○岡井委員 鈴木司法大臣に少しく重大なることをお伺い申し上げます。すべて
國家賠償法案そのままに即したる質問でございまして、少しも離れておりませんが、初めの方がちよつと離れたようにお考えになるかもしれませんが、まず五分間で申し上げますから、五分間だけ御辛抱願います。私は昔から亡國罪というものがあるということを信ずるのです。國を滅ぼす犯罪でございます。これはおそらく私一人といつたら僭越かもしれませんが、私は昔から考えております。誠意のない、能力のない、認識淺薄なる大臣がいすに腰をかけておるということは、すなわち日々夜々において國家を覆減に導きつつある亡國罪の繼續犯であると思うものでございます。私は東條内閣當時に判事を勤めておりましたので、一例に擧げても司法部の司法大臣、はなはだ失禮であるけれども腐敗政治と無能な政治を行
つておる。ただ下僚が型のごとく出席すれば精價格勤だと思
つておる。あなた方は亡國罪を犯しつつある。あなた方が大臣のいすにすわ
つておられることは、すなわち亡國犯を繼續して犯しつつある姿であるということを非常に猛烈に書きましたために判事懲役
裁判を開始せられまして、被告人を
經驗したものでございます。まず開戰の際に戰爭は勝つ見込みがないというので、米内さん初めそういう考えであつたらしいのですが、これに對して徹底的に反對をしなかつた。それからその次に本土決戰というような愚劣きわまる議論をまことしやかに唱えておる。これははなはだしき無能であるか、はなはだしき無誠意であるかでございます。それに對して昔の軍令部總長であ
つて、重臣筆頭の鈴木貫太郎さんなどが、それを見ておりながら、何とも言わなかつた。それから私は終戰直後の御詔勅を拜承したあとで、すでに
日本は
昭和十八年十一月二十七日のポツダム宣言と同じ
内容であるカイロ決議のときに戰爭を投げておつた。爾後
政府、軍部、外交部は和平の
機會をねら
つておつたのであるという奇々怪々なる放送を聽きました。翌日新聞に出るかと思つたら出ませんでした。これは
政府が誤
つて祕中の祕を發表したのだと思います。これから考えますと、もしも鈴木樞密院議長にしても、ほんとうに樞密院議長の重職を自覺しておつたならば、彼は軍事の専門家であるし、東條がいかに墜落した政治を行
つておるかということも御存じであるし、また海軍がほとんど全滅しておるということも御存じであるはずです。知らなければ知る義務があるのです。無能にあらずんばはなはだしく、誠意がないということになります。私のはまだ
事情に暗くして戰爭に勝とうとしてやつたのでございますが、今のように開戰に反對であつたならばなぜ徹底的にやらなかつたか。まだだめだということを知
つておりながらなぜ樞密院議長たるの重責を盡さなかつたかということこの點を責めたいのでございます。
日本は、ともかくも當局がほんとうに戰爭をする氣がなくな
つてから後に、内地の二百五十萬戸の家は焼失しています。五十萬人の爆死者もことごとく戰意を放棄した後です。それからその前のあまたの戰死者、特攻隊も全部、
日本がカイロ決議によ
つて戰意を喪失してから後起
つておるのです。そこで當局者みずからマツチをす
つて二百五十萬戸の放火罪を犯した。またみずから刀を振
つて内地の爆死者、戰死者の殺人罪を犯したのである。いわんや國を亡す犯罪を犯しておる。そこでお伺いしたい。
第一は、
憲法によ
つて「何人も、
公務員の不法
行為により損害を受けたときは、
法律の定めるところにより、國又は公共體に、その賠償を求めることができる。」とあります。またこの度國家賠償法ができ上がろうとしている。そこで
憲法第十七條の
公務員の不法
行為により損害を受けた場合の國または公共に賠償責任と、このたびの國家賠償法第
一條とは、たとえば鈴木樞密院議長その他たくさんあるが、こういう
人々の
行為に適用されるのでありましようか、いかがでありましようか。これらは新
憲法發布前のことでありますから、もちろん適用しないと仰せられるならば、
第二に、同様の場合において新
憲法ができた今日、國家は二百五十萬戸の放火罪の
被害者、何十萬、何百萬の殺人罪の
被害者、かような
人々に向か
つて陳謝の責任があるのではないでありましようか。
第三は、國家が滅亡に瀕しておるのを見て救う義務は、だれにでもありますが、殊に前總理大臣樞密院議長等いわゆる重臣、それから
政府の代官、殊に外交部の
人々、陸海軍省、参謀本部、軍令部等の世界の大勢を知
つておるところの樞機參畫した少壮武官、それから當時の議會人、こういう
人々は當時大臣の顔色を見、祕密
會議も開いてもらつたであろうが、何をしておつたか、こういうときにこそものを言うのが勤めである。こういう
人々は、罪萬死に値するというが、それでは濟まない。千遍萬遍死んでもまだ足りない。死ぬ人があれば死んでもよろしい。そうでなければ、幾多の英靈が——西洋の學説によれば英靈の魂は
存在しておるので、これらの
人々が納得しないから、強盗など特攻くずれその他が多いし、ますます世の中が亂れるのでありますから、こういう
人々を議會において陳謝さすべきではないかと思います。
第四は、
法律は既往にさかのぼりませんけれども、かくのごとく多數の殺人罪、放火罪、それにもまして亡國罪というようなものを超したる今列擧したような
人々を訴追すべきではないでしようか。
法律は既往にさかのぼりませんけれども、東京
裁判所なんかでは、既往にさかのぼるということでや
つております。もし新舊兩法、行政法の交替する
機會に、殺人罪放火罪のごときものを新法に誤
つて書き落としたことを後日に發見した場合に、それの空白時代の殺人、放火
行為を放
つておかれぬのではないかと思います。さような犯罪、それにもました亡國罪というようなものは、人類なり
國民の根本的犯罪でありますから、これは
法律をまたないと思うのでありまするが、いかがでございましようか。
第五、舊
憲法のきましては、國務大臣は
天皇輔弼の責に任じております。それから新
憲法は第六十六條三項、國會に對して内閣は連帶責任を帶びているようでございます。私は昔から次の疑問をも
つておりました。輔弼も責に任ずるといつたところが、國家を亡ぼすかもしれないということに對して、死刑にしても、あるいは千遍、萬遍死んでもあきたらない。金錢的賠償もしかりである。そのことを
憲法は麗麗しく書いて
憲法學者も何も疑問にしない。がくのごときところに國家亡滅の原因があると思ひます。今後の
法律においても連帶の責任を負う。責任を負えればよいですけれども、辭職したくらいでは濟まぬです。かくのごとき場合に
憲法の
條文は空文になると思います。それから
憲法第十七條の
公務員不法
行為による國家の賠償責任、それもさような場合には空文になると思うのであります。國が賠償のしようがないのです。空文になります。そこで私はどうせこれは空文になるのであるから、ひとつこの際に司法省におかれまして、ただいま申し上げましたような亡國罪というようなものを犯罪の筆頭に御
規定になるお考えはないでありましようか、どうでありましようか、
法律の空文になるということを救うためでございます。それが第五でございます。
第六は、さような不都合なる
人々に向か
つて國家は償還
請求權、求償を御實行になりますでしようかどうですか。償還を求めたところが償還する力はないのですから、やはり今申し上げたような
憲法の
條文は空文になるのでございまして、そこでそのためにもやはり亡國罪というようなものを
規定して、政治に任じているような
人々をピリツとさせなければだめだと思う。今までに議會を何年勤めたからというので、それが威張
つているというようなまことにばかばかしいものを放つたらかしておくから、ほんとうの政治ができない。恥入
つて死ななければならぬ者が威張
つているというのが現状なんです。
第七は、
日本は戰爭を放棄したのであるから、今後はその国が亡びるとか何とか言う激しいことはないよと仰せられるかもしれませんが、斷じてさようではありません。将來のことはわかりません。それからまた眼前の有様を眺めましても、昔の本土決戰のようなこと、これは
國民の眼をごまかしたのか、はなはだしく無能であるが、どつちかでございますけれども……。それから現内閣におかれましても、炭鑛の國家管理ということを唱えておられます。これは新聞でも、單に水谷商工大臣がイデオロギーにためにや
つておるのでないかというようなことを新聞でもたたかれて、
國民も非常な疑念をも
つておりますが、もし内閣の面目のためにとか、今までの主義、行きがかりのためにやる。そのうち内閣も潰れるであろうから、われを咎める者は天下一人もない、辭職してしまえばそれまでである。理窟というものは何とでも立つ。もつと内閣におつたら成功をおさめておつたかもしれませんが、成功をおさめるいとぐちにおつた時にわれわれは辭職したのであるとか何とか、言譯は立ちます。本土決戰と同じようにこれは私はイデオロギーのためにこういうことをや
つておられるのではないかという懸念を大いにもつのであります。しかりとすれば、一黨一派を重んじとして國家を輕しとする態度であります。そこで私は第七といたしまして、國家の法規を擔當しておられる鈴木司法大臣におかれまして、もしさように御同感でございましたならば、水谷商工大臣に對して痛烈なるご忠告を發しになる必要があるのではないかと思います。私は司法省は、戰爭中でも敗戰亡國のためにのみ奇與しておるという感じを深くしておつたのであります。敗戰亡國のためにのみ働いておつたというのが司法省だと思
つていたから、私は痛烈な手紙を出したのでありますが、私は鈴木司法大臣がほんとうの面目を發揮せられんことを希いまして、第七のお尋ねをする次第であります。