○
鈴木國務大臣 お答えをいたします。非常に適切なる御
意見でありまして、大體においていずれも私の心から贊成いたすところであります。
刑罰法規の濫發ということは、まことに遺憾なことでありまして、刑政の
目的は刑なきを期するにあるのでありますから、できるだけこういう法規はつくりたくないのでありますが、御承知のごとく、非常に刻下經濟の状態が逼泊いたしております
ために、種々の
方面に制裁法規をも
つて當らなければならぬような状態にな
つております
ために、お言葉のような非常な罪人が殖える、怪我人が殖えるということに相なるのでありまして、これに對しまして適切な對策を講じなければならないということはもちろんであります。できるだけ
刑罰法規を少なくすることは、私どもの望んでおるところでありますが、不幸にして
刑罰法規が現存する以上、それに觸れるものがありますならば、それを適正に處斷していかなければならぬ。必ずしも全部それを監獄に入れるというような
意味ではなくして、
適當な對策を講じなければならぬのでありまして、その
意味においてこの
保護事業がいかに大切であるか。ある
意味においては、現下における
國家第一位の
重要性をも
つておる仕事であるとすら私は認識いたしておるのであります。そこで
行刑につき、
保護についてどういう抱負なり對策なりをも
つておるかというお尋ねでありますが、
行刑につきましては、他の
機會にも詳しく參議院等でお答えをいたしたのでありまして、近く次の
議會には
提案ができると存じますが、監獄法を
改正いたしまして、もつと文化的な、教育的な、合理的な
行刑をや
つていきたい。こういう考えでおりまして、ぜひその際は御
審議を煩わしまして、よき
行刑法規の確立の
ためにご協力を願いたいと思
つております。
それから
少年保護につきましては、特別の配慮を必要といたしますから、特に
法務廳において三局を設け、特別の
制度の上で改革をいたしますだけでなく、その
保護のやり方につきましても、特に
從來施設の怪しげなる
保護團體というようなものは弊害があることを看取いたしまして、できるだけ短期間の間に私立の
保護團體を全部
官公立の
保護施設に改組いたしまして、
國家が責任をも
つてこれらの
施設を經營していく、こういう
建前にいたそうと考えておるのであります。そうしてほんとうに愛と權威とをも
つて、
行刑なり
保護なりに當る人材を得まして、この仕事をほんとうに實のあるものにいたしたいということを願
つておる次第であります。
從
つて第三點の御
質問でありまする
行刑局長なり、あるいはその他
行刑保護の
職員が、單に檢事の古手であるとか、あるいは檢事畑から起用する、そうして一時の出世の腰掛にするというような弊害がありはしないかというお尋ねでありまするが、それまでの弊害はないと思いまするが、元來がすべての仕事はできるだけ専門家を配置し、殊にその仕事に熱と理解とをも
つておりまする人を用いることによ
つてのみ成績をあげることができるのでありまするから、私は
行刑の
方面につきましては、
行刑に特殊の經驗と抱負と見識とをもつた人をぜひ迎えたい、在朝であろうが在野であろうが、どちらでもよろしいのでございますから、そういう人をぜひ用いたい、こういう考えをも
つておるのでありまして、そのことは參議院の
司法委員會でも明らかにいたしておいたのでありますが、ただ實際の人は、どの人がよいかということになると、非常にむづかしい問題でありまして、長し短かしなかなか
適當な人がその専門の畑にすらも見出すことがむつかしいのであります。けれどもたとい多少の長し短かしはありましても、そういう方針で實行をいたすつもりでありまするが、なおそれを補う
ために、私は民間における有識者、殊にこういう
方面に經驗と功勞の多い人を顧問のようなものに御委囑いたしまして、そうしてその足らざる點を補
つて、新しい
機構でこの仕事を進めていきたいというような考えをも
つておる次第であります。
それから最後に第四點といたしまして、もつとこういう地味なほんとうの仕事をするところの
人々に對して、何らかの
國家として表彰の途を考えるべきではないか、あたかも私の考えておりまするところに觸れていただいたのでありまして、先日イギリスの勞働黨の代議士のランゲ氏と會いまして、食事をともにしながら詳しく話したのですが、あの人はほとんど勞働黨の代議士で、政治家というよりは、監獄改良だけに専心しておりまして、全世界を歩いて、インドの監獄はこうな
つておる、シヤムの監獄はこう、中華民國の監獄はこうで、日本の府中の
刑務所はこうで、川越の方はどうだというようなことで、實に世界の監獄の實際について、よく御存じにな
つておられ、そうしてりつぱな
意見をも
つておられる。それを専門にあの人はや
つておる。こういう人が英國勞働黨の代議士にあるということは、勞働黨の非常な強みであり、わが國の
庄司一郎氏に比すべえきものであると考えたのでありまするが、こういう人に對しては、また
國家としては特殊の表彰が然るべきである。決して
庄司君一人に限つた問題でなく、一般
社會事業あるいは
保護事業等に功勞のある人こそ、平和的文化
國家においては、第一に表彰を受くべきものと私は考えております。實は
内閣におきまして、ただいま榮典
制度の改革を
審議いたしておりまして、私も
委員の一人でありまするが、今までは軍國主義的な勳章を差上げておつた。これはやめなければならぬことは當然でありまして、そうでなくても、ただ官吏として年限が經てば勳章を上げるというようなことは、どうかと思うのでありまして、少なくともまず第一には
社會事業、
保護事業等に、ほんとうに貢獻した人たちが表彰を受くべきである。その
意味において、新しい榮典などは
考慮すべきものであると考えておることを、この際一言申し上げまして、私のお答えにかえたいと思います。