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中村(俊)
委員 提案にな
つております
法務廳設置法案の
機構のうち、私
司法大臣に特にお尋ねいたしたいのは、
行刑に關する點であります。この原案によりますと、
行刑に關する
事項は、
法務行政長官のもとにおける
矯正總務局がこれを取扱うことにな
つておるのでございますが、私
資料を蒐集いたします
地理的關係上、近
畿管區に關する入手いたしました
資料について二、三
行刑についてお尋ねいたしたいと思うのであります。近
畿管區、の
拘置所、
刑務所合わせて十箇所ありまして、その
拘禁定員は九千九百十一名ということにな
つておるのであります。ところが
昭和二十年の九月の
收容人員は九千四百五十四名、
定員より四百五十七名不足しておる。つまり
餘裕があつたわけなんです。ところが
昭和二十一年の五月ごろから、犯罪の激増に從いまして、月を
逐つて收容者が殖えて、二十一年の七月二十五日現在では一萬三千六百十八人という大きな
數字が現われておるのであります。しかも御
承知の
通り當時の暑さとこの
過剰拘禁のために、七月七日には
神戸拘置所では、暴力による
收容者の
集團逃走四十九名を出したような
事態が發生し、越えて八月十一日には、
大阪拘置所が二・七倍以上の
過剰拘禁のために、百十一名の
監房破壊、暴行による
集團逃走が發生したことは、
司法當局においても御
承知の
通りだと思うのであります。さらに昨年の十一月三日減刑が
施行されまして、刑期が短縮せられたのでありますけれども、
入所者が依然として多いために、ますます
入室者が激増いたしまして、昨年の十一月末日現在では、一萬七千百三十一名の
定員を超過すること實に七千二百二十名です。これは
近畿行刑管區内だけで、こういう厖大な
超過數字が現われておるのでございます。しかもそのうち本年の七月にようやく三千名の
移送が實現されたようでありますが、しかもなお
大阪の
刑務所のごときは、檢身場や、
米麥を入れる
米麥倉庫までも
受刑者の寢室に代便しておるというような
状況であります。しかも
司法大臣直接關與されて御
承知の
通り、本年の七月
司法省で
行刑管區長會同が開かれまして、この
近畿の
過剰拘禁の
對策について
會議が開かれたと思いますけれども、ほとんど何らの施設がなされるような結果を得られなかつたと、私は聞いておるのであります。なおその後において、北海道、東北、中國、四
國等の
刑務所へ、七月、八月、九月にかけて二千八百十名を
移送して、なおかつ大量の假釋放を出しておるにもかかわらず、
移送前の七月一日現在一萬八千二百八十二名に對して、
移送後の十月一日現在一萬七千八百十七名という
數字を示しておる。わずかに四百六十五名が
減つたというだけにすぎない。これが
近畿行刑區だけにおいての
數字であります。全國がら言えば、やはり私は莫大な
過剰拘禁の
數字が出ておるのじやないかと想像されるのであります。もちろんこれにつきましては、おそらく
司法省もずいぶん苦心されておることだろうと思います。あるいは戰時中の
軍需工場の
轉用、それから
海兵團の建物をこれにかえるとか、種々なる
打開策が考えられておるのではありますけれども、ほとんど實現されておりません。もちろん
占領軍と折衝の
關係もいろいろあるようでありますけれども、しかもこういうような
状況でありますがゆえに、先般
神戸で
行刑官が
囚人に殺されたというような悲慘なる
犠牲者を出している結果もあるのであります。殊に
近畿には特別な事情がありまして、
日本には五つしかないところの
拘置所が三つもある。女だけの
刑務所がある。
少年刑務所が二つある。つまりこういうような特別な
刑務所が六つあるにもかかわらず、普通の
成年刑務所は四つしかない。こういう變態的な
状態にな
つておるのであります。しかもこの
過剰拘禁の結果、一面において
刑務所における
設備、あるいはこれ 金のないせいもありましようし、
資材難もありましようが、
受刑者が業を失うというような結果を招來してきておるのでございます。これはまことに重大な問題でもありまして、
司法當局におかれましても、いろいろと考えておいでになるだろうと思いますが、これをどうして解決するかということが、私は當面の大きな問題ではないかと考えておるのでございます。昔の
行刑局でありましたならば、
中央において案を立てる。それを管下の
刑務所へ指令いたしましたならば、すぐに事は足りたでありましようけれども、現在のわが國の
國情におきましては、
食糧、衣料、燃料、作業、機械、
資材、資金、
拘禁設備等、この重要なる問題が、すべて
中央の各
官廳ち折衝しなければ解決されない。しかも現在の
行刑局の構成は、局長のもとに課長が三人、その他二級
事務官二、三名のわずかな陣容でも
つてこの問題を處理されておる。しかもその
最終的決定は、
大臣官房會計課が行
つておるということがありますので、
行刑局といたしましては、ほとんど何らの力をも
つていないというような結果が、ひいては
不祥事件を招來しておるのではないか。現に
神戸に起りましたあの
戒護課長の悲劇のごとき、これを救濟するのに何らの
具體的の
方法が一時講じられなかつた。わずかにその後各
關係者の
努力によりまして、わずかな
弔慰金が與えられたようでありますけれども、警察官に對して
世間が比較的その勞を多とするに比較いたしまして、現在までの
日本の
刑務所の
機構なりその
運營の
方法が、
社會と遮斷されておりましたがために、一般の人々も
刑務所というものからほとんど遊離しておる。
從つてただいま申し述べましたごとき、きわめて
危險なる
状態にあるにもかかわらず、
社會人はこれに對して比較的同情を寄せていないということなどは、われわれ
在野法曹として
關係いたす者にとりましては、まことに殘念に考えてお
つたのでございます。從いまして、私は
司法大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、この
法務廳の
組織の中に、
法務行政長官のもとに、この
行刑課が
矯正總務局に置かれて
一つの部局として取扱われておりますが、これは非常な間違いではないか、むしろ許されるならば、
行刑局というものは、
法務廳の
外局として、あるいは
特別會計のもとに、自由に單獨にこれらの問題を急速に解決し得るような
方法を講ぜられなければ、私は不祥事は決して過去の歴史として見るだけでなしに、今後ますますこういう
事態が發生するのではないかと憂うるのでありますが、これに對する
司法大臣の考えを承りたいと思います。