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川合委員 先ほどからの御説明によりまして、今後の
日本貿易、もちろん現在の
貿易はいわゆる
自由貿易ではないわけでありますが、そこで
結論を先に申しますならば、今までの御説明によるならば、あまりに
日本の
貿易というものは樂觀を許しがたいというような
結論に到達するだろうと思うのであります。そういう點におきまして、
日本が
ドル・エリアから輸入し、そうしてエキスポートはポンド・エリアにエキスポートするというような
關係からいたしますならば、まさに
日本の
貿易の
將來というものは、樂觀が許されないという
結論になるだろうと思うのであります。そこで先ほ
どもお話があ
つたのでありますが、
日本の
貿易を見る場合において、世界的規模において
將來を把握しなければならないというわけでありますが、私思うのに現在の
ドル不足というような世界的な大きな
金融の流れというものは、第二次世界大戰後におけるところの
一つの安定恐慌の前兆ではないかというように思うのであります。第一次歐洲大戰後におけるところの一九二九年の世界的恐慌というようなものが、まさに勃發する前兆ではないかというような氣でするのであります。もちろんこれは他の政治的なフアクターということも
考えなければなりませんが、純
經濟的に
考えて、私はそういうように、第二次世界大戰後における安定恐慌が勃發するまさに前夜にあると
考えるのであります。これは問題は英國の動き、政治的にどういうように解決せられるかということによ
つて問題は解決せられる可能性もあるわけでありますが、そういう世界的規模において、
日本の
將來の
貿易というものを見透しされることが緊要ではないか。
貿易長官は私が思うのに、
民間人としてたしか長年の豐富なる經験がある方でありまして、そういうような點において今後の
日本の
貿易政策、
日本の單なる國内の問題だけではなくして、世界的規模においてよくこの問題を把握されんことを切に希望いたしたいと思うのであります。
それから第二點といたしましては、先ほどから御説明のあ
つたように、
日本は當分の間高度の技術を資本とするような加工
貿易によ
つて、
日本のエキスポート・トレードということが進展する可能性は少いと思うのであります。どうしても繊維品というものを中心にして
日本の
貿易は振興しなければならぬというように
考えられるのであります。そこで過去の
日本の繊維
貿易の發展の
經過を
考えた場合において、
日本の混綿技術とか、あるいは、チープ・レーボアーというようなことによ
つて、
日本の繊維産業というものが發展したというように一應は
考えられるのでありますが、私の若干の檢討したころによるならば、むしろ
日本に繊維産業資本が、世界的な商業資本としてきわめて活動したという點が、相當大きなフアクターにな
つておると思うのであります。たとえて申しますならば、綿花というものは非常に騰落の激しい世界的
商品であります。
從つてたとえば東洋綿花がニユーヨークにおいて米綿を買う、その場合においては、これをすぐにキユーバの砂糖にヘツヂするとか、あるいは上海のゴールド・バーにヘツヂするというようにしてリスクを逃れ、その間において妙味をつかむというようにや
つてきたのであります。
從つてこういうような世界的な商業資本の活動が封鎖され、その一面において
經濟力集中排除というような
關係で、總合經營ができないとい
つたような
關係から
考えるならば、
日本の繊維産業というものは、單なる加工賃だけの受取國ということになる。前のような非常に世界的な規模における商業利潤の獲得ができないということを、われわれは特によく知
つておかなければならぬと思うのであります。それと同時に現在は買う場合においても、また賣る場合においても、價格の安定があるわけでありますが、ほんとうに
自由貿易がくる日はいつの日であるか、私は推定困難でありますが、その場合におきましては、私はおそらく綿花は過去におけると同様に、世界的な騰落の激しい
商品になるだろう思うのであります。そういう場合においては、今までは厖大なる商業資本というものがあ
つて、それが自己防衞をも
つて積極的にリスクを冒して、商業利潤を獲得し得たのでありますが、今後はむしろ資本の寡少性からいたしまして、非常に
日本全體としてそういうような危險による損失のみが課せられるという危險性があるのではないか。
從つてある意味においては管理された
貿易の方が望ましいというようにさえ私は思われるわけであります。そういうようなことももちろん現在の
貿易長官はよく御存じのこととは存じまするが、晝夜をあげての
貿易再開の喜びというものが、單なる希望のみに終
つてはいけない。よく現實と
將來を見究めて、その見究めた基礎の上に立
つて、いかにして進展せしむるかというようにしなければいけない。
從つて今後の
貿易政策の上におきまして、
業者をしてそういうようなことをも含めて指導せられんことを希望いたしたいと思うのであります。
そういうようなことを希望申し上げると同時に最近まい
つたトレード・ミツシヨンが——私は濱松でありますが、濱松は御承知の
通り遠州織物の産地として、
日本の繊維界におきましても相當な地位を占めておるわけであります。そうしてたとえば内外編物というような、かなり特色とせられる繊維産業をも
つておるわけでありますが、一、二のバイヤーが現地にまい
つて、そうして失望して歸
つたということを開いておるのであります。その失望して歸
つたという意味は、實
商品を買うというような、インポートするという意味ではなくて、積極的にインベストメントするというような氣持でまい
つたところが、それができない。しかもそれがそういうような當てにしてお
つた工場が戰災に遭
つてしま
つたり、あるいは軍工場として轉換されたというようなので、失望して歸
つたということを國の方で聞いておるわけでありますが、もしそういうようなトレード・ミツシヨンの人たちは——このトレード・ミツシヨンの方は先ほど御説明のあ
つたような方で、從いましてそういうような
關係において、投資というようなことを目標にしてまい
つた方もあるかもわかりませんが、しかしながらもしトレード・ミツシヨンの大
部分の人たちが、投資というようなことを目標にしてまい
つたというのでありますならば、われわれとしては今後大いに
考えなければならぬと思うのでありますが、私たちとしましては
日本がいかに困苦缺乏に打勝
つたといたしましても、半植民地の
状態になるということは、民族全體をあげて警戒しなければならぬわけであります。從いまして現在の
貿易廳といたしまして、最近における
貿易使節團の
具體的な活動からみて、そういうような輸入という面よりも、投資という面に主力が注がれておりはせんかというようなことに對する御見解を承りたいと思うのであります。