○泉山委員 私は
財閥同族支配力排除法案につきまして、特に所管大臣に對しまして、二、三お尋ねいたしたいと思うのであります。まず第一に本法の第二條第二項についてでありまするが、すなわち右の第二項におきましては、本法の對象となる財閥會社につきまして(イ)、(ロ)、(ハ)の三つの場合を
規定しておるのでありますが、(イ)、(ロ)の場合におきましては、まず時間的には、昭和二十年九月二日におきまして現存する會社でありまして、また資本的には、資本金額は一千萬圓を超える大會社に限られてございますが、(ハ)の場合には、この點が必ずしも明確ではないように思うのであります。すなわち(ハ)の場合におきまして、内閣總理大臣が財閥會社の指定をなす場合、もしも自己の判斷によ
つて無制限にこれを行うというがごときことでありますならば、内閣總理大臣に對して、あまりに過大の權限を附與するものでありまして、あるいは行き過ぎ等のおそれもあり、ともより適當ではないと考えられるのでございますが、そこで本項は解釋上前段(イ)の前文である「昭和二十年九月二日において資本金額が千萬圓を超える會社」という二つの條件が内閣總理大臣のなす指定の場合にも、(イ)、(ロ)、の場合と同様に、その前提となるものと解釋して差支えないのがどうか。まずこの點に關して明確なる御
答辯をお願いしたいと思うのであります。
次に私のお尋ねいたしたいと思いますのは、第六條第一項の第二號についてでありますが、すなわち内閣總理大臣に對し財閥役員でないことの承認を申請いたします場合におきまして、右第二號によ
つて本人の役員としての就任
事情、またはその職務の執行の實情より見て、本人を財閥
關係役員とみなすことが、明らかに不當であると認められる場合は、内閣總理大臣は、財閥
關係役員審査
委員會の審査の結果に基きまして、右申請の承認をなすというのでございますが、
實際上これが運用上の限界について、あらかじめ承りたいと思うのでございます。そもそも本法は第一條におきまして明示せられております通り、財閥事業の形成維持に有力な寄與をした人的結合を切離して、も
つて財閥同族の支配力の排除を目的とするのでございまして、この
意味におきまして、さきに本年一月四日公布せられました一般公職追放に關する政令とは、立法の趣旨におきまして、相違いたしておるものと考えるのでございますが、本法はいわゆる好ましからざる人物を追放するという觀念よりも、むしろ問題の重點は、ひつきよう人的結合の排除ということにありと信ずるのであります。從いまして、ひとしく財閥役員中におきましても、これに對する取扱いには、右の目的を明確にして、これに副うがごとく配意して、濫りに財閥の全役員を一律に排除するがごときことなきよう、十分留意すべきものと思うのであります。今財閥の役員につきまして、その實情を見ますのに、財閥役員はこれを二種類に大別することができるのであります。すなわち
一つは財閥の利益を代表して役員たるもの、他の
一つはその人のメリツトをかわれて役員たるものの二つであります。前者に属する者は、會長、社長以下常務取締役以上の役員にして、それぞれ會社を代表するものを初めといたしまして、さらに財閥會社相互間の連繋を緊密ならしむるため、特に當該財閥會社代表といたしまして、同一財閥内の他の會社に役員として派遣せられたる者も、また利益代表たる
性格を保有するのでございますが、他方、たとえば特定の支店長または工場長等にして、取締役を兼務いたす者のごときは、原則として後者すなわちもつぱらその人のメリツトによ
つて初めて取締役たるものでございまして、この種の役員は本法第三條にいわゆる財閥の利益を代表する者とは認めがたいのであります。取締役、支店長の中には、まれに特定の一地域を總括してこれが監督の任に當り、相當重要な任務に携わる者もございますが、一般にはさような廣汎な權限は與えられておりません。單にその店限りの權限を與えられておるに止まりまして、その權限は一般支店長と何ら異なるところがないのでございまして、かような
意味合の役員は、本法第三條にいわゆる當該會社の重要な業務の運營に參加しておる者とはとうてい認めがたいのでございます。極端な例でございますが、ある會社のごときは、大阪にも取締役支店長があり、また京都にもまた神戸にも、名古屋にも同様取締役支店長が在勤いたすというふうでありまして、これらはまつたく財閥の利益代表等の色彩はなく、ひたすらその人の才幹と功勞とに報いるために、恩惠的に取締役の肩書を與えられたものと解釋すべきでありまして、また他の一面におきましては、同業他會社との對抗上、特に支店長の格上げをして、その店の權威と信用とを高めようとする會社自體の營業政策にほかならないのであります。
以上申し述べましたように、取締役支店長というがごとき役員は、原則として本法第六條第一項の第二號に示されました職務執行の實情より見ましても、またその役員就任の
事情に徴するも、決して財閥の利益を代表する者とは認めがたく、從
つて人的結合の排除を目的とする本法の對象とはなり得ないと思うのでございますが、この點に對する御當局の御見解を承りたいと思うのでございます。
第三にお尋ねいたしたいと存じますのは、第八條第二項の適用についてであります。すなわち當該財閥會社が國民經濟の復興上必要な場合、その運營上缺くことのできないものであり、かつ餘人をも
つてかえることができないものにつきましては、一箇年以内を限
つてその留任を認めるというのでございますが、同一趣旨の
規定は
從來一般公職追放令の
規定の場合にも認められたのでございますが、その運用の
實際面におきましては、あまりに嚴格に過ぎ、これが適用の實例はきわめてまれであるということを承
つておるのでございます。これおそらく前法におきましては、好ましからざる人物の追放というような
意味合が含まれていた當然の結果かとも思うのでございますが、本法におきましては、その目的の一半が經濟の健全なる發達を促進せしめんとする點にあることに鑑みますれば、本項の一定期間猶豫の
特例は、その運用上に
從來とは特段の手心を加えらるべきものと思うのでございます。すなわちその事業にして國民經濟の復興上必要なものである限り、當該事業が現に整理途上のあるものにつきましては、法の認むる期間内において、その整理の完了または整理完了の見透しがつくまでは、できるだけ當該
責任者の留任を認めることは、現下わが國經濟再建途上におきまして、きわめて緊要の事項と考えるのでございますが、この點につきましての所管大臣の御見解を承りたいと思うのでございます。
以上三點につきまして御
答辯をお願いいたします。