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小坂政府委員 お答え申し上げます。
健全財政ということが文字
通りに解せられることは、おそらく
經濟全般が健康な
状態に囘復したときに、初めて言えるのだろうということと私も解するのであります。しかしながら
健全財政を
堅持したいという考え方は、私はいつの世たりともこれは捨ててはならぬのだ、そういうスローガンを掲げまして、現實から遊離しておるような議論を私としては立てたくない、こう思
つておる。
政府の考え方を申しますと、
健全財政というのを、文字
通り一般會計の面におきましてはこれを
堅持いたしまして、そうして歳入と歳出をぎつちりと合わせる、國民所得等を勘案いたしまして極力この歳入の面を殖やして、その歳入の面でまかなえる限りにおいて歳出を考えていく、入るを計
つて出るを制すると申しますか、そうい
つた財政の原則を
堅持していくというふうに考えておるのであります。しかしながら申し上げるまでもなく、ただいまの國情は決してその入るに連れての支出ということのみを言える際でもありませんので、かなり歳入の面においては、國民所得全般の關連において無理があると稱せられることが少しくらいあ
つても、それを強行しなければならぬじやないかという考えをも
つている。その面におきましてまだ今の税務機構等の不備のために、相當高額のインフレ所得者に、逃れられる口を與えておるのではないかという面もございますので、大臣もよく申しますように、今般税務機構の量と質とを改善いたしまして、徹底的にインフレ所得を捕捉するということをいたす考えで、この點はもう發足いたしておるのであります。さらに特別
會計の面におきましても、これを極力黒字化する。先ほ
ども銀行局長が述べましたように、
財政資金の壓迫が
一般金融を壓迫しておるという面も、實はこの特別
會計の面に非常にあるのであります。これを極力黒化することに努めます。しかしながら今十數年の戰爭を閲しております後のわが國の
經濟状態のもとにおきまして、一氣に特別
會計を全部黒字にするということも、きわめて困難を伴いますので、これに關しましては五箇年乃至三箇年とい
つたそれぞれの計畫によりまして、鐵道竝びに遞信の
會計を建直す計畫を立てたい。さらに
地方財政の面におきましても、この
健全財政の原則を貫いていく。こうい
つた三つの足の上に立
つてそして
通貨の安定を緯として考えております。結局
健全財政主義と
通貨の安定というものは、値段の兩面のようなものでありまして、
通貨の安定だけをい
つて健全財政主義を貫かなければ、
通貨の安定はできません、
通貨の安定をい
つて貯蓄の
増強をいくら叫びましても、
健全財政主義というものが放棄されるときにおきましては、これまた何らの實效を伴わないのは御
承知の
通りであります。
今の御所論を大約いたしまするならば、しかしそういう主義はよいけれ
ども、
實際の面において
財政が金融を壓迫して、金融の面に逃れて、金融の面から
通貨が相當
増發されていくのではないか、それを放置しておいて、ただ
貯蓄貯蓄と言
つても意味がないじやないか、こういうふうに考えられるので、私としてもその點は御同感であります。ただそれでは
貯蓄の
増強について何ら關心をもたなくてよいかというと、これは決してそうはまいらぬので、われわれとしては極力
増發される
通貨を、全部
貯蓄に還元するように考えていかなくてはならないのであります。それで
政府といたしましては、その
貯蓄を推奨する根源といたしまして、
通貨の信任を
堅持するということをい
つているのであります。この考え方に基きまして新圓の再封鎖または登録のようなことを絶對にしない。さらに
金融機關というものは、他の
企業と別個の性質のものであるというような觀點におきまして、
金融機關の保護政策というようなものを極力考えているのであります。というのは、
金融機關の
信用を
堅持するということが、結局新圓に至大の
關係があるからであります。そこでそういう一連の考え方に基きまして、しかもなお物價は次第に高進していくではないか、といたしますると、結局その物價の高騰に從いまして、
預金をしている者が
實際においてそれだけ損をしていくじやないかという考え方が、どうしてもついてまわると思うのであります。この考え方に關して
政府といたしましては、まず物賞つきの
預金ということをこの頃考え出してこれを實行することにいたしたのであります。と申しますのは、
具體的にはこの第二・
四半期に自轉車を一萬臺、これは第二・
四半期の内地向けの自轉車のほとんど全部でありますが、これを
貯蓄の見合に出す、その他いろいろの物品を考えておるのでありますが、そういう物賞つきの
預金というようなことを考えまして、この
預金における貨幣價値の低落を、物の價値ずけによ
つて防いでいこうというような考え方をいたしておるのであります。竿頭一歩を進めまして、さらに
預金の安定價値
計算を考えたらという考え方も、
當局ではございませんが世間に一部あるのであります。これに關しましてはなかなか
方法が困難である、すなわち
實際の貨幣價値の變動の尺度というものが取り得ないということ、またそういうことをいたします場合には、
通貨の價値は低落しつつあるという前提を認めてのこととなるので、これを
實際に取上げる面におきましては、相當の困難を伴うのであります。それで結論的に申し上げたいことは、われわれとしてはどうしてもこの際今の
經濟の混亂をその線で絶ち切
つて、そして
日本の
經濟再建をしなければならないのでありますが、この際現象形態を追
つていたのではどうしてもだめなのだ。結局
貯蓄というようなことは
政府が騒いだりいたしましても、決してよくこれを全うすることができないのでありますが、國民全體が現象形態を追わないで、これからわれわれとしてもいかに國を
再建しなくちやならないかというような一つの自覺に徹しまして、もつと國の
再建という崇高な理念に立ちまして、ひとつ
貯蓄を通して
通貨價値を安定していこうという氣分に皆
なつてくれれば、月百億が百三十億になり、あるいは百五十億になる形も可能であろう、こう考えておるのであります。最後に囘轉基金の問題についてちよつと言及いたしましたが、私の考えでは今度の囘轉基金の問題は、
通貨安定クレジツトとは違うのではないかと思
つておるのであります。これは御
承知のように
日本の縮小再生産を絶ち切るために、生産再開の呼水として使われるクレジツトでありますが、この問題は
通貨價値の問題とは別個の問題として考えたい、こう思
つておるのであります。はなはだまとまりませんが、そんなことを考えておるわけであります。