運営者
Bitlet
姉妹サービス
kokalog - 国会
yonalog - 47都道府県議会
nisalog - 東京23区議会
serelog - 政令指定都市議会
hokkaidolog - 北海道内市区町村議会
aomorilog - 青森県内市区町村議会
iwatelog - 岩手県内市区町村議会
miyagilog - 宮城県内市区町村議会
akitalog - 秋田県内市区町村議会
yamagatalog - 山形県内市区町村議会
fukushimalog - 福島県内市区町村議会
ibarakilog - 茨城県内市区町村議会
tochigilog - 栃木県内市区町村議会
gunmalog - 群馬県内市区町村議会
saitamalog - 埼玉県内市区町村議会
chibalog - 千葉県内市区町村議会
tokyolog - 東京都内市区町村議会
kanagawalog - 神奈川県内市区町村議会
nigatalog - 新潟県内市区町村議会
toyamalog - 富山県内市区町村議会
ishikawalog - 石川県内市区町村議会
fukuilog - 福井県内市区町村議会
yamanashilog - 山梨県内市区町村議会
naganolog - 長野県内市区町村議会
gifulog - 岐阜県内市区町村議会
sizuokalog - 静岡県内市区町村議会
aichilog - 愛知県内市区町村議会
mielog - 三重県内市区町村議会
shigalog - 滋賀県内市区町村議会
kyotolog - 京都府内市区町村議会
osakalog - 大阪府内市区町村議会
hyogolog - 兵庫県内市区町村議会
naralog - 奈良県内市区町村議会
wakayamalog - 和歌山県内市区町村議会
tottorilog - 鳥取県内市区町村議会
shimanelog - 島根県内市区町村議会
okayamalog - 岡山県内市区町村議会
hiroshimalog - 広島県内市区町村議会
yamaguchilog - 山口県内市区町村議会
tokushimalog - 徳島県内市区町村議会
kagawalog - 香川県内市区町村議会
ehimelog - 愛媛県内市区町村議会
kochilog - 高知県内市区町村議会
fukuokalog - 福岡県内市区町村議会
sagalog - 佐賀県内市区町村議会
nagasakilog - 長崎県内市区町村議会
kumamotolog - 熊本県内市区町村議会
oitalog - 大分県内市区町村議会
miyazakilog - 宮崎県内市区町村議会
kagoshimalog - 鹿児島県内市区町村議会
okinawalog - 沖縄県内市区町村議会
使い方
FAQ
このサイトについて
|
login
×
kokalog - 国会議事録検索
1947-08-05 第1回国会 衆議院 司法委員会 第13号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十二年八月五日(火曜日) 午後二時四十分
開議
出席委員
委員長
松永
義雄君
理事
石川金次郎
君
理事
荊木
一久
君
理事
鍛冶 良作君 井伊 誠一君 池谷 信一君 石井
繁丸
君 榊原 千代君 安田 幹太君
山中日露史
君 中村 俊夫君 八並 達雄君 吉田 安君
佐瀬
昌三
君
花村
四郎君
明禮輝三郎
君 大島 多藏君
出席政府委員
司法事務官
奧野 健一君
—————————————
八月四日
罹災都市借地借家臨時處理法
の一部を改正する
法律案
(
武藤運十郎
君
提出
(第一号) の審査を本
委員會
に付託された。
—————————————
本日の
會議
に付した
事件
国家賠償法案
(
内閣提出
)(第四號)
松永義雄
1
○
松永委員長
會議
を開きます。
国家賠償法案
を議題といたします。
本案
についての質疑は終了いたしました。この際
佐瀬昌三
君より
修正案
が
提出
されております。簡単ですから朗読いたします。 第
一條
中「
故意
又は
過失
によ
つて
」を削る。第
一條
第一項に次の但書を加える。「但し
公務員
に
故意
及び
過失
のないことを立證するときはこの限りでない。」 第三條中「
費用
を負擔する者が」を「
費用
を負擔する者も」に改める。
修正案提出者
の
意見
を求めます。
佐瀬昌三
君。
佐瀬昌三
2
○
佐瀬委員
ただいま
委員長朗読
の
通り
、本
法案
の第
一條
と第三條に
規定
する點について若干
修正
すべき
理由
ありと認めて、かような
修正案
を提出した次第であります。その
理由
をまず第
一條
について申し上げてみたいと思います。
原案
は
責任原則
として
過失主義
を採用されているのであります。私もこの
過失主義
を全面的に否定するものではないのであります。ただ
従來
の
一般
からすれば、
過失主義
の適用においては、
本法
にいわゆる
公務員
が
過失
もしくは
故意
に基いたという點を
賠償
を求めんとする
被害者側
において主張し、かつこれを立證する
責任
を負擔されているのであります。
従來
からこの
立證責任
はなかなか困難な仕事とされております。
ローマ法
の昔から、
立證責任
の存するところ敗訴ありという
一つ
の格言があるがごとくに、
立證責任
負
擔者
が結局その
故意過失
を立證し能わざる
がため
に
賠償
の目的を達成し得ないというのが
實情
に相な
つて
いるのであります。そこで新
憲法
十七條が、
せつかく
公務員
の
不法行為
に對して
被害者
に
賠償
の権利を與えようとする趣旨を貫徹し、
被害者
の
救済
を全うするためには、どうしてもこの
過失主義
のもとにおいても
立證責任
について何らかのくふうをしなければならぬのであります。そこにひとつの妥協的な安として本
修正案
を提出いたし、これに基いてこの
立證責任
を、國または
公共團體側
に轉嫁し、
賠償
の
責任
を免れんとするならば、
公務員
に
故意
又は
過失
なかりしことを證明することを必要とする。
従つて被害者側
においては、違法に
損害
を加えられたという
事實
を立證せば
賠償
の
請求権
を認められるというのがこの第
一條
の
修正
の
根本的趣意
にな
つて
いるのであります。
従つて
これは決していわゆる
無過失責任賠償主義
の
原則
を採用せんとするものではないのであります。依然として
過失責任主義
の
範圍内
において
被害者救済
のために
一つ
のくふうを加えていかんとするのがこの
修正
のねらいにな
つて
おるのであります。
従つて
私はこれを一種の
推定過失責任主義
と申し上げてもいいと思
つて
おるのであります。違法に
公務員
が
損害
を加えれば、その
公務員
は
故意
又は
過失
に基いてや
つたの
だということが一應推定される。
従つて被害者
はあえてそれを立證する必要はない。
責任
を免れんとする
公務員側
において、その
故意
または
過失
なかりしことを
説明
することによ
つて
初めて
賠償
の
責任
を免れるといういわゆる
推定過失主義
に相なるのであります。要するにこれは
被害者
の
救済
を貫徹することをも
つて
最大のかつ
積極的理由
とするゆえんになるのであります。すでに進んだ
立法
や
學説
や
判例
の上においては、むしろ無
過失
でも
國家
に
賠償責任
を認めた方がいいのではないかという根拠になるようなものが少なくないのであります。現に同僚の
花村委員
は、本條を無
過失賠償責任
の
原則
の採用にまでも
つて
いかなければ、
せつかく
の
立法
も何ら
進歩性
なしと斷言しております。私も
純理論
としてはこの説に與するものでありますけれ
ども
、しかし現在の諸般の事情を考慮する場合、
原則
としては
過失主義
、しこうして、それは
立證責任
の轉嫁によ
つて推定過失主義
に基いていくということが、もつとも中正穏健な
立法
であると確信するがゆえに、この
修正案
を提出した次第であります。
國家專制時代
には、法をも
つて
官僚の武器としております。そこには
過失主義
が固く、守られて、
國家権力
の前には、いわゆる切捨御免的な
考え方
や
制度
が支持されてきたのであります。しかしながら、この反動としての
個人本位
に走つた場合には法をも
つて
民の武器と考え、
従つて
行き過ぎて、無
過失
でもすべて
賠償
を補填せんとするような結果
的責任
に走るような理論と主張もないではありません。しかし
日本
は新
憲法
に基いて、
文化國家
を標榜しております。そこには
國家
、
社會
、
個人
全體の總和、いわゆる中庸的な
立場
においてことを考え、かつ
制度
を生み出していくところに、特に
日本
のこれから進むべき政治、經濟、
思想
の據點があるのであります。わたしはそれを
法律
の上に適用した場合、かかる
賠償法
においてはその中庸的な
推定過失主義
が、
思想
的も近代的であり、かつ
妥當
である。そこに本
修正案
のまた
理由
ありと確信するものであります。ただこの
修正
に對しては、すでに
當委員會
の席上においても若干の反對的な
意見
と
理由
か述べられておるようであります。私はそのうち主要なものについて、これが反駁を加えてみたいと思うのであります。まず第一は、かかる
修正案
に基いていつたんでは、あまりにも多く
國費
をも
つて
賠償
するに至るやもしれざる
がため
に、
國家
の
實情
からいうと、
財政
難という點においてこれは
賛成
しがたいという反
對理由
であります。私は本
法案審議
の劈頭において、
政府委員
に對して、一體この
法案
に基いて、将來どの程度の
事件
が
具體的
に發生するか、それに對する見透しをお伺いしたのでありますが、残念ながらその點に對しては、統計的によりどころがないという御
説明
で、この
損害賠償額
が予算の上において、いくばく予定すべきか計算に苦しむものであります。しかしながら、われわれの常識をも
つて
觀察してまいりまするならば、たとえ
立證責任轉嫁
の
責任原則
を立ててい
つて
みたところで、私は國の
財政
の運命にもかけて憂うるがごとき事態は、惹起しないと考えておるのであります。のみならず、これは新
憲法
が
基本的人権保障
の
意味
において、
個人
に對して
賠償
を保証せんとするものであります。いわば
國家
として
當然
なすべきこれは
義務費
であります。世界の國々の
進歩向上
をはかる
バロメーター
は、その國の
軍事費
や何かの多いことではなくして、
文化費
、特にかような
國民救済
の
義務費
が多く計上されておるかどうかということが、
一つ
の
バロメーター
にな
つて
おるのであります。
國家
が
當然義務
として
國民
に對し負擔すべき
費用
は、何ら
財政的顧慮
なしと言うのではございませんが、その
財政
が許す限り、これを
救済
していくというところに、今後
日本
の
文化國家
としての
任務
があると思うのであります。決して
財政
難なるがゆえに、これをも
つて
この
修正案
に反對する
理由
というような強固なものにはならぬと考えるのであります。特にこれに關連して指摘しておきたいのは、今こそ
日本
は
赤字財政
であります。しかしわれわれは
祖國日本
の復興が必ず近き日にありと確信するものであります。将來
財政
が安定したならば、これはそれほど問題にするに足らないことであります。およそ
立法家
の心構えは、今日の瞬間的な現状にとらわれずして、悠久の基盤に立
つて
将來の
社會
にも
妥當
する法をつくるということが
任務
でなければなりません。今日の現實にとらわれて、将來を見失うような短見な
立法
はわれわれのとらざるところであります。 次にこの
修正案
に對する反
對理由
は、
濫訴
のおそれありという點であります。
被害者保護
に厚ければ将來
訴訟
が殖えるであろう。なるほど今日
思想
が極めて混亂しております。
自由權利
も、かなり憂うるものがあることは、何人もこれを
認むるところであります
。しかしながら、これはまつたく敗戦後の一時的現象であります。私
ども
は将
來民主主義思想
が健全に發達してまいりましたならば、自由や
權利
の觀念もまた安定するものありと確信するものであります。その
堅實
な
權利
の上に立
つて
おるような
訴訟
を起こすことは、むろん歡迎すべきことであります。私は
訴訟
や裁判も、それが無
責任
なものであるならば別でありますけれ
ども
、法の前に、正しき
權利
を伸張するということは、よ
つて
も
つて國民
の
民主主義思想
を向上せしむる一大教育であると信じておるのであります。
從つて
さように相なるならば、決して
濫訴
というおそれはないと信ずるのであります。元
來日本人
は、平均した
堅實
な
社會人
をもとにして考えてみますと、一體に
權利思想
は幼稚であるのであります。その例として、私
ども
はここに
陪審法
を引用しておきたいのであります。
陪審法
は
民權擁護
の
立場
において制定されたのでありましたが、
國民
の
權利思想
が低調なために、いわゆる
陪審事件
というものがほとんどなか
つたの
であります。
陪審法
はいくばくもなくして
自然廃止
の状態にな
つて
おります。
せつかく
國が
權利
を與えてさえ、かような事態に相なるのであります。もし
本法
においても
國民
に對して
損害賠償
を求むる
條件
について巌であるならば、決して
國民
は請求をする、
權利行使
をする者が多くはないであろう。
修正案
の程度で、ようやく正しい
權利
の擁護が全うされるのではないかと考えるのであります。 次に
政府委員
の特に強調された反
對理由
に承
つて
お
つたの
でありますが、かような
修正案
をも
つて
臨むことは
日本
の全
法律體系
における
責任原則
の秩序を亂すであろうという御懸念であります。なるほど
民法
七百九條は、
過失責任主義
をとり、しかも
立證責任
は
被害者
に負擔せしめております。これが大體
日本
の
民事法
における
責任原則
の基調にな
つて
おるのであります。すでにドイツの
責任法
や、あるいはあのロシヤの
ソヴィエト民法
でさえも、四百三條かでは、もはやかような
過失責任
は陳腐であるとして、
被害者
の
免責事由
として
故意過失
を
加害者
の
立證責任
に
轉換
しておるのであります。
フランス民法
は御承知のように
ナポレオン法典
という古い
時代
の
立法
でありますけれ
ども
、これは特に
フランス
の
判事諸公
が、勇敢に
判例法
の
進歩
をも
つて
立法
の不備を補い、新しい
立法
がされたと同様に、この
過失主義
に對して
一大修正
を加えて、私の言うような
推定過失主義
に走りつつあるのであります。近代の
立法學説
は申すに及ばず、
判例
の傾向ですら、民放の
責任原則
に對して
一大反省
を促し、かように
推定過失主義
へ進みつつあるのであります。
本法
はこの
民法
の
一般原則
に關するものではありません。しかし
日本
のこれらの諸
外國
に遅れた
制度
に對して、全面的にこれを
進化
せしめるという必要は、私十分あるのではないかと考えるのであります。
本法
はこの
原則
に對する例外的な法規として、
特別法
として提案されておるのであります。いわば
例外法
でありまするけれ
ども
、しかしこの
例外法
にと
つて
、今申し上げましたような
理由
で、多少
進歩
的な
規定
を採用しておつたならば、それが機縁とな
つて
、さらに
民法
の
一般責任原則
に對しても、これを
時代
の歩みとともに
進歩
せしめるように、これを指導する力となると感ずるのであります。決してこれは
責任原則
の
法的體系
を亂るものではなくして、
法的體系
をして全體として
進化
の過程に上らしめるという効用ありと考えるものであります。決してその點は私、
政府委員
のように心配する恐れはないと考えるのであります。要するに私
ども
はこれからは
國家權力
に對して民衆の擁護をも
つて
立法家
の
一大任務
であると信ずるのであります。しかも
法律原則
を無視せず、
堅實
にかつ政治的にも、かように
法律
の
時代的思想
の
轉換
をはかりつつ、
個人
の
基本的人權
を擁護し、これを
新生日本
の
國民
の
國家
に協力するところの地位を法的に確立するという點に、私
ども
は殊に
民主議會
におけるわれわれの重大な職務でなければならぬと考えるのであります。以上の
理由
に基きまして、私は第
一條
については
立證責任
の
轉換
、すなわち
推定過失主義
を採用して、かような
修正
をなすのをも
つて
、皆様のご同意を得たいと考えるのであります。 第三條の
修正點
でありますが、これはすでに
當委員會
においても相當多数の
委員諸公
から
賛成
を得ていたように私は觀測していたのであります。
原案
におきましては、
費用
を負擔するものと
事業
の
管理者
とが異なるときには、
費用
を負擔するもののみが
賠償
の
責任
を負擔するということに相な
つて
おります。しかしながらこの
事業
の
管理者
と
費用
負
擔者
とがいずれであるかということを法的に區別することが、
實際
上きわめて困難な場合が多いのであります。これまで幾多の
判例
にそれが實證されております。
訴訟
のやり直しもしばしばそのために行われております。これは
訴訟經濟
の上からい
つて
も、きわめて
意味
のないことであり、しかも
被疑者
を
救済
するという
絶對的
な
至上原理
からまいりますならば、むしろ進んで
事業
負
擔者
と
費用負担者
とがともに
賠償
の
責任主體
であるというふうにきめておいた方が、
立法
の精神が全うされるものと私は考えるのであります。しかもこの
費用
を負擔するもののみが
賠償責任
を負うというふうにされた
原案
に對する
政策委員
のご
説明
によれば、それは最後には
費用
を負擔するものが
賠償
として支辨された金額を最終的に負擔するのだ、
従つて事業管理者
として國、
公共團體
が負擔した場合には、
費用
を負擔するものに對して内部的に
求償權
の
行使
をしていかなければならぬというめんどうな
理由
があるから、一切の
最終的責任者
としての
費用
負
擔者
に
損害
を負わしめるようにするのが、この
原案
の
理由
であるということでありましたが、これはまつたく内部的な
理由
であります。本
法案
の
根本的趣旨
は、
政府委員
のご
説明
の
通り
、
國家
、
公共團體
が
國民
に對しての
責任規定
であります。
國家
と
國民
のための
規定
であるならば、その
立場
において理論的に、
實際
的に正しい方向に
規定
していかなければならぬのであります。國、
公共團體
の
内部的事由
に基いてこれを左右するということは、
理由
には相ならぬと考えるのであります。要するに、これも第十條と同様に、終局するとこれは
被害者
の
救済
の點において萬全を期する。新
憲法
十七條の精神をここに發揮するために、私はこの第三條も、
費用
を負擔する者も
事業
を管理するものと相竝んで
賠償
の
責任
ありと
規定
する
修正案
が
妥當
である、こう考える次第であります。 以上
修正
二點について、簡単でありますけれ
ども
、よ
つて來
たる
理由
を私は開陳した次第であります。どうか
委員各位
の十分御審議を賜らんことを切に望む次第であります。
松永義雄
3
○
松永委員長
これより討論にはいります。
荊木一久
君。
荊木一久
4
○
荊木委員
憲法
の十七條、すなわち「
何人
も、
公務員
の
不法行為
により、
損害
を受けたときは、
法律
の定めるところにより國又は
公共團體
に、その
賠償
を求めることができる。」、この
規定
はご
承知
の
通り
、
衆議院
の
修正
によ
つて
新たに加えられた
條文
であります。
従來
わが國においても、
國家
または
公共團體
の
經濟
行為
につきましては、
一般私法人
の場合と同様に、
民法
の
規定
は親族、相續等、事柄の性質上適用し得ないものを除きましては、その他は
民法
の
支配下
におかれておることは、これは申すまでもないのであります。従いまして、
不法行為
に關する
民法
の七百九條あるいはこれに關連いたします四十四
條等
は、
條文
の體裁上は多少むりがありましても、
當然
に適用せられるものという
解釋論
は、ま
つた
く一定いたしてお
つた
ところであります。しかしながら、
國家
または
公共團體
の
不法行為
の中で、
公權力
の
行使
に基くものにつきましても、
私法
の中にも、また公法の中にも
賠償
を求められるという特別の
規定
がなか
つたの
であります。これはイギリスにおいては、
國王
は悪事をなし得ないという古いことわざがありますが、それが
ちようど
その一面の法理を語
つて
おる
通り
、
統治權
の直接
行使
の
行為
というものが、そのまま
不法行為
になるという
自己撞著
も、まことに
説明
しにくいものがあるのであります。また
國家機關
のこういというものは、
一般
の
私法行為
を除きましては、公権力の
行使
は
選擇
の自由というものは
絶對
に許されておりません。
國家竝びに國民
の
双方
のための
行為
である、一方的な
不法行為
というものとは、
ちよ
つと
解釋
がおのずから變
つて
まいるという
事情
も存するのであります。しかしながら、
公權行使
による
不法行為
というものが客観的に存在し得るということは自明の理でありまして、そうである以上は、これが
救済
の方途を確立するということは、これは
法治國
としては
當然
の要求でなければならぬと思うのであります。そこでさきに
衆議院
が特に
憲法
の
原案
に
一條
を加えて、この十七條を挿入したということは、もとより
當然
のところと思うのであります。ただいま
自由黨
の全部の
意見
であるかどうかは知りませんけれ
ども
佐瀬
君から、特に
本法
の第
一條
を
修正
されて、
故意
又は
過失
の
立證責任
ということを
轉換
して、
佐瀬
君の言われる
過失
の
推定主義
でいこうという
修正意見
が、正式に本
委員會
に提案されましたが、私は
民主黨
を代表いたしまして、その
修正意見
に對しては反對の
意見
を申し上げます。
佐瀬
君が大
體反對意見
を先ほど前も
つて
辯駁されましたから、多く言う必要はないのでありますが、第一の
理由
は、
國家
または
公共團體
の
不法行為
の中で、
公權行使
の場合を
限つて
、いわゆる
過失推定主義
でいくという
理論的根拠
が、まことに乏しいと
考え
るからであります。
具體的
の場合についてこれを見ましても、
公權行使
は
警察官吏
その他
執行機關
の
暴力的行為
、つまり刑事上の
不法行為
を生ずる場合を除きましては、いわゆる
學説
にいうところの
利益結合
の場合が大部分であります。
官公吏
の
職務行為
というものは、
國家
の
代表的行為
であるだけでなく、國と
國民
の
双方
のために、みずからはその
地位
を囘避し得ないという特殊な
立場
にあるわけでありまして、これを國または
公共團體
の
經濟的行為
の場合よりさらに飛躍して、過大な
責任
、つまり
過失
をあらかじめ推定するというようなことは、
法制
の整備、均衡の上から見ましても、とうてい
妥當
性を發見しがたいと思うのであります。 第二點は、すべての
法律
の制定は、おのずから
進化
の
道程
と申しますか、
進化
論的なものが必然の
道程
であると
考え
るのであります。特殊な
社會情勢
、もしくは特殊な
國家的要請
に基く単行法の場合は別でありますが、
國家賠償
とい
つた
ような大きな問題の
基本原則
を策定するにあたりましては、一
般諸外國
の
法制
の
進化
と、一應足並みを揃えるということは、
一見模倣
に似て、いかにもやすきにつくようでありますけれ
ども
、そこにはおのづから百年を貫く規矩準繩というものも存すると私は
考え
るのであります。ただいま
佐瀬
君の御
意見
によりますと、
民法
の
一般原則
はいかになろうとも、
特別法
として、
例外法
として、まずここに
一つ
の
進歩
を示すべきである、しかる後おのずから
民法
の
原則
はこれについてまいる、それが
立法者
としての
一つ
の使命であるという御
意見
がありましたけれ
ども
、ついきのうまでは、
公務員
の
公權行使
に基く
國家
または
公共團體
の
行為
に對しましては、あるいは本人に對しましても、
賠償
の
義務
が認められていなか
つた
。この
法律
において初めてこれを求め得ることになるのであります。それを一躍
一般不法行為
の
條件
をさらに飛躍して、また
國家
の
行為
もしくは
公共團體
の
行為
についてみましても、それらの
經濟的不法行為
をさらに飛躍いたしまして、
そんがい
の存するところただちに
過失
を推定するというような跳躍は、
法律
の
進化
論的に見ましても、私は
妥當
なる
道行き
ではない、かように
考え
るのであります。殊に
米英とも
に未だに
公權行使
による
損害賠償
というものは認めておりません。アメリカにおきましても、きわめて局限された
範圍
においてこれを認めておりますけれ
ども
、
英國
においてはま
つた
く
規定
が見えないのであります。それをわが國において
憲法
の
要請
に基いてこれを
法制
化し、さらに一擧に
擧證責任
まで
國家竝びに公共團體
の負擔にするという、そういう飛躍は、
法律
の
進化
の
道行き
といたしましても、私は少しく近視眼的な
考え方
でないかと
考え
るのであります。 なお
財政論
をお述べになりましたが、
財政論
につきましては、私も
佐瀬委員
の御
意見
とほぼ同様でございます。しかしながら、
ひとり國家
だけを對象にただいま論ぜられましたが、
本法
は
國家竝びに公共團體
の全部に適用される
法律
でありまして、必ずしも仰しやるように、いかなる場合でも
國家
の
財政
と同様に
公共團體
の
財政
がこれを許すとは
考え
られませんので、
利益
を
双方
に總合考量いたしまして、必ずしも
財政論
は全部適用するという
考え
には同調いたしかねるのであります。 以上申し上げましたのは、
一條
に關する私
ども
のただいまの
修正意見
に對する反對
意見
であります。
従つて原案支持
の
意見
であります。 なお三條の「が」を「も」と直すという
修正
のご
意見
であります。これはただいま
佐藤委員
の仰しや
つた
通り
、私
ども
も
原則
論的には多く反對するに本
國家賠償法
は、
賠償
の點に重點をおきまして、完全に
賠償
を得られるということ、ただ
公務員
とい
つた
ものではなくて、
國家竝びに公共團體
を相手として完全に
賠償
を得せしめるということが主要な
目的
にな
つて
いると
考え
ます。その場合
國家
、少くとも
公共團體
が、二者択一のできる場合に、それが「も」とあればこれに越したことはないという
意見
も立つかもしれませんが、
費用
を負擔するものといいましても、それは必ずや
國家
もしくは
公共團體
でありまして、とり得る
損害
をとりそこなうということは、
常識
上まず
絶對
にないと
言つて
よろしいと思うのであります。 なお法文の體裁からいたしましても、
従來
の
判例
から見ましても、もし
佐瀬委員
の言われるような
修正意見
をかりに可とするならば、それを
費用
負擔する者もということではなく、
公務員
の選任もしくは監督にあたる者もということでなければ、慣例と
事實
とにま
つた
く背反する結果となる、かように
考え
ます。私は第三條については、多く反對するものをもちませんが、ことさらに
原案
を
修正
してただいまの
修正意見
に同意するという
考え
はありません。従いまして第
一條竝びに
第三條ともにただいまの
修正意見
に對しましては、
民主黨
としては反對である。そして
原案
に對して
賛成
をいたします。
石川金次郎
5
○
石川委員
私は
社會黨
を代表いたしまして
原案
に
賛成
し、
従つて修正案
に反對するものでありまして、以下簡単に
荊木
氏の
原案賛成
の御
意見
に
賛成
の意を表するものであります。 まず問題にな
つて
おりますところの
修正意見
が
提出
されました。第
一條
について申し上げますと、
政府
が
本案
第
一條
につきまして
説明
せられたことを承りますのに、もし
立證責任
の
轉換
という場合になろうか、無
過失損害賠償
とほとんど異なるところのない
状態
に立ち至り、その結果
濫訴
の弊に陷るという
憂い
がある。現下の國の
財政
はこれを許さないということを承
つた
。第二の點は
公務員
の
職責遂行
に萎縮を來し、しこうして適切なる公務の運行に支障を生ずるという
憂い
がある。
本條
を
原案
のごとくしておきましても、
國民
の受ける
損害救済
には缺けるところがないという要旨に承
つたの
であります。われわれはこの
政府委員
の
説明
を了承し、これに
賛成
するものであります。 まず第一に
立證責任
の
轉換
をいたし、國もしくは
公共團體側
に立証の
責任
を負擔せしめる、こういうことによりまして、主張するがごとくに、
國民
のこれは
被害者
でありますが
權利保護
はよりよくなされるであろうかという
意味
であります。
實際
訴訟
におけるところの
發展運行
を見てまいりますと、その
訴訟
の
行為
、
立證行為
は一應國であるところの被告に
責任
を負わせたといたしましても、
國民
の
側被害者
の側のわれわれが
訴訟
を完全にし勝訴せんとすれば、進んで積極的に
本法
第
一條
の主
觀的用件
もまたこれを主張し、これを立証しなければならないのであります。ゆえに
訴訟
手續におきますところの立證の問題は、憂うることのない時期の問題に關するというように
考え
られます。また
擧證責任
の分配に對するところの近來の傾向を見てまいりますと、
損害
におきましては、
過失主義
の
原則
は未だ各國において動かすことのできない
事實
であります。また
請求
者側におきまして、
損害
の發生の
事實
及び相手方の
過失
の
損害
を主張立証いたしますことも、これまた
原則
なのであります。これを廢棄し、新たなる
原則
を止揚するというまでに未だ至
つて
おらないのであります。このような
原則
の上に立ちまして、多少の缺點が現れてくるのでありますが、この缺點を
救済
いたしますために、いわゆる
立證責任
について原告側の
責任
を輕減するの傾向に移りつつありますことは、
佐瀬委員
も主張された
通り
であります。われわれの裁判官は、今後は
従來
のごとく官僚軍閥、その他の一連の勢力階級によるところの裁判ではありません、
國民
の裁判官であることを信じまして、かつこうあるべきことを期待して新しい
國家
建設にあた
つて
いるわれわれは、このとき少なくとも裁判官が
國民
の裁判官であることを信じ、眞に政治の
原則
によ
つて
裁判せられることを信じて
擧證責任
というものの分配に對して適切、
妥當
な方法が講ぜられていくということを確信してやみません。殊に
訴訟
法におきましては、釈明權の
行使
、
立證責任
交流の方法もあります。この點から申しましても、私は
修正案
に
賛成
し得ないのであります。 次に公吏が過去におきましては
公權力
の
行使
にあた
つて
、
國民
に違法の
損害
を與えましたことは、それが多か
つた
こと、及び
被害者
たる
國民
がこれに對して
救済
の方法を求め得なか
つた
ということは
事實
であります。われわれはこのような過去の
公務員
の
制度
を一變せしめんとしているのであります。過去の
國家
及び
公共團體
の性格を一變せしめんとしているのであります。このために、われわれは新しき
制度
の建設に今當
つて
いるのであります。眞に
公務員
をして
國民
の公僕たらしめんための
制度
そのものの改善を、今われわれはなしているのであります。
本法
第
一條
もまた
公務員
に對しまして警告的な自戒の方法の
一つ
の
制度
といたしまして
修正
してはどうかという
解釋
もなりえるかもしれません。もちろんこの議論も私たちは
考え
たのであります。しかし、それは
損害
の發生とその
賠償
の
責任
に關する
規定
であります。われわれは法治主義下の現段階と、新しく建設せんとする國土を思いますときに、
考え
なければならなか
つたの
であります。もし
被害者
の便益のみを
考え
ましても、公共の福祉の蓄積ということを忘却いたしましたならば、結局
國民
は損失になるのであります。もし
公務員
がその
職務
につきまして萎縮し、適正な活動をなさないというように至りましては、機能の澁滞をもたらす結果に相なりまして、結局
國民
の損失とならなければなりません。これは
原案
を私
ども
が主張するゆえんであります。
濫訴
の
状態
に至るかどうかという點は、将來のことはどうもわかりません。
濫訴
の弊害を生じたときを、われわれもまた思わないではありません。しかしながら、われわれの現在の
任務
は、各
個人
の
權利
を尊重し、これを改善確立してまいりますとともに、われわれが公共福祉のために不便を忍ばなければならぬということも、忘れてはならないのであります。
權利
ということも、権利の
行使
ということも、公共福祉の限界内にあります。公共福祉のために、われわれはその建設に努力しなけければなりません。
日本
の現状は、最大の
權利
と福祉が
國民
の要求に合致する
状態
に立ち至
つて
おりません。われわれの國の
従來
の限界内において私たちは
本法
を検討し、
本法
を見なければならないのであります。このような見方から、われわれは
原案
第
一條
を妥当であると信じているのであります。 第三條におきましては、
荊木委員
から詳細申し上げましたので、簡略にいたしますが、われわれは
訴訟
の
經濟
の上から、また
訴訟
の便宜上からこの
規定
をおいたものであるという
政府委員
の御
説明
に
賛成
するものであります。これを了承するものであります。この見解より私たちは
原案
を支持し、
賛成
し、
修正案
について反對するものであります。
明禮輝三郎
6
○明禮委員
ちよ
つと議事進行について、……。今までの討論を拝聽しておりますと黨派を代表しての討論であります。私は黨派ということもよいかもしれませんが、
法律
の審理だけは黨派的でない審理を望みたいと思います。なぜそう言うかと申しますと、
法律
の審理ということは、他の政治問題とは違ひまして、大體においてまとまるところが大きい小さいということは、それはあるかも知れませんけれ
ども
、たとえば
本案
について第一點と第二點とあります。これがもし第一點については、お互いに
原案
通り
でいくといたしまして、第二點については、あるいはこれは
修正
するのがよいのじやないかという希望がたくさんあるかもしれません。もし今のような調子でいきますと、この
賠償
問題のみならず今後起こりますところの大きな
民法
の改正も、刑法の改正も、すべての
法律
問題について、黨派的にいくために、第一點においては
修正
されても、第二點においては
修正
されないというような弊害が起こり得るということを、私は先日からの空氣を推して察知し得るのであります。そういう
考え方
からいたしますと、この
法律
の
審議
だけは、黨派を超越して私の方の
自由黨
におきましても、さようであります。ひらたく申しますと、この
原案
の賛否についてはわかれておるのであります。また
民主黨
あるいは
社會黨
の方々においても、先日の御議論の記録にか
つて
見ましても、わかれておるのであります。このわかれておるのをまとめるということも、
一つ
の方法でありましようけれ
ども
、その結果が一點、二點の
修正
があ
つた
場合に、そういう黨派的にやる
がため
に、一點においては
修正
され、二點においては
修正
されないというような、されるべきものがさらないという弊害が起こり得るとするならば、
國家
の一大事であります。代表的な演説をなさるのはよろしいのでありますが、どうか
委員長
におかれては、皆さんの賛否の
意見
は皆聽いておやりになるということが、
法律
の審理にあた
つて
は特に私は大切だと思います。己を捨てて、黨を捨てて、ほんとうにこう思う、これがよいのだという出で方でないと、これは政黨の弊害であります。こういう點を私は深刻に感じましたがゆえに、私は皆さんに申し上げる。またそういう氣持を十分にご了解願えると思うのでありますから、皆さんもどうか黨派的に一應の討論はなさ
つて
もよろしい、それまでは止めはいたしませんけれ
ども
、すべての決を行う場合には代表演説によ
つて
あるいは動かされるということでなく、黨派的な氣分を忘れて、ほんとうにこういくのが
法律案
の
審議
だということに、私は理解をもたれんことを望みます。またそういうふうに
委員長
はお
考え
合わせられまして、今後の進行を願いたいと存じます。
荊木一久
7
○
荊木委員
ただいまの明禮委員の御
意見
まことにその
通り
でございます。私
ども
も實は話をしておるのですけれ
ども
、司法
委員會
は、各黨の政策によ
つて
狂いを生ずるものはまず至
つて
少ない。従いまして、何も黨議でとりまとめてということでなく、それぞれの
意見
が實はあ
つて
ほしい。幸いにしてか、不幸にしてか、實は二點しかなか
つたの
で、黨内の
意見
がまとま
つた
いうことでございますから、ご了承のほどを願います。
花村四郎
8
○
花村委員
私は
佐瀬
君の
修正
の動機に
賛成
をいたす一人でございます。
修正
の
理由
については、
佐瀬
君がことこまかに論じられましたので、これを大體私の
趣旨
辯明採用をいたしてよいと思うのでありますが、一言だけ私の
意見
を申し上げておきたいと思うのであります。
本案
は、
國民
の
權利
をいやが上にも拡大強化いたしました新
憲法
、その新
憲法
の第十七條によ
つて
提案をいたしました
法律
であるのでございますが、これは今日のわが國の世相に鑑み、
當然
こうあるべきであろうと存ずるのであります。諸
外國
の
立法
制におきましても、すべてとは申しませんけれ
ども
、米國においても、
フランス
においても、あるいはまたドイツにおいても、ソヴイエトにおいても、この種の
規定
を設けておるものでありまして、むしろわが國は遅きに失するの感があるのでございます。しかしてこの種
請求
權を
國民
に認めました以上は、その
請求
權の
行使
を容易ならしむるということを
考え
ることが、すなわち
立法
をする人の大きな
責任
であると、私は申し上げてよろしいと思う。今日までの
國民
のも
つて
おる
請求
權の中でも、ややともすれば與えられてありますところの
請求
權の
行使
が困難である
がため
に、その成果があがらぬ事例が多いのであります。この新
憲法
のもとにおいて與えられたこの
請求
權こそは、その
行使
についても容易であり、しかもその與えられた成果を
國民
が教授するということであらなければ、この
立法
の
精神
、
憲法
のそうした
精神
を貫くことができないであろうと思うのであります。ここにおいてか、この點を私
ども
が
考え
まする場合において、
當然
出てくる結論は、この第
一條
と三條において、かく
修正
せんければならぬということである。いずれもこの
請求
權の
行使
を容易ならしめる、そうして
國民
の
損害
を
賠償
することに何らの支障なからしむるという、この
精神
に立脚して、二點の
修正
をなさんとするものでございます。 第
一條
の
修正
は、先ほ
ども
佐瀬
君がことこまかに述べられたとおりでありますが、この
公務員
の
故意過失
に關しまする立證、すなわち
國家
、
公共團體
の方面において、その
公權力
を
行使
するところの
公務員
の
職務
執行の上において
故意過失
がなかりしことを立證することは、よほどこれは困難であるという
政府委員
の御
説明
であ
つたの
であります。私
ども
もこれに對しては同感の意を表するものであります。けれ
ども
しかし飜
つて
静かに
考え
てみます場合において、その
公務員
によ
つて
損害
を受けましたところの
國民
、すなわち
被害者
の方面において、
加害者
の
故意
、
過失
があ
つた
ということを立證することは、より以上の困難が伴うということも、ほとんど異論のないところであろうと思うのであります。もしそれこのもつとも困難でありますところの
過失責任
を、
被害者
の側に科するということでありますならば、おそらく
請求
權は與えられたが、その
請求
權を遺憾なく
行使
することができないというような窮地に陥ることの多いことを、私は過去の長い間の尊き禮験によ
つて
斷ずることができると信ずる。もしかくのごとき困難なる
立證責任
を課するということでありまするならば、
憲法
に基いて
せつかく
こういう書期的な
國民救済
の
法律
をつく
つたの
でありますけれ
ども
、そういうりつばな
損害
補償の
請求
權は與えられたのでありますけれ
ども
、これはおそらく有名無實に終る憾みなきを得ないのでございます。かような見地から
考え
ましても、その與えた
請求
權を何らかの支障なきようにそれを
行使
していくことができ、しかもそれの成果を得るという點に
考え
及びまするならば、これはやはり
佐瀬
君の言うがごとく
修正
するのは
當然
であろうと私は信ずるのでございます。殊にそれのみならず、この
損害
を
賠償
すべき主禮が
國家
公共團體
であります。今日までわが國は官尊民卑の弊があり、
國家
、
公共團體
あるいは
公務員
等に對しては、
國民
は一歩も二歩も譲
つて
お
つた
。いなむしろ多くの事例は泣き寝入りにな
つて
お
つた
という
事實
ほとんど大部分でありましよう。それを今囘の新
憲法
の改正によ
つて
、その舊來の悪習が打破せられ、ここに明朗にしかも
妥當
性をも
つた
國民救済
の
法案
が提案せらるるに至
つたの
でございますけれ
ども
、その主禮が
國家
公共團體
であるということ、しかもその
加害者
がただに
公務員
というばかりではございません、
公權力
をも
つた
公務員
の
行為
に對して、その
損害
を受けたものが
賠償
の
請求
をするというようなことに相な
つて
おりまするがゆえに、これはなかなか今日までわが國の舊來の
事情
等に鑑み、あるいはその
請求
を受くる主禮が
國家
公共團體
であるという
意味
において、裁判官が今日まで扱
つて
お
つた
こうした
事件
の取扱い等の
事實
に鑑み、また新
憲法
は施行せられたとはいいながら、あるいは
公務員
法がいずれ制定せらるる運に相なるでありましようけれ
ども
、しかしそれが必ずしもすべて裁判官の頭を、また
國民
の頭をただちにも
つて
かえるということはとうていこれは望み得ないことであるのであります。こういう見地から
考え
ましても、やはりこの
請求
權の
行使
を最も容易ならしめてやるという親心をも
つて
考え
まする場合においては、かく
修正
することが最も
妥當
であると信ずるのであります。 さらに第三條の點でありまするが、これも第
一條
とやはり同一の論據をも
つて
論じ得ると思うのでありまするけれ
ども
、この第三條は、要するに
費用
負
擔者
のみにその
責任
を負わせるという
規定
に相な
つて
いるのであります。従いまして
國家
公共團體
に對しまする
請求
權が阻害される結果になるのでございます。しかしながら、
費用
負
擔者
なりやいなやというその
事實
關係を立證いたしますることも、これまた
公務員
の
故意過失
の立證と同様にむずかしいものであると申さねばならぬ。むずかしくないにしても、相當の煩雑性を加えるものであることが明瞭であります。かくのごとく、一面において
請求
權を與えておきながら、その
請求
權の
行使
を困難ならしめるということは、この
法律
を制定する
精神
に相反するものあると極論して私は決して間違いでなかろうと思うのであります。これもやはり
費用
負
擔者
、あるいはまた
國家
、
公共團體
のそのいずれにも
請求
できるという二つの道を開いてやるということが、むしろ親切なる
立法
であると申してもよかろうと私は思うのであります。ただ
政府委員
が言うがごとく、
國家
、
公共團體
でも
費用
負
擔者
に對する
求償權
の
行使
がむずかしいというような、
損害
を
賠償
すべき被
請求
權者の方面における都合によ
つて
、あるいは便、不便によ
つて
、この
請求
權者の
請求
權の
行使
をして困難ならしむるというがごときは、私は斷じて承服ができぬのであります。従いまして、私の言うがごとく、かような
權利
を認め、両者に
請求
する
權利
を認めたからというて、ここに何らかの不条理を生ずるものではない。その
損害
の拝承を
國家
、
公共團體
から受けるか、あるいは
費用
負
擔者
のそのいずれかから受けまするならば、その
目的
は達せられるのでありまするから、従つ被
請求
者の方面における内輪の關係は内輪で片づくべきものである。内輪の事柄を
請求
權者に
責任
を
轉嫁
するがごときは、斷じて私のとらざるところでございます。かような
意味
合において、第二條の
修正
、すなわち
國家
、
公共團體
、もしくはこの
費用
負
擔者
のいずれにも
請求
できるという
修正
動議は、正當なるものであるを斷ぜざるを得ないのであります。かような
理由
によりまして、私は
佐瀬
君の
修正
動議に
賛成
の意を表するものでございます。
松永義雄
9
○
松永委員長
大島多藏君。
大島多藏
10
○大島(多)委員 私は
國民
共同黨を代表いたしまして、
國家
、
賠償法
案に對する
意見
を申し述べるといたします。新
憲法
におきまして
公權力
の
行使
にあたる
公務員
による
損害賠償
の
責任
を明記いたしましたことは、新しい
立法
面の
進歩性
を物語るものでありまして、まことに慶賀にたえない次第であります。
國家賠償法
は
憲法
の
趣旨
によ
つて
立案せられたものであり、これによ
つて
従來
重大な
損害
をこうむりましたものが、何らそれに對して
救済
の方途を講ずることができないで、泣寝入りに
なつ
たような次第であ
つた
わけであります。このことを思い合わせまして、本
法案
ができたことに對しまして、ここに私は満腔の賛意を表するものであります。ただこの際希望いたしたいことは、本
法案
の運用にあたりまして、新
憲法
の
精神
を誤
つた
結果、
當委員會
においてしばしば論ぜられましたように、それから先ほど
自由黨
からも
修正
の御
意見
が出ましたように、本
法案
が単なる空文化するようなことがあ
つて
はならないということと、それからまたそれとは反對に、誤
つた
民主主義的
理論
によりまして、事故の
權利
を追求するに急なるあまり、本
法案
悪用の弊に陥ることのないようにということであります。私は本
法案
制定によ
つて
、
公權力
の
行使
に當る
公務員
が、一層自粛自戒いたしまして、
本法
適用の餘地なく、その
意味
よりいたしまして、本
法案
がほとんど空分化されんことを切に希望して、本
法案
に對する賛意を表する次第であります。 次に
自由黨
の
修正案
につきまして、このことについては各黨から詳しい御
意見
が出ましたので、簡単にわが黨の
意見
を申し上げることにいたします。なるほど
自由黨
の
修正案
は、一應傾聴に値するものがあるわけであります。しかしながら、
立證責任
の
轉換
は、新
憲法
實施以前の頭の切替のなか
つた
時代
には、あるいは必要であ
つた
かもしれませんが、現在のようなややもすれば事故の
責任
を輕んずる半面におきまして、事故の
權利
のみを強調しがちな風潮のときにおきましてはかえ
つて
弊害を伴うのじやないのかと、私は心配する次第であります。それが反對の
一つ
の
理由
であります。次に純
法律
學的見地から申し上げますと、先ほ
ども
これも他黨からお話がありましたが、
國家賠償法
案においてのみ
立證責任
を
轉換
するということは、法理の一貫性からも
賛成
いたしかねる點であります。次に第三條の
修正點
に關しましては、
民主黨
からも御
意見
がございましたが、なるほど
自由黨
のおつしやるところはもつともと思いますけれ
ども
、特にこれを
修正
する必要には及ばぬではないかという感じをも
つて
おる次第であります。以上黨を代表いたしまして
原案
に對して
賛成
、
修正案
に對して反對の
意見
を申し上げる次第であります。
松永義雄
11
○
松永委員長
これで通告者の發言は全部終わり、討論は終局いたしました。 ついで採決いたします。まず
佐瀬昌三
君より
修正案
が
提出
されておる部分について採決いたします。
佐瀬昌三
君
提出
の
修正案
のごとく
修正
するに
賛成
の諸君のご起立を願います。 〔
賛成
者起立〕
松永義雄
12
○
松永委員長
起立少数。よ
つて
この
修正案
は少数をも
つて
否決されました。よ
つて
この部分については、多数を持
つて
原案
の
通り
可決いたしました。 次にただいま決定いたしました部分を除いた他の部分について採決いたします。ただいまの決定以外の部分について、
原案
に
賛成
の諸君のご起立を願います。 〔總員起立〕
松永義雄
13
○
松永委員長
起立總員。よ
つて
本案
は多数をも
つて
原案
通り
可決いたしました。 本日はこれにて散會いたします。次會は明六日午前十時より開會いたします。 午後三時五十七分散會 ————◇—————