○岡野
委員 新井さんに申し上げるのでありますが、
新井さんは何もかも御存じだと思うことが無理だと思いますが、
先ほど茶と生絲の
輸出の将来の見透しについて
委員からお尋ねがありましたお答えのうち、
お話を聴いておりますと、将来たいへん
輸出の見透しがいいように、
新井さんの
お話から
印象を受けたのでありますが、私はそう考えないのであります。お茶に至りましては、
新井さんは要するに
輸出し過ぎた。向うにストツクが多くあり過ぎるというお答えでありまして、またこのストツクがさばければ、いずれは出るだろうというようなお答えでありましたが、そうでなく、私は茶はここ数年間戦争によ
つて日本からの輸入が杜絶され、しこうして向うの茶を愛喫してお
つた人たちは、その嗜好物が数年間に変わりまして、再び緑茶をのむという嗜好の気持が変わ
つた。そこで茶が売れない。もう
一つは
日本が戦争中に茶の生産ということを怠
つて、結局茶畑はほとんど半分以上が麥畑になり、芋畑にな
つて荒廃しているこの茶園から出まするお茶が、か
つて戦前のような優良なものは出ないのであります。この二つの観点におきまして、私は茶の前途はこの二点に対して
政府も非常な熱意を出して努力し、また民間もともに熱意を出してこの原因を除去しない限り、とうてい将来光ある茶の
輸出はできないと思うのであります。そこで最近来朝いたしました
バイヤーの
お話を聴きましても、やはりこの二点を強く主張しております。
先ほどこれは
日本の
貿易再開後の今の
一般の
輸出品とは違うとおつしや
つておりますが、なかなか国にと
つてはたいへんな問題であります。そこで
政府は向うからみえました
バイヤーの御
意見も聴き、——これは私
自分が
貿易をや
つておりまして、その二点以外ないと思うのでありますが、茶の嗜好というものは、外人はわれわれ
日本人の考え及ばない嗜好の気持をも
つております。たとえばウーロン茶を愛喫する人もあり、あるいは
インド茶、あるいはアツサム茶というようなぐあいに、各人が各様の茶をのんでおるのみならず、また一本の茶の木から数種の茶を案出して、そうして茶を楽しんでおるのであります。そこでこういうような嗜好物の
輸出ということは、私はやはりその嗜好物が移り変るこの危機に際して、
貿易再開に当たりまして、
政府はこれが再び行けるように宣伝しなければならぬ。また
品質の改良もしなければならぬ。また同時にこの
輸出につきまして、いろいろの指導がなされなければならぬ。そしてこれに対する
政府にもつと大きな熱意がなければならぬと思うのであります。静岡県に参りますと、
業者が
日本茶が行かなくな
つた。だから紅茶にかえようという暴論を吐くのでありますが、とんでもない話だ。
日本の紅茶なんというものが
外国に行くというようなことを考えたら、大きな間違いである。ジヤワにおきましても、
インドにおきましても、その他南方におきましても、
日本の紅茶が世界に行くと考えるのは間違いだ。やはりどうしても緑茶が行かなければならぬ。
日本の茶の
一つの特徴というのは、この今の南方の紅茶におきましては、ただできるまま摘んでいくのでありますが、
日本ではそれを刈
つて、
一つの株からたくさんの芽を出させるのであります。これが
日本の茶の特徴であります。芽を出させるということは、たくさんの芽を出させるのでありますから、肥料をや
つて、そうして芽をたくさん出すようにしなければいい茶はできないのであります。そういうことを
改善しないで、茶の
輸出を将来夢みることは、とうてい不可能だと思います。
もう
一つ生絲でありますが、お説のように生絲は将来そう悲観したものでないという
お話でありますが、生絲はすでに戦前ナイロンに押されかか
つていたのであります。数年の間にナイロンはすべての
研究が積みまして、生絲以上に
研究が達成せられました今日において、この生絲の将来にも、私は非常な熱意をも
つて、たとえば蚕業の
研究所をつくるとか、あるいは羽二重織物の
研究所をつくるとか、いろいろ戦前以上の努力を払わなければ、とうてい世界の市場に再び出ていくことはできないと思うのであります。私はこういう悲観的な観点に立
つて、これを悲観してしまわずに、こういう悲観の暗いどん底にあるから、これを熱意をも
つて再興しなければならぬという御熱意を、
政府御
当局に抱いていただきたい。また
先ほど笹口
委員は、どうも御
答弁が熱意がないという
お話でありましたが、私も聴いてお
つて同感の感じを抱くのであります。熱意がないということは、失体かもしれませんが、どうもお座なりの御
答弁のように思うのであります。お座なりでないかもしれませんが、しかし実際に
業者がもらうべき代金がもらえないでいるということは、容易ならざる苦痛であります。
商工省あるいは
貿易庁のあの窓口へ行
つたり来たりして汗だくだくにな
つたら、もう銭金にかえがたい。やめてしまへという気持にな
つてしまうのであります。これは官庁の方では、その気持を受けないのでありましようが、実際ここに出入しております
業者というものは、血の汗を出すのであります。そこで私は
貿易再開ということで、
貿易が国家のために必要ならば、
貿易庁の
官吏というものは、他の省に比べて、もつと熱意を
もち、もつと真剣にや
つていただきたいと思うのであります。
外国に例をとりますならば、
経済危機の際会いたしましたときに、各国の
経済省の
役人は、徹夜いたしまして、その
経済危機突破に努力いたします姿を、われわれは目のあたり見ておるのであります。私は
ちようどその危機に際会しておる
日本の今日におきまして、特に
国民の与望の的とな
つております
貿易庁は、私はそういうお気持をも
つていただきたい。また
貿易そのものは生きたものであります。理屈ばかりではございません。実に迅速を尊ぶべき業務でございますから、これにおきましても、特に私は迅速を尊んでいただきたいと思うのであります。最近参りました
バイヤーの言を聴きましても、
貿易庁の
役人が、ものを知らな過ぎるという
批判があるのであります。まことに残念なことでありますが、それはもつともなことだと思うのでありまして、将来一段の御勉強を願
つて、そまうして
日本の
貿易再開のために、真に御努力を傾注していただきたいと思うのであります。一言申し述べる次第であります。