○早川委員 經濟
最高會議というものがどういうものであるか、ちよつと
具體的にわかりませんでしたが、私の考え方も
一つの尊重すべき意見であるという
お話でありましたが、私はなぜこういうことを申すかと申しますと、戰時中の飛行機生産というものの體驗を私はも
つております。あのときに
日本が戰さに勝
つためには飛行機だということで進んだのでありますけれども、いわゆる悪い總合性——商工
大臣は總合性と言いましたが、悪い總合性にとらわれまして、やれ軍艦も要る、やれ戰車も要る、やれ鐵砲も要るということで、せつかく三萬機なり四萬機なりできる國力をも
つておりながら、稀薄にな
つてほとんどできなか
つた。二萬よりできなか
つたというような苦い體驗を、
日本國民はも
つておる。これは多少事例が差障りがあるかも知れませんが、
日本經濟再建という面においては、食糧と石炭ということにな
つておりますけれども、食糧はこれはあまり資材も要るものではございません。從
つて問題は石炭でありますが、輸出
産業の振興にいたしましても、インフレの防止にいたしましても、今のところ公平にい
つて論議し盡された。最も
日本經濟再建をするのにはどうするかとい
つて掘りに掘
つて、最後にかちつとダイヤモンドを射止めたところが石炭だ
つたわけであります。ところがこの石炭というものが、石炭によ
つて中央突破をや
つて、インフレ防止、あるいは
産業復興をするということは、
政府も一應そうな
つており、
國民の世論もそこへきて、それがいわゆる傾斜生産とか何とかいうことに
なつたわけでありましようが、いわゆる總合性ということは、非常にアメリカのように資源がゆたかである所はいいのでありますが、非常に貧弱な資源である
日本が、あれもやり、これもやるということになりますと、結局
日本經濟は再建しない。そこで私はいわゆる總合性という考え方はおやめに
なつた方がいい。中央突破の經濟再建でなければならぬ。こういう信念をも
つております。そういう觀點から今の石炭行政なり石炭事業をながめてみますと、決してほんとうの
意味の總合性のために石炭が出ないのではないのであ
つて、
具體的な例は先ほど炭車の例を言いました。さらにまた資金の面、資材の面も、
具體的に
炭鑛へ
行つてみると、
日本の國力ではこの
程度よりできぬかというと、決して私はうそでないという感がいたします。要はこの總合性という
意味が、
日本の國力の單位當りの限界生産力と申しますか、限界效用度というものが、
最高度に發揮されたという
意味の總合的な經濟再建ならば、これは結構です。言いかえますと、これを個人の例で言いますと、死なないまでに飯が充足されて、初めて他のものに金が使える。これが個人の場合であるが、
日本經濟の再建という面を見た場合には、一應三千五百
萬トンの石炭を掘るのに必要な鐵なりその他のものを充足して、初めて他のものに移
つていくというのが、國内の限界效用度を發揮する
一つの策でありますが、その點がいわゆる總合性という名前のもとに、十分實現されていないと思う。そうなると、結局じり貧經濟になりますから、組織の面におきましても、中央突破的な行政力の構想を申し述べたのであ
つて、この點は審議の過程において、十分
政府竝びに委員各位と御
相談したいのですが、
政府も十分考えていただきたい。そうしなければ、消極的な管理の效果はあがりますが、積極的な
増産という面において不十分になるということを、私は恐れるのであります。これが第二點でございます。
第三點は、これも今までの公聽會なり、あるいは委員各位の
質疑の總合的な判斷から申して、大きな問題です。この
法案に盛られているところの内容の中で、非常に重要な問題は、いわゆる能率の問題と民主化の問題であります。特にこの條文では、企業の人事權、經營權にまで生産協議會が、相當大幅にはい
つております。二十四條なんかを見ますと、「指定
炭鑛の經營者及び從業者は、
炭鑛管理者のする業務計畫の實施に對して、協力しなければならない。」ということでは、本來、上であるべき事業主なり經營者が、自分より目下の
炭鑛管理者に協力しなければならぬ。上下の系統がこれによ
つて亂れてくる。それから公聽會で、ある勞働者の方が申したように、今までの軍隊は、下士官、兵というものは作戰計畫というものを知らされないで、ただ命令に從
つてお
つた。これではいかぬ。それと同じように、司令官に當るのは經營者、あるいは工場長でありましようが、一勞働者まで全部業務計畫なり、經營全體と知らせなければならぬ。これは理想論かもしれないが、軍隊の場合にも、下士官、兵に至るまで作戰計畫というものにタツチしていなければいかぬというのでは、能率の點では軍隊にならない。ここに大きな問題が伏在すると思います。私はロシヤ、アメリカ及びイギリスの國有の例をも調べてみましたが、ソヴイエトの國有國營の實態を見てみますと、
炭鑛の長は勞働組合の意見なんかは少しも聽いておりません。それぞれの權限において、命令でどんどんや
つていく。英國の
炭鑛の國有條例をしさいに調べてみますと、この
炭鑛管理
法案は、その面ではイギリスの
炭鑛國有國營よりも、むしろ一歩前進しており、過激であります。イギリスの
炭鑛國有國營の勞働組合なりの意見は、やはり限られた面であ
つて、いわゆる業務計畫なり業務命令などは——ラスキーはイギリスの國有國營のほんとうの手本にすべきものはイギリスの陸海軍の組織であると、ある委員會で強調しておりますが、そのようにな
つておる。そこで非常に民主的にすべてを生産協議會に諮らなければならないとか、あるいはまた業務計畫も何もかも、非常に民主的で、世界に類例のない進歩的なものかもしれないが、そうい
つた點で、民主的な組織を擔
つておるけれども、能率的でないという憾みが、この
法案の大きい缺點ではないかと私は思う。これは特に人事權、經營權の問題にも絡んで來ますが、あまり生産協議會に氣兼ねしないで、能率的な面をもう少し考えられなければならぬ。ラスキーの言う國有國營の理想は、陸海軍のあの能率だということも酌んで、若干これを整理して、能率的にやるお考えはないか。これが非常に大きい問題だと思いますが、商工
大臣の御意見をひとつお聽きしたいと思います。