○
松原(一)
委員 黨の
意見ではございません。これは私の一人の
意見としてこの際申し上げておきたいと思いますが、私は
政黨法の
制定を積極的に支持するものであります。その
理由は、
政黨ほど今日の政治に對する大きな影響力をも
つておるものはないのであります。
從つて政黨のあり方、その
性格、その
運營等が
國民に及ぼす影響の重大さを考えます時分に、私
どもは
政黨に多くの反省を求め、また今後その精進と努力による成長を希望せ
ざるを得ないのであります。もちろん法はなるべくつくらぬがよろしい。法の多いことは希望いたしません。法三章で濟むならばこれに越したことはないのでありますけれ
ども、今日の
政黨の國政に及ぼし、
國民の政治生活上に及ぼす大きな影響を考えます時分に、かくのごとき大きな影響があるものであればこそ、私
どもは
一つの理想的な規制、竝びにその
性格の純正さを認め
ざるを得ないのであります。ただいま
石原君も、
日本の近代の政治史は
政黨の罪惡史であると言われましたが、私
どもも遺憾ながらこれを肯定せ
ざるを得ません。歐陽修の朋黨論ではありませんけれ
ども、君子の集まりではなく、ややもすれば小人の集まりになりやすい
政黨は、その勢力の大きくなるにつれて、これが朋黨的政權爭奪の機關とな
つて、それが理非をわきまえず、利己的な動機から手段を選ば
ざるものに發展してまいりました結果が、今日の
日本のこの敗戰のどん底にあえぐ悲境をもち來したということを否定することができないのであります。過去の
政黨の最も大きな誤りは黨同閥異の弊でありまして、その黨を同じくする味方を多數も
つたものが天下をとるとい
つたような
事實から、本來主義
政策を同じうする同志の集まりであるべき
政黨が、主義
政策何をも知らない多數の人々をばむりやりにかり込んで、いたずらに數を多くし、反對黨側にまわ
つた者は理非曲直を問わず、正邪も善惡も無視して、これおば否認するという結果にな
つてまい
つたのであります。その結果少さな町村の末に至るまで、
意味もない黨同閥異の戰いが、惨澹たる姿を呈して今日まで行われてまい
つたことは、われわれのなお記憶に新たなるところであるのであります。
政黨は今日大體において定義せられておる
通りに、どこまでも主義
政策を同じくする同志の結集であ
つて、しかも強固なる内部的
組織をもち、その行動の上に、特に經費の上に、最も明らかなものがなくてはならぬと思われるのであります。今日までの
政黨の腐敗は、主として
政策によらず、數をも
つて壓倒してかかり、かつその上に出所不明の金が最も多く使われて、社會をと毒いたしておる。ここに大きな誤りがあるのでありますから、私は決して窮屈な
政黨法を作ろうというのではありませんが、新しい政治の芽生えを決して摘みとろうとするのではありません。少なくとも、
政黨として
候補者を立て、國政に臨み、
國民の前に是非を批判してもろう
立場の立つものは、あくまでも
責任のある主義
政策をかかげ、これを實踐の上に示し、十二分の批判を乞い、かつその經費は原則として黨員みずからの負擔するものでなくてはならないと確信するのであります。
從つて私の理想とする
政黨は精鋭主義の
政黨でありたい。有象無象をいたずらにかき込んで、黨員の數を殖やすというものであ
つてはならぬと思う。ほんとうに主議
政策を理解した同志が一縣に百人もあれば、千人もあれば實は結構であります。しかし費用は當然負擔する。費用を投じない黨員などのあるべきはずはないと私は確信する。むしろ今日までの
政友會、
民政黨時代の
政黨は、その名を連ねることによ
つて恩惠をわけられてお
つたのであります。そういうような數がいくら集ま
つたところで、その數を積んで、一國の政治を行うとい
つた政權爭奪の具に供すべきものではない。どこまでも
政黨は、精神的主義
政策の主張が根幹であ
つて、しかも高潔な人格をもち、熱意をもち、この難關を突破するだけの強い人格者の集まりであることを私は要求するのであります。今日はなはだ申し上げにくいけれ
ども、今朝の新聞を見ると、山梨社會黨支部の何とかいう人々が、黨籍をもつその黨の名を冠して出張所をつくり、非常に大きな詐欺をや
つておるという記事がある。私はイギリスに、
選擧においては自分の手傳に使
つた運動員が、
選擧違反ではない、
選擧中にとばくをや
つたとい
つた普通
一般の犯罪行爲があ
つても、さような非人格者を
選擧の手傳に使
つたという自責から、その
候補者の當選は取消される法があることを承知いたしておるのであります。いやしくも政治に携わる者であるならば、私はどこま
ども清淨であり、正しい指導者であるという人格と、實踐と、その
責任とをもつべきものであ
つて、
政黨の黨員として、また黨の役員としてかくのごとき破廉耻なる行動をとるものがあ
つたならば、當然
國民一般から指彈せられるべきものであり、
政黨またみずから顧みて自責すべきものであろうと思います。
政黨法は單なる一片の
法律ではなく、
一つの
日本國民が政治に精進するところの規制である、私はかように考えたいのであります。多數の
國民、つまり
一般の大衆は、私は黨員でないがよろしいということをかねて信じている
一般の大衆はどこまでも
民主的な自主的な政治の批判をも
つて、
政黨選別の投票の
權利を自由に保留しておくべきものであ
つて、時に應じ、政局の變化に
從つて、世界情勢の上からも、國内情勢の上からも、急進黨を選ぶべき場合、保守黨を選ぶべき場合を識別して、自由な投票の
權利を保留しておくように教育することが大切だと私は信ずるのであります。
從つて政黨員はどこまでも同志結束の精鋭主義のものであ
つて、縱から見ても横から見ても、これが
責任を負う主體である。同時に
選擧竝びに
政黨の黨費に關する負擔をば、甘んじて負うだけの自信のある者でなくては黨員にすべきものではないと思
つております。この
意味におきまして共産黨は、昨年の春は黨員が二萬人、今日どのくらになりましたか、十萬人になりましたか、知りませんけれ
ども、黨費を確實に背負
つて、そうして黨員としての自覺の上に、一々の行動はよく知りませんけれ
ども、立派な
政黨的な行動をも
つていると私は見て、敬意を表しているのであります。黨員の數と投票の數とは、決して一致する必要はないのであります。たとえ黨員の數は少くとも、その黨の行動を批判する大衆の動きが、これをば自由に支持すればいいのでありますから、今囘の
政黨法を
制定しますならば、どこまでも黨費を確實に負擔する者のみを黨員として登録する。決してこれはごまかしがあ
つてはいけない。
從つて黨費の問題に關する公開を私は強く要求するのであります。ここからすべての腐敗が生ずる。もちろん黨員のみの負擔では足りない場合がありましよう。黨員中のある者が、自力に應じて若干多くの負擔をするということについては、何ら
異議はございません。あ
つてしかるべきものと思いますし、他からの寄附もあ
つて結構だと思います。何もそういうことをば
制限する必要はございませんけれ
ども、黨費の點だけはどこまでも確實にいたさなければ、今囘の隱匿物資をめぐ
つてのいろいろな風評が立つのも、結局過去の
政黨がこういうところに世間周知のやみを行
つてきたという
事實が、
國民から認められているからであります。この點を拂拭しなければ、口でいかに
民主主義を唱え、國會
中心の
政治教育連盟をつく
つて世間に押し出しても、私は心ある人々からは物笑いの種になるよりほかないと思います。政治家自身が非
政治教育的な行動をと
つて選擧に出ている。この
政黨法はその
意味におきまして、私は世界に類例なき
民主的、清明なる平和國家を建設する政治家の操守、道義を高調したる
内容をも
つてほしい。これをば私は強く希望するものであります。しかし一面におきましては、
政黨法あるがゆえに新人の進出を阻止するというようなことがあ
つてはいけないと思います。たとえ比例
選擧法が行われるような
形式になりましようとも、自由獨立な
候補者の立候補し得る餘地を殘した
選擧法が、これに附隨して行われたいと思います。もちろん新人で現在の
政黨にあきたらなくとも、一歩でも近い
政黨に黨籍を置いて、内部からこれをば改造するだけの力量を發揮すれば、どの
政黨かにはいる餘地はあると私は思いますけれ
ども、それでもあきたらないところの人々があ
つて、現在
政黨の黨籍はもたないが立候補するというような人のあ
つた場合の、立候補の餘地だけはどこかに殘しておきたい。新しい芽生えをば尊重する
意味において、私はこういう餘地のある法の
制定せらるることを希望するものであります。違憲であるかどうかとい
つたような問題は、私は少しも考えません。よき
日本の政治を推進する上に、この
憲法の精神に副うたる理想的な
政黨法を
制定せらるることを切望いたしますことだけを申し上げまして、積極的に法の成立に希望をもつものであります。