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1947-10-03 第1回国会 衆議院 司法委員会 第44号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十二年十月三日(金曜日) 午前十一時二十分
開議
出席委員
委員長
松永
義雄君
理事
石川金次郎
君
理事
荊木
一久君
理事
鍛冶 良作君 石井
繁丸
君
榊原
千代
君 安田 幹太君
山中日露史
君
中村
俊夫君
中村
又一君 八並 達雄君
山下
春江
君 吉田 安君
北浦圭太郎
君 花村 四郎君
明禮輝三郎
君 大島 多藏君 酒井 俊雄君
出席政府委員
司 法 次 官 佐藤
藤佐
君
委員外
の
出席者
專門調査員
村 教三君 ————————————— 本日の會議に付した
事件
刑法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)(第 六號) —————————————
松永義雄
1
○
松永委員長
会議を開きます。
刑法
の一部を
改正
する
法律案
について審議を進めます。本案について四個の
修正案
が
提出
されております。順次これを朗読いたします。 まず
社会党
、
民主党
、
自由党
及び
國民協同党各派
の
共同提案
にかかるいわゆる
前科抹消
に関する
修正案
を読み上げます。
刑法
の一部を
改正
する
法律案
の一部を次の
よう
に
修正
する。 第三十四條の二第一項を次の
よう
に改める。 「
禁錮
以上ノ刑ノ
執行
ヲ
終リ
又
ハ其執行
ノ
免除
ヲ得タル
者罰金
以上ノ
刑ニ處セラルルコトナクシテ
十年ヲ
経過シタルトキハ刑
ノ
言渡ハ其効力
ヲ
失フ罰金
以下ノ刑ノ
執行
ヲ
終リ
又
ハ其執行
ノ
免除
ヲ得タル
者罰金
以上ノ
刑ニ處セラルルコトナクシテ
五年ヲ
経過シタルトキ
亦同シ」 同條第二項中「
其言渡
後」を「
其言渡確定シタル
後」に改める。 次は
社会党
、
民主党
、
協同党
三派の
共同提案
にかかる
単純侮辱罪復活
に関する
修正案
であります。
刑法
の一部を
改正
する
法律案
の一部を次の
よう
に
修正
する。 第二百三十
一條削除
を削る。 第二百三十
二條
中「
本章
」を「第二百三十條」に改め、同條に次の一項を加える。を第二百三十
二條
に次の一項を加える。と改める。 次に
自由党北浦圭太郎
君外五名より
提案
の
修正案
を読み上げます。
刑法
の一部
改正案
を次の
よう
に
修正
する。 目次中「第一章
皇室ニ
対
スル罪
」を「第一章
削除
」に改めるを「第一章
天皇ニ
対
スル罪
」と
修正
する。 「第一章
皇室ニ
対
スル罪
」を「第一章
削除
」に改めるを「第一章
天皇ニ
対
スル罪
」と
修正
する。「第七十三條乃至第七十六
條削除
」を
修正
して次の
條項
を加へる。 第七十三條
天皇ニ
対シ又ハ誹
毀ハ侮辱
ノ
行為アリタル者ハ
三月以上五年以下ノ
懲役ニ處ス
「第九十
條及ヒ
第九十
一條削除
」を
修正
して次の
條文
を加へる。 第九十
條日本國ニ滞在スル外國
ノ
君主
又
ハ大統領ニ
対シ誹
毀又ハ侮辱
ノ
行為アリタル者ハ
五年以下ノ
懲役ニ處ス
但
シ外國政府
ノ
請求
ヲ
待テ其
ノ
罪ヲ論ス
第九十
一條
日本國ニ派遣セラレタル外國
ノ
使節ニ
対シ誹
毀又ハ侮辱
ノ
行為アリタル者ハ
三年以下ノ
懲役ニ處ス
但
シ被害者
ノ
請求
ヲ
待テ其罪ヲ論ス
「第二百三十
二條
中「
本章
」を「第二百三十條」に改め同條に次の一項を加へる。
告訴
ヲ為
スコトヲ得ヘキ者ガ天皇
、皇后、
皇太后
、
皇太后
又
ハ皇嗣アルトキハ内閣総理大臣
、
外國
ノ
君主
又
ハ大統領ナルトキハ其國
ノ
代表者代リテ
之ヲ行フ」を
削除
する。 最後に
榊原千代
君
提出
の
姦通罪
に関する
修正案
を朗読いたします。
刑法
の一部を
改正
する
法律案
の一部を次の
よう
に
修正
する。 「第百八十三
條削除
」とあるを次の
よう
に改める。 「第百八十三條
配偶者アル者姦通シタルトキハ
一年以下ノ
懲役ニ處ス其相姦シタル者
亦同シ 前項ノ
罪ハ配偶者
ノ
告訴
ヲ
待テ
之ヲ論ス但
シ配偶者姦通
ヲ
縦容シタルトキハ告訴
ノ
効ナシ
」
提出
されております
修正案
は以上の四案であります。 〔
速記中止
〕
松永義雄
2
○
松永委員長
それでは各
修正案
に対する
提案趣旨説明
を順次願います。
石川
君。
石川金次郎
3
○
石川
(金)
委員
修正案
の第一にな
つて
おりますいわゆる
前科抹消
の点でありますが、これは三十四條の二の第一項を次の
よう
に改め
よう
とするのであります。
委員長
が朗読いたしました
よう
に、「
禁錮
以上ノ刑ノ
執行
ヲ
終リ
又
ハ其執行
ノ
免除
ヲ得タル
者罰金
以上ノ
刑ニ處セラルルコトナクシテ
十年ヲ
経過シタルトキハ刑
ノ
言渡ハ其効力
ヲ
失フ罰金
以下ノ刑ノ
執行
ヲ
終リ
又
ハ其執行
ノ
免除
ヲ得タル
者罰金
以上ノ
刑ニ處セラルルコトナクシテ
五年ヲ
経過シタルトキ
亦同ジ」 同條第二項目中「
其言渡
後」を「
其言渡確定シタル
後」に改める。この案であります。この案はきわめて必要な、妥当な
修正
であると存じて
提出
した次第であります。
前科抹消
の
要望
は、法曹界並びに
関心者
の長年にわたるものでありまして、
前科
の名を附せられておりましたがために、いかに世の中に悲劇があつたかということはいうまでもありません。
刑法改正
にあたりまして、この問題がとり上げられ、しかも
罰金刑
の
前科抹消
にあたりましては、五年という短
かい期間
の
経過
によ
つて前科
の
抹消
をなすことにいたりましたことは、
國民
の
要望
に応うるものであると信じまして、私
たち
は
修正案
を
提出
した次第であります。
松永義雄
4
○
松永委員長
荊木
君。
荊木一久
5
○
荊木委員
三
党共同提案
になりまする二百三十
一條
にかかる
修正案
、
単純侮辱罪
の
復活
に関するこれは、
刑法改正案
においては
名誉毀損
については刑期の引上げとな
つて
おりますが、逆にまた
単純侮辱罪
に関しては
被害法益
が簡単であるからという
理由
で
抹消
にな
つて
おります。これは法文の体裁上も実際問題としても当を得ないという
考え
方から、
名誉毀損
にあらざる
単純侮辱罪
については、従来の
規定
をそのまま
復活
するというのであります。以上であります。
松永義雄
6
○
松永委員長
速記
をやめて…。 〔
速記中止
〕
松永義雄
7
○
松永委員長
北浦圭太郎
君。
北浦圭太郎
8
○
北浦委員
なるべく簡単に申し上げます。この新
憲法
の実施に基きまして、諸般の
法律
が
改正
せられるということは当然でございます。しかしながら、この
法律
の
改正
は、どこまでもこの新
憲法
の
精神
の線に沿うて行われなければならない。そうしてもちろんその
精神
を遵守せられなければならぬ。この
刑法改正
の案の一部は、われわれの見るところによりますと、この
憲法
の
精神
に
従つて
いない。ゆえにわわれはさきに朗読いたされました
通り
の
修正
を試みるのでありますが、これによ
つて
法理的にも、
國民
感情
的にも、この
刑法改正法案
の
不足
の点を補い得るという
確信
をもちます。なぜか、第一に新
憲法
につきまして
國体
が変革されたか、この問題であります。そうして
天皇不敬罪
を
廃止
するのが適当であるのか否か、この問題であります。
國体
の変革ということにつきましては、
学者
間に今日なお
議論多岐
にわた
つて
おります。しかし少くても昨年のこの
國会
におきましては、いわゆる
あこがれ國体観
の
原理
をわれわれは承認いたしまして、政体には
変更
あつたけれども、
國体
には
変更
なし、あの当時の
金森國務大臣
の有名な言葉、
天皇
は
國民あこがれ
の
中心
である。
國民
の心と心のつながりの
中心
である。この心は今も昔も
変つて
いない。たとえば川の水が流れても川が流れないのと同じで、わが國の
國体
は
変つて
ないのだ、
國民精神
の核心は
変つて
ない。ゆえに
國体
に
変更
なし、この
あこがれ國体観
が、とにも
かく
にも昨年の
國会
において認められた。そういたしますと
天皇
の
尊厳
ということにも何ら
変り
がない。一体この新
憲法
の中核をなすところの
個人
の
尊厳
、
國民個人
の
尊厳
は、
精神
的にも法的にも尊重を要すると
憲法
に
規定
してある。この
個人
の
尊厳
の
象徴
、
日本國民
全体の
象徴
、これが
天皇
の大なる
尊厳
であります。しかるに
政府
は
憲法
第十四條の
國民
は法の前に平等であるという
條文
を
根拠
といたしまして、
天皇
も
國民
である、ゆえに法の前に特別の
取扱い
をなすことはできない。これが
政府
の
説明
の第一の
根拠
にな
つて
おる。はたしてその
通り
か、
憲法
は三権分立の形をと
つて
おりますが、その三権の
行政機関
の
最高峯
であるところの
内閣総理大臣
を任命するのはたれか、
司法
の長官であるところの
最高裁判所
の長を任命するのはどなたであるか、
國権
の
最高機関
である
國会
、これすらも召集したり、衆議院を解散したりするところの
権限
はどなたにあるか、みな
天皇
であります。この
通り
大きな
区別
を設けておる。特別の扱いを設けておる。その他
憲法
の七條から八條に
天皇
の
権限
として設けるところ、一
般國民
と大なる
区別
を設けておるということは、今さら申すまでもない。現にこの
刑法改正法律案
につきましても、
天皇
に対して大きな
区別
を設けておる。
内閣総理大臣
が代
つて告訴
をする。一
般國民
のためには
内閣総理大臣
はさ
よう
なことはしない。われわれはこの
内閣総理大臣
が
天皇
に代
つて告訴権
を行使するということすら
憲法違反
であると
考え
ております。
政府
の御
説明
の矛盾せること
かく
のごとき大きなるものを見まして、われわれはこれを承服することはできない。これ
修正理由
の第一点であります。 次に
政府
は
國際情勢
をわれわれは深く
考え
るところがなければならない。これはまことに重大でございます。これはわれわれも深く
考え
もいたしましたし
研究
もいたしました。今日の
日本國民
といたしまして、
國際情勢
から離れていかなる
法律行為
もすることは許されないことはもちろんであります。そこでわれわれは一体
世界
の
感情
がどこにあるか、
世界
の
道徳
がどこにあるか、その
感情
なり
道徳
なりのよ
つて
きたるところ、すなわち
刑法法典
をつぶさに
政府提出
にかかりまするところの資料によ
つて
研究
いたしてみましたが、いやしくもキングあるところ、いやしくも
エンペラー制度
の存在するところ、
不敬罪
の設けてない
國家
は
一つ
もない。
デモクラシー
のチャンピオン、
アメリカ
においてすら、
大統領
に対して
脅迫的言辞
を郵便に付した場合は特別の罪を設けておる。革命の
本家本元
であるところのフランスにおきましても、その
大統領
に対して、いやしくも文書、いやしくも絵画、何るた
手段方法
を選ばず、いやしくも誹毀の
行為
ある場合においては三千フランの
罰金
、一年以下の
懲役
という特別の
規定
を設けておる。
世界
至るところ元首、
大統領
、
君主
、こういう方々に対しましては、
法律
上特別の
取扱い
をしておることは、
古今東西
を通じて例外がない。そういたしますと、
世界
の
法律
はわれわれの
修正
を認める。
従つて世界
の
道徳
もこれを許す。
世界
の
感情
これに反する
理由
はどこにあるか。
國際情勢
ということも、ひつき
よう
するに、
日本
の
民主化
ということを疑う、こういう
規定
をつく
つて
おる
よう
なことでは、
日本
の
民主化
は遅れるだろう、あるいはまた逆行するだろうという
考え
であろうと思いまするが、それは
世界
の
デモクラシー國家
が、現にこの法を設けつつ
りつぱな民主化
が行われておる。御
承知
の
通りロシヤ
においては、いかにも
プロレタリアート
ばかりの
民主國
でありまするが
英國
にはキングがあり、
ブルジョア
があり、プロレタリアがある。
アメリカ
また
ブルジョア
とプロレタアの
民主國家
であります。
日本
に特に特別の
取扱い
をいたすべき
天皇
がおわしまして、どうしてこの
民主化
の妨げとなるか、少くともこの
刑法法典
に
不敬罪
だけを存したからというて、どうして
世界
がこれを疑うか、こういう
理由
をもちまして、
政府
の第二点の御
説明
、御
意見
にわれわれは賛成することができない。今日このわれわれの
修正案
に反対する
資格
のあるものは
共産党
の
紳士諸君
だけだ、私はそういう
確信
をもつ。かの
人々
は前から
天皇制廃止
、そうして
プロレタリアート國家
の出現、これを唱え、今日もそれを唱えておる。ゆえに法の前に萬人平等であ
つて
、
天皇
もまた
國民
と同一の
取扱い
をいたさなければならぬということは、
共産党
の
紳士諸君
は今日これを主張する
資格
がある。その他の
諸君
。昨年われわれとともに
天皇制擁護
を叫ばれたところの
民主党
の
諸君
。また
民主主義
と
天皇制
の存在とは何ら矛盾はしないと片山君が壇上において演説された、この
社会党
の
諸君
。今日実際から見てみますると、この
不敬罪
の
削除
ということは、明らかに
刑法法典
から
天皇制
を
廃止
するものである。今日まで
天皇
を特別に擁護いたしておる。今日これを
國民
のレベルまで引下げてくる。
天皇制
の
廃止
にあらずして何であるか。しかし
國際情勢
ということも
考え
なければならぬ。そこでわれわれは
最小限度
の
修正
を試みた。
現行刑法
から申しますると、
不敬罪
だけに止めた。そこで
刑法
全体をながめてみますると
理論一貫
を欠く憾みがある。たとえば
暴行脅迫
に対する罪とそうしてわれわれが
修正
せんとするところの罪の間に
理論一貫
を欠く。しかしながら、この点は
学者
間にも
議論
がありまする
通り
に、
侮辱
必ずしも今日
刑法法典
に
規定
されてあるところの
犯罪構成要素
のみに限らない。もつと廣義に解釈することができる。人を殴
つて悪口雑言
を吐くのも
侮辱
の
一つ
である。こう
考え
てみますると、この間の
理論一貫
を欠くという欠点も緩和される。ただわれわれは
最小限度
の
修正
を試みたのだということを諒とせられまして、昨年同様、
民主党
の
諸君
も
社会党
の
諸君
も、われわれの
修正
に賛成せられんことを希望いたします。はなはだ簡単でありまするが、私の
修正意見
はこれで終ります。
榊原千代
9
○
榊原
(千)
委員
私はただいま
委員長
が御朗読くださいました
修正案
の
よう
に、
姦通罪
について
男女
両
罰論
を主張するものであります。以下その
理由
を申し上げます。 思うに
人間
の
生活
において基礎となるものは
婚姻
であります。
婚姻
は
夫婦
の
性生活
の
秩序
であり、
親子生活
の根源であり、
社会公共生活
の
組織単位
であります。
従つて婚姻
によ
つて
成立した
夫婦
は、
生理生活
において純潔であり、心理において
愛情
を基とし、経済において協力しなくてはなりません。これを一括して
婚姻
は
神聖
であるということは皆様御
承知
の
通り
であります。この
婚姻
の
神聖
は、人類普通の
原理
であり、
古今東西
に通じる真理であります。そうして人類の
歴史
は、実にこの
方向
に向
つて
進歩してきたのであります。この
婚姻
の
神聖
を蹂躙する最も悪質の
行為
がすなわち
姦通
であります。 振り返
つて憲法
の
精神
をとつくり
考え
てみますと、第二十四條には次の
通り
規定
しています。「
婚姻
は、
両性
の
合意
のみに基いて成立し、
夫婦
が同等の権利を有することを基本として、
相互
の協力により、維持されなければならない。」
世間一般
の
人々
は、この
條文
は男尊女卑の
封建的習慣
を清算し、
封建的思想
を止揚して、
夫婦同権
に向
つて女性
を解放したものと見ている
よう
であります。けれども私
たち女性
の立場からこれを見れば、
條文
の中央に掲げられてあるものは、実に
両性
は
相互
に協力して健全な
家庭
を維持しなければならないという
理想
に向
つて
の
努力
を最も強く
規定
しているものと解釈します。ここにおいて単に
姦通
を
犯罪
として處罰するか否かの問題を越えて、
婚姻神聖
の目的に対して
姦通
がこれを邪魔する
手段
だとみるのであります。そうすると
姦通
をなくし
よう
と
努力
し、あるいは少くし
よう
と努めることを妨げたり、あるいはこの
努力
を怠ることは
憲法
の
精神
に反することであり、少くとも
憲法
を忠実に遵守することではありません。この
よう
な
考え
から少くとも今日の
社会情勢道徳
、
文化水準
の現実においては、私
たち
は
姦通罪廃止論
は
姦通
を放任するもので、
憲法
の
精神
に違反するものと断じてよいと思うのであります。もちろん
現行日本刑法
第百八十三條の
よう
な、
姦通
に際して妻のみ罰するという偏頗な
法律
は
世界
中どこにもないので、新
憲法
の
男女
平等の原則に
従つて
、
夫婦
平等、両罰にすべきことは言うまでもありません。それならば、なぜ
憲法
が
結婚生活
の
理想
に向
つてかく
も強い
規定
をおいたかというと、私は
結婚
は
社会秩序
、
社会道義
の源泉であり、
社会活動
の原動力であり、
種族保存
の
重要機能
をもつものだからと思います。つまり
憲法
において
男女
の場合本質的平等という表現を用いる
よう
に、
男女
は
生理的自然状態
が違い、相異なる特徴をも
つて
一体となり、
相互
に助け
合つて相互
の人格を伸長し、
社会公共
のためには
活動単位
となり、
民族
のためには
種族発展
に資するものであります。
従つて姦通
を
夫婦相互
の
愛情
、
夫婦
間の
道義
によ
つて
解決すべき
個人
的な問題とみるのは間違いで、
婚姻
の
神聖
はどこまでも
公共
の
取扱い
を定める
國法
によ
つて
擁護されなくてはならないのであります。以上が
憲法
から
考え
た
姦通
両
罰論
の第一の
根拠
であります。 第二の
根拠
は特に敗戦後の
風紀頽廃
の時期がよくないということです。今日の
状況
は御
承知
の
通り
、主観的には
國民
は急激な解放によ
つて
自由と放縦とをともすれば混同し、客観的には恐るべき戦争の結果
男女
の
比率
に変態を来し、また
社会情勢
の上からは、
道義
の
頽廃
と
食糧不足
、
生活難等誘惑
の機会は充満している。
日本
は今や
民族
として
生理的危機
にもまた直面していると
言つて
も過言ではないのであります。
姦通廃止論者
のいう
よう
に、
姦通
は
道徳的罪悪
であるから、
道義
によ
つて
解決すべきだと
言つて
も解決されないのであります。今こそ
刑法
は
最低限度
の
道徳
なりという建前に立
つて
、
道徳
で賄いきれないこの破綻を救わなければなりません。これによ
つて
後世
歴史家
から言わせれば、あるいは
姦通
両
罰規定
が、少くとも
日本民族終戦
後の
性生活
の
危機
を
救つた
ということになるかもしれないとさえ
考え
られるのであります。以下に私は
姦通廃止論
の
論拠
を反駁したいと思います。
廃止論
を唱える
文化人
は、第一の
論拠
として、次の
よう
に言います。
告訴
し
よう
とするときにはすでに
夫婦
間の
愛情
は喪失していて、それを
法律
で律し
よう
としても無益な
努力
ではないかと。しかし一時の浮気による
姦通
が、
夫婦
間の
愛情
を破壊する場合の多いことも事実であります。そして一度
結婚
した
夫婦
は
離婚
したくないことは人情であり、
法律
は幸福な
夫婦生活
、健全な
家庭
を守るために力を尽さなければなりません。
論拠
の第二点として、わが國の
よう
に相手の
性格
を深く験することなく、
結婚生活
に入る風俗のもとにあ
つて
は、
結婚
後
夫婦
間に
性格
の不一致を発見することが多いので、
姦通
が起りやすいといふことです。しかし今後は今までの
よう
な家による強制的な
結婚
というものは徐々になくなるでありまし
よう
。新
憲法
は「
婚姻
は、
両性
の
合意
のみに基いて成立し、」と
規定
して、当事者の厳粛な責任を要請しています。このことは次のセンテンスを待つまでもなく、あらゆる
努力
が
結婚
について払われねばならないことを命じているものであります。
性格
が合わないからとい
つて
、安易に
姦通
に流れるということは、絶対に禁じられていることであります。お互いに深刻な
努力
を傾倒して、遂にだめなときには、新
民法
によ
つて離婚
の自由な道も開かれています。
協議離婚
を認められましたし、またその他
婚姻
を継続しがたき重大な事由あるときは
裁判
上の
離婚
もできるのであります。
結婚生活
に対しては、あくまでも正々堂々と対處すべきものであります。
離婚
による
苦痛
には苦しくとも明るさがありますが、
姦通
の
苦痛
ははてしない陰鬱で、
関係者
すべてを覆います。不幸がどこまでも伸びていきます。殊に
姦通
によ
つて
生れる不幸な
子供
、それを取りまく
関係者
のたれにも明るい處置を望んで、私
たち
は
民法
において苦労したのでありますが、
考え
ても
考え
ても、ついに解決できないのはこの問題であります。もちろん新
民法
においては、
私生子
あるいは庶子の名称はなくなります。しかしいかなる径路によ
つて
生れてきたかという事実は、抹殺できるものではありません。
入学試験
や
就職試験
において、
父母
のことを聴かれるとき、それらの
子供
の表情が暗くおびえ、魂がうなだれる
よう
な有様を、ほんとうにかあいそうだと皆さんはお感じになりませんか。こういう
子供たち
に代
つて
、かかる運命から
子供
を守れと叫ばないではいられないのであります。私は
司法
省に
私生子
の
犯罪比率
の
統計提出
を求めましたが、ないということで遺憾に存じますが、恐らく正統な
父母
の中に育つた
人間
よりも、
姦通
によ
つて
生み出されて人と
なつ
た
人間
に
犯罪率
が高いであろうとは、あらゆる面から推察されます。
文化國家
に対してネガティヴな作用をするかかる
人間
の輩出することは、
文化國家
の名において極力防がれなければならないことであります。
廃止論
の第三点は、
司法事務家
によ
つて
指摘されるところのものであります。すなわち彼らは過去の
経験
を過重評価し、
姦通罪
が成立した
事件
は
裁判所
にあ
つて
まれであり、妻の
姦通
を
手段
にして夫が脅喝して金品を巻き上げる事例を気に病んでいます。しかし私は過去の
経験
はものを言わない、
理由
にならないと
考え
るのであります。それは実に不平等な極梏のもとに
女性
が不当に圧迫されて、女に対しては貞淑を強要され、しかも男の
姦通
は自由であつたという事実を考慮しなければならないのであります。
裁判
上の
姦通
の
犯罪
が成立したという
よう
なケースは、たとえば大氷山の海に浮んだごく表面の、それもほんの上つ面だけで、その下に大きく沈んでいる数知れない
人間
の苦悶を見逃しているものではないでありまし
よう
か。雑誌、新聞紙上、あるいは
身の上相談所
に現われる
身の上相談
の大
部分
は
姦通
にまつわるものであります。 第四の論点は、これも
専門実務家
によ
つて
強調されるもので、人殺しとか、窃盗の
よう
に、
社会
の通念が
罪悪
と感じている場合と
違つて
、妾をおくなど世間あたりまえのこととみている。そこに刑罰としての
姦通罪
をおいても意味をなさないというのであります。しかしこれに対しては、私はむしろ
姦通
両
罰制度
を
規定
することによ
つて人世観
をかえていくものと
確信
します。なるほど
家族制度
に妾をおくことはつきものであつた。その結果妾をおくことは男の腕と
考え
られた
よう
な
世界観
のもとに、
姦通
が
罪悪
視されなかつたのは当然であります。今
姦通罪
を
廃止
したとしまし
よう
か、今までそれにしても陰然とした力とな
つて
いた
姦通憎悪
の情さえも次第に薄らぎ、遂にありふれた恋愛問題と同じ程度の比重しかもたない出来事になるであろうことは想像にかたくありません。殊に
憲法
が保障する個性の
尊厳
、すなわち
女性
の
人間
としての
尊厳
は無視されて、
女性
を玩弄視し、
手段
視する公然とした
蓄妾
の
社会制度
は改まることなく、
世界
に向
つて日本
の
國辱
として断然存続するのでありまし
よう
。また、か
つて
世界
の耳目を聳動させたあるインテリの女医が、その夫に
チブス菌
のはい
つたパン
を食べさせて毒殺し
よう
とした
事件
をも
考え
ていただきたいと思います。女の
愛情
を傾けて夫を助けて成功させたときに、彼が
姦通
をして他の女に走つたとき、どこへ訴える術もなく、
國法
によ
つて
も守られなかつたために、
かく
のごとき殺意を起したのであります。こういう
事件
のことを
考え
ていただきたいのであります。
廃止論
の第五淨は、
姦通罪
をおくことは刃物をもたせる
よう
なもので、振りまわされたら傷つく人が多いであろう。父あるいは母がこの罪に問われたら、
子供
への影響はどんなであろうというのであります。しかし
姦通罪
がないためにより平穏だとみるのは、きわめて
皮想
な
観察
で、関係するものすべてに深い
傷手
を負はすことは
変り
ないのであります。だからこそ
輿論
に現われる両
罰論
は圧倒的に多いので、決して軽々に判断してはならないと思うのであります。私はここに
東大法学部刑事法研究室
によ
つて
行われた
輿論調査
の
報告書
をも
つて
います。その
報告
に、本
調査
は
数量的観察
と
質的観察
との二つに別れている、共に両罰を可とする結果を示しているのは注目に値いすると書いています。全
國的調査
は行い得ませんが、
部分的調査
に現はれる結果は、常に両罰が圧倒的であり、過日
民主党婦人部大会
においても、両罰にしてもらいたいという嘆願が
大会
を支配し、
廃止論者
の
部長山下春江
さんも、遂にその
よう
に
努力
しますと約束せざるを得なかつたといいます。
廃止
の第六点は、
ソ連
や
英國
に
姦通罪
がないということで、それをも
つて
文明國
における
一般的傾向
として
日本
をもその
方向
に
向はしめよう
としているのであります。しかし
ソ連
はとに
かく
として
英國
は、
英國
の
歴史
は教会の
歴史
を顧みないでは理解することはできないと言われるほど
キリスト教
が浸透し、その
キリスト教
は実に
夫婦
の人倫の道を最も厳格に要請しているのであります。
家族制度
のもとの
蓄妾
が
社会制度
として行われ、前にも述べました
よう
に、妾をおくことは男の働きと
考え
られてきた
日本
の
状況
を、
英國
と同断に扱おうとすることは早計であります。殊にその他の諸國においては、ほとんど
姦通罪
が存在し、最も進歩的と
考え
られる米國ニューヨーク州にしても、スイスにしても、両罰を
規定
しているのであります。一般に考察して
廃止論者
は現われた結果ばかりを論じていると思うのであります。しかしわれわれ
國民
としての
努力
は、また立法者としての任務は、
結婚
の幸福と
家庭
の健全を擁護し、ひいては
社会
の
秩序
を維持するために反人倫的、反
社会
的な
行為
を、できるだけ予防し
よう
とするものでなければなりません。
刑法
が殺人は死刑に處す、強盗は
懲役
何年に處すと
規定
しているのは、単に罰するという以上に、その
よう
な行動が
犯罪
であることを示して、それに近づこうとすることから
國民
を引止め、この脅威から
社会
を守ろうとしていることに重要な意味があると思うのであります。
日本
國新
憲法
が、
結婚
の
理想
を高く掲げているとき、
刑法
が
姦通
を
國法
による刑罰に値いすると明らかに示すことは当然であります。
日本
國再建は、
家庭
の再建にかか
つて
いる。殊に平和
日本
の再建は、平和な
家庭
の再建にかか
つて
いるのであります。喧々囂々たる
姦通罪
賛否両論に、
國会
が遂にいかなる判定を下し、いかに採決したかということは、
國民
の幸福と
日本
國再建に重大な意味をもつものであることを切に御考慮願いたいと思うのであります。
松永義雄
10
○
松永委員長
それでは
刑法
の一部を
改正
する
法律案
について討論にはいりますが、ちよつと
速記
をやめて…。 〔
速記中止
〕
松永義雄
11
○
松永委員長
速記
を始めてください。討論は各
修正案
ごとにいたします。 まず第一の四派
共同提案
による
修正案
に対する討論に入ります。
石川金次郎
君。
石川金次郎
12
○
石川
委員
社会党
を代表いたしまして賛成いたします。
荊木一久
13
○
荊木委員
民主党
を代表いたしまして
修正案
に賛成いたします。
鍛冶良作
14
○鍛冶
委員
自由党
を代表して
修正案
に賛成いたします。
大島多藏
15
○大島(多)
委員
私は
國民
協同党
を代表いたしまして
修正案
に賛成いたします。
松永義雄
16
○
松永委員長
次に三派協同
提案
の
単純侮辱罪
に対する討論の発言をお願いいたします。
石川金次郎
17
○
石川
委員
社会党
を代表いたしまして
修正案
に賛成いたします。
荊木一久
18
○
荊木委員
民主党
を代表して
修正案
に賛成いたします。
鍛冶良作
19
○鍛冶
委員
私は
自由党
を代表いたしまして、第二案の前段二百三十
一條削除
を削るという案には賛成いたします。但しあとの方は第三案の討議を終
つて
から論ずるものでございますから、これは対する
意見
を留保いたします。
大島多藏
20
○大島(多)
委員
私は
國民
協同党
を代表いたしまして、単純
侮辱
罰存置に賛成をいたすものであります。
松永義雄
21
○
松永委員長
次に
自由党北浦圭太郎
君外五名
提案
の
修正案
についてお願いします。
石川金次郎
22
○
石川
委員
私は
北浦圭太郎
氏外五名の
提案
にかかる
修正案
に反対するものであります。まずわれわれが本案の審議にあたりまして、われわれの態度を鮮明にいたしまして、
自由党
の
諸君
によ
つて
提案
せられました
修正案
に反対の
理由
を申し上げたいと存ずるのであります。 昭和二十年八月十五日以後におけるわが國の立法にあたりましては、われわれ常に心に銘じておかなければならないことは、わが國は「ポツダム」宣言を受諾しておるという事実であります。われわれはこの宣言に
規定
せられてありまするところの諸
條項
を完全に履行する義務がありますとともに、この義務を果たすことによ
つて
のみ、國際
社会
に参加し得るのであります。 われわれはポツダム宣言の忠実なる履行の
一つ
として、
憲法
の
改正
をしたのであります。ポツダム宣言に示されている「
民主主義
傾向の
復活
強化に対する一切の障碍を除去すべし言論宗教、思想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし」との
規定
は、新
憲法
の一原則と相なりましたことは、申し上げるまでもございません。すなわち新
憲法
は、第一に
民主主義
の原則を採用し、
個人
の
尊厳
と平等を宣明し、第十四條におきまして、「すべて
國民
は、法の下に平等であ
つて
、」と明定したのであります。今般
政府提出
の
刑法改正案
の審議にあたりまして、われわれはこの
憲法
の
精神
を徹底せしむることをも
つて
第一の任務といたしたのであります。われわれは
政府
の
提案
理由
の
説明
を聴き、
政府
の本案に対して採用したところの理念を妥当といたして、その
努力
に対して敬意を払うた次第であります。 本案において第一に重要な事項は、皇室に対する罪を
削除
せられたという点であります。われわれはこれに対しまして賛意を表するものであります。
従つて
自由党
の
修正案
に賛成し得ないのでありますがゆえに、その
理由
を簡単に表明したいと思います。 私は
天皇
はわが國の
象徴
であり、
國民
統合の
象徴
といたして、永へに不変であられかしと希うものであります。この心は決して人後に落ちるものではありません。しかしまた現実
國家
の
象徴
としての
天皇
に、
國民
の多数が尊崇の念を有しております事実、将来もまた
かく
あらねばならぬことは、何らの疑いを挟むものではありません。
かく
あれかしと心から念願するものであります。しかし
天皇
並びに皇族を
刑法
上特に
規定
を設けまして、これを特に守らなければならぬという
理由
には賛成しかねるのであります。まず第一に、ポツダム宣言を忠実に履行し、も
つて
國際
社会
の信任を回復増進いたしまするためには、また新
憲法
の基本的
原理
の
一つ
である
民主主義
の
精神
を、真にわれわれは体得しておることを、明らかに内外に示しまするためには、
刑法改正
にあた
つて
、如実にこれを示さなければならないと存ずるのであります。
政府
の
説明
を聴くに、わが國
民主化
の問題の一環として、列國の注目の的とな
つて
おりますることを考慮しまして、この際あえてこれを実行せんといたす次第なのであります。と述べておりますが、われらもまたこの見解に賛意を表するものであります。 われわれは今新しき理念に適従することこそ、われわれ敗戦後の
國家
再建にあたる者の任務でなければならないと存ずるのであります。べての人は法の前に平等であるという
民主主義
の基本原則を、すべての
法律
に採用応用することにおいて、内
民主主義
体制確立の道を築き、
外國
際
社会
の信用を回復増進し得るのであると
確信
しておるのであります。
かく
てこそ、全
國民
の熱求してやまざるところの
國家
独立を確保し得るのであります。 次にまた
法律
の進化発展の傾向より本問題を
観察
してみまするに、すべての人の正しき自由と平等の確保は、立法の趨勢であります。
歴史
の趨勢であります。
歴史
の
方向
であります。
公共
の福祉と一致する観念であると私は信ずるのであります。われわれは、この
歴史
の
方向
より見てまいりましても、皇室に対する罪を
削除
することが、人類
歴史
の流れに反するものでないと
確信
するものであります。当局の
説明
しておりまするがごとく、皇室に対する罪を
削除
したといたしましても、
天皇
に対し犯行をなす者のあつた場合において、なお
裁判
並びに處断において重大なる欠陥をもたらすものであるとは、私
たち
は見ないのであります。もし
天皇
に対して
犯罪
を敢行する者があるといたしますならば、私はないであろうことを信じまするけれども、かりにあつたといたしまするならば、
裁判所
が刑の量定において、十分の考慮をし得べき余地が、
刑法
の運用におきましてなし得るのであります。列強環視のもとにありて、あえてこの意向に反するごとき法を維持しまして、もしくは新たに設ける必要をわれわれは認めないのであります。われわれはわれわれの教養を高め、高度に
道義
を発揮することに
努力
し、正しき
輿論
の興隆を信じ、
かく
てわれわれは
象徴
たる
天皇
の地位と名誉を護り得るものであると信じ、かつ自覚しなければならぬと信ずるものでありますが、ゆえに、ここに
自由党
によ
つて
提案
されたる
修正案
によるごとき
規定
の必要、存在を認めないのであります。以上私の
意見
を申し述べました。
花村四郎
23
○花村
委員
私は
自由党
の
提案
になりまする
修正案
に対して、賛意を表さんとするものでございます。
政府
が今回の
刑法
の一部
改正
の
法律案
におきまして、皇室に関する罪を全面的に
削除
をいたしましたのみならず、國交に関しまする重大なる條章の一部を
削除
いたしましたことは、まことに遺憾にたえないところでありまして、私は心からこの種
削除
に対して反対の意思を表示するものであります。なかんずく
天皇
に関しまする特別罪の
削除
についてでございまするが、
政府
は
天皇
に関する特別罪の
削除
の
理由
といたしまして、まず
憲法
第十四條を採用いたしまして、
國民
は
法律
のもとに平等であることが
規定
されておる、
従つて
天皇
も一
般國民
と平等な
個人
としての立場から法的に異
なつ
た
取扱い
をなすべからざることが新
憲法
の趣旨に合致し、しかも
個人
の
尊厳
かつ平等の趣旨を徹底せしむるものであるとし、しかしわが國
民主化
の一環として、列國注視の的とな
つて
おるこの
國際情勢
を考慮して
削除
したのであるが、この
削除
に代るに
名誉毀損
罪の刑期を加重することにより、これが保護に遺憾なきを期していると申しておるのでございます。
従つて
天皇
の特殊的地位を護る上においては、何らの影響も受けないと断定をいたしておるのであります。しかれども、吾人はかかる
理由
は正当とは認めません。けだし
天皇
に関する
規定
を設けることは、決して
個人
の
尊厳
と平等感を傷つくるものにあらざるのみらず、
民主主義
國家
への移行に何らの支障なく、かつ
國際情勢
を悪化するものとは、断じて
考え
得ないのでございます。よ
つて
かかる
理由
をも
つて
しては、われらの承服のできないところであります。思うに新
憲法
は、
天皇
に対して一面
日本國民
たると同時に、他面
日本
國の
象徴
であり、
日本國民
統合の
象徴
であるとして、
憲法
上あるいはまた
法律
上特別なる扱いをして、その特異性を認めておりますることは毫末の疑いを入れません。しかのみならず、
歴史
的な観点からいたしましても、はたまたわが國の
國体
観念から申しましても、
日本國民
がその心の奥深く根ざしている
天皇
とのつながりを基礎として、
天皇
をいわばあこがれの
中心
として仰ぎ、それによ
つて
全
國民
が統合され、
日本
國存立の基礎をなしているという、この
國家
の根本的特色からいたしまして、
天皇
の地位は現実的、合理的な基礎の上に見ることができると申さなければなりません。これらの点から、
刑法
上特別なる
取扱い
をなすべきは当然であると申すべきであります。さらに
憲法
制定の折の
國会
の質疑応答に見ましても、
金森國務大臣
が、
天皇
の保護については、特別罪を認めてしかも重刑をも
つて
臨むことは当然であるという答弁をいたしておりまするのに鑑みても、不思議はないと申さなければなりません。しかも
世界
の
民主國家
の立法例に見るも、
君主
の存するところ、いずれも
君主
等に関する
刑法
上の特別罪を認めておる。
英國
、オランダ、ドイツ、イタリー、ベルギー等が
君主
國家
であり、また
君主
國家
であつたときの
法律
がそれであります。しかのみならず、先ほども北浦君から申されましたことく、米國、フランスのごときは、
大統領
に対する特別罪の
規定
さえも設けておるのであります。殊に國際信義の上よりいたしまして、わが國
刑法
に
外國
の
君主
並びに
大統領
に対するこの種保護
規定
を設けなければならないという必要からいたしまして、その権衡上、まず第一にわが國の
天皇
に対し特別罪を設けることは必然の要請であると申してよろしい。しかも
単純侮辱罪
を
削除
いたしましたる点より考慮して、これが保護
規定
の欠くべからざるは言うまでもないところでございます。これを要するに、
天皇
の特別なる地位に対し、元来
不敬罪
に対する
犯罪
の数多きに鑑み、かつその数が増しつつある統計上よりするも、またまた治安の維持全たきを得ない今日、しかし
道義
の廃頽著しく、思想的に動揺しているこの時代において、
國際情勢
を付度した
最小限度
の
天皇
に対する特別罪でありますところの誹毀または
侮辱
行為
に対する保護
規定
を存置することは、当然と申さなければなりません。しこうして
日本
國
天皇
に関しまする特別罪を認める以上は、
外國
の
君主
、
大統領
または使節に関する特別な保護
規定
を設くることは、これまた國際法人からして妥当であると申さなければなりません。さらにまたこの種
犯罪
に対する諸
外國
の立法例に見まするも、米國、
英國
、フランス、イタリー、ドイツ、オーストリー、スペイン、スエーデン、スイス、トルコその他
世界
の多くの
國家
が、この種保護
規定
を設けているのであります。
従つて
他國において保護
規定
が存するに、ひとりわが國のみこれを欠くということは、
日本
の
天皇
並びに使節は、諸
外國
において保護せられるのにかかわらず、わが國内においては諸
外國
の
君主
、
大統領
等を保護せざる結果となり、國際信義に反するのみならず、國交上よりするも妥当を欠くものであると断言せざるを得ないのでございます。 以上の
理由
によりまして、
自由党
の
提案
にかかります北浦君の御主張に対して、賛意を表する次第でございます。
松永義雄
24
○
松永委員長
荊木
一久君。
荊木一久
25
○
荊木委員
私は
民主党
を代表して、
自由党
の
修正意見
に対して今日反対をしなければならないのを、まことに衷心から残念に思います。先ほどの
提案
理由
において
北浦委員
の言われたこと、並びにただいまの賛成
意見
の大
部分
は、実は私どもも言いたいところであります。あるいは
國民
の相当
部分
もこれに対して共感を覚えるだろうと
考え
ます。
政府
は
提案
理由
の
説明
におきまして「それがわが
國民
の傳統的なる
感情
に異常の衝撃を与うるにあらずやとの点を懸念いたすのでありますけれども、これらの罰條の存否が、わが國
民主化
の問題の一環として例國注目の的とな
つて
いることを考慮いたしまして、この際あえてこれを実行せんといたす」こう述べておりますが、実は今まで長い間この
委員
会におきまして、
自由党
所属の
委員
諸君
が
天皇
に対しては誹毀罪まで主張されるという
意見
が強かつたのであります。それか
國際情勢
に思いをいたされて、たまたま結論を得ました案は、われわれ
民主党
の同志がつい最近まで主張されておりました案と全く同一なのであります。従いまして、われわれの気持の一部には、これに対してただちに同意をしたいという衝動が多分にあるのであります。また何とかしたいという心のもとに、党は党として独自に動いて見たのでありますけれども、遺憾ながら現在の
國際情勢
のもとにおきましては、とうて
自由党
の御主張に対して同意をすることができないせつぱ詰まつたところにまい
つて
おる認識を新たにいたしました。私どうは
自由党
の各位に対して、はなはだうらやましく感じます。もしわれわれが
自由党
の
修正意見
に同調いたしますれば、この
委員
会は多数をも
つて
通過いたします。通過いたしましたものが、そのまま本会議に移せるであろうかということを
考え
て見ますと、わが党の立場がすこぶる苦しいことを御了解願いたいと
考え
るのであります。従いまして、実はこの問題については、私は言いたくないのであります。残念ながらその
修正意見
に対してはただいま党として賛成できかねる。こう申し上げておきます。なお
日本
滞在中の
外國
の
君主
、
大統領
並びに使節、これに対しても、ただいま花村
委員
の言われるところは一々ごもつともと存じます。しかしながら情勢は
天皇
に対すると全く同様であり、しかももし御主張のごとくにして、前段が通過することを得ずして後段のみが法制化されたという形を
考え
て見ますと、さらに複雑なるものがそこにあろうと
考え
るのであります。私は先ほど
修正案
反対の
石川
委員
の言われたことく、新
憲法
のもとにおいて、
國民
統合の
象徴
として、
國家
の
象徴
として厳として存する
天皇
に対しては、わが
國民
は
刑法
上特別の
規定
の有無にかかわらず、あくまでこれを
象徴
として永久に守り抜くであろうと固く信じまして、
自由党
修正案
に対しては、不賛成の意思を表示いたします。
松永義雄
26
○
松永委員長
明禮三郎君。
明禮輝三郎
27
○明禮
委員
私は
自由党
の
提案
に賛成の意を表すものであります。
政府
が七十三條以下の
條文
を
削除
されました
理由
は、今まで大分述べられました
通り
、
憲法
に
一つ
の
根拠
をおき、またわが國の
民主化
というものとにらみ合わして対外情勢においてこれを
削除
すべきものであるという
よう
な御
議論
を承
つて
おるのであります。しかし新
憲法
において、
政府
が述べられておりますところは、
天皇
は
日本
國の
象徴
であるという特別の地位を有せられておるのでありますけれども、他面これらの地位と矛盾せざる範囲において一
般國民
と平等な
個人
としての立場をも有せられることに
なつ
たのでありまして、その限りにおいて、法的に異つた
取扱い
をすることは、新
憲法
の趣旨に合致しないとの思想に基き、この
改正
を行わんとするものであると言われた。要するに
個人
の
尊厳
と平等の趣旨によるものであります。しかしながら
天皇
は今までも述べられました
通り
、
日本
國の
國民
であるといたしましても、同時に
日本
國の
象徴
として、しかも
日本國民
統合の
象徴
であらせられることは、
憲法
において明記しておりまして、私どもはこの意味において、公的
尊厳
が与えられておるということには、一点の疑いもない次第であると思います。またこの法案の存否が、わが國
民主化
の問題の一環として列國注視の的とな
つて
いるということを主張しておられますけれども、
世界
の
民主國家
でありまして、王の存在するところで、この
よう
な特別罪を
規定
していないところはないのであります。しかのみならだ、
天皇
または王の存在しない國である
アメリカ
合衆國を初めとして、連邦
刑法
千六十八條、フランス出版の自由に関する
法律
第二十六條においても、みな特別罪があるのであります。
英國
の大逆罪、國王誹毀罪、オランダ
刑法
第九十
二條
、第百八條、第百九條なし百十三條、ドイツ
刑法
第八十條ないし第百
一條
、イタリー
刑法
第二百七十六條ないし二百七十八條、チェコスロヴァキア
刑法
草案第二十七條以下、その他
外國
元首、使節に対する罪もまた同様にして、各國にその例を見る國際法上の今日の
状況
でございます。以上の次第でありますから、
天皇
に対する罪は、現在の
法律
的の
不敬罪
といいますが、
天皇
に対する罪の存否は、
民主主義
國家
の完成とは何の関係もないいわゆる
日本
人特有の行き過ぎであり
つて
、われわれは
日本國民
大多数の支持を得てここに
修正
に賛意を表するものであります。なお、
社会党
の
石川
さんから
公共
の福祉論からも一言述べられました
よう
でありますが、私どもはこういう点からいいまして、逆に
公共
の福祉論から必要だということを申し上げたい。というのは、皆さん御
承知
の
通り
民衆の雑誌「真相」一九四七年九月一日発行の第十一号に、
天皇
は箒である。しかも
天皇
は箒であるなどと言つたら、とうふうに書き下してあります以外に、まことに申しにくいのでありますけれども
天皇
の帽子を振
つて
おられたる御姿の、顔の
部分
を箒にすげかえてすげかえてある。か
よう
なものが今日発行せられているということを
考え
ますときに、一層その感を深くするのであります。こういうつものを取締るのには一体どういうふうにすればよいか。これが実際の問題であろうと私どもは
考え
る。一般
侮辱
罪を
復活
されまして、それでやろうということかもしれませんけれども、一般
侮辱
罪というものは、これはわれわれ一同に適用されておる
規定
でありまして、
國家
の
尊厳
といいますか、
天皇
の
尊厳
という立場から
考え
まするときに、この二百三十
一條
かの一般
侮辱
罪によ
つて
天皇
の
かく
のごときことまでも取締るということは、あまりに私どもは弱すぎると
考え
ます。 平等論は
人間
の関係を横に見て平等だということでありまし
よう
が、一体
人間
の縦の関係を見ていつたらいかがでし
よう
か。自分の親、兄弟、兄貴という目上の人に対する
犯罪
についてはいかなる取締りを受けておるか。尊族殺傷害罪というものが認められておるにかかわらず、
國家
の大本を握
つて
おわします陛下に対する取締りがないということは、
民主主義
と申しましても、いかにもあまりに行き過ぎじやないか。今
荊木委員
からきわめて私ども感謝の意を表する
よう
なお
議論
がありまして、実は私ども非常に意を強うしておつたのであります。ところが、き
よう
は反対に
なつ
たのはまことに遺憾だと思います。私はこの
法律
を審議する前に、皆さんに申し上げた
通り
、
法律
の審議というものは、党派ということもいいけれども、党派即
法律
の審議ということはいけない。党派ということばかり
考え
ないて…(「ノーノー」)
個人
的にも赤裸々にいきたいと、私どもは
考え
ておるのであります。ノーノーと言う吉田君みずからが、そうでなかつた。今日
國際情勢
という吉田君の気持ちはよくわかるけれども、それでは一体
國家
に対する
司法
委員
の責任が済むか。これから後の
民主党
の発展のためにも遺憾の意を表明するものであります。私はそういう意味において、吉田君ほか各
委員
に対し、どうかいろいろな情実を
考え
直されんことを勧告申し上げて私の賛成
意見
を終ります。
松永義雄
28
○
松永委員長
大島君。
大島多藏
29
○大島(多)
委員
私は
國民
協同党
を代表いたしまして、先ほど
提案
になりました
自由党
の
修正案
に対して
意見
を申し上げることにいたします。
天皇
並びに
外國
の元首に対する
不敬罪
につきまして、先ほど来
提案
者より御
説明
があり、そしてまたそれに対して賛成の御
意見
も述べられたわけでありますが、私はその
意見
を拝聴いたしまして、一応も二応も御もつともと思うわけであります。わが党におきましても、同様の
意見
が出たのでありますが、目下の複雑なる國内情勢及び
國際情勢
を勘考いたしますと、この際思いき
つて
一切の差別待遇を
削除
することが、むしろ
國家
的にみてよいのではないかと
考え
るわけであります。昨年の
憲法
改正
の際におきましても、明治
憲法
、それから新
憲法
とにおける
天皇
に関する
規定
の急激な変化を、われわれ大
部分
の者はみてびつくりいたしまして、これに対しまして、最初は強い反対をいたした次第であります。ところが後半期に至りまして、かえ
つて
感情
的に冷静に
なつ
た加減か、とに
かく
改正案
の方がむしろいいのではないかという
よう
に、だんだん気分的な変化を来したわけであります。それと同様なことが、この
不敬罪
についても私は言えるのではないかと思うのであります。それでこの際思い切
つて
政府
原案の
通り
、
不敬罪
の
規定
を
削除
しましても、
提案
者の方々が案ぜられる
よう
なことは、案外杞憂となるのではないかと私は思うわけであります。かかる見地から、わが党は
自由党
案に対しまして深甚なる理解をもちながら、しかも原案を支持する次第であります。
松永義雄
30
○
松永委員長
鍛冶良作君。
鍛冶良作
31
○鍛冶
委員
私は
北浦委員
説明
の
修正意見
に賛成するものであります。その大前提といたしまして、特に私は
政府
委員
に聴いていただきたいと思うことは、およそ
法律
は
國民
の意思
感情
をもとにしてつくるべきものであ
つて
、為政者の意思をも
つて
國民
の
感情
を曲げんとするがごとき
法律
は、
法律
の価値のないものである。この点を深く反省していただきたいのであります。なおそのほかに最も注意すべき点は、
國民
の実
生活
に一致したる
法律
をつくろう。
國民
の実際
生活
と相反するがごとき
法律
はつく
つて
はいかぬものだ、こういう頭をも
つて
臨んでもらわなくてはいかぬと
確信
しております。ここにおいてわれわれは、本
修正案
をながめてみますときに、わが
日本國民
は、
憲法
第
一條
にあるがごとく、
天皇
をも
つて
國民
統合の
象徴
であるということは、これは
憲法
に書いてあるがゆえに
國民
は統合の
象徴
と
考え
ておるのではない。
國民
がか
よう
に
考え
ておることをここに表わしておる。このことを
考え
てみますならば、
天皇
というものに対する
國民
統合の
象徴
であるという、この崇敬の念、
尊厳
維持の念は、絶対に変らぬものであります。従いまして、今大島君の言われた
よう
に、新
憲法
は、旧
憲法
とは偉大なる相違がある。それゆえに旧
憲法
の
通り
ではいかぬと言われるが、もちろんその
通り
。その
通り
であるが、少くともこの第
一條
に現われておるところの
日本
國の
象徴
であり、
國民
統合の
象徴
であるということは、これは新
憲法
の大
精神
であります。これに基いたる
天皇
の特別の地位は、何としても否定することのできないものと
考え
ます。従いまして、その地位を否定しないとするならば、その地位に対する特別の保護ということも、絶対に免れないものと
確信
いたすのであります。ここにおいて、
政府
は一切の皇室に対する罪を
削除
してしまうというのでありますが、これは旧
憲法
と違いますから、皇室全体に対する
犯罪
ということは認められぬが、何ゆえに
國民
統合の
象徴
である
天皇
というものに対する特別の保護を削らなければならないか。何としても合点のいかぬところであります。絶対にこの点は保護しなくてはならぬ。次いで
國際情勢
云々という点は、いずれの
委員
からも述べられました。われわれはこれは決して無視するものではありませんから、
國際情勢
上深甚なる考慮をいたしましたる結果、どうあ
つて
も譲ることのできない、また現実にこの
尊厳
を冒涜せられるという恐れあるものだけを保護しなければならぬというので、この
修正案
に止めたものであります。ところが
憲法
上すべての
國民
は平等であるというこの
規定
から、
天皇
も
國民
であるということになれば、平等として特別の保護を与える必要はないという
議論
もあります。しかし以前も質問に申したのでありますが、一体平等ということは均一ということと違う。特別の地位にあるものは、特別の地位にあるものとして認める。これを離しては平等ということは出てまいりません。強いて平等を維持するのであると言われるならば、何ゆえに尊族殺に対する特別
規定
を設けておられるか、この新別
規定
をそのまま保存せられるということも、わが
日本國民
の
感情
及び意思を土台として残しておかれるのではないかと言わざるを得ない。してみれば、
天皇
に対する特別保護を削るという理論にはなりません。これは何と弁明せられても出てまいりません。なおまた二百三十
二條
の第二項を設け
よう
としておられる点も、絶対の平等、均一をも
つて
平等とするということとは相反しております。われわれは親が他人から見てばかだと言われても、私は私の親として親に対する尊敬をもたなければならぬ。これ
日本國民
の通念である。これを保護するのはあたりまえである。
従つて
天皇
に対しては、
國民
統合の
象徴
として特別の尊敬をしてこれを保護しなければならぬということは、何としても抜くべからざる大原則であろうと
考え
るのであります。これらの点を考慮せずして、平等論をも
つて
これを
削除
せられんとすることは遺憾至極である。またこれは
刑法
だけの問題ではありません。今後一切の
法律
に対する
政府
当局として臨む態度に対して、私は深くここで釘を打
つて
おきたいと
考え
るものであります。なお
國際情勢
上許さぬという点もあります。もちろんわが
日本
の
法律
は、今や
世界
監視の的にな
つて
おるのでありまし
よう
けれども、
國際情勢
が許さぬからとい
つて
、わが
日本
の
刑法
は
國民
感情
から離れたる不合理なるものにつくらなければならぬという
議論
は、どこからも出てまいらぬと
考え
るものであります。先ほど
石川
君はポツダム宣言を引かれて、これを忠実に履行すると言われるが、ポツダム宣言でも、
日本
の
法律
は
日本國民
の自由なる意思によ
つて
これを定めると出ております。強いて
國民
がこれを欲せざるにもかかわらず、われわれは一党一派をも
つて
天皇
の特別保護
規定
を設け
よう
とするならばこれは許さぬであらうが、
國民
の自由なる意思どころではない。
國民
大多数の
象徴
であるということを
諸君
が認められるならば、この点に向
つて
國際情勢
上わが
日本國民
の大多数の意思及び
感情
は、これであるということを國際的に知らしめるということが、われわれの任務でありますまいか。私はこの
法律
の
修正
に当
つて
、われわれ全
委員
がこのことを
國際情勢
上わが
日本
の特別の地位、
國民
の特別の
感情
を
世界
に知らしめ
よう
という一段の
努力
を払われなかつたことを私は遺憾とするものである。今
荊木
君は、
精神
はわれわれと同一だ、しかしやむを得ぬと言われるならば、私は少くともわが
日本
の
司法
委員
会においては、全会一致で通す、これをもし削らなければならぬだろうかという意思表示ぐらいはしてしかるべきものだ。しかるにやむを得ないから
自由党
の
修正案
に反対すると言うが、それならば、むしろわれわれと同一の
考え
を
民主党
の方々は支持せられて、これに違つた
考え
をも
つて
おられる方に対してなぜ
努力
を払われないか。この点をも
つて
私は非常に遺憾とするものであります。われわれはこの大原則から出発いたしまして、ぜひとも少くとも
天皇
に対する
侮辱
罪、誹毀罪というものを、特別の
取扱い
をしなければならぬと
確信
いたします。なおこれと同時に、外交上の問題からいたしまして、
外國
の元首に対する特別の保護をせなければならぬことは、さきの一、二の方々から述べられましたから、あえて贅言を省きますが、これもどうあ
つて
もやらなければ、わが
日本
の威厳を保つことはできません。
日本
だけは
世界
の仲間入りのできない
法律
をもつとおるという哀れなるものになるのでありまして、ぜひともこれは入れなくてはならぬ。これを入れなければいかぬというならば、まず第一番に、わが
日本
において、わが
日本
の
象徴
たる
天皇
に対する特別
規定
を設けなければならぬ。これは動かすべからざる
議論
だと
考え
ますから、ぜひとも皆様方の再考を促し、全会一致をも
つて
、われわれの
修正案
に賛成せられんことを望んで、賛成
意見
に代えます。
松永義雄
32
○
松永委員長
次に
榊原千代
君
提案
の
修正案
について御発言がございませんか。
明禮輝三郎
君。
明禮輝三郎
33
○明禮
委員
私も
姦通罪
両罰主義というものをぜひおきたいと賛成の意を表するものであります。いろいろ
議論
を申し上げる必要はありませんが、実際において
姦通
事件
というものが法廷に現われて、今日までこれを厳罰的にやつたということは、ほとんどないくらいのものでありまして、たいてい和解によ
つて
解決がついておるのであります。してみますれば、たいへん両罰主義のためにお困りの方もそうないのかと思います。殊に政策問題と言います。が、
一つ
のこういう
規定
をおくために、男性も
女性
もともに緊張して世の中に處するということは必要なのでありまして、そうでなければ、
榊原
さんの言われる
よう
に、非常なる
民族
的な弊害が多く伴うことは、火をみるよりも明らかであります。
従つて
私はこういう
規定
はおきまして、そしてどうしてもこれでお困りになる方は、但書を附しまして、
姦通
を慫慂または宥恕したる者はこの限りにあらずというものを附け加えますると、慫慂または宥恕という問題によりまして、相当弾力性ができまするために、そういうふうにしてでもこれはや
つて
いきたいと思うのであります。
司法
委員
の方は全部御賛成がないかもしれませんが、大
部分
の方は無条件で御賛成にな
つて
いいのではないかと思うのであります。今の但書をつけることをつけていきますれば、御心配はないのでありますから、そういうふうにしてこれを生かすことに、皆さんの御賛意を得たいと思う。しかることが、結局は両罰主義をと
つて
、将来
日本
の
民族
を生かしていくということに大きなる役割をすると
考え
ます。これだけ私は申しまして、私の賛成の
意見
を終ります。
中村又一
34
○
中村
(又)
委員
私は
姦通罪
の存続には反対であります。年長のゆえをもちまして、
民主党
を代表して簡単に
理由
を申し述べたいと存じます。元来この
姦通罪
を存続せしむるか否かという問題は、昨年内閣に臨時法制
調査
会というものができまして、当時あらゆる
社会
の、
学者
あるいは
政府
の要路、あるいは議会
関係者
、いろいろな人が
委員
となりまして殊にこの問題などは高く取上げられまして、もう論議に論議を重ねまして、最後においては
司法
省の
委員
会のごときにおきましては、決選投票にまで
なつ
たのであります。しこうして遂に大多数をも
つて
この
姦通罪
は撤廃するということに決したという
よう
な結果をも
つて
おります。ただいま
榊原
委員
の御
説明
を聴きますると、私どもといたしましても論議は十分傾聴し、かつ賛成する
よう
な論議があることはもとよりであるのであります。しかしわれわれの
生活
というものは、
議論
のみにおいて成立するのではなくて、多分に
生活
は事実に立脚するのであります。そこで最低の
道徳
が
法律
であ
つて
法律
がわれわれの
生活
秩序
を維持するという観点から見ましても、この
條項
を残すことが、はたしてわれわれの
生活
のために、かつはまた婦人のためにもなるかどうかという
よう
なことを見ますと、これは大きな
考え
方があるのでありまして、むしろこれを撤廃することが、婦人のためにも適当な處置だと
考え
ております。元来この問題は、男に非常に都合のよい
法律
であ
つて
、女に非常に都合の悪い
法律
であつたことは、間違いないのであります。しかしながら、われわれの実際上の
生活
は、この
法律
をも
つて
どうして存在せしめたかと申しますと、
一つ
の
理由
は、今回は家督相続という
よう
なものはなくなる傾向にあるのでありますが、過去においては家督相続というものが一番大きな
日本
の
家族制度
の支柱であつたのであります。その場合におきまして、女が勝手に他の男性と交わるということになると、一番大事な、相続をなすべきところの子孫が何人の子孫であるか、わけがわからぬという
一つ
の混乱が生じてまいりますので、婦人に対しましては、特にその途をふさぐという
よう
な
考え
方もあつた
よう
であります。また一面におきまして、
榊原
さんは妾という問題に対してお話があつたのでありますが、この妾というものも、一面におきまして、なるほど色欲的な問題から起
つて
くるものもありまし
よう
けれども、ごくまじめな意味におきまして、家督相続の関係などからいたしまして、自己の子孫の保存ができないという必要に迫られまして、いわゆるこの関係が生じてきておつたというのは、事実私はある著書によりまして調べた事柄であるのでありますが、そういう理論の
考え
方をも
つて
おつた者もあつたのであります。いずれにいたしましても、結論的に申し上げますと、この規則が今後存続いたしますと、実際上の問題としては、両罰ということになりますので、
社会
の
秩序
を維持するのには、かえ
つて
混乱を来す結果になるのではないか。むしろ
道徳
を高め、しこうして
法律
の力によらぬで道標に一任をいたしまして、この問題を解決するということが一番よろしいのであるということに結局は落ちつきまして、この両罰という点から、むしろこの法條をなくなしてしまうということに落ちついて、この問題が成文化されて議題となり、ここまで進展をいたしてきておるという順序と
考え
ております。われわれの
生活
が実際であるというその点に立脚せられまして、私どもとしてもさらに
道徳
を高むることに
努力
を払いいろいろ
榊原
さんの御心配になる
よう
なことを取除くことに
努力
をいたしまして、この法條は
廃止
するということに建前をとりまして、御
提案
に対しましては反対をいたす次第でございます。
北浦圭太郎
35
○
北浦委員
明禮君の御
意見
は
自由党
代表でもないのでありまして、
自由党
はこの問題については自由の建前をと
つて
おります。私は簡単に
自由党
にも反対者がおるということを一言申し上げたいのでありますが、
提案
者は
憲法
の
婚姻
は
両性
の
合意
のみによ
つて
成立するということを
根拠
とされましたが、これは
姦通
とは何の関係もないので、いかにも女子のポストを引上げるということについては疑いはありませんが、
合意
のみによ
つて
成立する。第三者の干渉を許さないというので附け加えられた
條文
であります。しかしながら、
男女
平等ということは、これは到るところでうた
つて
おります。
男女
平等ということを
憲法
でうた
つて
おるからというて、
男女
平等に處罰しなければならないという理論は出てこない。明禮君はお困りになることもあるだらうということでおりますが、私は毛頭困らない。真面目に
考え
ていただきたいことは、御
承知
の
通り
今日
犯罪
者が非常に多い。明治以来から今日に至るまでの
犯罪
統計によりますと、実に多い。
民主党
の代表も言われました
よう
に、これは実は
道徳
問題で愛の問題である。この問題にさらに刑罰をも
つて
臨もうとすることは、いたずらに
犯罪
者を激増とも行きますまいが、とに
かく
今そういうおそれある
日本
の
社会
状態である、この意味において、
自由党
にもおそらくたくさん反対者がありますから、私もその反対者の一人であるということを申し上げて、簡単に反対
理由
を申し述べました。
石井繁丸
36
○石井
委員
社会党
の代表という意味ではありませんが、
社会党
の一部の
意見
を代表して、
榊原
さんの
修正意見
には反対を申し述べたいと思います。ただいま
中村
さんも言われました
通り
、
榊原
さんの
修正意見
は、公聴会その他においても賛否両論ほとんど互角でありまして、歸結を得ておらないという
よう
な関係上、この問題については結論を下し得ないという
状況
にあるのであります。しかしながら、
結婚
というものが、お互いの人格の尊重であり、そうしてお互いの
合意
の上に成立するというものである限りは、次第にその
結婚生活
から刑罰の干渉を取除いていく刑罰の拘束下におかない
よう
にな
つて
いくというものが、
理想
ではなかろうかと思うのであります。か
よう
な見解に立ちまして、今後
両性
を罰することによ
つて
結婚生活
を維持するということよりも、お互いの人格を向上し合
つて
、
社会
の
人々
の人格を向上し合うという見地に立
つて
、
結婚生活
を幸福に導いていくというのが、
民主主義
の希望するところであり、またわれわれはその途を選ばなければならない。こう信ずるものであります。か
よう
な結論からいたしまして、
社会党
としては多くのものの
意見
は当局の出しました原案に賛成いたしまして、
榊原
さんの
修正意見
には反対するものであります。
鍛冶良作
37
○鍛冶
委員
私は理論としては
榊原
さんの
修正意見
にまつたく賛成する者でありますが、どうも実際
社会
から見て、いくら賛成しても通らぬというなら、私はこの点で将来弊害の起らぬことを希望する
意見
を述べておきたいと思います。
両性
の平等ということになると、罰せなければならぬという
議論
も出てきますが、両方罰せないということも、平等論に間違いない。ただここでおそれることは、罰しないということになると、ある一部のものはこれから
姦通
お許しを得たのだ
姦通
しても差支えない
世界
にな
つて
きた。この
感情
をもたせるということに最もおそれをいだくものであります。さ
よう
なことはどうしても
道徳
上いかぬのであ
つて
、これを
法律
的に罰するということではなく、
社会
の徳義を向上せしめ、お互いの倫理感を深刻に典えまして、女はもちろんいかぬ。しかしそれじや男はいいのかというと男もいかぬ。このことで男は女に対して
姦通
の不徳義を要求するならば、女においても男にこれを要求する。
社会
全体においてこれを矯正していくというところにも
つて
いく以外に、今日収まらぬのじやないかと
考え
まして、この点の
努力
をお互に
考え
て、一応原案に賛成するほかはないものと
考え
ます。
松永義雄
38
○
松永委員長
通告による発言は全部終了いたしました。これで質疑及び討論は終局いたしました。これより採決いたします。まず
榊原千代
君の
提案
による
姦通罪
に関する
修正案
について採決いたします。この
修正案
に賛成の
諸君
の起立を願います。 〔賛成者起立〕
松永義雄
39
○
松永委員長
起立少数。よ
つて
榊原千代
君
提出
の
修正案
は少数をも
つて
否決せられました。 次に
自由党北浦圭太郎
君ほか五名より
提案
にかかる
修正案
について採決いたします。この
修正案
のごとく
修正
するに賛成の
諸君
の起立を願います。 〔賛成者起立〕
松永義雄
40
○
松永委員長
起立少数。よ
つて
修正案
は少数をも
つて
否決せられました。 次に
社会党
、
民主党
及び
國民
協同党
三派の
共同提案
にかかるいわゆる
単純侮辱罪復活
に関する
修正案
について採決いたします。
提案
のごとく
修正
するに賛成の
諸君
の御起立を願います。 〔総員起立〕
松永義雄
41
○
松永委員長
起立総員。よ
つて
全会一致をも
つて
三派
提案
の
修正案
のごとく
修正
するに決しました。 次に
社会党
、
民主党
、
自由党
及び
國民協同党各派
の
共同提案
になる
前科抹消
に関する
修正案
について採決いたします。
提案
のごとく
修正
するに賛成の
諸君
の御起立を願います。 〔総員起立〕
松永義雄
42
○
松永委員長
起立総員。よ
つて
全会一致各派
共同提案
の
修正案
のごとく
修正
するに決しました。 次にただいま採決いたしました
部分
以外の
部分
について採決いたします。ただいま採決
部分
以外の
部分
については、原案の
通り
決するに賛成の
諸君
の御起立を願います。 〔総員起立〕
松永義雄
43
○
松永委員長
起立総員。よ
つて
ただいま採決以外の
部分
は原案の
通り
決しました。 それでは念のため最後にただいま
修正
議決いたしました
部分
を除いた他の
部分
について採決いたします。ただいま
修正
に決しました
部分
以外の
部分
については、原案の
通り
決するに賛成の
諸君
の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
松永義雄
44
○
松永委員長
起立多数。よ
つて
修正
部分
以外の
部分
は、多数をも
つて
原案の
通り
可決いたしました。本会議における
委員長
報告
については、でき得る限り皆様の御
意見
を織りこみたいと存じます。 なおこの際お諮りいたしますが、本案に対する
委員
会
報告書
の作成方につきましては、あらためて
委員
会において御協議申し上げる余裕もございませんので、
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
松永義雄
45
○
松永委員長
御異議なしと認め、その
よう
に決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。次会は来る六日午後一時より開会いたします。 午後一時三十九分散会