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中村(又)
委員 私は總則の
質問を今日中に片づけるというお話でありますから、三十四條ノ二の刑の
消滅の
規定につきましては、
花村委員その他から繰返し
質問があ
つたそうでありまするが、一言だけ
實際問題をとらえて申し上げます。「刑ノ
執行ヲ終リ又ハ其
執行ノ
免除ヲ得タル者
罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ十年ヲ
経過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其
効力ヲ失ツ」すなわち刑の
消滅の
規定でありまして、私
ども多年要望いたしてお
つた規定であります。この
規定は畫一的にな
つておりまして、他の
委員からも繰返し申された通りに、死刑囚のごとき大きなる
犯罪と初め、あるいは
輕微なるところの
罰金のごとき
犯罪も、ともにその
執行が終
つて、十年を
経過したときは、刑の言渡しは
効力を失うということにな
つております。そこでこれはもちろん
輕い罰金刑のごとき場合と、あるいは大きなる殺人罪のごとき重き
犯罪に對するところの場合の
刑罰の
消滅の場合、この十年間を、
罰金の
ような場合は五年とか三年とかにして復権せしめるという刑の
消滅の
期間の點を異にしていくという
ようなねらいは、根本において
考えなければならぬ點ではなからうか。いわゆるこの精神を前提といたしまして、
實際問題として、私が長い間不思議なことの一つとして
政府當局にもしばしば陳情をいたしてをる事實は、この
機會にいわゆる
法律議論として、公の記録を残して今後の
法律改正の上の資料としてお取上げを願いたいものである。というのは、この刑の
時効に死刑は三十年、あるいは無期
懲役、
禁錮は二十年、有期の
懲役、
禁錮は十年は十五年、三年以上は十年、三年未満は五年、
罰金は三年というふうにな
つておるのでありますが、この
罰金の點を私は一言
政府當局にお伺いをいたしておきたいと思います。十年前におきまして、あるいはその後におきまして、私が知
つておる範囲だけでも十人くらいの人が、毎年多きは数
萬圓ずつ、少きは数千圓ずつ資力がないために分納のお許しを當局にいただきまして、もはや八年も、長きは十一年も
経過しておるものがおるのであります。この階級の
人たちが、その間幾度か
恩赦の発布があ
つたにもかかわらず、この
法律のいずれの方面を見ましても「ノ
執行ヲ終リ」という文字があるために、何十
萬圓という
ような
罰金を言渡された者が、資力がないために一箇年間に何
萬圓と納めながらも、
執行が終らぬためにすでに十一年も
経過いたした人があります。四回も五回もの
恩赦があ
つたにもかかわらず、
前科者として今なお年々の分納に苦しんで生活をいたして、いずれの日に復権の恵みにかかれるかしれないという状況において、
司法當局にも復権の願いなどをいたした者があるのであります。これも私の知
つた範囲においても、数人おるのであります。そこでかかる者の事實を
考える場合におきまして、この刑の
消滅の
規定がここに提案せられた。しかし提案されましたこの法案から見ますると、やはり
執行を終
つて十年を
経過したるものという
規定に依然として相な
つておるのであります。そういたしますると、ただいま申し上げる
ような
人たちは、死刑囚といえ
ども、もう十年も
経過するときには四回、五回の
恩赦が行われますると同時に私の知
つた人で濱口首相を殺した某氏においても堂々と復権をして立派なからだにな
つておるのであります。しかしながら、十年以上前に百
萬圓近くの
罰金の言渡しを受けた人が、今日なお六十数
萬圓の
罰金が残
つて、若心惨憺
罰金の分納に苦しんで、今後一生を通じて復権する時期がないという立場におるのが事實問題としてあるのであります。司法東京区は御存じでありますか。こういう者はいくら
法律が出ましても、おそらく救う方法はないのでありますが、
前科抹消という
規定をわれわれの輿論を取上げまして、
政府としてこの草案を御提出にな
つておる今日、かかる不幸な者の将来に對しましても、何か名案でもあられるのではないかという立場から、ちよつとこの法案にちなみまして、お尋ねをいたした
ような次第であります。