○久山
政府委員 ただいま
お尋ねの国家
警察と
地方警察、及び司法
警察と行政
警察というものを、どういうふうに観念し、またそれを今回の
制度の改革において、どういうふうにこれを処置する
考えであるかというような御
質問と
承知いたしたのでありますが、従来国家
警察とか
地方警察とかいう言葉が普通に使われておるのでありまして、たしか訴願法でしたかにも、
地方警察に関する
事項というようなことがあつたと思うのであります。しかしこれは
地方で各
府県の
警察部なり
警察署が現実にや
つておりますことを
地方警察と申しますか、あるいはその内容的に非常に国家全体的な、国家性の薄いというような
意味合でこれを
地方警察とい
つておりましたが、その点がはつきりいたしませんので、厳密な
意味におきましては、今日まで
日本には
地方警察というものはなか
つたのではないかと私どもは
考えておるのでありまして、
日本の
警察は全部これは国家
警察であつた、かように
考えておるのであります。ただその国家
警察を施行いたしまするのに、各
地方に
警察部があり、
警察署があ
つて、それが施行しておつた。従
つてその施行しておりまする
警察事務の中で、比較的国家全般的な観点といいますか、色彩の薄いもの、
地方的な特性の強いもののことを、おそらく
地方警察というような言葉を使
つてお
つたのではないかと思うのでありまして、厳密な
意味におきましては、
日本には今日まで
地方警察というものはなか
つたのであ
つて、全部これは国家
警察であつた。かように
考えておるのであります。これを
地方の自治体に委譲する場合に、はじめてこれが
地方警察というような格好になるのではないと思うのでありまして、
地方の自治体が自分で
法規をつくり、その
法規を自分の自治体において施行するという場合の
警察が、はじめて
地方警察というふうに名実ともに言えるのではないかと
考えるのであります。先般
警察制度審議會の御
答申を得まして、
政府は本年の二月二十七日に総司令部に上申いたしました
警察制度改革に関する
日本政府の
意向といたしましては、相当な
警察力を維持する力のある、財政的にもその
都市——主として大きな
都市でありますが、それが自分自身でそういう
警察をも
つて、財政的にも、またその
警察の能率の点からいたしましても、完全にこれを維持執行できるという見きわめのついたところに対しましては、原則として全部
警察を委譲する。従
つてここにはじめて国家から離れた完全なる
地方警察というものが生まれるのではないかと思います。そういう方向にも
つていこうというのでありまして、しからばいかなる時期に、どういう程度の範囲のものを
地方に委譲するかということにつきましては、今なお
研究を続けておるわけでありまして、よしんば完全に相当な
都市に
警察が委譲されましても、それ以外の小さな町村というものは、とうてい自分自身が完全な
警察力を維持するという能力が、あらゆる面で足りないものがあるわけでありますので、
地方に委譲するという原則をとりました場合におきましても、まずそういう重要なる
都市等を中心にしたもの以外は、どこかでこれを維持しなければならないということで、そこにやはり一応委譲する建前をとりましても、
日本全国津々浦々の各自治体がそれぞれ完全なる
地方警察をも
つて、ここに国家
警察と申しますか、国家自身、
中央政府自身が責任をも
つて統括し、維持する
警察が完全になくなるというふうなことは、私ども想像できないのでありまして、ある時期がまいりますと
地方自治体の主として大きな
都市でありますが、そういうところに
警察が委譲されました場合におきましても、その残余の小さい町村等を一括いたしまして、あるいはそれを
府県ごとにわけますか、あるいはそれを全部包括して、現在のままの国家
警察というものが、また別個に存在しなければならぬというふうに私どもは
考え、またそういうことでいろいろ
関係方面とも話を続けておるのであります。また
都市に
警察が委譲いたされましたといたしましても、その間の
連絡調整と申しますか、あるいは通信
関係とか、あるいは犯罪全体に通ずる鑑識の問題とか、あるいは教養の問題、及び全体を通ずる
一つの標準と申しまするか、共通の
事項につきましては、どうしても国家がこれを握
つておらなければならぬわけでありまして、そういうふうな
考え方で大体話を進めておるのであります。それからいかなる程度に
地方への委譲が行われるにいたしましても、国家全体を対象とした、また全体的の非常に大きな警備の問題なり、犯罪の問題等につきましては、どういう委譲が行われましても、やはり国家として一定の
警察を維持しておくということは、どうしても必要であるというふうな
考え方で進めておるわけであります。
司法
警察と行政
警察、これも厳格な
意味での見解と申しますか、定義というものも別にはつきりしたものはないのでありますけれども、一応犯罪の捜査と犯人の逮捕というようなものを司法
警察、そうしてそれ以外のもの、結局そういう犯罪の
発生を
予防する
ための
警察、これをいはゆる行政
警察というふうに普通わけておるのではないかと思うのであります。犯罪が
発生して、その犯罪を捜査して犯人を逮捕しますのが、司法
警察であり、結局そういう犯罪の
発生を
予防し、そうして全体の治安の維持をはかるとか、民衆の保護にあたるのが、いわゆる一般行政
警察ということであろうと思うのであります。そういうふうに観念いたしますとわけられるのでありますけれども、主としてそういう
考え方というのは、大体ヨーロツパ大陸の
考え方であるのであります。
英米等におきましては司法
警察と行政
警察という観念はないのでありまして、
警察というものはすべてひつくるめて、そういう犯罪を
予防し、治安を維持し、そうして犯人を捜査してこれを逮捕するというようなことが
警察であるという観念であります。
日本は従来ヨーロツパ大陸系の
考え方に従いまして、司法
警察と行政
警察とに一応わけまして、犯罪を捜査して犯人を逮捕する
警察官に対して、これを司法
警察官というふうな名称で扱
つておるのであります。それを分離いたすというふうなことは、もうずいぶん長い間の問題でありまして、どういうふうにその分離をするか、やはり検事が犯罪の捜査をいたします場合に、自分が直接に身分をもち、指揮命令のできる
警察官でないと犯罪の捜査が完全にいかない。あるいはそれが行政
警察と一体にな
つておる
ために、いろいろ行政
警察面からの弊害が起
つて来る、及びいろいろ身分上の異動等も司法
警察という観点からのみ見た異動も行われない。従
つて本当に専門的に司法
警察のみに従事するということもできなくておるというような、いろいろな理由から、現在の
警察から司法
警察を分離いたしまして、検事の直接の指揮のものに一定の司法
警察官を置くということが、司法
警察と行政
警察の分離という問題であろうと思うのでありますけれども、これももうしばしば議論が尽され、
研究もずいぶん長くいたされて、大体の結論は出ておるのでありますけれども、結局現在のような
状況におきまして、司法
警察官と行政
警察官というものを二つにわけ、そうして一方は犯罪が
発生した場合にこれを逮捕し、捜査するだけである。一方は犯罪を
予防する
ための一般的な行政
警察のみをやるというふうにすることが、果していろいろいわれまする欠点を補
つて犯罪の捜査が完全にできるかどうか、かえ
つてそういうことの
ためにいろいろの欠陥、弊害の方が多いのではないかということで、これはもう多年の
研究の結果、大体
現状を維持して、そうして検察官の補佐と申しまするか、要するに検察
事務を補佐するある種の人員を検察庁の方に増加するというようなことで、
警察としては依然としてその両
警察を一人の
警察官が握
つて、交番に立ち、町の警羅をやり、不審尋問をやるというところに犯罪の
予防もでき、治安の維持もできるというようなことで、現に犯罪の相当の部分は、一般にこの
予防に従事しております行政
警察官の働きの中から実は検挙し、逮捕されておることが多いのでありまして、そういうふうなことから、大体観念としては分離ができるのでありますけれども、現実の処置といたしましては、大体
現状でいくことが犯罪捜査という面からい
つてもいいというふうな結論が常に出ておるように私ども
考えておるのであります。ところがこのたび
警察制度を改革いたしまして、
地方自治体にこれを委譲する。これを極端に
考えますと、そこでいわゆる国家
警察と申しまするか、
中央政府が握
つておりまする国家
警察というものがことごとくなくなりまして、
地方自治体に完全に委譲されるという状態をもし想像いたしますならば、もう残るべき
中央政府において統制をする
警察の重点は、犯罪の捜査ということが中心になるということになりますれば、いわゆる司法
警察のみを国家が握
つておればいいのではないか。行政
警察に属する部分は、ことごとくこれを
地方の自治体に委譲するというふうなところから、
司法省と申しますか、検察庁の方に
警察というものをも
つていつたらどうかというふうに、案が出てくるのではないかと思うのでありますけれども、
地方に
警察を委譲するということが、そもそも私ども現在の
考えでは、相当な大
都市にのみこれが
考えられるのでありまして、少くともここ当分の間は、国家
警察を一切なくいたしまして、完全にこれを
地方自治体に委譲するということは、ちよつと私どもは治安維持という観点から想像ができないように
考えておるのでありまして、やはり大
都市に
警察が委譲されましても、それ以外の部分を統轄する
警察、さらにその
都市に委譲されました
警察の上においかぶさる重大な治安維持に対する
警察、及びこれらの
連絡調整なり、ただいま申しました教養なり通信なり、いろいろの点における国家が握
つておるべき
警察部門というものが、相当多く残るわけでありまするので、そういう行政
警察と申しますか、犯罪の
予防の
ための一般
警察というものをひつくるめて、それを
司法省と申しますか、検察の方で握るということは、かえ
つて検察という一本の建前のところに、一切の司法行政
警察をひつくるめた強大なる力を握るというような点からも、民主主義の原則から申しましても、どうであろうか、さらにそれだけの大きな国家
警察の部門が残るといたしますれば、現在のごとくこれを別個のところで
所管するという方が、いろいろの観点からかえ
つて弊害が少くて、効果をあげることができるのではないかというふうな状態に、現在のこの
警察の改革の仕方なり、改革の方向がい
つているのでありまして、その司法
警察と行政
警察の分離なり、これをひつくるめて
公安庁でなくて、また別のところへも
つていくという問題につきましては、現在まだ
委員會が設置されたばかりでありまして、
内閣におきましてもまだ一向にその点の
審議は進んでおらぬようでありまして、私どもといたしましては、ただいま大体申し上げましたようなふうにこの問題を
考え、将来の改革の方向といたしましても、大体そういうふうにも
つていくことが、現在及び近い将来における
日本の
警察のあり方としては、治安維持の観点からは最も適切な
方法ではないかというように
考えておるのであります。