○林(敬)
政府委員 このたび御
承知のように
地方債は
建前を明らかにいたしまして、
建前としては不要許可自由に起債をし得るという理想をここに揚げた次第であります。しかしながらお尋ねの點にありました現實の問題として、それでは今ただちにま
つたくフリー・ハンドにしてしまうかというと、現在の日本の金融
状態、あるいは
財政状態、これから見まして、どうしてもそれができないような實情にあるわけでございます。そこで當分の間は所轄
行政廳の許可ということにいたしたわけであります。
もつと國が富んでまいりまして、あるいは金融
状態というものがゆたかにな
つてまいりまして、資金蓄積の
状態というものもどんどん非常に上
つてまいりますれば、この但書は要らないことになるのではないか、かように考えるのでありますが、ここ数年あるいは十数年というものは、どうしてもこういうことが、かりにこの
法律の上から消えましても、實際問題としてはどうしても生ぜざるを得ないような
状態であろうと存ぜられるのであります。すなわち申し上げるまでもなく、資金蓄積の
状態も悪うございますし、金融
状態も悪い。國全體としての
財政状態も悪い。そこでいわゆる起債というものの全體のわくというものは、一年間にどれだけということは大體初めからきめられてあるわけでございます。そこでたとえば本年度なら本年度の起債は、総額五百億なら五百億ということを、大蔵省と、
内務省と、日本銀行とが相談しまして、
関係方面の許可を受けて全體のわくといおうものを一體まずきめてしまうわけです。そのうちでも
つて、國債はそのうちのどれだけとる、
地方債にはどれだけやる、社積にはどれだけということを、わくを大きくきめてまいるわけでございます。そのときにいろいろ公共事業その他の需要によりましてきめていくわけでございます。そうして
地方債なら
地方債は一年間に八十億なら八十億、九十億なら九十億というわくをもら
つて、それ以上はどうしても起債はできないというようなことを、現在せざるを得ない
状態なのであります。それ以上にいたしますれば、また金融の方で引締める。現在のような
状態にな
つておれば、いくら起債しようと思
つても、どうしても借りられない、それからそれを自由に借りられるようにすれば、日銀の兌換銀行券のような發行はうなぎ上ぼりにな
つて、またインフレにな
つてします。そういうような
状態でありますから、どうしても國全體の起債のわくをきめて、さらにその中に國債のわくと、
地方債のわくと、社債のわくをきめてまいる。國債の方は國債の方でも
つて、資金調整方に基きまして、甲乙丙丁の分類をつけて、その中の優先
順位のものからやむを得ず許可していく。それから
地方債についてはそれぞれの要望をと
つて一定の基準を設け、こういうものは許可しないというようにする。すなわち公共安定事業であるとか、あるいは災害復舊事業であるとかは優先的にやむを得ずや
つて、それ以外のものは後
順位に落していく。全體の需要にどうしても應じ切れませんためにさようなことをいたしておるのであります。それからこれは全部を許可いたしました後では、
関係方面の承認を得る、こういう
関係で、現在のところ、これをはずして自由にするということは、これはどうしても日本の金融
状態ではいたし兼ねる
状態でございます。もしこれを自由にいたしますれば、結局極端に言いますと、ある町ではプール
とつくりたい、ある町ではどうしても堤防の切れた跡を直さなければならない。そういうときに、プールをつくる方で非常にうまく運動をしたり、情實があ
つたり、
つてがあ
つたりすると、金を先に借りられる。そうして必要なところに金が借りられないというような
状態も起
つてまいることにもなる。それのみならず、たとえば八十億なら八十億、九十億なら九十億の
地方債のわくをもら
つてまいりますと、そのかわりをもら
つたものについては、日本銀行で大體裏打ちをして起債の許可をする。許可をすることは逆に言いかえれば、何とか金は現金化できる。現金化できるということの裏付けで
幹施するわけであります。起債の許可をするときには、必ず起債協議會というものに諮りまして、日本銀行及び特殊銀行、あるいは市中銀行の人にも集ま
つてもらい、
内務省、經濟安定本部の
関係官が出て参りまして、毎月々々の資金蓄積の状況を見てお
つて、一年間のわくの中であ
つても、毎月々々の資金蓄積の状況に応じて、今月は十億やろう、今月は五億やろう、こういうことでちびちび許可しながら、辛うじて金融機関に對する資金の手當等とにらみ合わせて、どうやら借りられたり、あるいはなかなか思うようにいかないで、借りられなか
つたりというような
状態を、今繰返しておるのであります。許可とは申しますが、逆にある
意味においては、保証というようなことをや
つておるような
状態でありあます。かれこれ亂雜に申しましたが、さような
状態であ
つて、一言にして申しますれば、現下の日本、あるいは今後當分遺憾ながら續くであろうところの日本の金融
財政状態から見れば、これを許可
主義にして、ごくごく丸要なものからやる、そこに對しては、そのかわりに裏付けをして、現金化については金融機関の方には逆に約束をする。そうして月別の計画を立てて、その月々の
状態を見て辛うじて許可をいたしておるような状況であります。
従つてこれを自由にはずしてしまうというわけいにはどうしてもまいらぬ。
法律上ここで自由にすると書きますれば、今度は自由にな
つたのはよいが、やはり
関係方面とも許可を全部受けるというような
関係もありまして、これは社債なみということにな
つてしま
つて、かえ
つて地方國債としては、不幸に陥るというような結果にもなると存ずるのでありまして、どうしても但書以下のことは現在の
状態では遺憾ながら必要であろうと考えるのであります。