○田中(源)
政府委員 お答えいたします。第一の
陸上治安に關する
命令系統でございますが、御承知の通りに、終戦前におきましては、すべての
治安維持というものは内務省の警察力によつて行われていたのであります。
自然陸上運送におきますところの鐵道等におきましては、これらの鐵道の治安その他のものは内務省の警察力に依存してまいつたのであります。また
陸上運送と申しましても、自動車あるいは
荷馬車等の軽車両、すなわち小運送面におきましても、
從來監督の權限、
命令系統は内務省におおむね所属いたしておりまして、われわれ運輸省の所管におきましては、行政面におけるところの權限等があつたと申して差支えないのであります。
かような状態でありまして、終戦後におきましての状況から申し上げますならば、ご承知のごとくに非常に國内におきますところのすべての警察力が弱體化してまいりまして、治安の上においても各面において國民に多大の迷惑をかけてきたわけであります。
自然内務省の
治安維持に依存しておりました
陸上運輸面におきましても、種々めんどうなる事故を引き起しまして、國民に御迷惑をかけてきたのでありますが、その後
國内秩序の確立に伴いまして、漸次囘復をしてまいつたわけであります。御承知のごとくに、陸上におけるところの
治安維持の責任は内務省にございまして、ただわれわれ運輸の面においては、これは申すまでもなく鐵道においては、その運轉上における治安を確保してまいります。また運轉に必要である面においての
治安維持を確保してまいりますと同時に、運輸の最も主要なる目的であります旅客並びに貨物に對する輸送面を確保していきまするための對策をとつていく、これに必要なる手段を講じていく、かような面から考えまして、殊に終戦後におきます
旅客列車等におきましては、盛んに盗難あるいは暴行、破損等が出ましたために、昭和二十二年の一月から試みに東海道、山陽の
急行列車の一、四、五、八の列車に
警乗警官を内務省に依頼いたしまして乗車してもらつて、車内における秩序を維持してまいりますとともに、乗客の整理、各種の障害に對する除去に努めてまいつたのであります。六月一日から全國の四、六列車には定期的に三名ないし、十名、おおむね五名の
警乗警察官を警乗願うとともに、司法權をもつておりますところの
鐵道職員一名をこれに付随させまして、この列車に定期的に乗せてまいつたわけであります。これがためには内務省は全國的に、
一目出面におきまし四百三十八名の
警乗警察官と、三百七十五名の驛におけるところの
連絡警察官を動員していただいたようなわけであります。なおそれ以外に地方の
ローカル路線に對しましても、各府縣の長官に要請をいたしまして、必要のある場合特に社内における治安を維持するために警官の警乗を要望いたしまして、實施いたしてきたようなわけであります。
また旅客の面においては、右様の處置をとるとともに、明るい鐵道の週間を設けて、全職員、從業員が一致して、事故の防止及び犯罪の防止に努めました結果、漸次治安の面については、今日
委員諸君がごらんの通りの状態に囘復してまいつたような結果を得た次第であります。しかしながらこれをもつても十分なる結果とは申し上げられないのであります。さらにこれに對しでき得る限り増員もし、配置等も適宜に行つて、萬全を期していきたいと日々努めております。貨物の面は、昭和二十一年三月に警備係を現場において三千七百名おきました。ただいま申したように
警乗警官を列車に警乗願うとともに、乗客の面においても、乗客係の制度を設けて、これに約二千三百名を配置して、この
連絡警察官と協力して
治安維持に努めてまいつたようなわけです。
このほかに本省においても
公安局というものを設置して、現在約三十人の職員がこれに從事しております。これは四月一日から開始しておる。各局の業務部に公安課を設置し、専任の課長以下三十名内外の職員をもつて、各局ともこれに當たらせておりますとともに、公安係というものを
管理部に設けて、大體係長以下十五人の
専任職員を配置しております。しかしこの
管理部においては、
営業事故の業務を擔當しておるものがこれは兼務しておりますが、本省の
公安局から局の業務部の公安課、それから
管理部の公安係、かように縦の面にただいま申した人数を配置して、この
管理部とその局とで國全體の鐵道における公安を保持する方針をとつておるのであります。もちろんこの公安係の下には、現在東京においては
司法警察と同等の職務、いわゆる警察權をもつている巡察員が東鐵においては旅客に八名、荷物において八名、驛長百十六名、
車掌區長十九名、
自動車區長において七名、驛の
擔當選任助役十名、小計百六十八名。名鐵においては百二十四名、大鐵局には百七十五名、廣鐵においては七十九名、
四国鐵道局において六十三名、門鐵において百二十四名、新潟においては七十五名、仙鐵七十六名、札鐵六十八名、計九百五十二名が警察權をもつております。
司法警察官を配置いたすとともに、
司法警察吏、これは直接
司法警察官の權限をもつております。先ほど申し上げました旅客、荷物、驛長、
車掌區長、
自動車區長、驛の
擔當助役。これは大
體主席助役であります。こういつたものの下に
司法警察吏としての仕事を兼務する巡察員。旅客、荷物、車掌、これは大體において
自動車區、車掌の支區長でございます。それから驛の助役、車掌區、
自動車區の助役、乗客係、警備隊、車掌、こういつたものを
司法警察吏として、小計千八百六十一名東鐵に配しております。官吏としてぼ
司法警察官は東鐵が總計百六十八名、吏員として千八百六十一名。これは名鐵では百二十四名と八百五十五名。
大阪鐵道局では官吏が百七十五名、吏員の方が千百九名、廣鐵では七十九名に吏員の方が六百十名。四鐵においては六十三名に吏員の方が二百二十五名。門鐵においては百二十四名に八百五名、新潟では七十五名と五百十八名。仙鐵は七十六名と五百五十三名、札鐵においては六十八名と五百五十四名。合計は官吏の方が九百五十二名、吏員の方が七千九十名となつております。
司法警察權をもつておるものは先程申した方々で、下の
司法警察吏の方は司法權はもつておりません。しかしこれが現場において事件を處理いたします場合には、大體において司法省の訓令に基いて、
所轄警察署及び
驛派出所等の警察官に引渡しいたしまするが、場合によりまして、そのときにこの
司法警察官吏が取調べをいたしまして、その犯罪の一件書類とともに檢事局に送付いたすこともあるのでございまするが、原則としては大
體警察官に渡しているようなわけであります。かような面におきましては、これは先ほど申しました
公安局の三十名、及び局におきましての三十名、及び
管理部における十五名は業務の事故係を兼ねておりまして、別にこれといつて俸給を出しておりません。つまり
公安局以外のものは局の課長とか、局の以外のものは、
管理部は兼務いたしておりまするから、二つの仕事を兼ね合わしてやつておるようなわけであります。
かような組織をもつて今申しましたように、一面列車の内には内務省の方から警察官の派遣を請いまして、
警乗警官の警乗を願うとともに、
連絡警察官と連絡して、かつ各驛において、あるいは貨物の面においても、それぞれの
擔當區長が
所轄警察署と連絡を取つて、治安の維持に當つておるわけであります。このうち旅客の巡察員及び荷物の巡察員、
事故防止の為に巡察いたしますところの一つの制度をつくりまして、局及び
管理部にこの巡察員がおるわけであります。先ほど申しました
司法警察官の巡察員中、
旅客荷物關係の者は
地方鐵道局及び
管理部におるものでありまして、その驛であるとか、車掌區であるとか、
自動車區であるとか、そういつたところにはこの巡察員はおらぬのでありまして、局及び
管理部から巡察員がまいりまして、旅客のすべての面における巡察をいたし、荷物の
事故防止の巡察をいたしております。かようなわけで現場と厳重な連絡をとり、一面
巡察制度の強化をはかるとともに、事前に事故を防止していく手段をとつております。
かようの手段をとつて現業の職員も鋭意努力をいたしておるのでありまするが、試みに今この事故並びに犯罪の面についての統計を申し上げまするならば、昭和二十年度の件数及び人員を申しますると、荷物の
事故件数は盗難が一萬五千五百九十七件、これは件数及び人員になつておるのであります。不著が九萬三千七百六十四、紛失が千五百二、通計で十一萬八百六十三件になつております。これが二十一年度に及びまして、その通計が二十一萬八千九百四十五件になつております。
不法行為による職員に對する傷害並びに暴行を受けた件数は、傷害を受けた件数が二千五百七十九件、人員が三千二百七十三人、暴行を受けた件数が三萬二千四百件、三萬二千四百四十六人という人数に上つております。これは昭和二十年度であります。
ガラス窓の壊れたのが十二万四千百四件、引戸また開き戸のガラスが四萬五千二百十六、電球が四萬一千五百九十九、腰掛十二萬六千百六十一、背ずれが三萬八千五百十五、網だなが五萬六百三十五、便所、洗面所が五千四百七十四、窓わくが二萬二千百二十二、
給水装置が四萬二千百七十八、行先札掛金が一萬五千百六十六、
網だな装置七萬八千四百三十八、これは
不法行為による各箇所の毀損等の
損害件数であります。そのほか
不法行為による停車場内の毀損、
損害件数、停車場の客車内の
犯罪發生の件数、
営業法違反このうち
停車場客車内の
犯罪件数のうちで
営業法違反が百九萬百八十六件あります。この犯罪の面を見ますと、一番多いのは窃盗が二萬八千三十七件、
経済事犯が五萬四千三百三十一件に上つております。
二十一年度においては、これより漸進の形をとつておりまして、先ほど申しましたように、
荷物事故件数が前年度十一萬八百六十三件に對して、計数が二十一萬八千九百四十五件に上つております。また
不法行為による職員の傷害並びに暴行を受けた件数においては、前年度よりも上昇いたしまして八萬五千三百一件、人員八萬六千三十四人に上つております。
営業法違反においては二百三十萬二千七百五十五件に上つてきたように、實に
犯罪件数が上つてまいりました。
以上おもなるものについて大略申したようなわけでありますが、その中においても、
不法行為あるいは傷害等において、國際的な關係を帯びるものもございまして、從來種々なる面倒を引起したようなわけであります。荷物の面においても逐一これを申しますと、はなはだ数字も多岐にわたり、相當時間を要することでありますから省略しますが、大體昭和二十年度における手荷物および貨物等の
事故件数の合計は九萬九千七十二件に上つております。しかしてその請求額は一千百四十九萬四千四百二十圓五十銭であり、これが二十一年度においては
事故件数は、ただいま申しました總計において十五萬七百九十一件、これは前年度より漸減をしてきておるのであります。しかし
賠償金額は三億一千六百四十一萬一千二百四十四圓七十八銭の請求額を受けておるようなわけであります。かように見てまいりますと、犯罪の状況は昭和十年度の指数を百とすれば、昭和二十年度においては
犯罪指数は一六四・二九というふうに上つてきておるようなわけであります。これのみならず不著の荷物の件数におきましても、昭和十年の指数を百といたしますと、これは二四五・七の指数を表わしております。
紛失件数におきましても、昭和十年の指数を百といたしますならば、四六九・三、こういうふうに上つてまいりまして、まことに遺憾な現象を示してきているのであります。さようなわけでありまして、目下これが鋭意
事故防止、
犯罪防止、
治安維持というものに努めております。
今申しましたような大體の制度においてやつているのでございますが、今後におきましては、一層これらの事故及び犯罪を防止いたしまして、安心をして荷物が送れる。また眞に
公共的運送の使命を全ういたしたい見地から、當省におきましては種々これらの
鐵道警察というものを考えておるのであります。内務省におきます今後の日本の警察のあり方と並行して、
鐵道専任の警察を遂行していくという意味で、一つの案を持つておるのであります。その目的といたしますことは、ただいま申しましたように、鐵道の
公安状態が非常に現今のごとくに悪化の傾向を辿つておりますものを、これを皆無の状態におく目的をもつて、善良な旅客の荷物の保護をやつていく。鐵道のいわゆる
管理責任の立場から、業務に關連する
不正事故の
徹底的防遏をはかる見地から、有能な
専任鐵道警察官を設置いたしまして、上下一體の強力なる組織のもとに、鐵道の防衛、善良な
旅客荷主の防護、
不正事故防止をやつていこうという考えであります。
その組織は先ほどちよつと申しましたように、
鐵道總局に
鐵道公安事務局を設置いたしまして、そうして各地方の鐵道局には
鐵道公安部をおきます。ただいま局の業務部に公安課というものをおいておりますが、これに
鐵道公安部をおきます。そうして
管理部には、
鐵道公安課を設置いたしまして、
管理部内の必要な場所には警備所を起きまして警備長を置きたい。大體全國に二百二十六名の警備長を配置いたしたいと思うのであります。
現場配置の
鐵道警察官には、おおむね五人について一班を組織しまして、三ないし四班について組を組織して、それぞれの長をおいていく。全國の組長は四百九十四名、班長は一千六百十六名、かような企画をもつているのであります。この
鐵道警察官はすべて
鐵道總局、
地方鐵道局、
管理部、この全體に所属しているものとしていきたいのであります。この
指揮系統は、
鐵道警察官はそれぞれ所属長の
指揮命令に從うことにいたしまして、まずかような職名をふしていつてはどうかというような考えをもつているのであります。
鐵道警察總監、これは
公安局長であります。名稱は今限定をしてみてのものでありますから、確定的のものでないことを御了承願いたいのであります。大體四月一日から
公安局が開始されまして、ただいま三十人と申したのでありますが、この下に
鐵道警察監、次に
鐵道警察監、次に
鐵道警察監補、こういうふうに大體の職名を附してみたらどうかと考えているわけであります。鐵道の
警察總監は
總局長官の命を受けまして、警察權の執行について總指揮にあたる。
鐵道警察官は、所属のいかんを問わず警察權の執行にあたり、上級職の命令に從つてまいる。警察權の執行にあたつては、乗客係、警備係、車掌、その他職務の一部といたしまして警備の任を擔當する者は
鐵道警察官の指示に從い、また
一般職員はこれに協力していく。鐵道の
職務範囲でありますが、これらの
職務範囲は
公安局の公安部及び公安課の
分掌事項は、大
體鐵道豫防警察に關する事項、
鐵道司法警察に關する事項、
運輸業務に關連する
不正事故の防止及び處理に關連する事項、
荷物事故防止處理に關する事項、それから
専任鐵道警察官は同時に
司法警察權を与えられる。それから
専任鐵道警察官の
職務範囲は、大
體鐵道豫防警察に關する事項の一切、
運輸業務に關連する
不正事故の
防止處理、
鐵道構内または列車内の現行犯の處理、
犯罪種別に制限を設けない。進んで
通常警察に協力し、両者一體となつて犯罪の
防止處理に當る。あくまでも正當善良なる旅客、荷主の保護に任じ
鐵道サービスの向上を期す。そのほかは上官の命令によつてやる。
これらの
人々たちを訓練していきますために、
教育方面におきまして、
鐵道教習所の専修部に公安課を設置いたしまして、三箇月の
教育訓練の上で、
鐵道警察官に任用したいと思うのであります。
専修部公安課の
授業科目は、一般は、憲法、刑法、
刑事訴訟法、
司法警察、服務心得、
社會常識、英語。警察は、警備、警衛、渉外、保安、交通、
経済生活、風紀、
刑事手續、防犯、捜査。體育は、體操、柔術、射撃。こういつたような訓練をいたしまして、そのほかにさらに
幹部教育のために高等科を設けて、前項の趣旨に從いまして三箇月以上の再教育を施していく。また必要がありますならば、部外の適當な機關に委託いたしまして、特別の方法を實施し教育をいたしていくことも考えておるようなわけであります。これらの強化等に對しましては各方面の、内務省、司法省、檢察庁、
府縣庁等の適當な方々に委嘱していく。これは現在各地にありまする
鐵道教習所に科を設けて、これを利用していきたい。大體採用の資格は、
中等擧校卒業者またはこれと同等以上の擧力あるものと認められる者を採用いたしまして、年齢二十歳以上の最も思想の穏健な、體格の立派な人を採用する。服装等のことも考えておりますが、その他こういうような事柄のほかに、携持いたします武器といたしましては、警防、火器の携行を許す。火器を使用する者は、大體において
公安局所属鐵道警察官六十五名の中十名、
鐵道局公安部所属鐵道警察官二百六十名中九十名、
管理部公安課所属鐵道警察官の
管理部勤務五百十名中四百七十名、
現場配置の方は、所長が二百二十六名、組長が先ほど申した四百九十四名、班長が一千六百十六名、副班長が一千六百十六名、こういうふうで大
體鐵道警察官總計八千九百十五名の中、四千五百二十二名がこういう火器または警棒をもつ。こういうふうになるような構想を實は考えているのであります。これらの待遇等につきましても、でき得る限り優遇をいたしまして、すべての
福利施設等を十分にいたして、被服の貸与等はもちろんのこと、
傷害保険の設定等に伴いまして、將來の生活安定を期するようにいたしたいと思うのであります。
これは大體の構想でございまして、かような構想を持ちまして、先ほど申し上げました今後におきまする
警察行政の改革とにらみ合わせまして、鐵道省においては専任の警察官をもちまして、ただいま申しあげたような組織によ
つて治安維持をはかつていきたい。かように考えておるようなわけでございます。
以上概括的に、今後に對する鐵道に關しての
警備治安に關する現状並びに構想を申し上げた次第でありますが、
目下國會に提案いたしております
道路事業法案、及び今後提出を企画いたしておりまする
通運事業法等によりまして、これが通過の暁には、両法の實施に伴いますところの、小
運送方面に置きますところの
治安維持につきましては、
地方警察に委任をいたしていきたいと考えておるわけでございます。
なお海上におきましての概括を申し上げたいと存ずるのであります。御承知のごとくに、日本は非常に海岸線の長い國でございますのにかかわらず、あるいは燈台でありますとか、
水難救護等の
航路保安施設は、きわめて劣弱な状態で、海難の増加は
海上交通を脅かすとともに、なかんずく終戦後日本の海軍の廃止に伴いまして密航、密貿易、
航海制限違反等、不法入國船舶は、著しく増加するに至つた次第でございます。これがために伝染病の侵入に加えて、國内の治安の維持に非常なる脅威を与えましたわけであります。昨年連合國の
最高司令部より、その
取締強化について指示があつたのでございます。よ
つて運輸省に不法入
國船監視本部を設け、
九州海運局に不法入
國監視部を置きまして、内務、大蔵、厚生の各省の御協力と、海運局の
所属官廳の動員によりまして、鋭意取締りに當つた次第でございますが、まことに
機構設備に缺くるところがございまして、今だ十分なる實績を現わすに至つておりません。しかも
海上保安の面にきましては、われわれの取締船は武器を持つておらぬのでありまして、密航者の中には武器を持つて、逆にわれわれの監視船が非常に不遇な状態に立ち至つておることも、しばしば過去にあつた次第であります。かような状態でございますから、これを画一的に管理する一つの強力なる機關を設置いたしまして、わが國におけるところの
海上警備を明らかにし、如上の不安を除去するために必要なる監視艇の設備と、各關係省の協力が伴うてまいらなければならぬのであります。從つてこれにつきまして、
連合國最高司令部に懇請をいたしたのでありますが、御承知の
通り日本の船舶は、百トン以上は今なお
スカジャップによつて抑えられておるような状態でありまして、わが
日本政府の自由にならないのであります。かような状態でございますので、種々連合國に懇請いたしまして、四月二十二日附でスカップイン第一、六百二十二号の覚書によりまして、密航、密貿易の取締、
航路標識の整備、
海難救助、
航路障害の除去、その他の
海上保安業務に使用を條件として、三十八隻の
舊小型海軍艦艇の貸下げを認可されたのであります。從つてこれに伴いまして、二十八隻を舊冬受入れいたしまして、今これを配船をいたしたのでありますが、この船も無線の短波の使用は禁止されておりますし、かつ
エンジン等において故障を生じておるものも多々ありまして、これが修理をいたして、ようやくこのものを、ただいまから申し上げる地方に配船をいたした次第であります。なお残り十
ぱいの艦艇は、指示あり次第に受取りまして、適當に配船をいたし、如上の目的を達成せしめたいと思うのであります。大體この船は百十二トンくらいの
ディーゼルでございまして、九から十、十一くらい速度を持つておるのであります。馬力は四百馬力の
ディーゼルでございまして、最高十二、
航行能力は千マイルくらいでございます。この
配船状況は、これは元の驅潜艇でございますから、
北海海運局の函館、
東北海運局の鹽釜、
關東海運局の横浜、
新潟海運管理部の新潟、
東海海運局の名古屋、
近畿海運局の大阪、舞鶴、それから
神戸海運管理部では神戸、
高松海運管理部では高知が二隻であります。それから中
國海運局の境に二隻、
九州海運局の仙崎、それから門司に三隻、博多に二隻、長崎に二隻、厳原に三隻、鹿児島に三隻、大分に一隻、今計二十八隻を配船いたしておるような状態でございます。御承知のごとくに日本の船は、百トン以上今
スカジャップにおいて抑えられて管理下にあるわけでありまして、
海上保安に關する詳細は事柄は、これ以上のことをこの席上において申し上げることは困難かと思うのでありまして、この點御諒承を願いたいと思います。
なお御承知のごとくに、沿岸におきまする機雷の
掃海關係は、連合軍の指揮のもとに第二復員局が擔當實施しておりまして、現在
使用港湾の航路は、おおむね
最小限度の掃海は完了いたしました。主として
瀬戸内方面に力を注ぎまして、本年八月末には阪神、關門の幅二千メートルの
一貫航路の完成を見て、引続き第二次計画として、下
關海峡西口第二水道、下關海峡の
南東水道の幅四千メートルの
拡張作業等が開始されておるようなわけでございます。かようなわけで、まだ相當な
重要湾港及び航路の掃海が、未掃海のままに残されたことになつております。殊に
米側施設の
感應機雷が、なお
當分有効であるとされておりまして、現に九月中におきましても、四件の
觸雷事件があつたような状態にありますために、
海上交通の安全確保の見地から、まだ十分とは申しがたいのであります。昨年十月これがために設けられました
海上交通安全對策委員會に諮りまして、第三次の掃海計画を立てて、その實施に努力いたしておる次第であります。なおこれらの掃海水路の
航路標識の整備には、最も努力をいたしておるところでございますが、主要海水路の大部分は大體において、ただいま申しましたように掃海を終つたのであります。しかし今後貿易の開始されますにおきまして、なお必要なところの未掃海の部分を掃海をいたしますとともに、安全な
航路標識を設けまして、さらにまた選任のパイロットも用意をいたしまして、外國船の入港のため必要な指定貿易港に對しては、決して危険をなからしめていきたいと考えておるような次第であります。詳細にわたりますことは、先ほど申し上げた通り、この席で説明を申し上げることはお許し願いたいのであります。
以上、海上並びに陸上における概要を申し上げますとともに、なおこれらにつきまして、現在の機能におきまして、できるだけ現業各員の協力によりまして、治安の維持に努めていきたいと思う次第であります。右概要を御説明申し上げてお答えに變えたいと思います。