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1947-09-29 第1回国会 衆議院 司法委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年九月二十九日(月曜日)     午後一時四十一分開議  出席委員    委員長 松永 義雄君    理事 石川金次郎君       石井 繁丸君    打出 信行君       中村 俊夫君    八並 達雄君       吉田  安君    岡井藤志郎君       北浦圭太郎君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    明禮輝三郎君       大島 多藏君  出席國務大臣         司 法 大 臣 鈴木 義男君  出席政府委員         司 法 次 官 佐藤 藤佐君  委員外出席者         專門調査員   村  教三君     ————————————— 本日の會議に付した事件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出)(第  六號)     —————————————
  2. 松永義雄

    松永委員長 會議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案の審議を進めます。北浦圭太郎君。
  3. 北浦圭太郎

    北浦委員 總論は大體濟んでおりますから、各論についてそのうち最も重要であると信ずるところを司法大臣にお伺いいたします。  本案第八十二條に「日本國に對し外國より武力行使アリタルトキニ與シテ其軍務ニ服シ其他之ニ軍事上ノ利益與ヘタル者ハ死刑ハ無期」云々となつておりますが、この條文外國より日本の國に侵略せられたる場合においては、日本はこれに對して反抗戰闘をやるのだという意味が後ろに含まれておるように解釋いたしますが、この點をまずお伺いいたします。
  4. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 この武力行使という意味は、軍隊によるわが領土への侵入、わが領土空襲答、一切の武力的手段行使という意味であります。しかしそれは外國から日本國に對してなされることを必要とするのでありますから單なる外国人の集団の行うものとか、また國内の個人に對して行われるものは該当しない、こう解するのであります。
  5. 北浦圭太郎

    北浦委員 私は今囘の改正法案意味を聽いておるのではありません。外國からの武力行使ありたるときに、これに與して外國軍務に服する、いわば利敵行為を處罰しておる。そうして反面にはこれに反抗して戰闘行為をなした者に對してはこれを處罰しない。そうすると、この條文外國から侵略行為があつた場合においては、日本國民は戰うことがあり得るのだということが背後に含まれておるのかどうかということをお伺いする。つまり憲法に書いてありますのは、明文通りでありますが、あそこには外國から侵略された場合ということは規定されていない。侵略された場合においては日本國民は戰うのかどうか、ここでは戰つても處罰してない。その反對に利敵行為は嚴重に處罰される。これを司法省はどう考えておられるか。重大問題であると思いますから、お尋ねしておきます。
  6. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 その點は相當デリケートな問題でありますが、あの憲法改正いたしますときにも問題になつたところであります。わが國として武力を放棄する、一切の軍備をなくするということを誓います以上、いわゆる自衞權行使もしないつもりか、こういう問題として扱われたと存ずるのであります。結局わが國の安全は將來——占領中は連合國責任においてある程度までやつていく、それから講和條約でもできまして、日本がさいわいに國家連合等に加入することがありましたならば國家連合の憲章に基く安全保障の體制の中にはいつていく、そういう關係から、わが國が獨自の立場で自衞權行使するというふうな場合はないものと解して差支えないと思う。ただ現に戰闘行為が國土の上で行われておる場合に、國民の各自に危險なる侵害が加わつてくる場合に、それを排除することもできないか、こういうことになりますれば、それはできないはずはないと思うのでありまして、各人の自衞のためにする防禦ということは考えられるのでありますが、進んで國民が戰うということは、いかなる場合でも憲法において戰争を放棄し、交戰權を認めないという原則からでてくるのではないかと考えるのであります。
  7. 北浦圭太郎

    北浦委員 そうすると、いわゆる緊急避難とか、正当防衞とかいうような状態に達するときには、日本戰つてもよろしい、こういう結論に達しますが、といことを今日この改正刑法規定しておるということは、よいのか惡いのか、この點をよくお考えなつたのか、事實上外國から侵略を受まして、そうしてわれわれは空軍も、海軍も、陸軍も、一切の軍備はやらないのだ、そうしてただいま司法大臣のお言葉のように、個人としてこれを刑法にも許されておるのでありますから、正当防衞緊急避難もできなければならぬと私も考えておりますが、さようなことはおよそナンセンスで意味をなさぬと思います。この條文を見ますと、あたかも敵國軍務に服する。軍事上の利益を與える。御承知通り軍事上の利益を與えるということは、舊刑法の八十二條から八十六條までを含んで規定されている。その中には、日本の有力なる武器を相手方に與えるとか、あるいは要塞その他の場所の利益を提供するとかいう様々なことが書いてありますが、そんなことは今日ではもう絶對にありません。軍事上の利益を與得る、實に廣汎言葉でありますが、根本的にかくのごとき條文をいま必要とするかどうか。なぜこれも規定しなければならないか。外國から侵略されたときに戰わなければいかぬ。戰わなければ現行刑法八十二條ないし八十六條というものはほどんど意味をなさぬのである。むしろこういう變更はない方がよいのではないか、この點をお伺いいたします。言いかえますと、何の必要があつて戰争を放棄したわが日本の國にこういう規定を必要とするか、これをお尋ねします。
  8. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 御質問はごもつともでありますが、戰争を放棄した以上、積極的にわが國から戰争を始めるということは、まず絶對にないわけであります。ただあくまで中立を守るというような立場に立つべきはずであります。ただわが國土の上で戰争行為が行われるというような場合が絶對にないかといえば、これは國際闘係國際事情の上から、絶對にないとは申し上げかねる。そういう場合に、いずれかに組してわが國民利益を與えるということがありまするならば、憲法において戰争を放棄した根本趣旨にも反するわけでありまして、やはりそういうばあいをも規定しておくことは、どうしても必要であると考えるのであります。
  9. 北浦圭太郎

    北浦委員 ただいま中立という言葉をお使いになりましたが、局外中立の場合も、この條文は含むと、司法當局考えておられるのか、この點お伺いいたします。
  10. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 局外中立を含むというわけではないのです。いわば日本としては中立のような立場に立つべきであると、こういうふうに先ほど申し上げたつもりであります。嚴格意味での國際法上の局外中立ということを考えておるわけではないのです。
  11. 北浦圭太郎

    北浦委員 そういう場合には、嚴格なる意味局外中立を宣言する資格は日本としてはありますまい。講和條約成立の後といえども、わが國は戰かわないか。もし外國から侵略がある場合においては、今日は占領軍の力によつて何とかなる。獨立の後には占領軍は撤退されるに違いないとわれわれは考えておりますが、そういう場合われわれも連合國の一員としてはいりますと、連合國の力によつて何とかなるだろうということも私は考えております。日本國民立場としては、獨立すれば局外中位は宣言し得られる。そういう場合にでもこの條文が必要かといえば、これはすでにこの條文があるのです。九十四條であつたか、何條であつたか、そういう條文が確かにあるのですから、この條文は要らないのだ。またそうでなくして、ただいま司法大臣のおつしやるような中立立場におくのだという場合に、この條文を必要とするか。日本國民日本侵略してくるところの國家に對して軍事上の利益を與えることはもちろん悪い。これは承知しなければならぬのだが、その反面、憲法戰争法規精神を疑わす條文でもある。そういうことを私はおそれる。こういう際には、こういう條文はない方がよいのではないか。なぜこの條文を必要とするか。今日の國際情勢上から、そして今日の日本國家立場から、なぜこれが必要なのか。これをお伺いする。もう一つつつこんで聽きますと、この條文の反面釋として、國民個々戦闘行為をしてもそれでよいのか。こうなる。もちろん積極的という言葉は私は一つも申しておらぬので、消極的ですが、外國から侵略があつた場合に、日本國民個人として團結して、そしてできるだけ戰うのか、この點を明白に御答辯をねがいたい。
  12. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 北浦委員の御質問趣旨がわが國の國土の上に戰争類似の戰闘行為が行われないという前提のうえにお聽きになつておるのであれば別でありますが、少なくともそういうことが可能なものとして考えますならば、この規定を存置する必要があるとおもうのでありまして、たとえば國家連合のようなものに參加した後でも、國際警察軍というようなものが日本の國を護る義務があり、護ることになるわけであります。そういうときに、日本侵略する國があり、あるいは攻撃する國がありまして、その攻撃に對してまた大きな國がこれを護る、國家連合諸國が護るというような場合に、その攻撃をしてくる國に利益を與えるような軍事上の活動をするという國民がありますと、これは非常に困ることでありますから、そういう場合を豫想して、かくのごとき規定を設けておくことは、どうしても必要であろうと思う。
  13. 北浦圭太郎

    北浦委員 その點は日本國家の方針として、少くとも私個人考えておつたのであります。大體了承いたしました。同じような問題でありますが、これは私曾つて政府委員の方に質問したのでありますが、考えておくということでわかれたきりで、未だに答辯がないのでありますが、この際司法大臣から責任ある御答辯を願いたいのでありますが、ただいまのは日本對外國でありますが、今度は外國間の戰争の場合に、その一方に與して軍務に服したり、その他軍事上の利益を與えたりしたものはどうするか。傭兵制度——多少差支えが起こるとすれば私は取消しもいたしますが、遠き將來にさような場合が起こるかもわからぬ、しかもこの東洋を中心として起こるかもわからぬ、起こらないかもわからぬ。そういう場合に、日本國民がその一方に與して軍務に服する、そうしてその他軍事上の利益を與得る、こういうのはどうなるか、これは差支えないのか、この點をお伺いいたします。
  14. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 お答えいたします。八十二條條文解釋としては、御承知のように日本國に對して外國から武力行使があつた場合、御質問のような第三國間に日本國土の上で戰闘行為が行われるという場合を指しておるとは考えないのであります。ゆえにこの條文解釋論としては、そこまで申すことは言い過ぎであると思うのであります。そこは憲法なども戰争放棄交戰權否認原則をどういうふうに解釋していくべきであるかということで解決すべき問題ではないかと思うのであります。結局同一の効果を生ずる日本國に對して戰闘行為が行われた時に味方してはいけない。同じような意味において、第三國間の戰においても、そのどちらかに味方するということは、戰争放棄精神に反すると共に、結局はその一方に軍事上の利益を與えるということになるのでありますから、そういう場合にはこの條文をそのまま適用することができるかどうか。これは私もまだ研究をいたしておりませんので、責任あるお答えをいたしかねるのであります。追つて研究をいたしました上で、お答えをいたしたいと思います。少くとも憲法根本精神に照して行うべき問題である、こういうふうにお答えをいたしておく次第であります。
  15. 北浦圭太郎

    北浦委員 私は八十二條規定にふくまれるものでないという確信をもつております。これは司法大臣承知通り、私は記憶違いかわかりませんが、こういう規定がベルジユームの憲法か何かに書いてあつたように思う。戰争放棄はこの點も規定しなければいけない、私はひよつとしたら日本がぶつつかる問題じやないかと思う。近き將來とは申しませんが、日本及び日本國民がこういう場面に遭遇するときが來はしないかということを心配する者でありますが、刑法法典は現に起こりつつある事業についてこれをきめるために規定するのではなくして、現に八十二條でもその通り、今日こういう場合が起ころうとは想像できない。しかるに規定しておる。外國間の戰争に、日本國民がどちらかに加擔する。これは戰争放棄、永久平和を期待するところの日本國憲法の認めることのできない實際事實である。そういうことが怒つた場合にどうするか、今から考えておく必要はないのか。こういうことをお尋ねいたしておるのでありますが、研究した後に答えるということであれば、それで結構であります。いずれこの刑法法典も本式的にもつ改正さるる時期があると思います。そのときで結構であります。  次ぎにお伺いいたしますのは、名譽毀損の罪について、職員候補者については眞實でさえあれば何でも言い次第である、新聞でも書き次第であるというような規定になつておりますが、ほかの公務員はそれでもよろしい。官吏公吏、そういうものは公益のため、人の私事を摘發され、新聞攻撃され、これはまあ外國立法例にもたくさんありますから、それでよろしゆうございますが、議員候補者公務員待遇にして——體議員候補者と申しますと、いうまでもなくこれは選擧運動をやつておるということであります。平生議員候補者というものはない。そういたしますと、選擧の最中に、司法大臣選擧區はしりませんが、大體日本選擧實情を見てみますと、なかなかどうも惡口を言う。正々堂々主義政策で戰かうということはごく稀なことであつて、とんでもないうそをついて、反對の候補者をたたき落とそうとする場合が多い。これは何とか司法省はお考え願いたい。われわれもまた考える。なるほどお粗末な議員候補者が立候補して當選してくると、國家のためにもよろしくない。この理屈は一つ立つ。より以上の弊害はついだれからみてもりつぱな人であるという者に對してでもいろいろなことをいう。たまたまそのうちに眞實なことがあれば、それが罪にならないのだ。一面に立候補、いわゆる選擧競争なるものを汚すことになる。もつて美しい選挙を日本としてはやらなければならぬ。この條文はどういうわけでこんなものをおくか。議員候補者眞實さえあれば罪にしない。これがはたして社會公共利益になるか。もつと美しい選擧こそが社會公共利益であつて、醜い選擧、これは何の必要あつてこういう規定をおくか、この點お伺いいたします。
  16. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 ごもつともの質問でありますが、少くとも新憲法のもとにおきまして、公務員憲法第十五條にありますように、國民全體の奉仕者でありまして、その責任はますます尊重く、人格識見共に非難されるところのないりつぱな人物であることが要求されておるのであります。從つて現に公務員たるものはもちろん、これから公務員になろうといたします者も、常に公衆批判の前にたえ得る人でなければならぬ。こう私どもは考えるのでございまして、その意味において、御説のような心配もあり、若干の行き過ぎが起こるのではないかということも心配せられますけれども、それにも関わらず、やはり公務員たる者人格識見保證いたしますためには、眞實であるならばそれを述べることは差支えないという保證を與えておきませんと、活發批判が行われないことになりまして、いわゆる十分明朗でない人物が現れてくるおそれがあろうと思うのでありますから、この種の規定を設けておく必要があると信ずるのであります。
  17. 北浦圭太郎

    北浦委員 公務員たらんとするものは、公衆批判の前に立たなければならない、これはごもつともでありまするが、それがすでに不公平である。それでは、私が初めから申し上げておる通り公務員たらんとする者のうち、なぜ代議士候補者縣會議員候補者、それだけをとらまえてくるか。たとえば、日本では、公務員中の有力なるもの、大臣、これは必ずしも政黨議員に限らない。衆議院議員に限らない。それから最高裁判所判事たらんとする者、それから、高文私見、これはなくなるのか存續されるのかわかりませんが、この私試驗を受けんとする者、いずれもこれは公務員たらんとするものであります。なぜ公選にかかる議員だけにこういうことを書くか、これはどうも不公平だ。この點をお伺いしたい。特に衆議院議員だから重要、縣會議員だから重要だという意味はなさぬ。大臣縣會議員よりもつと重要だ。最高裁判所判事はさらに重要だ。こういう不公平があるのでありますから、殊に、鈴木さんも二囘ばかり候補にお立ちになつたが、あなたの縣ではそういうことはなかつたろうと思いますが、近畿地方に行けば、實にこういう弊害が多い。さいわいにして私は實際そんな目に逢つたことはありませんが、今でもお互いに選擧の場合のことは一生忘れるものではありませんが、これは選擧妨害一つといとぐちをつくる條件になります。なぜ公選による議員候補者をつかまえて來たか。これだけを特にこういう條文にあげるのか。この點をお答辯願います。
  18. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 その點ごもつともでありまして、別に議員候補者たる者と、その他の公務員と、特に區別すべき必要はないわけでありますが、しかし實際問題として、すべての公務員たらんとする志望者ということになりますと、たれがそうなるのかわからぬ、結局はこれを全國民に及ぼすということになるのでありまして、現實に立ち上つて自分公務員にこれからなろうとしておると宣言した場合に初めてそれが明らかになるのでありますから、その他の官吏公吏等につきましては、將來できまする公務員法等によりまして、相當嚴重な審査を受ける、そうして採用されましても、結局もし疚しきことがありますならば、この規定の適用を受けることになるのでありまして、必ずしも非常に不公平だということは言われない。ただ、候補者になつております者は、現實に選擧戰において戰つておる、もしそういう事實があるならば當選しないことが望ましい、こういう場合でありますから、候補者時代にそういうことを明らかにする機會を與えるということは、それだけの實益があると思うのであります。裁判官について御質問がありましたが、裁判官彈刻法がありまして、やはりそういう不都合なことがありますならば、これを彈刻する途がひらかれておるわけであります。これもしかく不公平であるとは申されないのであります。結局實際上必要なるものは、まさに公選に乗り出して公務員になろうとしておる者で、なつてしまうのを待つて論ずるというよりは、それ以前に論ずることの方が有効適切である、こういう建前から、この條文を存置いたしたいと存ずるのであります。
  19. 北浦圭太郎

    北浦委員 こういう條文は寡聞にして私は諸外國立法例を調べて見ましたが、あまりありません。今司法大臣がおつしやつたように、そういう人物は當選しないことが望ましいという、これがいけないのだ。これがいわゆる選擧干渉になる。たとえば、今から十年前に人殺しをした人がある、それは世間はもう忘れてしまつておる、そうして今は非常によい人物になつておる、それを明らかにこれで攻撃する、あいつは人を殺した、こういうことでこういうことをした、これは選擧には深刻なる影響を及ぼす。それでも、人を殺したということが眞實であるならば何ら罰せられない。それは不都合じやありませんか。正々堂々の争をせずして……。一體鈴木さんも辯護士でありますが、私らも辯護士である。過去に恥ずべき行為があつたにしても——現に横領しようが、詐欺しようが、われわれは辯護する。やはり言い分がある。それを、過去においてやつたからといつて、立候補者に對してそれを言つても構わぬ。言つても罰せられない。これはどうも、今當選しないことが望ましいと申されたが、それがいけない。過去にいかなることがあろうとも、今日當選することを望む、そして國家のために盡そう。あなたは、これは立候補すれば特定するから、これを公衆批判の前に立たせるのだ、ほかはそうじやないと言われるが、高等文官試驗でも、願書を出せば特定する。最高裁判所判事彈刻法があるとおつしやるが、それはいかにもある。衆議院議員にしたところで、除名ということもある。現に醜惡なる行為をなす者には、懲罰として、除名することができる。私はついでだから申しますが、現在の世耕情報に基く詐欺事件なんかに関係して、そうしてそれから金でもとつておるという者があつたら除名に値すると思う。こういう方法がある。ひとり最高裁判所判事に限らぬ。あなた方は、こうして政府提出原案として出せば、何でもこれを維持しなければならぬということは、これは昔からの惡い弊害でありますが、鈴木さんも代議士だ。考えてごらんなさい、そういう理窟が正當であるかどうか。諸外國立法例でも、公衆批判の的に立たせる、それはよろしい、けれども、過去の恥ずべき行為、過去の名譽毀損になるべき行為までも、今出してきて、公衆批判の的に立たす必要がどこにあるか。これはどこまでも政府原案であるから、あなたはいろいろなことをおつしやいますけれども、選擧實際をやられたあなたとしては似合わない言葉である。選擧主義政策人格とで闘いますよう。現在の人格。過去に人を殺しようが、泥棒をしようが、どんなことがあろうが、それは言わない方がよろしい、摘發しない方がいい。そんな選擧は正々堂々たる選擧と違う。これは公選による議員候補者、これだけを修正する。こういう方向にわれわれは進みたいと思う。これ以上は意見の相違ですからやめます。これで打切りますが、次ぎにお伺いいたしますのは、これはごく小さな問題でありますが、艦船——敵國とかいう文字はみな削除されまして、これは結構ですが、私はまだ研究しておらぬのでわかりませんが、放火犯のときにも艦船という文字がある、從來の妨害にも艦船がある、住居を犯す罪にも艦船がある。この艦船の中の軍艦というものは、現に外國に引渡すものはあるかもしりませんが、あるにしてもそれはおろらく連合國の管理に屬していると私は思います。戰争法規の今日には、憲法によつて明白にこういう軍艦制度は禁ぜられている。ほかの削除された「帝國」の「帝」という字さえ削除されております。私はこの條文をちよつと見てみたんですが、これはずいぶんあるが全部削られているように思うのですが、第百二十五條にも、百二十六條、百二十七條、百二十九條、百三十條、こうずらつと艦船という文字がありますが、これをどういうわけでこのままおいておくのか、この點お伺いします。
  20. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 その點は一應考慮いたしたのでありますが、實は外國軍艦がわが國の港に入つてくることがあるわけでありまして、それに對して侵入をしたり、放火をしたりするというようなことも考えられるわけでありますから、一應保存いたしたのであります。しかし精密には仰せられますように、個別的によく研究して、あるいはもう少し最適な表現に改めたり削除した方がよろしいところもあるかと思うのであります。それはまた次の機會にほかの改正と相まちましてたしたいと存じます。一應は考慮したのでありますが、外國軍艦などが日本の港に入つてきて、その間に事故が起こるということも稀には考え得られることでありますから、それでいたした次第であります。
  21. 北浦圭太郎

    北浦委員 そういう考えでは、あなた、外國軍艦外國の飛行機も入るし、外國の戰車も入るし、いろいろなものが入つて来なければいかぬが、それはまあそれでよろしい。そういうことを考えられたのはよろしいが、この次ぎに適當なる言葉に改めるということならば、それはよろしゆうございます。  次ぎに考えついでにもう一つ考え願いたいのですが、諸外國刑法を見てみますと、公務員職務懈怠の罪というものが出ている。日本では職權濫用罪、これが規定されておりますが、懈怠の罪、たとえば昨今鈴木さんの管下で問題になつておりますところの刑務所で集團暴動をやる、あるいは囚人が逃げて出るとか、これも日本現行刑法においては、そういうものを故意に逃走せしめたというような條文逃走罪に出ておりますが、一般官吏として今日までの日本の法制は、公務員の職務執行妨害という、公務員を保護するということに力を入れて、公務員が怠けてやつた場合にはどうか。それは一般の過失罪というものがあるではないか。過失ということは法律學の一年生の討論でもありませんから申すまでもありませんが、一般通常人のなすべき注意をなして、そうしてなおなすべくしかもなさなかつた場合をいうのであるが、實際怠けている場合がある。これは今日特にはなはだしい。こういうものの一面に公務員の職務執行の妨害の罪が今度はずいぶん強くもなつておりますが、同時に反面公務員職務の懈怠の罪、これは諸外國たいていあります。これもこの次の改正考える必要あり、十分價値ありと思います。司法大臣の御意見を伺つておきます。
  22. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 官吏懈怠をどうかしなければならぬということは切實な問題でありまして、私どもも考えているところでありますが、さてこれを刑法の中に取入れるということになりますと、相當困難な問題を伴うかと存ずるのであります。でありますから、元來公務員懈怠につきましては、官吏服務規律で規定をいたしまして、今度は近く御審議を煩わそうといたしております公務員法等においても、十分に官吏の勤惰については、平素から觀察をするということになつておりまして、それによつて成績をあげていこう、はなはだしく職務に怠慢であつて、それが故意または重大な過失によつてなしまする場合でありますれば、あるいはこれを刑法上の問題に取入れてもよいかもしれないのでありますが、しかし一番重きものは免官までなし得るということでありますれば、いわゆる職權濫用というような範囲に入らない限りにおいて十分に制裁を加え得るではないか。こういう見地から懈怠の罪というものをただいままでのところ刑法の中に規定しようという氣持ちにならなかつたわけでありますが、御説には十分理由のある點もありまして、立法技術上は非常に困難だと思いますが、困難でもやる方がよろしいということでありますれば、私どもはできるだけ用意周到に規定をいたしたいとは考えるのであります。十分御質問趣旨は今後考慮する、こういうふうにお答えをいたしておきたいと思います。
  23. 北浦圭太郎

    北浦委員 最後に私は政府としてこの點を明らかにしておいていただきたいと希望いたすのでありますが、それは八十一條についてであります。これは「外國ニ通謀シテ帝國ニ對シ戰端ヲ開カシメ又ハ敵國ニ與シテ帝國ニ抗敵シタル者ハ」という現行刑法を改めただけでありますから、まず第一に言葉意味からも、すいぶんわれわれも今日まで考えなければならぬことであつたのでありまするが、こんな問題に出くわすことがなかつた。將來日本の國は戰争放棄の國でありますから、こういうことも考えておかなければいかぬ。そこで外國という言葉もつと明らかにしておきなさい。私はこれをずいぶん調べてみました。ドイツ刑法はこれが外國政府となつておる。フランスは外國政府またはその官吏となつておる。英国は國王の敵人となつておる。イタリーもまた外國政府またはその官吏となつておる。ベルジユウムも外國政府またはその官吏となつておる。日本のこの外國と言うのは、外國個人個人と通謀しても外國にあたるのか、政府とか官吏、そのいずれも含むのか。これは一向茫然として意味がわからぬ。まず第一に、政府は、外國と今日どういう考えをもつておるか。この點を速記録に明らかにしておきたい。今日の政府考え方、これが將來適用されますような場合があるかもわからないから、その點をお伺いしておきます。
  24. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 ただいまの御質問言葉の使い方ということはごもつともでありまして、私どももできるだけ言葉は正確に表現するようにいたしたいと考えておるのでありまするが、ただあまり正確ということを尊びすぎますると、非常にごろのおかしな晦澁な文章ができるようになりまして、そこにも多少立法技術的に考えてみなければならぬ點がありまするために、ほぼ常識で解釋し得る場合には簡略化に從うというようなことがありまして、この場合もその一つの例になるのであります。諸外國の立方例におきまして、北浦委員長御指摘のごとく、詳細に明確に規定しておることも承知いたしておりますが、大體は、諸外國立法例における外國政府またはその官吏というものと、ここにいう外國とは同じつもりであります。しかしまれには交戰團體というようなものも含むわけでありまして、必ずしも政府又はその官吏でなくとも、わが國にあだをしようという一つの團體が外國に存在して、それに味方するというようなことも考え得られまするから、それで外國と言うときには、そういうふうな政府及びその官吏、あるいは交戰團體というようなものを含んでおるのだ。こう了解していただきたいと存ずるのであります。
  25. 北浦圭太郎

    北浦委員 先ほど司法大臣がちよつと言葉にタツチされましたが、官吏の職權濫用の罪——善良なる都民をして行うべき權利を妨害したり、あるいは義務なきことを行わしめたり、これはいわゆる隱退藏物資の問題について今日まで盛んに行われ、將來行われるおそれがあるのでありまするから、この職權濫用罪というものを實際に適用されたことが非常に少い経驗から考えまして、司法大臣承知通り官吏が何かやると免職で濟む。最近の問題でありまするが、安本の役人が東京都民のある家へ行つて、そうして承諾を得たのか得ないのか、もちろん得たのでありましようが、銀線を掘り出したということが新聞に出ておる。私はこれを職權濫用罪なりと考えております。一體銀線というものは、指定物資の中のどこに書いてあるか。いろいろ隱退藏物資緊急措置令であるとか、あるいは主要食糧に關する法律であるとか、三つも四つも法律を調べてみましたが、銀線というものはその指定物資にはいつていない。調べてごらん。それだけではない。現に安本の役人というものは、今日この司法委員會に、人の工場や倉庫へ行つて査察する權利を與てやつてくれといつて法案を出しておる。この委員會でなかなかやかましい議論が起こつておる。そうすると、安本の官吏どもには、さような都民の家へ出て行つて、そういうことをする權利のないことは明らかであるが、それをやつている。そうして封印したとか何とかということが新聞に出ておりますが、代議士であろうが、官吏であらうが、法律を守るということが一番かんじんである。なあに、法律であらうが何であらうが、そんなことは構わぬ、國民のためだというのは、大いなる間違いである。そこで司法大臣に、私はこれはお伺いするよりも、御注意申し上げたいのだが、あなたは治安維持の根本の檢事を指揮統率をなさる。司法事件を指揮なさらうとしておる。こういうことが白晝公然と行われて、いかにも一般國民の福利のためにやつておるように考えておられますが、一般國民の福利も、法律を破つてつてはいかない。國家の法律命令を破つて、福利のためだ。どろぼうして一般細民に物を與えて、それでよいか。法律は破つちやいかぬ。現に安本の役人がこういうことをやつておる。新聞に詳細に出ておる。不都合千萬である。それなら北浦のごときやつが、隱退藏物資は摘發できるか。それはでき得る。それは檢察の管轄で、犯罪の嫌疑である。檢察官の管轄の方へもつていけば、犯罪ありと思料すれば捜査もできる。戰争のどさくさまぎれに銀線を盗んだとか、横領があれば、それを捜査する事はできる。やり得る。安本がそういうことをやるというのは間違いである。こういうのは檢事さんの管轄下であつて、人民のそういうことは取締まらなければならぬ。議會が何と言おうが、總理大臣がそういうことを命じようが安本の役人はやつちやいかぬ。やるようにしてくれという法律を出しておる。まだ可決にもなつていない。しかるに早くもやる。それだから安本は人にきらわれる。權利のないのにそういうことをする。こういうことは檢事をよく指摘して法律を守るよう——どんな力があるものでも、どんな力のある者でも、法律違反はどしどし檢擧する。監獄に行く、行かぬは別問題である。あなたは治安の大本山でありますから、終わりに私はこの一つだけを注文いたしておきます。私の質問はこれで終わります。
  26. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 先ほど第三國間の戰争が、日本國土の上に行われる場合に、いずれかに味方をすることがどの條文かで處罪されるか。またそういうことについて考慮したかという御質問でありまするが、その點につきましては、立案當局としては考慮いたしたのでありまするが、ただいまの日本國情において、その問題を明瞭に取扱いますることは、相當デリケートな關係がありますために、今すぐにその種の規定を設けない方がよかろう。適當な時期がきたときに、その規定を設けることにしようという考えをもちまして、一應八十二條だけを提唱いたす次第であります。さよう御承知を願いたい。
  27. 北浦圭太郎

    北浦委員 よく了承いたしました。
  28. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 私は刑法の一般質問は大體終つておるのでありますが、本日「眞相」と題る民衆雜誌一九四七年九月一日發行、第十一號、これによりますると、一ページに寫眞が出ておりまして、「天皇は箒である」とあります。簡單にここに書いてあることを讀んでみます。「天皇は箒である——などといつたら、神國日本の夢から醒めぬ天皇コジ派の諸君は「ウム不敬不遜、世が世であらば……」と切齒扼腕するだろうことはヨクわかるのだが、イカンせん、眞實なのだからしかたがない。數千人の勞働者が命のつつかい棒と頼む坑木が腐りはてても一顧みもしない炭擴資本家、數千萬の人民が日夜往來する道路にウソツバチの公約スローガンが風ふかれてなびいていても見向きもしない官僚共が、われらの象徴の往くところ、地下千數百尺の黒闇地帯から、オメシ軍が一瞬疾驅し去る街頭の一角、建物の壁に至るまでナメルが如く、佛が如く、たちまちにして變る美しき町、美しき村。げに「天皇は箒である」といいたくなる次第である。不敬のついでに陛下に言い上奉るが——小型自動車にでも乗つて、全國津々浦々を走り廻つたら、さぞかし「麗しき國土」となり、觀光日本のために役立つであろうというものである。」こういう文句が書いてあつて、まことにわれわれとして忍びにくいのでありますが、かくのごとく陛下の寫眞の顔面にほうきが立ててある。脱帽の姿を描いたものが出ておるのであります。私どもは先年プラカード事件で、朕はたらふく食うたぞよという、あの事態を考えても、まさに痛惜おくあたわざる氣持をもつておるのであります。またもや本日かくのごとき問題を一般會社に「眞相」と題する雜誌によつて發表せられておることは、遺憾至極であります。これに對する司法大臣の御所感を承りたい。
  29. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 ただいまの御質問の「眞相」という雜誌のことを承つておりまして、よくわからないところが多々あつたのであります。何を意味するのか、私も拝見したいと思つておりましたから、ただいまここへもつてきましたから、よく拝見いたしますが、拝見をいたした上で、もし名譽毀損とか言うことでありますならば、適當に處置いたしたいと思います。要するに今ちよつと朗讀しておられるのを拝聽しておつただけでは、實は何を意味しておるのか意味をとれないのであります。明禮君はよくおわかりになつておるのかもしれません。私は聽いておつてちよつとわからなかつた。よく調べて適當に處置をする。こういうふうにお答えいたします。
  30. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ごもつともであります。今私がこれを拝見したところによると、天皇がおいでになるところは掃き清めて掃除がしてある。數百尺の地下まで掃除をするというように深くなぞうえて、陛下が津々浦々おいでになると掃除ができてきれいになるからほうきだというようなことを言つたのだと思いますが、どういうことであろうと、陛下のお寫眞の顔にほうきをつけて、天皇は箒である、こういうことを掲げること自體、不敬至極であると思うのであります。この意味において、いまひとつお尋ねしておきたいのは、プラカード事件も何だか不敬罪でなしに一般名譽毀損というようなことになつておりますが、あのプラカード事件が、どういうことになつておるかということを御説明願いたいと同時になおこれはごらんになつてこの通りでありますから、私どもは捨ておけないと思うのであります。これが問題であるということを前提として、司法大臣はどういう御處分をなさるお氣持ちか。その内容は別でありますが、かようなことは一般國民の許すべからざることであると一應考えて、どういうお氣持ちでいらつしやいますか、
  31. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 その問題も非常にデリケートな問題でありまして私どもは質問者と同様に感が考えまするが、わが國民のうちにも、そういうふうに考えなくてもいいというふうに考えておる一部の人々のあることも事實であります。そこで具體的問題としては、不敬罪というものが從來のような形で存續することができないということになりましたことは、プラカード事件で御承知であろうと存ずるのであります。刑法改正にかかわらず、不敬罪として取扱うことが適當でないということに相なつておるのでありまして、それは別問題でありまするが、この問題も法律上どういうものになるかということは、かなり慎重に研究考慮いたした後でなければ、ただいま軽率に申し上げることは、責任ある私としてはいかがかと存ずるのでありまして、十分調査の上善處するというふうにお答えをいたしておきたいと思うのであります。
  32. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その點はそうでありましようが、一體プラカード事件が不敬罪であるにかかわらず、不敬罪の規定を適用しないで、一般名譽毀損でいくということが、私どもには實は解せられないのであります。第一現在刑法改正しておらぬではありませんか。改正案が出ているだけで、まだ現行法は生きている。それにもかかわらず、不敬罪ということでなしにいくという行き方は、私どもは法律の表面からあまりにへつらつたものではないかと思うのであります。今お話のプラカード事件がどうなつたのか實は私は知りませんが、初めは何だか不敬罪でいつておつものたが、お終いには二百三十條かの規定でいくようになつた。それでこういうような事態は、根本的に司法省の權威のために直さなければならぬ。また現在ある法律をまげて、さように取扱うことが、私どもは誤りであると思うのでありますが、この點については、あるいはそれはしかたがないのだというお氣持ちかもしれませんが、やはり兒島惟謙の例の問題と同じような氣持ちからいけば、これは法律がある以上は法律に照らして徹底的に處斷さるべきものであると私は考える。未だ法律は改正されておりません。また一般の國民においても、陛下に對する犯罪については、不敬という言葉はいざ知らず、少くとも一般の國民と同等なる犯罪として取締まるということには、絶對に反對數が多いことは明瞭であります。一部の人には多少そういうものが今司法大臣の言われた通りあるかもしれませんけれども、こういう問題については、特に嚴肅にお願いしたいと、私どもは要望するものであります。實は自由黨の幹部においてもこれが問題になつておりまして、この問題は軽率に取扱うべきものではない、今後もかようなことは相當考えなければならぬだろうということを考えまして、十分御考慮を拂う事を考えまして、十分なる御配慮を拂うことをお願いしたいと同時に、法律上の改正にあたりましても、やむを得ないところから、さような状態になるということは、でき得る限り避ける、あるいは矯正して、言葉は別といたしましても、一般國民とは違つた象徴であるお立場を守り盡すということには、十分なる御協力をお願いしたいのであります。と同時に、これについては、ただちにご調査を願われまして、かくのごときことをやるものは、ただちに發行停止處分も願うし、その他の方法によつて、これについての十分なる對策をお願いしたいということを希望いたします。
  33. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 御希望はまさに承知いたしました。ただ先ほどの私の答えた中に、的確でない點があつたようでありまするから、その點を訂正いたしておきたいと思います。あのプラカード事件は、訴訟で免訴になりましたが、しかし不敬罪の規定は別に廢止されたわけではないのでありまして、現存しているわけでありますから、それについては、なお適用が論ぜられなければならぬわけでありまして、ただいま上告中であります。檢事局の見解は、少なくとも不敬罪と信ずるがゆえに上告をいたしております。その點はさよう御承知を願いたいと思います。
  34. 北浦圭太郎

    北浦委員 牽連して一言申し上げておきますか、その雜誌を見てごらんなさい。陛下のお顔を取去つて、その代りに箒をつけて陛下の顔になつておるのでありますが、その服装と手つきは陛下のままであつて、これはプラカード事件よりひどい。かりに鈴木さの顔を引ちぎつて箒を立てて、司法大臣のことをかれこれ書いてありますると、これはだれが見ても明白なる名譽毀損である。よくお調べあつて、こういうことが今後再々起りてくるようでは、國家の象徴、日本國民統合の象徴の尊嚴さはまつたくなくなる。この點を十分お考えになつていただきたい。今どきこういうことを書いて喜んでおるような人物は、時代後れのはるかに劣等な人間なんだ。これはロシヤ革命の時分に盛んにやつたことで、フランスの大革命のときに、正妃マリー・アントアネツトああいう人がギロチンで殺されたときにはやつた言葉があつて、今日の世界では、かようなことは行われていない。御承知通り、英国の国王は精神病者であると書いてあるだけで、民主主義英國はこれを處罰した。今日不敬罪の意味、それは時代の空氣に動かされると意味は變つていきましようけれども、さらに新たなる日本國民個人個人の尊嚴の總合したる大いなる尊嚴を維持するためには、かような古いことを新しがつて喜んでおるようなものは、嚴重に處罰する必要があると思うのであります。法律常識から考えて、明らかに不敬罪である。まず御研究になつて、うやむやにしておかないで、鈴木さん在職中に一つの記録をつくつてもらいたい。これが放置すべきことかどうか。いかにも天皇の思想に對して、今日天皇制を廢止するとか、廢止しないとか、これはポツダム宣言によつて日本國民自由の思想の表現によつて決すべきものであると書いてあります以上、これは自由だけれども、天皇のお顔にかえるに箒を立てて、天皇個人行為を侮辱し、名譽を毀損しておることは明日である。公共性もなければ、國民の福祉増進性もない。ただおもしろがつて、古い思想を新らしがつて書いているに過ぎない。十分に御研究つて、部下檢事とご相談になつて、至急相當の手續きをせられんことを私からも望んでおきます。
  35. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 すぐにお考え願うことと思いますが、私どもの方もこれに對して對處しなければなりませんから、できるならば、どのくらいの日時をおいたらよろしゆございましようか、伺つておきます。
  36. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 そう時間を要しないとは思いますけれども、ただいま御承知でもあろうと思いますが、司法省としては非常に忙しい仕事がありまして、連日いろいろなことで奔走いたしております。少なくとも二、三日の間をかしていただきたいと思います。
  37. 松永義雄

    松永委員長 本日はこれにて散會いたします。     午後三時一分散會