○塚田委員
政府に對する
不正手段による
支拂請求の
防止等に關する
法律案でありますが、これはただいま同僚の
宮幡委員からもいろいろ
質疑がありましたが、私
どものように多少土建事業に經驗をも
つておる者から申しますと、殘念ながらこの
法律によ
つては、
政府御
提案の
趣旨を達せられないだらうというように感ぜざるを得ないのであります。
政府がこの
法律によ
つて目的とされるところは、要するに國家費用を少しでも削減して、なるべくならば國家費用を少しで濟まそうというところにあることは申すまでもないのであり、その
趣旨において、私
どももぜひそうしてもらわなければならぬのでありますけれ
ども、殘念ながらこのような
法律を、もしおつくりになりましたならば、その目的と反對の結果を生むということを申し上げざるを得ないのであります。御
承知のように、土建
工事においては請負の方式と實費清算の方式と二
通りあ
つて、請負の方式というものは、やる者がいろいろ技術とか努力とか、そういうものによ
つて骨を折
つて費用を少くして、その中から利益を生んでいくという形、これによ
つて非常に能率を上げるということが、仕事をする者に課せられている義務であり、また最も能率を上げた者が最も利益を得るという形に請負の形式ができているのであります。私はこの
法律をずつと讀んでみましてすぐ感じますのは、これはもしこういうぐあいにして
支拂を削減し、費用を最も少くして濟まそうというのであれば、これは實費清算で
政府がおやりになるがいい、それ以外には方法がないのだ。殊に今日のように資材の入手が非常に困難な時期でありますから、資材も
政府において
適當な時期に必要な資材を必ず配給するという固い御決意と努力、そうしてそれが必ず實現できるだけの方法を講ぜられ、そうしてこれを實費清算——いくら人間を使
つたらいくら拂
つてやるということを、實際に使
つた人間の頭數で、
政府がおきめに
なつた統制の賃
金額でお拂いになるというふうになる以外には、この
法律のいき方によ
つて支拂を削減し得る方法はないということを私は申し上げざるを得ない。この
法律をも
つて今申し上げたような目的を達する場合に、最も肝賢なこういう點をお忘れにな
つておる。
具體的な例を申し上げますと、ある仕事をいたします場合に、勞賃は大體の基準として、何人くらいの人間を使
つてできるということの大體の目安はありますけれ
ども、實際に仕事をしてみると、人間が何人かかるかということは、これはま
つたくばらばらな結果にな
つて出てくる。一つの仕事をする場合に、たとえば平均十人でできるというものも八人で仕上げるということも實際には出てくる。また通常の状態においても十人でできるものも、たとえば
地方的に寒冷地において仕事をするとか、もしくは雨天の場合に仕事をするとかいう場合には、十人ででき上らない場合が出てくる。そういうふうに一つの仕事をするのに、大體何人くらい人間が要るのだという前提が立たぬ限りは、こういう
法律によ
つて仕事をされても、絶對に目的を達せられないものであります。そこで平均十人で仕事ができるものを八人で仕事をした場合に、その餘
つたものは
政府がお取上げにな
つてしまうというこの
法律の式では、仕事をする者に努力をさせるという氣持を全然なくさしてしまうことにならざるを得ないのであります。現在請負業界の實際の状態を見ますと、
政府がいろいろ仕事をお出しになる場合に、相當競爭して
工事を入札いたし、うわさに聞くところによると、一つの
工事に對して競爭入札の
金額が半分くらいでさえ入札する者もあるような實情にな
つておるようであります。これはもちろん最近仕事が非常に少くな
つて、業者間にかなり辛辣な競爭が行われ、殊に業者が資金に非常に困難しておる關係上、場合によ
つては原價を割
つて入札をしておるというような場合もたくさん出てきておる。そういう場合に入札でまず仕事をさせておいて、その入札
金額で頭を仰えておきながら、さて今度仕事をした結果、それよりよけいかか
つたものは、いくら
理由があ
つても、それはお前らが入札をしたのだから勝手だ、損をしてもやれ、しかしそれ以下であが
つたらば、この
法律を適用して、きちんと計算をして、餘
つたものは皆國家がと
つてしまう。これは契約というものの
趣旨、殊に請負契約の
趣旨を全然沒却した、まことにでたらめなむちやな
法律であります。こういうものは、私土建界に多少關係があるので、いかにも土建業者の
立場から申し上げるようでありますけれ
ども、これをやられて
政府がその目的を達し得るならば、この
法律は實に適切な
法律である。しかし殘念ながらその目的を達しられないで、かえ
つて逆の效果を生む。この
法律をもし適用されるとするならば、今度
一般的の土建業界の傾向としては、入札をできるだけ高くやらなければならぬようになるにきま
つておる。一體
政府は自分である
工事を計畫されたときに、大體の豫定というものをお立てにな
つておる。それはもちろん統制賃金で統制
價格によ
つて、必要な人夫の數、必要な資材の
數量を割當てて、その他いろいろ費用となるべきものを出して、そこに大體の見積りの自己の豫算額をおもちになる。それを請負に出された場合に、その豫算額に合致したものが大體落札にな
つておるはずである。そうしておいて、實際に仕事をして現實に請負業者がそれを努力によ
つて工費以内、見積りの
金額以内で仕上げた場合に、それを全部と
つてしまわなければならぬ
理由がどこにあるか、私は解釋に苦しむ。努力された者に努力しただけのものを與えられてしかるべきではないか、こういうように
考える。それらの點に對して
政府は、どういうお
考えをも
つておられるのか承りたいと存じます。