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1947-10-11 第1回国会 衆議院 司法委員会 第47号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十二年十月十一日(土曜日) 午後二時七分
開議
出席委員
委員長
松永
義雄君
理事
荊木 一久君
理事
鍛冶 良作君 石井
繁丸
君
山中日露史
君 中村 俊夫君
山下
春江君 吉田 安君
岡井藤志郎
君
北浦圭太郎
君 花村 四郎君
明禮輝三郎
君
大島
多藏君
出席政府委員
司法事務官
奧野
健一君
委員外
の
出席者
專門調査員
村 教三君
—————————————
本日の
會議
に付した事件
裁判官
及びその他の
裁判所職員
の
分限
に關する
法律案
(
内閣送付
)(豫第一〇號)
—————————————
山下春江
1
○
山下
委員長
代理 これより
會議
を開きます。
裁判官
及びその他の
裁判所
、
職員
の
分限
に關する
法律案
を議題として審議を進めます。
大島
多藏君。
大島多藏
2
○
大島
(多)
委員
まず最初にこの
法案
の
名前
でありますが、
裁判所職員
の
分限
に關する
法律案
、こうな
つて
おりますが、私は讀む前に、どういう
法律
だろうかと
思つて實
は
はつ
きりわからなか
つた
わけであります。
内容
を讀んでみると、
裁判官
及び
裁判所
の
職員
の
免官
及び
懲戒
に關する
規定
だけでありまして、それならそのように、やはり
裁判官
及びその他の
裁判所職員
の
免官竝びに懲戒
に關する
法律案
と、こういうふうになされる方がいいのではないか。ほかの人に聞いたらやつ
ぱりほかの人
も
分限
という
意味
の廣い
はつ
きりしない
言葉
を用いるよりも、
はつ
きり
法案
の
名前
を見ただけでどういうことが書かれておるということがわかるような
名前
をつけた方がよかろうというような意見の人が多いようでありましたが、これは
分限
という
言葉
は、
裁判所
として
從來
慣例的にこういう
意味
に使われてお
つた
かどうか。そういう點を
ちよ
つとお伺いしたいのであります。
奧野健一
3
○
奧野政府委員
御説の通りでありますが、その
内容
は、要するに身分、
進退
あるいは
懲戒
、それらの
事柄
を
規定
しておるのであります。そこで
從來
は
判事懲戒法
、それからそれ以外の
職員
は
文官懲戒令
及び
官吏分限令
の適用があ
つた
わけであります。ところが御承知のように、
弾劾法
によりまして、
裁判官
を
罷免
する場合は
弾劾法
によることにな
つて
、従いまして
罷免
さるる以外の點について、
裁判官
につきましてはこの
法律
による。すなわち
判事懲戒法
の中で、いわゆる
免官
に屬する分が
弾劾法
の方へ移り、殘りの分がこの
法律
になるという
事柄
。それからまた
從來
は、
心身
の
故障
のために仕事がとれなく
なつ
たという場合は、
判事
の
總會
でこれを退職せしめることができることにな
つて
おりましたが、今度は
憲法
の
規定
によりまして、
裁判
によるということになりましたので、その場合のことも
規定
するということにな
つて
まいり、また
裁判官
以外の
裁判所
に所屬いたしております
職員
は、本來は
文官
として
文官懲戒令
とか、
文官分限令
によるべきものでありましようが、しかし
裁判所
内の
職員
でありますがゆえに、特例を設けて、そういう
事柄
もこの中に
規定
しようということになりましたので、これらのものをすべて
内容
を網羅するために、あるいは
罷免
または
懲戒
に關する
事柄
というふうに書きますことは、
罷免
と書けば
弾劾
の方とのつり合上疑問が生ずることになりますので、どういう文字を使
つた
らいいかということで非常に頭を惱ましたのでありますが、結局やはり
分限
という
言葉
が、身の
進退懲戒等
すべてを表わすものであろうということで、はなはだわかりにくいかとも存じますが、そういう
意味
で
分限
に関する
法律
という
名前
にいたしたわけであります。
大島多藏
4
○
大島
(多)
委員
ただいまの
説明
でよくわかりました。次に第
一條
におきましては、
裁判官
を
免官
にする場合を二通りほど書いてありますが、第一の場合は、すなわち
心身
の
故障
のため
職務
をとることができないと
裁判
された場合と、それから
本人
が
免官
を願い出た場合ということが書いてありますが、
裁判官
が
免官
をされる場合は、私といたしましてはこの二つと、それから公の
弾劾
による
免官
の場合、それからもう
一つ
は
自然免官
と言いますか、
死亡
の場合と四つあるだろうと思いますが、この第
一條
の
關係
するところは、
心身
の
故障
に
關係
のあるだけで、自己の希望によ
つて免官
をされる場合のことは別にここにはこういうふうに
規定
する必要はないように私は思いますが、やはりこの
分限
に關する
法律案
に必要でありますか。
奧野健一
5
○
奧野政府委員
お説のように、
裁判官
が
罷免
せられる場合は、
憲法
に
規定
があるのでありまして、すなわちただいまおつしや
つた
公の
弾劾
によ
つて
罷免
される場合、すなわちこの部分は
裁判官弾劾法
として
規定
をいたすわけであります。それからいま
一つ
は、
最高裁判所
の
裁判官
につきましては、
國民審査
によりまして
罷免
を可とする投票が多ければ
罷免
されるという
國民審査
もある。そのほかに
憲法
第七十
八條
によりまして「
裁判官
は、
裁判
により、
心身
の
故障
のために
職務
を執ることができないと決定された場合を除いては、公の
弾劾
によらなければ、
罷免
されない。」ということにな
つて
おりますので、すなわち
裁判
によ
つて心身
の
故障
のために
職務
をとることができないと決定された場合が、やはり
罷免
の
一つ
の場合にな
つて
まいります。そこで第
一條
にはただいま
言つた憲法
七十
八條
による
心身
の
故障
のために、
職務
を執ることができないと
裁判
された場合に
罷免
されるということを
規定
したのであります。そのほかに
本人
の願い出によ
つて免官
するという場合を、ここに附加えたのであります。
從來裁判官
は
終身官
でありますから、たとえ自分の願い出によ
つて
も、
免官
ということにはならない、退職ということはあり得るけれども、
免官
ということはあり得ないということで、
實際
退職する場合にもやはり醫者の
診断書
か何かをと
つて
、
むりに病気
の理由によ
つて
退職するというふうなことにな
つて
、
依願免官
という制度はなか
つた
のでありますが、今度の
憲法
におきましては、
裁判官
は
終身官
ではないのであります。
停年等
に達すれば退官するということにな
つて
お
つて
、
終身官
ではないのであります。
從つて依願免官
ということを認めて、こうも
憲法
上違反しないということにな
つて
、その點がやや從来のいきがかりによ
つて
疑問がありますので、この際やはり
依願免官
のできることを
規定
しておいた方が
はつ
きりするではないかということで、
規定
することと
なつ
たのであります。 なおついででありますから、この際
休職
の問題についても、ここに願い出によ
つて休職
にするというふうな場合も
規定
したらどうかという議論もありましたが、これは
監督權
の作用で許可を得て缺勤にするということでよかろう、特に
休職
ということは書く必要がない。
依願免官
のことは疑いがあるから書いたらよかろうということになりまして、
心身故障
のための
罷免
と同列に
依願免官
のできることにしたわけであります。要するにこういう
規定
がなくても、そいうふうになろうと思いますけれども、従来の
解釋上疑いが
あ
つた
ので、それを明らかにするということにいたしたわけであります。
大島多藏
6
○
大島
(多)
委員
参考
までにお伺いしますが、
死亡
の場合はどういう形になるわけでありますか。
奧野健一
7
○
奧野政府委員
それは當然官がなくな
つて
しまう。
大島多藏
8
○
大島
(多)
委員
それはなくなりますが、
辭令
を出されるときは、どういう形式でお出しになりますか。
奧野健一
9
○
奧野政府委員
死亡
のときは別に
辭令
は出しません。
大島多藏
10
○
大島
(多)
委員
次にお伺いしたいことは、第
二條
におきまして(
懲戒
)として「
裁判官
の
懲戒
は、
戒告
又は一
萬圓
以下の
過料
とする。」とあります。これによりますと、
裁判官
の
懲戒
というものは、
戒告
と
過料
と二
種類
にな
つて
おるようでありますが、私がお
聽きし
たいのは、この
過料
についてであります。この
過料
の性質でありますが、
憲法
の八十條におきまして、「
下級裁判所
の
裁判官
は、すべて定期に相當額の
報酬
を受ける。この
報酬
は、
在任
中、これを
減額
することができない。」という
規定
があります。これは司法官の地位が非常に大事なものであるから、その他の勢力の影響を受けないために、こういう
規定
をしたものと考えられるわけでありますが、この第
二條
の
規定
の一
萬圓
以下の
過料
というのが
事實
においては、私はこの
憲法
の八十條の
報酬
はこれを
減額
することができないということと、
實際
上においては牴觸するのじやないかというような
感じ
をもつわけであります。何千圓以下の
過料
に處せられたということになると、實質的には少くとも
在任
中の
報酬
というものがそれだけ
減額
されることになるから、その
意味
からして私はこの
過料
の
規定
というものは、考えようによ
つた
ら、
憲法違反
でないかという懸念をもつわけであります。それで
裁判官
の
懲戒
というものは、
戒告
だけに止めて、この
過料
というものはない方がいいのじやないか。そういう考えをも
つて
おりますが、それにつきましてお伺いをいたします。
奧野健一
11
○
奧野政府委員
一應ごもつともな點でありまして、この點について、われわれもいろいろ
關係方面
とも話し
合つた
結果、こういうことに
なつ
たのでありますが非常に形式的に申しますれば、
過料
というものは
秩序罰
でありまして、これは
月給
から差引いてやるというのではなく、
裁判官
の
一般財産
の中から
支拂
えばよい。別に
月給
から差引くというようなことではないのであるから、いわゆる
憲法
の七十九條、八十
條等
の
報酬
の
減額
ということにはあたるまい。そうなると、
ちようど裁判官
が悪いことをして罰金に
なつ
たり、あるいは税金を懲収されたりするようなことでも、
報酬
がそれだけ減るわけであるから、
憲法違反
じやないかというようなことまで考えられるのでありますが、こういうふうに、別途な
一般財産
のうちから
支拂
えばよいというふうなことになります場合には、
報酬自體
としては、全然
減額
されないので、別に別途な
一般財産
のうちから
支拂
えばよいということに考えて、これが
報酬
の
減額
にはならないという
意味
で、
過料
というものを
懲戒
の
一つ
の
種類
といたしたわけであります。 〔
山下委員長代理退席
、
委員長
著席〕
大島多藏
12
○
大島
(多)
委員
ただいまの御
説明
で、大體筋が通るようにも思いますけれども、これがほかの
刑法
上の犯罪とか何とかのたびに、
刑法
の
規定
するところの
過料
に處せられる場合のことは、それは私も思いませんけれども、
裁判官
の
分限令
による處罰の
方法
として、
過料
というものをおくということは、その
裁判官
がただいまおしや
つた
ように
財産
を別にも
つて
おればよいけれども、も
つて
いない場合は、やはり
俸給
から差引くということになりまして、實質的に私はどうしてもやはり
報酬
の
減額
を來すという
感じ
をもちますが、その點はいかがでございますか。
奧野健一
13
○
奧野政府委員
それは拂わないからとい
つて
報酬
から差引かないのでありまして、これは十三條にありますように、
過料
の
裁判
の
執行
いわゆる
懲戒
による
過料
の
執行
については、非
訟事件手續法二
百
八條
の
規定
で
強制執行
をや
つて
いくというような
方法
で、あくまで
一般財産
からとるので、
俸給
から差引くような
方法
で徴收しないつもりであります。
大島多藏
14
○
大島
(多)
委員
それからまた第
一條
に歸りますが、第
一條
の後段のところに、「前項の願出は
最高裁判所
を經てこれをしなければならない。」とありますが、そうしたらこれは
最高裁判所
の
長官
が願出る場合も、
最高裁判所
を通してやるわけでございますか。
奧野健一
15
○
奧野政府委員
そうであります。やはり
裁判官
たる資格と
最高裁判所
という
会議體
とを區別して考えまして、今度できました
裁判所法
というものは、すべてそういう
監督權
というものは
裁判所
が
会議體
としても
つて
いるので、
裁判所
の
長官
がも
つて
いないというふうな建前で
監督系統
ができております。そういう
意味
で、
最高裁判所長官
といえども、
最高裁判所
の
監督
を受けておるわけでありまして、いわゆる
監督機關
である
最高裁判所
を通じて願出をする。それに基いて
任免權
をも
つて
おる
内閣
が、これを
免官
に付するという
關係
になるわけであります。
大島多藏
16
○
大島
(多)
委員
最後にもう
一つ
お尋ねしたいことは、
裁判官
以外の
裁判所職員
の
懲戒
をなす場合に、第十四條でございますか、
裁判所職員高等懲戒委員會及び裁判所職員普通懲戒委員會
というものが、そういうものを決定するような
組織
にな
つて
おりますが、これはどういう
組織
にな
つて
いるか、
参考
のためにお尋ねしたい。
奧野健一
17
○
奧野政府委員
大體
文官
の
懲戒
の例によりましても、いわゆる一級、二級に該當する者は
高等懲戒委員會
で、三級以下が
普通懲戒委員會
の議決によ
つて懲戒免官
に付されるのであります。ところが普通の
文官
であればそれでよろしいが、いやしくも
裁判所
の
職員
で、
最高裁判所
の
監督
に服しておる者は、
普通文官
のそういう
懲戒委員會
でやることは、實はあまり
適當
ではなかろうというので、そのものについては、
裁判所職員
だけについて
高等懲戒委員會
と
普通懲戒委員會
を設けるということにいたしたのであります。どういう
メンバー
でそういう
高等懲戒委員會
、
普通懲戒委員會
をきめるかということは、これは實は第十四條の四項にありますように、
最高裁判所
がこれからきめる事項にな
つて
おりまして、おそらく
裁判官
その他あるいはどういう
メンバー
でも
つて
懲戒委員会
をつくりますか、實はこれから
最高裁判所
が、
メンバー
をきめることにな
つて
おります。
大島多藏
18
○
大島
(多)
委員
私はこれで終ります。
松永義雄
19
○
松永委員長
それでは暫時休憩いたします。 午後二時三十一分休憩
—————————————
午後三時二分
開議
松永義雄
20
○
松永委員長
本日はこれにて散會します。
次会
は明後十三日午後一時より開會いたします。 午後三時三
分散會