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中村(俊)
委員 最期に遺言に關する點でありますが、御承知の通り、今までわが國においては遺言、殊に要式
行為を要求されておる
民法上所定の遺言というものを履行する人々が非常に少いのであります。御承知の通り、まくらもとでいわゆる遺言という、何ら法理上效果のない遺言というものはなされておりますけれども、
民法が要求しておるところの正式の遺言をつくることは——私は
日本の缺點じやないかと思いますけれども、外國のように正式の遺言をつくるということが非常にまれなのであります。しかしながら、今後いろいろと
民法の大改正によりまして、遺言というものが非常に大きな役割を演ずるのであります。從いまして私は、特にこれは希望になるのでありまするが、この
法案が通過いたした後には、
政府といたしましては、適當な方法をも
つて、
國民全體に遺言というものがいかに大切であり、しかもそれが今後非常に有用に行使されるべきものであるかということを、周知させる方法をお講じ願いたいと思うのでありまするが、これに關連いたしまして、この遺言の中で、署名捺印というものを拇印でもよろしい。つまり
言葉をかえて申しますれば、遺言というものをながながめんどうくさが
つてやられないが、この遺言は重大性を帯びてきたので、遺言をできるだけ簡略にいたさしめる方法から
考えまして、この署名捺印を拇印にかえるということをはつきりと
明文で書いていただいた方がいいのではないかと私は思うのでありますが、依然として今度の改正には署名捺印ということを書かれております。適否を言うのではありませんけれども、遺言が今後重大性を帯びる以上、できるだけ一般の人々に簡略に作成せしむるという
意味において、しかも拇印というものは、おそらく——これは法令でも決められておるものでありますけれども、私は一般の印鑑よりもその模倣性のないことは
議論のないところでありますから、むしろ拇印というものを重要視された方がいいのではないか。殊に遺言などのごとき特殊な場合において、あくまでも署名捺印ということを要求されずに、拇印も場合によ
つては可なりという
趣旨の
規定も加えられてお
つた方がいいのではないかと
考えられるのであります。御
意見を聴かせていただきたいと思います。