○上山
政府委員 御要求になりました數字を申し上げます前に、前の本
委員會に缺席していて御
質問がありました點を承りましたので、關連いたしますことを若干申し上げたいと思います。
政府の失業對策といたしましては、これは勞働大臣初め他の機會等でもいろいろ
お答えもいたしているのでありますが、第一の
施設といたしましては、公共職業安定所の效率的運營竝びに職業補導
施設の擴充強化を意圖しているのであります。さらに第二の
施設といたしましては、輸出産業その他民需諸産業の振興による雇傭量の増大化と公共事業の實施を
考え、さらにどうしても失業者として出ます者を、失業保險なり失業手當で救
つてやろうと
考えているのでありまして、從
つて公共職業安定所がなるたけ活動の面を廣くいたしまして、一人でも多くの失業者を就職させるように努力いたしたいと思
つているわけでありまして、そういう
趣旨からいたしまして、
今村委員の御心配になります點は、御
趣旨のほどは私たちもよくわかるのであります。ただ一面、先般
國會で議決を願いまして本日から施行に
なつております職業安定法、これは新しい職業行政の方向を規定いたしているのでありますが、この職業安定法におきましては、なるたけ職業の紹介なり募集は、勞働者が現に住んでおります所から工場に通うというような建前で
考えているのであります。すなわち職業安定法の第十九條第二項では「公共職業安定所は、求職業者に對し、できるだけその住所又は居所の變更を必要としない就職先に、これを紹介するよう努めなければならない。」とありまして、また第三十九條には「勞働者の募集を行わうとする者は、通常通勤することができる
地域から、勞働者を募集することが困難なときは、その
地域に近接する
地域から、勞働者を募集するように努めなければならない。」かような規定があるのでございまして、なるたけ通勤
地域から募集する、またそこに紹介するというような原則を立てているのでございます。この
趣旨は申すまでもなく勞働
關係、雇傭
關係の民主化をいたしますためには、遠隔の
事情のわからない所から勞働者を募集してまいる。また
事情のわからないような所に勞働者を紹介するということを極力避けまして、できるだけ通勤できますような、地元で人を募集もし、また紹介もいたす、かような建前をとりましたような次第でございます。もちろんこれは原則でございまして、ただいまの工場立地が必ずしも勞働力の給源に
適當するようにできておりませんし、また將來におきましても、工場の種類によりましては、必ずしも地元からのみ勞働者募集でありますが、
一つの大きな原則といたしましては、極力遠い所から人を連れてまいるということをよしまして、地元から募集もし、紹介もいたすという原則を立てたのでありまして、このこともひとつ御
承知をお願いいたしたいと思うのであります。それで私たちといたしましてはこういう法を御可決願いましたわけでございますので、遠い所からの募集なり、遠い所への紹介は避けるような方向で努力してまいりたいと
考えているわけでございます。
それで御
質問の中にありますところの職業紹介の實情でございますが、
ちようど都市と郡部というような都合のいい數もございませんので、できるだけ近いものを申し上げる
趣旨で、六大都市の所在しております府縣とそれ以外の府縣との、昭和二十一年度中の職業紹介の
實績がございますので、それを申し上げたいと思います。すなわち、まず求
人數で申しますと、全國で三百一萬七千五十八という數字でございます。そのうち六大都市のございます府縣が百三十二萬一千百六、それ以外の府縣が百六十九萬五千九百五十二、かような數字でございます。これに對しまして求職者の數は、全國で二百二十三萬二百三、六大都市のあります府縣が九十三萬五千九百八十六、それ以外の府縣が百二十九萬四千二百十七という數字であります。それからなお御參考のために、就職しました者の數を申し上げますと、全國で百二十八萬二千九百六、六大都市のあります府縣が四十萬九千三百四十六、それ以外の府縣が八十七萬三千五百六十という數字に
なつております。これをパーセンテージで申し上げますと、求
人數は全國を百といたしますと六大都市所在の府縣が四三・八%、それ以外の府縣が五六・二%、求職者の數に全國を百といたしますと、六大都市のあります府縣が四二%、それ以外の府縣が五八%と
なつております。なお御參考のために就職者の數字を申し上げますと、全國を百として、六大都市所在の府縣が三一・九%、それ以外の府縣が六八・一%ということに
なつております。すなわち六市都市の所在しております府縣は、求
人數におきましても四三・八%という相當大きな割合でございますが、しかし一面求職者にいたしましても四二%でございまして、全然比例しているというところまではいきませんが、しかし大體同じような割合で、求人者も相當の割合だが、求職者も相當の割合を占めております。これは別な見地から求
人數を百といたしました場合の求職者の數を申しますと、六大都市の所在府縣は七〇・八%それ以外の府縣は七六・三%、すなわち都市よりも郡部の方が求職者の數は多いということに
なつておるのでございますが、しかしいずれにしても七〇%ないし八〇%というような數字に
なつております。なお求職者の數に對しての就職者の數でございますが、これは六大都市所在縣は四三・七%右以外の府縣は六七・五%、かような數字に
なつておるのでございます。すなわちこれはどういうことかと申しますと、六大都市の方が求職者に對して、
實際就職した者の割合が低いということでございます。これもいろいろの原因が
考えられるのでございますが、その
一つの大きな原因として、六大都市等のあるところは住宅
事情が非常に悪いために、求人者の側では自分の家から通勤する人を希望する。ところが求職者の方ではなるたけ住込なり、あるいは大工場等の寄宿舎のあるところを希望するというような、住宅
事情が原因に
なつて、求人と求職とがうまくマツチしないという
事情が非常に多いのでございまして、こういう面から見ても、住宅
事情のよくないために、大都市においての職業紹介がうまく行
つておらないということを申し上げることができると
考えるのでございます。御參考のための
一つの數字を申し上げますと、これは昭和二十一年八月十五日の失業の指數の調査でございますが、これには商工業
地域と農山村
地域との
二つの分類でや
つておりまして、ただいま問題に
なつております都市と、それ以外というようにぴ
つたりとは行
つておりませんが、
一つの御參考になると思います。すなわち商工業
地域においては、失業者の率が、男子四・八四%女子四・八五%合計四・八四%、農山村
地域においては男子四・二四%女子二・六四%合計三・五二%に
なつておりまして、この數字は商工業
地域においては、失業者が國民なり勞働者のうちで比較的率が高いということを示しておるようなわけであります。そういうことをいろいろ總合して
考えますると、なるほど
一つ一つの例をとると、都會の方にいい求人口があり、農村の方に
適當な求職口があるという場合も
考えられるのでございますが、全體を通じて申せば、都會の方には失業者が多い。それから大都市の職業紹介が住宅不足の為でうまく行
つていないという事が
考えられますし、また今囘議會で御議決願いました職業安定法の
趣旨も、できるだけ通勤できるような
地域から工場へ紹介いたし、また募集もなるため通勤できるような
地域から原則としては認めるという建前をと
つておるところから
考えますると、職業行政の立場においても、ただいまの
事情では、都市への轉入が相當程度抑制されるのもやむを得ないじやないか。なおどうしても國民生活上困るような者については、例外の場合を認めておるわけでございますので、今面の
措置はやむを得ない
措置だと
考えております。