○松本
委員 輕
工業小
委員會における
纎維工業に關する調査の報告をいたします。
本小
委員會におきましては、まずその所管事項中、
纎維工業に關しまする事項について調査に著手いたしましたるところ、
纎維工業中、大企業に屬する紡績等の面におきましては、
輸入原料との關係をにらみ合わせまして、不十分ながらも何とかや
つている状態にして、かえ
つて第二次
製品製造
業者、特に輸出關係も
中心とする
中小工業の面におきまして緊急施策を要する問題が多く、他の輕
工業すなわち雜貨
工業その他の
一般中小企業の問題解決が緊急を要するものと判明し、
政府及び民間各
方面より事情を聽取するとともに、明細なる資料を要求し、あらゆる角度よりこれに檢討を加えた結果、現在わが國の中小企
業者の最も困却せる問題は、資金と
資材の問題であるのは周知の通りでありますが、金融につきましては、昭和十六年大企業
中心時代における中小企業金融十二月末貸出現在額が約十一億圓にして、物價指數より比較いたしますと、二十二年七月末におきましては、右の約二十三倍、すなわち二百五十億圓程度の中小企業金融が最小限度必要でありまして、その内、普通銀行金融七十パーセントと見ても、特殊金融によるもの七十五億圓程度が必要であるとの結論に逹したのであります。しかるに現在普通銀行の融資の極力引締めにより、特に中小金融に對してはこれが嚴しく、特殊金融機關の貸出能力が低く、本年八月末現在における商工組合中央金庫の貸出總額四億五千
萬圓のうち、
中小工業向けが二億四千
萬圓という少額に止まり、これに復興金融金庫における中小企業貸出約九億圓を合算しましても、十三、四億圓程度であります。しかして最近、普通銀行の貸出が中小企業
方面に對して極度に嚴重になり、貸出しは主として信用
状況いかん、特に見込み擔保の有無が基準となり、優秀な技術を有する中小企業が金融難のために没落するということばしばしば起る
實情でございます。最も重要な輸出
工業の面におきまして、貿易手形制度が確立されているが、その繁雜な手續とわくの制限のために、中小企業はこれを有效に
利用できないという憾みがありますと同時に、貿易手形を振り出し得る状態になるまでに、優秀な技術を持ち、將來發展の
可能性のある
製品を製造している中小企
業者は、全然伸びることができないという状態であります。
他面、
資材につきましては、その割當基準が主として
設備能力と過去の
生産實續によ
つているため、技術、經營共に優秀なものでも、中小企業なるがゆえに
資材の割當が少く、多少の割當があ
つても、現物入手の便宜が少いために、非常に困難しているという實例が多いのであります。最も重點をおくべき輸出
工業においてすら、引合があ
つても、
資材難のためにこれに應ずることができなかつたという實例多いことが調査の結果明瞭と
なつた次第でございます。
かかる状態では、獨占禁止法、財閥解體、
經濟力集中排除法等によ
つて、大企業に代
つて中小企業が將來のわが國における
産業構成の中樞をなしていくべき時、まことに優慮にたえない次第と存ずるのでございます。
現在わが国の
資材その他
經濟力の實體に鑑みまするとき、これらの中小企業を野放しにして、全面的に資金
資材の面において救濟することは不可能でありますから、まず技術、經營の優秀なものを選擇して、これを大企業に對すると何ら遜色のないように、
資材の割當及び入手
竝びに資金面の融通が行はれるよう
措置するとともに、技術經營の優秀でないものに對しては、できるだけ一定水準に逹するよう
指導する必要があると信ずるのであります。けだし近き將來におきまして、わが國の
工業が對外的には外國市場において國際的競走にたえ得るとともに、國内向け
製品についても、海外から
輸入せられんとする
製品に十分對抗し得るように、今から技術の向上、經營の合理化を
指導しなければ、わが國の中小企業の崩壊、延いては
産業の壊滅を招くおそれがあります。
政府におきましては、この
實情に對して、まだほとんど特別な施策をなしていない現状でありますが、一時も早く思い切つた
對策を施さなければ、貿易
再開を眼の前にしているわが國として、まことに寒心にたえない次第であります。
本
委員會は右の調査の結果といたしまして、第一、中小企業金融のための特殊金融機關、たとえば現在の商工組合中央金庫のごときものを擴大強化し、前述の事實に鑑み、少くとも年間百億圓以上の金融能力を有するものとするよう強力に施策を進め、また市場より資金の吸收をはかる法策として、目下問題に
なついてる商工協同組合を
利用することが最も緊要であること。第二、貿易手形を敏活に
利用できるように、手形割引については割引銀行の副申を發し、
製品の實態と、輸出の確否に基準を置く意味で、貿易公團の發注證明のみによることとし、手續の冗漫を避けるとともに、できるだけ貿易手形のわくを擴大し、能うればこれを廃止するまで
もつていくよう考慮する必要があること。第三、オフイシアルな
審査により、一定水準以下の技術を持ち、良心的に
製品を出すと認められた中小企業に對し、
資材資金の割當を大企業におけると同様に取扱い、輸出品製造に對しては、特に確實なる引合ある場合は百パーセントの
資材を
配給すること。しかしてこの
資材については、主要材料のみに止まらず、副
資材をも
確保し、
もつて副
資材不足のためにせつかくの輸出品が製造できないということの絶無を期すること。
資材の
品質が
製品の
品質を左右する場合もしばしば起
つているので、輸出
資材の主要なもの、特に金融
資材のごとき
製品の質を左右することのはなはだしいものについて、需要者の
品質證明のあつたときには、特に報償的補償を與えるような制度を考えることが最も緊要なこと。さらに輸出用材料の入手について、現在の原材料貿易公團の取扱いを今のままにしておく以上は、有效に働けない憾みがあり、かえ
つて割當證明書に引受けメーカーまたは販賣店を指定し、これに責任をとらせるような
方法を採用することが簡易かつ確實であると認められること。第四、輸出
工業を
中心とする中小企業の經營の合理化及び技術の向上をはかり、中小企業の質を向上させる一方、中小企業を
審査し、資金
資材の割當等についても、前述第一ないし第三の
措置をなし得るような強力な發言權を
もつ中小企業
振興のための綜合的施策と機關とを
設置すること等に關し、
政府を督勵すること。以上が喫緊の要事であるという結論を得た次第であります。
右に對しまして、しばしば
政府に連絡し、速やかに善處すべきことを要望し來つたところ、
政府當局は、まず第四の中小企業
振興に關する機關を
設置したいという意向を有し、次囘國會に中小企業廳
設置に關する法律案を提出する用意がある旨を明らかにいたしました。
政府が本法律案を提案するとすれば、その機構の運用上、その權能として(一)他官廳に對して強力な發言權を
もつこと。(二)中小企業用
資材資金に關して、ある程度の操作能力を
もつことが絶對的に必要でありまして、この點について、十分に具體的な仕組を考慮しなければ、結局浮き上つた存在に終り、いたずらに官廳機構を膨脹せしめるだけで無意味に終ること、また
地方に強力な協力機關あるいは傘下機關をもち、現場の把握を確實にする必要があること、次に特に
審査制度ができるだけ民主的になされるよう考慮する必要があること等を強調いたした次第であります。
本小
委員會は、ここに調査の結果を報告いたしまするとともに、その結論といたしまする諸點に對しまして、
政府を監視督勵して、その速やかなる
實現をはかることが必要であると認める次第でございます。
以上をもちまして御報告を終ります。