趣旨の
規定でございます。
第七十條は、
郵便物を
交付いたします場合に、外部に破損の跡がなく、かつ重量に變りがないときには損害がないものと一應
法律で推定することにいたしたのでございます。もちろん外部に破損の跡がなくても、損害があることが立證されましたときには、前の二箇條の
規定によりまして損害を賠償するわけでございます。
第七十
一條は、
郵便物に損害があると
郵便物の
受取人または
差出人が
考えられました場合には、
郵便物の
受取を拒絶されるわけでございまして、その場合には
逓信官署は、
受取人または
差出人の出頭を求めて、その
立會のもとにその
郵便物を開いて損害があるかないか、その
程度はどれだけであるかということを檢査する
規定であります。この場合においてその
受取を拒んだ日から十日以内に、正當の事由がなく、
立會のため出頭されなかつか場合には、
逓信官署はそういう
郵便物をその方に一應
配達いたしまして、それでも
受取らなければ、
差出人に還すという措置をとる
趣旨でございます。
第七十
二條は、
郵便物受取による損害賠償請求權の消滅に關する
規定でありますが、
郵便物の
受取人または
差出人は、その
郵便物を
受取つた後—
受取つてしまえば損害賠償の請求をすることができない、また
受取を拒まれた場合におきまして、ただいま申し上げた十日の期間内に正當の事由がなく
立會のために出頭されない場合には、やはり損害賠償の請求權は消滅するという
規定であります。
第七十三條は、賠償請求權者に關する
規定でありますが、損害賠償の請求權者は
原則として
郵便物の
差出人、すなわち所有者でありますが、その承諾を得た場合には
受取人もまた賠償請求權をもつことに
規定いたしたのであります。
七十四條は損害賠償請求期間の
規定でありますが、賠償請求權はその
郵便物を差出した日から一年間行わないことによ
つて權利が消滅するという
規定でございます。これらは大
體現行郵便法の
趣旨を踏襲いたしておる次第でございます。
最後に七十
五條は損害賠償をした後において、その
郵便物を發見した場合の
規定であります。その場合におきましては、賠償を
受取つた方は、その
通知を受けた日から三箇月以内に
受取つた賠償金を返し、その
郵便物の
交付を請求することができることにしたのでございます。