○
小坂政府委員 ただいま
委員長から豫備審査のために議題としていただきました
酒類配給公團法案の御説明をいたします。
御
承知のごとく、近來の
食糧事情はきわめて悪化しております。また燃料資材等、窮迫いたしておりまするために、酒類の
生産は逐次減少の一途をたど
つております。しかしながら酒類は石炭その他重要
産業勞務者に對する特配物資、
食糧供出の給償物資といたしまして、また
國民生活の明朗化のためにも缺くべからざるものでありまするから酒類の配給が適正に行われまするか否かということは、
國民生活の安定、
産業の復興、
食糧の
増産等にきわめて重大な
關係を有するものと
考えるのであります。しかして今囘設立し
ようといたします酒類配給公團は、酒類の適正なる配給を目的とするものでありまして、その設立の
理由は、主として次の
通りであります。
第一に酒類は米、麥、甘藷等の主要
食糧を原料とするものでありますが、
食糧事情が非常に逼迫しておりまする際、これらの貴重なる主要
食糧を原料といたしまして製造した酒類については、
政府の責任において酒類の配給を統制いたしまして、適正かつ有效ならしめるための機關を設けることが必要である。か
ように
考えるのであります。
第二に現在の酒類の卸賣機關といたしましては、清酒、合成清酒、みりん、し
ようちゆう等につきましては、大日本酒類販賣株式會社、都道府縣酒類販賣株式會社、ビールにつきましてはビール配給株式會社、果實酒に關しましては、全國果實酒卸共販
組合、及び雜酒につきましては全國雜酒卸共販
組合を指定いたしまして、
政府の監督のもとにこれらを一定買取販賣機關といたしておるのであります。しかしながらこれらの會社、
組合は、私的企業でありまして、さきに成立いたしました私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律の
趣旨に副わないのであります。しかしながら酒類の
生産及び輸送事情を考慮するときは、これらに代るべき機關を設けて、全酒類を一元的に集荷し、小賣業者に販賣することは、最も經濟的であり、また酒類の品質保持についても
適當と
考えるのであります。
第三に、臨時物資需給調整法によりまして、重要な物資は
政府が直接購入切符で消費者に割當てることとなり、酒類についても指定配給物資として、この方式をとることと
なつているのでありますが、
生産量の僅少な酒類につきましては、單に割當てるというだけでは、多數の酒類製造者から迅速に集荷し、これを適正な價格で全國各地に確實に配給することは困難であります。從
つて割當の裏付をなす現物の流通を把握するとともに、全酒類を通じて價格、運賃、容器代等についてプール計算を行い、も
つて價格の凹凸を防止する機構を設ける必要があると認めるのであります。
第四に、酒類については清酒、ビール、雜酒その他一切、酒類をアルコール分等を基準とする一定の換算率により總合的に把握し、酒類の
地域的、時期的需給の不均衡、
需要者の嗜好等を考慮しつつ極力適正な配給に努力しているのでありまして、この點からみても酒類配給公團を設立して、すべての酒類を
取扱わしめることが
適當であると
考えるのであります。
次に
本案の骨子とするところを概略申し述べたいと存じます。第一に酒類配給公團は、經濟安定本部總務長官の定める割當計畫及び配給手續に基き、酒類の適正な配給に關する業務を行うことを目的とする法人であります。
第二に
資金につきましては、基本金は三千
萬圓でありまして、全額
政府出資とし、
運營資金は
復興金融金庫から借入れることといたしております。
第三に公團の役職員につきましては、これらは官吏その他の
政府職員であり、俸給給與が國庫から支給されるとともに、官吏に關する一般法令に服さなければならない點において、公團が國家の代行機關としての性格を明らかにしていることは、さきに成立した他の公團と同樣であります。しかして役職員としては、できる限り公團の設立とともに解散する會社、または
組合の從事員、その他民間の優秀な經驗者を採用し、現下の雇用事情に應ずるとともに、業務
運營の圓滑適正を期したいと存じます。
第四に公團の業務は、酒類の一手買取及び賣渡が主たるものでありまして、これは經濟安定本部總務長官が定める基本的政策及計畫に基いて、主務大臣のなす指定及び監督に從
つて行うものであります。すなわち製造された酒類は、すべて製造者から公團に讓り渡され、公團は原則としてこれを小賣業者に賣り渡し、小賣業者からさらに消費者に配給されることとなるのであります、その他酒類の配給のため必要な酒類の保管及び輸送を行うことはもちろん、他に附帶事業としてリンク容器の囘收、運賃のプール計算等が
考えられております。而して公團の解散が臨時物資需給調整法とひとしく、昭和二十三年四月一日、あるいは經濟安定本部廢止の時のいずれか早い時か、または經濟安定本部總務長官の解散命令によることと
なつており、平常の經濟
状態に復歸した曉には、ただちに解散することを前提としておりますのと、
政府豫算及び貸出に當ります
復興金融金庫の
資金關係から、業務に必要な施設は、原則として買收せずに、公團設立とともに解散する會社または
組合、その他の第三者から賃借することといたしておるのであります。
第五に公團の監督でありますが、經濟安定本部總務長官は、酒類の配給に關する基本的な政策及び計畫に關して指導監督し、主務大臣はこれに基いて實施上の具體的、個別的な監督を行うこととしておるのであります。なお公團の會計につきましては、その基本金が
政府出資である
建前から、會計檢査院がその檢査に當ることとしているのは、これまた他の公團と同樣であります。
第六に公團の設立に伴う
措置でありますが、酒類配給公團が成立したときには、現在の大日本酒類販賣株式會社、都道府縣酒類販賣株式會社、麥酒配給株式會社、全國果實酒卸共販
組合及び全國雜酒卸協同
組合は解散することとなり、その清算は昭和二十三年四月一日までに結了いたすこととしておるのであります。
これを要しまするに貴重な主要
食糧を原料とする乏しい酒類の配給については、需給がきわめて不均衡な期間に限り、
政府みずからその統制の衝に當ることとし、私的會社または
組合により一手買取販賣は、經濟民主化の
趣旨からこれを廢止することといたしましたのが、公團の設立の眼目であります。すなわち
政府機關とも申すべき公團の組織とその民主的
運營とにより、酒類の適正な配給を行い、
産業復興と
國民生活の安定に資せんとするものであります。
以上をもちまして
酒類配給公團法案の提案
理由の説明を終ります。何とぞ
本案正規
提出の曉には、速やかに御審議の上可決せられんことをお願い申し上げる次第であります。