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石川一郎君 私石川でございます。
經濟力集中排除の問題が起りましたときに、どういうふうな行き方をするかわからぬために、非常に心配しておりましたところ、途中でうわさでございますけれども、たとえば二十の工場がある。それを一工場一社主義にするというような話を伺つたものですから、これはたいへんだというふうに考えたのでございますけれども、だんだんその後に模樣を伺
つておりますれば、現在の
法律に出ておるようなことくらいのブリンシプルならば私どもは結構である。ただあとの運營その他が非常に重大な
影響を及ぼすから、これに氣をつけていただけばいいのではないかというふうに考えております。もちろんこれは
經濟界の全體の
意見をとりまとめてまいつたのでございませんので、私の卑見を申し上げるのでありますが、そういうふうに考えております。大體現在非常に大きい資本を擁しておるもの、もちろん拂込みの資本は八億、九億、十億が大きいのでありますけれども、そのほかに借入金その他で、何十億というものを借り入れまして産業を動かしております工場がかなりあるのであります。そういう工場はあまりに大き過ぎる。一體平時から私はそういうふうな考えをも
つておつたのですが、やはり
日本のようなところでは、
企業の
規模というものは、ある程度で制約をされるのではないか。私ら今から四、五年前まではいろいろな
會社に
關係がございましたが、自分でや
つておりましてとても手がまわらぬ。徹底的に自分の思うように、理想的にこれを動かしていこうとするには手がまわりかねるというようなことを痛感したことがあるのでございます。そういうふうな
意味におきまして、非常に大きな工場をどつさりも
つていらつしや
つて、これを完全に動かしていく、特に現在のような非常に資材も少い、勞働功勢も強い、また電氣もときどき止まるというような場合におきまして、どういうふうにや
つていつたならば、一番
日本の
經濟力を上げるにいいかということを適切に判斷して、適切に手を打たなければならぬのでありまして、あまり大きな工場をも
つておるということは、とても背負い切れないだろうと感じております。それでわれわれはある程度の大きな
企業は細分化すべきものなりというふうに考えておりますので、大體このブリンシプルにおいては私どもは贊成をしておる次第であります。
なおこの問題をこまかく考えてまいりますと、いろいろの點がございますからその要點を申し上げます。今までの
經營というものは一體どういうふうにな
つておつたかということを考えますと、大きな
規模の
會社というものは、そのうちに大體財閥
關係の非常に財力の後光が光
つておつたのでありまして、その後光のもとに仕事をしていたということがございますし、その上に官僚なり、あるいは
戰時中におきましては軍人というものが、それを手とり足とり非常に親切に、すべての物資の配給その他――物資の配給に人が足りないといえばすぐに人をまわしてくれるとか、技術者が足りないといえばすぐ技術者をくれるとかいうように強制的にまいりました。それで運營ができておつたのでありますが、敗戰後その壓力が全部とれてしまつたという場合に、はたして相當りつぱな方であ
つても、今までのような大きな仕事が完全に遂行できるか、しかも現在のような非常に不便な世の中でできるかということを考えますと、どうもそれは不可能ではないか。これは私が微力で仕事を
經營しておつた時分に考えておつたためかも存じませんけれども、大體そういうふうに考えておる次第でございます。それにいろいろ模樣を伺
つておりますと、たとえばいくつも工場がございまして、そうしてその一つの工場が非常に成績がいい、他の工場が成績が悪いという場合におきましても、自分の方が怠けても、別に
會社の
經營に
影響することが少いのではないかという考え方を、とかく
經營者もあるいは從業員もいたすものでごまいまして、親がかり、あるいは兄弟がいいから自分たちは少し樂していいという考え方もないではないというふうに思われますので、やはりそういう點を自覺せしらるということがいいのではないか。自分の方は非常に仕事の能率があが
つておらぬ、あるいは
經營が非常にうまくい
つていないのだということ、あるいは
經濟が苦しいのだということを自覺させるためにも、わけるのが必要ではないか。實は先般も炭鑛業者がいらつしやいまして、ある炭鑛は非常にうまくい
つておる、ある炭鑛は悪い。ところが悪いのを直そうという氣が起らぬで困るというお話がございました。そういう點から考えてまいりましても、これはある程度にわけて、そうしてお互いに自立させた方がいいのではないかというふうに考えております。
それで今度の
法律がきまりまして、そうして持株
整理委員會である基準を示される、こういうことにな
つておりますが、實はその基準が非常に心配でございまして、たとえば何億とか何千萬とあう
會社がわけられるならばいいけれども、もつと小さな――これはうわさでありますからわかりませんが、五百萬以下の
會社もわけるというようなことをちよつと聞いたものですから、これはたいへんだと考えたのでありまして、そういう基準がわからないために非常に心配いたしたのであります。しかし今囘の分割問題は將來の
日本の
生産性を阻害しないように、またその
會社の
經濟力を非常に弱小化しないというような建前におきましてわけられるという話でございますので、この點については要するにこの
法律を
運用する運營いかんにかかる、この點をお互いに監視しあるいは協力して、
適當な方向にも
つていかなければならぬ、こういうふうに考える次第でございます。今度はそういうふうなことになりまして、分割されました場合に、一體どういうふうな
影響があるかということを考えてみたのでありますが、一番困りますのは、各
企業におきまして、それが相當大きな
企業であり、
經濟力も大きければ、研究調査ということに相當の費用がわけられるのであります。ところが分割されてしま
つて小さい
企業にな
つてしまいますと、そういう金を一體どうして出し得るかということが、非常に心配の種にな
つております。これを共同研究所をつくるとかいうようなことをいたしましても、中には、成績の上
つておるところもございます。大體
戰時中はずいぶん上
つておりましたが、最近においては上
つていないところが多いのでありまして、やはり共同研究所のごときものはうまくいかないのではないか、どうしたらいいか、こういう問題について相當の考慮を拂
つていかなければならぬのではないか。あるいはまだ調査
機關においても相當大きな調査
機關をも
つてや
つていらしやるところもありますが、そういう費用が出せるか出せないかというような點につきまして、何とか出せるような仕組をつくらなければならぬ。これは今學界においてもお集まりになりまして、どうしたらいいかというようなことを研究中でございますが、これはどうかしてあとで――
日本の産業は非常に遲れておりまして、少くとも
戰時中の進歩は遲れておりますし、戰前におきましても、すでに化學工業のごときは十年、十五年、あるいは三年ぐらいのものもございますけれども、大體遲れておつた。しかもこの
戰時中の約十年間に非常に遲れましたから、その遲れを取返す必要があるので、この點については相當の考慮をしなければいかぬのではないかというふうに考えております。
それからもう一つの問題は、これは
企業再建整備法とも
關係がありますが、これは一番大きな問題だつたと私は考えておるのであります。たとえば今まであつた一つの
會社を
企業再建整備法によりましてわけるのでございますが、それに今度の
集中排除法によ
つてまたわけ方を併せて考えるわけでありますが、
企業再建整備法におきまして新しくできる第二
會社の資本金というものは、固定資産プラス固定的の流動資産をこめたものをも
つて、自己資本で賄えというプリンシプルに大體な
つておりますが、そういたしますとたとえばここに一億の
會社があ
つて、それに
戰時中は増資も許されませんで大體借入金をや
つておりますし戰爭後物價も上りまして、相當借入金が多いのであります。その資本金の
内容についても借入金に屬しておる。資本金プラス借入金の
内容を調べてみますと、固定資産プラス固定するような、常時も
つていなければならないようなストツクとか何とかいう固定的の流動資産であります。この金も合わせますと、現在の資本金よりも三倍、四倍というような數字になるのであります。そうすると今一億の資本金の
會社がございまして、それにさらに三億をプラスして、四億の新しい數
會社にこれをわけるということになりますと、結局の一億の資本が四億に殖えるのみならず、今までの銘柄と違つた株券が相當出てくるのであります。要するに一億のものが三億殖えれば四億の株券にな
つてくる。しかも今までの
株主がもとの
株主に優先的にわけて、その次にもしもとの
株主が引受け得ない場合においては、勞働者にわける。なおそれが引受け得ないときには地方の住民にわける。なおそれが引受け得ないときには一般にわける。こういう一般論にな
つておりますが、この株が非常に多く出てきはしないか。しもか今持株
整理委員會がも
つておる財閥の株なり、あるいはまた今度
獨占禁止法で
會社の株はもてなく
なつた相當數量の株、この株の處分というようなことを考えますと、これは計算をしたわけではありませんけれども、五、六百億の金の新しい名柄の株券が出てくるこりになるのではないかと思います。そうしますと今までの
株主なり何なりが、これをも
つていく力がとてもないと存じますので、相當の大きな手を打たなければ、この株は非常にぼろを出す。そこでただいま申し上げたように、資本金プラス固定的流動資産をも
つては、自己資本でやるというプリンシプルは崩れます。さようなことがございますので、この株の處分をどうするかということが大きな問題でありまして、この處分の方法いかんによ
つては、今までの資本の蓄積もできなければ、いわゆる修正資本主義でさえもうまく遂行できないようなことになるのではないか、これが一番大きな問題であろうと存じます。そこで一方そういうふうになりますので、もし株券が發行できない場合におきましては、社債でも
つてこれを賄うことにな
つておるのでございますが、今までの商法の
規定によりますと、社債は拂込金額だけが許されるのであります。もちろん電力その他は倍くらいまでは許されておりますけれども、大體拂込資本を限度とするのが原則でございます。そうするといくらも社債ができないことになり、銀行が借しておる金が固定してしまいます。その銀行がある
會社に借しておる金が株券に變るとか、あるいは社債券に變れば相當處分ができますが、それが株券になり社債に變らなければ、銀行の貸金はそのまま固定されてしまう。そこで今でも産業資金も足りないという状況でありますが、その點で非常な壓迫
關係ができる。それはもちろん
集中排除法のみから起
つてくる問題ではございません。
企業再建整備法からも起
つてきますが、その問題が非常に大きな問題になりはせぬか。それに對していろいろ大藏省の方々とも何とか手を打たなければならぬと御相談しておるのでありますが、まだ解決すべき案がないのであります。そういう點が大きな問題だと存じます。
そのほかにあまり小さくわけられますと、御
承知の
通りにその
企業、財界の變動、
經濟界の變動に對するいわゆる乘り切
つてまいります凌波性が少くな
つてくる。特に最近のように、たとえば九州地方におきましては、先般も伺えばわれわれ想像もつかなかつた九段制限という電氣の制限をやいております。そうしますとその工場がもし一社一工場になりますと、ある程度休まなければならぬことになります。これがいくつもの工場がありまして、あるつながりをも
つておりますれば、片一方の工場が動くから、關東の方は電力ができて火力で動くというバランスがとれますが、あまり細かく地方的にわけますと、今言つたような電氣の問題、あるいは原料の輸送の問題、あるいはこれはまれでございますけれども、先般來ございましたような風水害の場合において、ある
會社のみが非常の苦しい
經濟状態に陷る。これを何とかアジヤストするようなことをやらなければならぬ。それにはやはり單に地區別にわけてしまうということでなしに、ある程度その
會社の將來のスタビリテイというようなことを考えて、わけていかなければいがぬのではないかということを考えております。なお原料その他を考えましても、ある地方から出る原料を工場に運ぶというようなことがあります。あるいはいくつも山があ
つて、そこから原料を運ぶこともありますが、一つの
鑛山が金がなく
なつた場合に、そこから出てくる品物を使
つておる工場はストツプしなければならぬというようなことがあります。これは要するに先ほど申し上げた
運用の點、つまりどういふうにわけていくかという
運用の問題だと存じますので、そういう點について相當考慮を拂
つていかなければならぬのではないかと考えております。なお多少工場數が多ければ、たとえばモートルにしても、先般もある炭鑛に火事が起
つてモートルが燒けたのですが、そのときにすぐ自分の他の鑛區にあるモートルを運んできて直すといつたようなこともできるわけでありますが、これがあまり小さく獨立すると、人のものをもら
つてこなければならぬようなことになりますので、そういう點についても考えなければならぬだろうと思います。なお最近インフレの結果、資本金の割合に賣上代金が大きくな
つて、何倍ということにな
つております。たとえば戰前あるいは
戰時中、年に千五百萬圓くらいの賣上高の工場が、今日では二億、三億という大きなものにな
つておる。固定資本はあまり變らないで運轉資金が非常に多くなる。そういうような
會社があまり
企業が小さくなると、莫大な運轉資金を得ることが容易にできるかどうか。こういうふうな問題もあるのであります。先般も二十何工場かも
つておられるある相當な
會社の社長がお見えにな
つて、お前のところは分割される、分割されれば幾つもの
會社になるから、だれが社長になるかわからない、そして擔保ルートも少くなるから、貸すわけにはいかないというふうにしぼられまして、それからまたいろいろして金を融通していただいたようなこともあります。そんなことが起
つてきますので、こういう點も重要かと存じます。特に定期的な修繕を必要とする工業、たとえば硫酸工業のごときは、たいてい三年に一度は、ほとんど一四半期、三月くらい休んで大修繕をしなければならぬというようなことがあります。そういう場合に一工場であればただちに
金融的にまい
つてしまうというようなことがございますので、要するにこれも分け方いかんということで、そういう點をこの
集中排除法を
適用され、持株
委員會等において、よくお考えにな
つてや
つていただきい。なおそういう點をよく考慮するために、今持株
整理委員會では、
排除法によ
つて分割される
企業のみならず、
日本全體の工場の分布状況とか、キヤバンテイを調べて、なおその中の一つの
企業として、その
會社の實態をよく身體檢査して、そうして適切な手術を加えるというお考えのようでございますから、またこれは相當の手術でございますから、たとえば賃金の例で申せば、盲腸炎を切るときには下しをかけて、すつかり拂
つて掃除して、それから切ることが安全である。そうすると初めはからだも弱くな
つておるし、一時
經濟状態も悪くなるかもしれませんが、今度一遍切
つてしま
つておくと、あとはもうどんな運動をしてもいいようなからだになる。それと同じような考え方でや
つていただければいいのではないか。實は先般來外國の相當の方が見えておりまして、
日本に對する投資について大分お考えにな
つて、いろいろ相談を受けておるのでありますが、そういう場合にあまり小さくなると、投資その他見返えるのに非常に不便じやないかという點は、ちようど
日本の銀行家たちも、あまり小さく分割されては貸しにくくなるということでありますから、當然ではないかと思いますが、結局そういうことを考慮に入れて、いかにして
日本産業の
再建をするかということを頭においてや
つていただけば、差支えないのではないかと思います。それからまた現在では非常に原料等が足りません。たとえば脂油工業のごときは、大體多いときには油脂を年に四十萬トンくらいずつ使
つております。現在割當は二十五萬トンくらいのものがあれば、先進國の三分の一くらいの油が使える程度でありますけれども、その油さえ現在ではわずかでありまして、工業用の方で大體二十萬トン前後使えるのがノルマルな状態であります。今のような先進國の何分の一の油を使うという状態なのでありますが、それの十分の一しかはい
つていない、油の原料がないという状態であります。そういうわけですから、現在は各工場が遊んでおる。ほとんど十分の一の作業というくらいに遊んでおります。ですからそれが一
會社にな
つておれば、ある工場は二割を働かし、ある工場は全然休ませるいうようなことができるのでありますが、そういう状態で今休んでおるものが多い。そういうような工業、また銑鐡の足りないために鋼材をつくる工場もそうであります。また板ガラスの工場などもやはりソーダがないためにいくつかの工場が休んでおる。工場が大きいと大きいからわける。こういうことになりますと、潰れてしまうような工場が起
つてまいりますので、そういうこともよく考慮して、それが立ち上るときにはわかるけれども、それまでは當分わけなくてもいいとかいう
措置を講じていただく必要があるのではないかと思うのであります。
それからなお今度は一つの
企業がいくつも工場をも
つておる。その一つの工場が非常に大きいという場合であります。
價格形體について今桑田さんからお話がありましたが、相當そういうものはあるのであります。ところがこれは一つの工場でもともと
關連性があり、從横に原料が製品になり、その製品がまた他の原料になることもあるし、さらに分化していろいろ復雜な縦横の連絡がある工場が多いのですが、そういう六階建ての工場が、一階と二階と切られるということになれば、いくら大きい工場でも困るし、そういう工場ではたいでい動力、燃料
關係、運輸、ボイラー、あるいは容器等、共通の場合が多いのであります。そういうものはできるだけわけないようにしていただかぬと困る。ところが一方に
獨占禁止法でそういう大きな工場が一方に殘り、他の方の工場が非常に小さくなり、その格差がでてまいります。その格差を出さぬ方法を何とかしなければどうも困るとことがありはせぬか。ただいま私が申し上げた大きな工場が、他の小さな工場でもできるような製品をどんどんつく
つている。つくり得るという場合であります。その大きな工場が原料
關係あるいは熱源
關係、あるいは技術
關係で非常に優秀な地位に立
つて、弱小工場がぶつ潰されてしまう。こういう結果を起すといわゆる
集中排除の
目的に合わないようにな
つてくる。これは三、三の方に申し上げておるのですが、その場合には他の小さな工場で同じ製品をつくり、工業のキヤパレテイを抑えていつたらいいじやないか。お前の方はやればほかのものはぶつ潰されるのだから、そういう一つの工場を縦横に切られたら作業に困るから、その工場を動せば一萬トンできるが、それを五千トンにして、あとの五千トンは十
會社なら十
會社でつくらせる。その五千トンしかつくつちやいかぬという制限をおいていつたならば、これは縦横に切られるよりはよほどいいのじやないかというような案をも
つて、三、三の方にはお話申し上げております。
それからいまひとつ今度の
法律でできます
指定期間の問題ですが、あれは一年間とな
つておりますので、いつ自分の方に
指定がくるかわからぬという不安があるので、非常に心配なさ
つていらつしやる方もあるようですが、これはいろいろ安本でもお話なすつたでしよう。われわれも直接いろいろお話したのでございますが、どうしてもいかぬということですからこれはやむを得ぬと存じます。そう
なつた以上は仕方がないから、
企業者の方も空襲を受けたときと同じ考えで、いつくるかわからぬ。來たときは來たときという考え方でいくよりは仕様がないと考えております。
かようにしてある程度の
企業の分割は、かえ
つて日本再建を早める――實はこれはかなり前でございますが、じようだん話に、炭鑛などをや
つている社長さんたちあたりに、それは各地方に炭鑛をも
つていらつしやるのですが、石炭がなければ困るとい
つておるときに、社長さんが東京でいろいろ仕事をしておるより、むしろ坑内におはいりに
なつたらどうかということを申し上げたのであります。そういうことがまず勞働力をあげていくのにいいのじやないかと考えますので、そんなことを考えておるのですが、ただこれがわかれました場合にどうなるかが心配になる。今まで一
會社をや
つてきた人は、六年なり、八年なり、重工業あたりは二十年にもなるので、はたしてそれをしよ
つていく
經營者ができるかが問題であります。工場長とか取締とかは、相當知識經驗をも
つて、その工場についての知識經驗は十分おもちだと存じますが、金の問題、あるいは他の産業がどうな
つているから自分の方はこういうように動くだろうという見透しをつけるとか、そういう知識經驗の少い方が、これからどうしても社長とか常務とかいうものにお坐りになることになるだろうと存じます。これは最初はやむを得ない傾向でございますが、何とかそういうことを早くわからせるという
機關が必要ではないか。それでは
排除の問題、
獨占禁止法の問題その他から、民間の組合等は全部大體閉鎖
機關にも
つていかれることにな
つております。今まではそういうところで、東京に本部なんかできまして、
政府と連絡し、あるいはG・H・Qと連絡して、こういうように動いておるからこういうようになさいということを、組合から各首腦者に傳える
團體もあり、またA
會社の社長が組合でこういう噂がた
つておるからB
會社も氣をつけなさいということができなくなる、そういう情報の交換ができなくなるし、情勢の變動をのみこませることが非常に困難だと存じますので、そういうものに對する準備も整えていかなくちやならないじやないかと考えております。近い中に安本を通じで將來の民間
團體のあり方について、こういうあり方ならばよろしい。情報の交換、技術の連絡をする民間
團體もよろしいということになると思いますが、今までの協議會、懇話會、いろいろございます。そういうものが閉鎖
機關になりましたが、早くそれに乘り移りまして、そういうことを地方にいらつしやる方々、あるいは東京にいらつしやらなくても、そういうような御經驗のない方々にお教えし、お導きするような
機關が必要だと思います。實は私先般來北陸方面をまわ
つてきたのでありますが、やはりああいうところをまわ
つて社長さんにお眼にかかると、ただいまは激動期ですが、その激流の流れを御存じない方が多い。ちよつと二時間ぐらい話しても得るところがたいへんあるから、また來てくれというようなことでありました。そういうことを早く知らせて
經營をうまくや
つていくことが必要ではないかということが一つであります。
それからいまひとつ心配いたしておりますのは、すべての物資の配給とかその他を、今度は官廳でやることになり、いわゆる官僚統制ということになるのでありますが、今相當の
會社がまだわかれておりませんが、そういう場合においても一抜官、一事務官が物資をわける權限をも
つておりますために、いろいろ弊害が起
つております。今まで經理
會社が七、八千あるそうでありますが、一つの
會社が二つになるものもあれば、あるいは十になるものもありましよう。そうして何千何萬という數になる。これが立派なお役人が割當統制もや
つてくれるならば結構でありますけれども、そういう場合がないとすれば大きな弊害が起る。これを何とかして防ぐ方法を考えておかないと、
日本の
再建は非常に不合理な情實によ
つてやるようなことにな
つては、たいへんだということを心配しております。そういうてだても、民間としても、
政府としても考えなければいけないのではないかと考えております。
それからこれは大きな
會社でもございますが、大體小さな
會社は、先般來新物價體系になる前は非常に各社マイナスでありましたために、たいへん苦しかつた。ところでどちらが一部分の製品をやみに流しておるかというと、もちろん大きな
會社でもいろいろな例がございますけれども、小さな
會社が苦しまぎれにやるのが多かつたのでございます。そういうことになるとよほど流通秩序の確立をうまくやりませんと、やみ物價が横行することになりはせぬかと心配しております。こういうことに對する相當の手を打
つておかなければならないのではないかと考えます。先般も、今は第一線にはおられませんけれども、元は相當な地位におられた方にお目にかかつたのですが、今度の
集中排除法は
日本再建の救いの神であるというお話がありました。そればかりではありませんけれども、一部の眞理があるのではないかと考えますので、これを遂行するときのいろいろのものの考え方なり示唆なりについて、十分遺漏ないような方式をと
つていただくことと、これができ上つた後に將來いろいろ起り得べき弊害なり弱點に對して、これを補う方法を講じていただく、こういうことをや
つてまいれば
適當にいくのではないかと考えております。ただわれわれとしては、一つの工場が大き過ぎるということによ
つて理不盡に切られるようなことのないように、しかしながら先ほど申し上げた
通り、要するに
生産力を一時は減退してもあとはよくなるし、
日本の
再建を早くするためにやるのだ、こういうプリンシプルが明らかにな
つておるのでありますから、
適當な方法、たとえばいろいろ
意見を聽くとか、公聽會を開くとか、困る事情を訴えられれば何とか方法を講じてやるとかして、これを適切に
運用して、ある程度において分割し、そう
なつたときの跡始末をどういうふうにするかということを考えていつたらよいと思います。