○大石(倫)
委員 國土局長が見えておりますからお尋ねかたがた希望を申し述べたいと思います。七月二十二日以降の豪雨のために、
東北五縣がこうむ
つた被害の甚大なることはあらためて申すまでもないのであります。私、岩手、宮城兩縣を實地
調査いたしましたところが、今囘の
水害には特徴がありまして、岩手縣の
水害は中央山脈を中心とした豪雨が、やや山津波式の形によ
つて被害を大ならしめておる。第二囘目の岩手縣におけるものは、降雨水量による北上川の氾濫が中心にな
つておる。
宮城縣は普通の
水害の轍を踏んでおりまして、
河川の
改修が不完全であるというところに
被害の大いなる
原因をなしております。もちろん岩手といい、
宮城縣といい、この
水害の起りました近因は、樹木の濫伐であることは見逃すことができないのであります。兩三年前における出水時間の割合に今囘の出水時間は非常に早か
つた、こういう
關係がありますが、この水量を呑みきれなくて、遂に堤防の
決壞あるいは
耕地の冠水、橋梁流出等幾多の悲慘なる結果をもたらしたのは
河川の
改修が不完全であ
つたということをはつきり認めたのであります。もし岩手縣の
水害が、五大ダムの計畫が完遂しておれば、もちろんあの慘害を見ないで濟んだものと思われます。また
宮城縣における
關係を見ますると、迫川の上流
改修の工事が遲々として進まないことが中心
被害をなしておるのであります。次には
直轄河川であります鳴瀬川と江合川の合流工事が未完成のまま放置しておるのが
原因であります。ただいま栗原、登米兩郡を縱貫しております迫川は下流の
改修はすでに終
つて、その翌年から引續き上流
改修の豫算も通り、工事に著手せられることにな
つてお
つたのであります。しかも昭和十六年から今日に至りますまでわずか一、二箇所の狹窄地の開鑿が成功しておらなか
つた、そういう
關係から十六年の
水害はやむを得ないものといたしましても、さらに十九年、本年と二大
水害を招來いたしておるのでありますが、この迫川の狹窄地の開鑿は實地を見ますると、
ようやくこの土地の買收や一部の買收家屋の移轉が終
つておりますが、まだ全部の家屋の移轉が終
つておりません。しかし、この計畫を立てました
當時の水量と今日の出水量とは、時差において非常な違いがありますから、この計畫において
將來完全なる
水害の除去はなし得るとは
考えられないのでありますけれども、ともかく現在のこの計畫でも一日も早く竣工しておりましたならば、十九年の
水害も、本年の
水害もなくして濟んだのではないかと
考えられるのであります。最もはなはだしい例は、ただいま申しました鳴瀬川、江合川の合流工事の未完成であります。これは大正十一年のころ、もつとさかのぼりますと今より
ちようど三十年前に計畫せられて、工事に著せられて、その後工事の計畫變更がありまして、數年後にまた地鎭祭や起工式をやり直されてや
つておりました。その計畫はただいまの鳴瀬川、江合川の合流工事であります。それでこの工事が著手せられてからすでに三十年に近い今日、合流工事の新川掘鑿をいたしましてからでも滿二十年も過ぎております。良田をつぶして、そうして鳴瀬川と江合川との合流の
河川を掘鑿しぱなしで今日まで放棄しておる。どういうわけで水が通らぬのかとみますと、わずかに取入口の一部、ごくわずかのところの工事が完成をしない。あるいは縣道二箇所の橋が架設されていない。こういう
ような程度に過ぎないのであります。か
ような
關係がこの江合川の出水となりまして、昭和十九年及び今囘、また十六年にもありました。最近わずか足かけ七年の間に四囘以上の
水害をこうむ
つておる。こういう
實情にあるのであります。この合流工事が完成をいたしておりますれば、江合川に關する限り
災害がなか
つた。またこの工事が完成をしておりますならば、迫川筋における逆流というものの緩和もできまして、この迫川水系におけるところの
災害の幾分なりとも緩和されたじやないか、こう
考えられるのであります。御
承知のごとく江合川といい、迫川といい、登米郡及び桃生郡におきまして、北上川に流入する水系であります。それで今年の出水量をみますと、鳴瀬川はわずかに水位一メートルくらいの出水に過ぎなか
つた。しかるに江合川は洪水警戒水位と申しますか、それよりもさらに一メートル以上、約二メートルの出水をいたしまして、遂に沼部村において大
決壞をいたして、家屋は
流失いたし、從
つて數千町歩の良田があるいは皆無となり、あるいは大減收と
なつた。この合流工事さえ完成しておりますならば、これだけの水位の差がありますから、この江合川の水を鳴瀬川が飲みこんでくれるということによ
つて、
決壞は免れ得たと言い得るのであります。か
ような次第でありまして、迫川におきます
水害も、十六年、十九年、この兩度の
決壞箇所の
復舊に至りましても、なかなか完成をいたさないのであります。本年の
水害に對する
復舊工事のごときも、もう秋水が心配されておるときでありまして、この
復舊工事が一日も早くできておりませんければ、この秋水の受入もどうかと心配されておるのであります。さらにまた來年の作付にあたりましても、農民は非常な不安に陷
つておるのであります。それで
從來内務省のや
つておる有樣をみますと、わずかの經費にとらわれて、そうして大きな缺損、
被害をこうむることの
原因を忘却しておることは、私は
國家のためにまことに不利益なることであると思うのであります。先般私はこの迫川の
決壞のことにつきまして、
決壞後一兩日經
つてお目にかか
つてお話したのであります。その後私は實地に行
つて見まして驚いたのであります。こういう
ような工事は迫川におきましては、佐沼の町を中心としたる現計畫におきましては、わずか二十メートルの
河川を擴げるというのであります。これは私素人でありますけれども、これではとても
將來の
水害は妨げない。なぜならば佐沼の町上におきまして、この迫川へ磯田川を抱きこんでおる夏川というのが流れこんでおります。それから三千町歩の灌漑をいたしております中田沼
關係の
干拓地の放流
水路にもな
つておるのであります。さらにその
水路に流れこんでおる一千五百町歩の惡水地であります。ここに伊豆沼という惡水沼があります。この沼も食糧營團が幾多の
開墾をするために堤防を沼内に築きまして、流水地帶をいつまでも妨げておる
ような
關係もありますし、その沼から流れ出る荒川、これらのものが佐沼の町上において迫川へ流れこんでおりますから、二十メートルの幅員擴張によ
つてはとうてい根本的の治水策にはならない。これは第二の計畫をお
考え願わなければならないと見てまい
つたのであります。素人
考えからは方法があると
考えますが、今ここでは申し上げません。いずれにしても現在の計畫を促進速成させることは、恆久策というよりもむしろ應急的の處置としてや
つていただかなければならないのであります。こういう點につきまして、
内務省ではそれぞれのお
考え、御準備があるのではないかと思いますので、御意見を伺
つてみたいと思うのであります。